「悪しからず」の意味とは?
「悪しからず」という言葉の意味を知っているという方も多いでしょう。しかし、正しい意味を知っているかと問われるとわかならないという人も多い言葉です。「悪しからず」は、ビジネスシーンでのメールの文章などで使われることが多い言葉になります。
「悪しからず」という言葉を受けたときの印象を思い出してください。「悪しからず」という言葉は、きちんと意味を理解して使うことができれば、とても便利な言葉です。しかし、少し間違えてしまうと高飛車な印象を与えてしまうこともあるので注意が必要です。
そこでまずは、「悪しからず」の正しい言葉の意味を理解していきましょう。意味を理解していなければ、正しい使い方もできません。これを機会に意味の理解を深めましょう。
「悪しからず」には2つの意味がある
「悪しからず」は「あしからず」と読み、文末で使われることが多い言葉です。意味としては、「気を悪くしないで」「ご了承ください」などといった、申し訳ないという気持ちを示します。
「悪しからず」の「悪し」は、「不快な感情」などといった意味を持つ昔の言葉です。この「悪し」を打ち消す意味で「ず」をつけることにより、「不快にならないで」「悪く思わないで」といった意味になります。
「悪しからず」の意味としては、「悪く思わないで」と「理解してください」という2つの意味があるので覚えておきましょう。
「悪しからず」の由来
江戸時代には「悪しからず」を粋な言葉としてよく使われていました。「悪しからず」の語源は「悪しくあらず」です。
「悪しく」は「悪し」の連用形、「あら」はあるの未然形、「ず」は打消の助動詞の連用形といったように、3つの言葉がつながってできたひとつの単語になります。
基本「ず」の連用形の後には、動詞などの言葉が入りますが、「悪しからず」と文末に持ってくることによって、連用止めという形になります。
「悪しからず」の特徴
ここでは、「悪しからず」の特徴をご紹介していきます。日本独特の言い回しや、日本語は難しいと言われる由縁も、この「悪しからず」の特徴を知るだけで感じることができるでしょう。詳しく解説していくのでぜひ参考にしてください。
「悪しからず」は予定変更などを伝えるときに使う
「悪しからず」の意味としては「悪気はないのですが、でも仕方のないことなので理解してください」というものです。そのため、使うシーンとしてはやむを得ず予定を変更する、中止する、断るといった場合に使います。
次の例文を参考にしてください。「当日、雨天の場合は予告なく中止となる場合がございます。何卒悪しからずご了承いただけますよう、お願い申し上げます」
また、許可を得るときにも「悪しからず」を使用します。ただし、この場合も次の例文のように、やむを得ない事情がった場合にの許可を得るときに使われることが多いので、覚えておきましょう。例文としては次のようになるので確認しておいてください。
「せっかくのお誘いありがとうございます。申し訳ございませんが、あいにく当日は予定が決まっておりまして、悪しからずご容赦いただければと思います」「工場の都合により、入荷未定なっております。悪しからずご容赦ください」
「悪しからず」は目上の人を含め、お客や取引先などさまざまな人に向けて使うことができる言葉です。意図した変更ではない場合でも、丁寧に伝えることが大切です。
「悪しからず」の意味は使い方によって高圧的に
「悪しからず」は、意味を考えると「悪く思わないで」と申し訳なく思う気持ちや、謝罪の気持ちの意味があると感じる人も多いです。実は、使うシーンや相手によって、全く違う印象を持たせることができる言葉でもあります。
次の例文を見てみましょう。「ご招待いただきありがとうございます。あいにく、外せない用事がございますので、お伺いすることができかねます。どうぞ悪しからずご容赦ください」
この例文は、「せっかく招いていただいたのに申し訳ありません」というニュアンスが伝わってくるでしょう。「悪しからず」は相手の気持ちに添えない、悪気はないので悪く思わないでほしいといった場面で使うことができます。
しかしその反面、次のように少し高圧的な印象を与えてしまうことがあります。「急ピッチで進めておりますが、明日、間に合わない場合は、年明けの発送となります。悪しからずご理解ください」
「ご理解ください」という言葉が語尾についていても、明日に間に合わないのは自分のせいであるにもかかわらず、相手に対し「悪く思わないで」というのは、やはり高圧的なニュアンスで受け取りやすくなります。
「悪しからず」には、同じ「悪く思わないで」という意味であっても、お願いではなく強制的なものになってしまうこともあるので覚えておきましょう。
「悪しからず」は文末に使われることが多い
「悪しからず」は、文末で使われることが多い言葉です。「悪しからずご了承ください」「~ですので悪しからず」といったように、文末で相手の意向に沿えなかったことに対し、悪く思わないでという意味を込めて使います。
ただし、「悪しからず」を文末に使うためには注意するべき点もあるので、後述の「悪しからずの注意点」で確認をしてください。
「悪しからず」の英語と意味
