「煩雑」の意味とは?
「煩雑」の正しい読み方は「はんざつ」です。「煩雑」の意味は「物事が込み入っていて煩わしい事」で、整然とした状態とは反対の意味になります。よく混同される類語で「複雑」があります。また、同じ読み方の類語で「繁雑」があります。
これらの類語と「煩雑」との意味の違いを比較することで、より「煩雑」の意味や使い方への理解が深くなるでしょう。
また、「煩雑」と同じような意味を持つ、「煩」を用いた敬語表現についてものちに例文を挙げて、実用的な使い方を紹介します。
「煩雑」の由来
「煩雑」のそれぞれの字を見てみると、「煩」は「物事が込み入っていて煩わしい事」の意味で、「雑」は「雑用」や「雑種」などのように、たくさんのものが混じっている様を表しています。
この「煩」という字を分解すると、「頁」と「火」へんの2つになり、「頁」という字にはもともと「頭」という意味があって、火へんと併せて「頭が燃えるように熱い」から「イライラする」というような意味になりました。
「煩」を使った言葉に「煩悩」というのがあります。「煩悩」は仏教の教義のひとつで、人間の持つ欲望などにより心を惑わすという意味です。この言葉に使われる「煩」の「煩わしい」という意味から「煩雑」の「煩」のイメージが湧くのではないでしょうか。
さらには「煩」にはビジネスにおいて、目上の人やお客様への敬語表現である、「お手を煩わせて」という使い方があります。これは例文のところで紹介します。
「煩雑」の特徴
「煩雑」の意味を正しく理解するには、先ほどから挙げている類語、「複雑」や「繁雑」の意味を知り、これらの類語との比較をするのが一番分かりやすいので、以下にこれらの類語の意味を紹介し、「煩雑」との意味との違いを説明します。
「煩雑」の類語「繁雑」「複雑」との意味の違い
「煩雑」には意味や由来のところで紹介したように、「煩わしい」という意味の感情が含まれています。この類語には「複雑」や「繁雑」というのがあります。
「繁雑」は「煩雑」と読み方は同じで「はんざつ」です。読み方は同じでも、この2つには微妙な意味の違いがあります。
「複雑」や「繁雑」などの類語はどちらもたくさんの要素があって、それらが絡み合っている様子ですが、そこには「煩わしさ」という意味はありません。ここが「煩わしい」という感情を含んだ「煩雑」との大きな意味の違いです。
「煩わしい」という意味を持つ「煩雑」は相手に面倒だという意味に伝わることがあります。そのままでは敬語表現の言葉としては使いにくい言葉です。
「煩雑」の「煩」は「患」と同じ語源だが意味が違う
「煩雑」の意味で「煩」は「煩わしい」という感情を表すと説明してきましたが、この「煩」は「煩う(わずらう)」でこれと同じ読みで「患う」というのがあります。
この2つの「わずらう」はもともと語源は同じなのですが、「患う」は「病気になる」という意味で、熱が出たり、体のどこかに痛みがあったりする、いわば外面的なことを指すのに対して、「煩う」は内面的すなわち心の悩みや苦労を指す言葉です。
この違いからもイメージが沸くでしょうが、「煩わしい」には口には出さなくても心の中で面倒などという気持ちが湧き出るという意味があるのです。
なので、目上の人に話す際の敬語表現としても、「煩雑」という言葉はあまり好ましくはないので注意が必要です。
「煩雑」に関連した言葉は?
「煩雑」の意味を説明をするにあたり、類義語として「複雑」や「繁雑」について説明し、さらにその違いを説明してきました。ここでは「煩雑」に関連する言葉で、対義語とその意味について説明し、それによって「煩雑」のイメージをさらに明確にします。。
「煩雑」の対義語とその意味
「煩雑」の対義語は「簡略」、「簡易」です。それぞれの対義語の意味は「簡略」は「手短で簡単なこと」で、「簡易」は「手軽なこと、手順や手続きが簡単でたやすく行えること」で、いずれも「煩雑」にあるような煩わしさがなくなっています。
この他にも対義語として、「簡潔」や「簡素」、「単純」などが挙げられますが、いずれも無駄のない、手続きや手順が容易なという意味が込められています。
「煩雑」と感じることはビジネスで大切?
