「折り合いをつける」の意味とは?
今回は「折り合いをつける」という言葉について解説していきます。「折り合いをつける」という言葉自体には、「意見や考え方が異なる両社が歩み寄り譲り合って一致点を見つけ出す」ということを指します。
「折り合いをつける」という言葉は、ビジネスシーンを始め様々な場面で利用されますが、似たような使い方ができる類義語も多い言い方です。
「折り合いをつける」という言葉の特徴や由来などを紹介するとともに、正しい使い方や使用する際の注意点などについて解説をしていきます。
「折り合いをつける」の語源
「折り合いをつける」という言葉の語源について解説します。語源を考えるため、「折る」と「合う」について考えます。まず「折る」の語源及び意味としては一般的には何らかの物体を折る際に使用します。
一般的な意味以外に、「出張を引っ込める」、あるいは「負けてくじける」という意味の語源になります。これに「合い」及び「つける」と続けることで、「お互いが出張を引っ込め、お互いが負けてくじける」となります。
ここから派生して、「お互いが妥協点を見つけて歩み寄ること」のような意味で使われるようになった言葉です。語源を考えるうえでは言葉自体が難しくないので語源の提示は難しいです。
「折り合いをつける」という言葉の特徴
「折り合いをつける」という言葉の由来及び語源について解説してきました。続いては「折り合いをつけるという言葉の特徴について紹介します。
お互いがそれぞれの主張や希望をある程度あきらめ、歩み寄るという意味のある「折り合いをつける」という言葉ですが、似たような意味での使い方ができる言葉はいくつかあります。
ただ、意味は近くてもそれぞれニュアンスや暗に含む意味が異なるものもあります。特にビジネスシーンにおいては適切な使い方の言葉を選定することが相手に与える印象をよくする意味でも重要になります。
「妥協」よりも思いやりが感じられる
「折り合いをつける」と「妥協する」という言葉はほぼ同じ意味で使われますが、「折り合いをつける」が双方がそれぞれある程度の納得をすることが多いのに対し、「妥協する」は片方が我慢するニュアンスが含まれます。
また、「妥協する」の方が「折り合いをつける」よりも形式的で冷たい印象を持たせられます。「妥協」と表現するよりも「折り合いをつける」といった方が温かみがあり双方が納得した優しい感じが伝わります。
両者はほぼ同じ意味ではありますが、使う場面によっては相手に対して与える印象がかなり異なってくるので気を付けましょう。
お互いが納得のいく結果を導く
「妥協する」という言葉には話し合いをする両者のうち片方のみが折れて我慢する印象を含みますが、「折り合いをつける」という言葉には両者がそれぞれある程度の我慢をして、折れるという内容を含んでいます。
「綿密な話し合いを繰り返しお互いの妥協点を見つける」となると、双方がそれぞれ折れてそれぞれの諦める妥協点を見出すという態度となり、「折り合いをつける」の意味及びニュアンスに近くなります。
「折り合いをつける」という言葉からは、一方的ではなくお互いに納得をしたうえでの合意を目指す、平和的な解決に向けた取り組みを連想できます。
「折り合いをつける」の類義語
「折り合いをつける」という言葉の特徴について紹介してきました。続いては、「折り合いをつける」という言葉の類義語について紹介します。
「折り合いをつける」の言葉の語源から見てもわかる通り、お互いがそれぞれの主張・要望を引き下げていき、お互いが納得する落としどころを見つけていく行為を指す言葉です。
「折り合いをつける」の語源から見て似た言葉はたくさんあります。その中でも代表的な使い方ができる言葉を3つ紹介します。
「歩み寄る」
「折り合いをつける」の類義語の一つ目は、「歩み寄る」です。「折り合いをつける」という言葉に非常に近い使い方ができる言葉で、ビジネスシーンだけでなく様々な場面で使用できます。
「歩み寄る」には、「お互いの利害関係が一致するように譲歩する」という意味があります。お互いがそれぞれの納得のいく形に持っていくという点で、「折り合いをつける」に非常に近い言い方です。