「煩雑」の対義語として「簡略」や「簡易」を挙げましたが、煩雑な物事を改善した結果、煩わしさを取り除いた「簡略」、「簡易」となります。
ビジネスにおいては非効率的な「煩雑さ」を改善して簡略化・簡易化するということは生産性を上げるのに大変重要なことです。
決まったことをただこなしていくよりも「煩わしい」という思いを重要視した方が改善に結びついて、効率アップになるので煩わしく感じることは悪い事ではありません。
「煩雑」の使い方
ここまで「煩雑」の意味や特徴について説明してきました。「煩雑」の意味をより具体的に理解するのには、実際の使い方の例文を紹介するのが一番です。
ここでは「煩雑」を使った例文をいくつか挙げて、どのような状況での使い方が多いのかを併せて説明します。
例文①
「煩雑」という単語を使う、最もポピュラーな使い方の例文はビジネスシーンにおける、業務の効率の悪さに対する事柄でしょう。
「煩雑な事務処理を簡素化するにはIT化に踏み切るしかない。」のように、業務の煩わしさから解放されるというように、ただ仕事量が多いのとは違って、「煩わしい」という気持ちの入った使い方です。
例文②
ビジネスシーンでは、この他にも各所で「煩雑」という言葉は使われます。「煩雑な作業は新人には間違いのもとになる」など、ただ量が多いという「繁雑」や「複雑」などと違い、煩わしい作業が多く、簡単に手順化しにくいような作業を対象にするような場合に使われます。
例文③
「煩雑」の意味は煩わしいというニュアンスを含んでいますが、同時にその煩わしさを取り除きたいという思いを込めて使うことがあります。
例文として「この処理は煩雑なため、慣れない人にとってはミスを犯す原因となる」を挙げると、これは煩雑さが原因で作業ミスを誘発する可能性が高いということを意図していて、その裏には改善して煩雑さをなくす必要があることを示しています。
例文④
「煩雑」という単語とは違いますが、同じような意味を持つ敬語表現を紹介します。それは「煩わせる」という言い方です。「煩わせる」は目上の人への敬語表現でよく使われ、自分をへりくだる使い方なので、いろいろなシーンで用いられます。
「この度はお手を煩わせてしまい、申し訳ありません」のように、面倒をかけた場合などに、謝罪の意味の敬語表現として使うことや、「お手を煩わせますが、よろしくお願いいたします。」のように、相手に面倒なことを依頼するような場合などの敬語表現としての使い方が一般的です。
また、この敬語表現はお客さまや目上の人に対して誤解を生まないようにすることや、関係性を大切にするためにもうまく使う必要があります。この言葉がないと相手から「何も思っていないのでは?」と思われることがあるので、クッション的にうまく使うことが大切です。
「煩雑」の注意点
「煩雑」はビジネスなど、日常会話以外でよく使われる言葉ですが、それだけに使い方を誤ると、相手に不信感や不快感を持たれることがあります。
上で挙げた類語の「複雑」や「繁雑」との区別がついていないで混同して使わないように注意が必要です。
「煩雑」は使い方に注意!
繰り返しになりますが、「煩雑」という言葉の意味には複雑に絡み合っているというだけでなく、そのために煩わしいという感情が含まれています。「複雑」や「繁雑」と間違えて使うと相手に誤解を与え、さらには不快感を与えることにもなるので、使い方には注意が必要です。
ビジネスにおいて「煩雑」という言葉を用いることは、煩わしい、つまり非効率的なところがあるということを意味するので、改善策を検討する必要があることを示しています。
同じ「煩雑」でも、ただ煩わしいという意味に受け取られる言い方ならば、マイナスのイメージを持たれ、逆に、煩わしいところを改善しようという意思を示す言い方ならば、むしろプラスに受け取られます。
同じ言葉を使うにしても、プラスの意味にもマイナスの意味にもなるので、特にビジネスにおいては正しい意味を理解して使い分けることが大切です。
「煩雑」はビジネスでは「改善する」という意味
以上、「煩雑」について、その意味と類語、対義語との意味の比較について紹介してきましたが、お分かりいただけたでしょうか。
「煩雑」には「煩わしい」というマイナスイメージの強い意味が含まれていますが、これは同時にビジネスにおいてもう一歩先を見据え、煩わしさを取り除く努力をすれば、結果的にプラスになるという意味と捉えられます。
決して「煩わしい」で立ち止まらずに、「どうすればこの煩わしさを解消できるか」ということを常に考えながら仕事に取り組んでいけば、きっと作業効率がアップし、仕事の質も上がるに違いありません。「煩雑」にはこのような意味があると考えて前向きに使いましょう。