「歩み寄りの姿勢」という言い方をするケースも多いです。ビジネスシーンではお互いの利害が相反することも多いので、「歩み寄りの姿勢」を持ち「折り合いをつける」方向に持っていけるかが重要になるケースも多いです。
「譲り合う」
「折り合いをつける」の類義語の二つ目は、「譲り合う」です。「譲り合う」も「折り合いをつける」という言葉に非常に近い意味を持つ言葉です。
ただ、どちらかといえば双方の利害を勘案して落としどころを見つけていくという行為というよりは「自分の側の主張を取り下げて相手に譲る姿勢」の方をメインに考えるニュアンスが含まれる言い方です。
ビジネスシーンにおいては、特に大事な商談の場面などでは「譲り合う」姿勢が必要になる場面もある一方、自分の側の主張もある程度通す姿勢が必要になる場面もあり得ます。
「同調する」
「折り合いをつける」の類義語の三つ目は、「同調する」です。「同調する」も「折り合いをつける」と似た表現として紹介されます。
ただ、「同調する」は自分の気持ちや主張の有無及び程度にかかわらず、相手の意向に合わせていく考え方を含んでいる点を考えると、「折り合いをつける」とは若干ニュアンスが異なってきます。
ビジネスシーンにおいて、「同調する」姿勢が必要になるケースもあるかもしれませんが、主張するべきポイントはきっちりと主張する姿勢も重要です。
英語表現での類義語はあるか
「折り合いをつける」という言葉を英語で表現することはできるでしょうか。英語では似たような言い方がいくつか行われています。英語でも様々な言い回しがされています。
英語で「折り合いをつける」という意味を表現する言葉を3つ紹介します。英語で「お互いの妥協点を見つける」といったニュアンスを含めることは難しいですが、英語ならではの構成により近い意味を実現しています。
「reach an understanding」
「折り合いをつける」という言葉を英語で表現できる言葉の一つ目は、「reach an understanding」です。直訳すると「理解に到達する」という意味になります。
「折り合いをつける」という言葉が双方の主張や要望をそれぞれが折れて納得のいく落としどころを見つけるというニュアンスを含んでいるものの、「reach an understanding」では双方の歩み寄りが含まれない場合があります。
英語で日本語のニュアンスを再現することが難しいケースは多いですが、「折り合いをつける」という言葉も英語表現でしっくりいく言い方にするのは難しい面があります。
「work out difference between」
「折り合いをつける」という言葉を英語で表現できる言葉の二つ目は、「work out difference between」です。双方の主張の違いを無くしていく取り組みをすることを意味します。
双方の主張の違いを無くしていく取り組みは、「折り合いをつける」というニュアンスに非常に近いです。ただ、相手の主張を抑えていくようなニュアンスが含まれることから、あまり優しい印象を感じられません。
「折り合いをつける」が持つ独特な温かい印象を英語で表現することはとても難しい事例と言えます。
「negotiate」
「折り合いをつける」という言葉を英語で表現できる言葉の三つ目は、「negotiate」です。「negotiate」には「交渉する」という意味があります。
「折り合いをつける」の意味の一部を含んでいることは間違いありませんが、自分の主張を通すために相手の意向を変えていく行為が含まれる「negotiate」とは「折り合いをつける」と同様と言い難い面もあります。
このように、英語で「折り合いをつける」という表現をすることはかなり難しいです。ビジネスシーンなどで英語での表現をする際には注意しましょう。
「折り合いをつける」の使い方
「折り合いをつける」の類義語や英語表現について紹介してきました。続いては、「折り合いをつける」という言葉の使い方を例文を交えながら解説していきます。
「折り合いをつける」という言い方は、様々なシーンで使用することができる便利な言葉です。ビジネスシーンに限らず日常的にも使用することができます。
「折り合いをつける」という言葉の使い方を、4つの例文を紹介しながら解説していきます。ビジネスシーンなどの難しい交渉の場面などにおいても、比較的穏やかに折衝する様子を感じることができます。
例文①
「折り合いをつける」という言葉を使った例文の一つ目は、ビジネスシーンにおける社内での意見を交換する目的での会議を想定した場面です。企業活動においては会議をもってお互いの意見を言い合う場面は多く存在します。
お互い考え方が違う社員や経営者との間で意思決定をする際に、意見を交換しながら「折り合いをつける」作業というのは営業活動を展開するうえで非常に重要なことです。全員が同じ方向を向いて活動することが大事です。
「今回交換した意見では、それぞれ考え方や意向はかなり違うことが分かりましたが、これから会議を重ねてそれぞれの考え方に折り合いをつけていき、効率よく営業活動を行っていきましょう。」のように使います。
例文②
「折り合いをつける」という言葉を使った例文の二つ目は、家計を考える夫婦の会話におけるシーンを想定しています。限られた家計の予算をどのように考えていくのか、夫婦の意見を交換するシーンになります。
「私と夫では家計に対する考え方はかなり違うけれど、これから生計を同じにして生活していかないといけないので、お互いの主張や要望に折り合いをつけて仲良くやっていきたいと思っています。」
このように、「折り合いをつける」という言葉はビジネスシーン以外でも使用できます。「妥協」などと比べて、お互い納得する様子を感じることができます。
例文③
「折り合いをつける」という言葉を使った例文の三つ目は、ビジネスシーンにおいて、重要な得意先との商談を進めていくシーンを想定しています。
ビジネスシーンにおいて、特に重要な商談を成立させる会議に参加するのは緊張するものです。相手の意向と自社の意向で齟齬が見られるときの折衝をしていくことは、相手側と自分側の意向をいかに近づけていくかが重要になります。
「今回の商談においては、お互いの要望事項の内容にかなりの差が見受けられます。これから、お互いにどれくらいの歩み寄りができるのか、会議を重ねて折り合いをつけていきましょう。」のような使い方ができます。
例文④
「折り合いをつける」という言葉を使った例文の四つ目は、あるイベントの経営側の立場で、来場するお客様に対する考え方と実際の来訪者の態度とを比較している場面を想定しています。
お客様とそれを迎え入れる側とでは、お互いに考え方が全く異なるので、経営側としては想定していない顧客も来訪することがあり得ます。その時にどのような態度で接するのか考えないといけない場面があります。
「このような態度の悪い来訪者に対して、断固とした態度をとるべき場面ではありますが、あまり過敏な態度は見せず、そこそこで折り合いをつけることも大事でしょう。」といった使い方ができます。
「折り合いをつける」の使い方における注意点
「折り合いをつける」という言葉を使った例文を紹介してきました。最後に、「折り合いをつける」という言葉を使用する際の注意点について解説をします。
「折り合いをつける」という言葉は、他の類義語と比較して優しみのある、温かい雰囲気を含む言い方ではあり、その点は長所と言えますが、これが逆に短所となるケースも考えられます。
良い言い方をすれば「優しい雰囲気」、悪く言えば「あいまい」とも言えます。少し結論をぼかしたい時でも「折り合いをつける」という言葉は使用できるので、使用する場面には気を付けるべきです。
あいまいさが残る点は長所でもあり短所でもある
例えば、経験の浅い部下に対し協力会社との折衝に臨ませる場面において、「うまく折り合いをつけるように話をしてきて」などといえばどうなるでしょうか。
まだ自分で折衝の場面をこなしたことのない部下にとって、どのように折り合いをつければいいか分からず、話し合いは失敗に終わってしまう恐れがあります。具体的な指示をすべき場面では「折り合いをつける」は向きません。
「折り合いをつける」はお互い譲り合って合意するという意味
以上、「折り合いをつける」という言葉について紹介してきましたがいかがでしたでしょうか。「折り合いをつける」の意味や語源、特徴や具体的な使用例、注意点などを解説してきました。
「妥協」などよりも温かみがある言い方ではありますが、逆にあいまいさを残してしまう言葉であることを理解し、正しく誤解のないように使っていきましょう。