それでは、「悪しからず」を英語で表現するとどのようになるのか見ていきましょう。「悪しからず」は日本独特の表現方法なので、直訳すると「悪しからず」となる単語はありません。
しかし、「悪しからず」の類語などもふくめて表現することで、「悪しからず」の意味を英語で伝えることができます。ビジネスや目上の人に対しての英語表現についてもお話しするので、ぜひ参考にしてください。
英語と意味①「Thank you for your understanding」
「悪しからず」の類語として「ご理解ください」があります。ただ、このまま「ご理解ください」では少々身勝手にも感じる可能性があります。
そのため、「ご理解いただきありがとうございます」といった意味を使って「悪しからず」を英語表現にすると次のようになります。
「Thank you for your understanding(ご理解いただきありがとうございます)」となり、「ご理解のほどよろしくお願いいたします」といった意味としても伝えることが可能です。
ビジネスシーンで利用する場合、「悪しからず」を英語で伝えるのであれば、「Thank you for your understanding」を用いると同じ意味として伝わりやすくなるでしょう。
次に例文を見ていきます。「As a plan is not correct,and it cancels it,Thank you for your understanding」意味は、「予定が合わずキャンセルさせていただきますので、悪しからずご理解のほど、よろしくお願いいたします」となります。
理解をしてくれてありがとうという意味では、「We appreciate your understanding」も同じような意味になるので上手に活用していきましょう。
英語と意味②「No hard feeling」
「No hard feelings」は「悪しからず」と同じように「悪く思わないで」という意味になります。次の例文のような使い方をします。「Even if my team wins, No hard feelings,please」意味は、「私のチームが勝っても悪く思わないでね」です。
ビジネスや目上の人に対しての使い方としては、「No hard feelings」はフランクな表現になるので向きません。例文のように、友人を相手に勝負に勝った場合など「悪く思わないでね」と笑いながら話すような場面で使うといいでしょう。
このほかにも、「Do not feel bad」を使って「Even if my team wins, do not feel bad」と表現することも可能です。この表現も、目上の人には向かないので覚えておきましょう。
英語と意味③「not take it amiss」
「not take it amiss」は直訳すると「勘違いしないでください」などといった意味で解釈できますが、次のような英語で表現することにより、「悪しからず」と同じ「悪く思わないで」といった意味での解釈が可能です。
「I say this out ob kindness,so you will not take it amiss」となり「私は親切心でお伝えしたので、悪しからず」という意味になります。
英語と意味④「I'm sorry,but I can't come to the library」
「悪しからず」には、「申し訳ありません」や「ごめんね」といった意味もあります。そのため、英語では素直に「I'm sorry」と表現することも可能です。
例文は、「I'm sorry,but I can't come to the library」意味としては「図書館に伺えませんが悪しからず」となり、解釈の仕方によって「I'm sorry」を「ごめんなさい」よりも「悪しからず」と理解することができます。
英語と意味⑤「I hope you understand」
「I hope you understand」を直訳すると「あなたがわかってくれることを願っています」という意味になります。「悪しからず」には、「悪く思わず理解をしてほしい」という意味合いもあります。
そのため、理解を促したいときに「I hope you understand」を使うことで、「悪しからず」の意味合いを伝えることができるでしょう。次に例文を見ていきます。
「Because I reached the sales figures, I close it.I hope you understand」意味としては、「販売数量に達したため、締め切らせていただきます。悪しからずご了承ください」になります。また、特に目上の人に対しての英語で表現する場合は、「hope」を使う方が望ましいので覚えておきましょう。
「悪しからず」の使い方
では、どうすれは相手に高圧的に感じさせることなく「悪しからず」の意味を正確に伝えることができるのでしょうか。特に、相手に不快感を与えないようにすることが大切な目上の人に向けてや、ビジネスシーンでの使い方に困っている人も多いです。
ここからは、ビジネスシーンでの「悪しからず」の使い方を中心にお話しましょう。類語表現の言い換え方など例文を使って解説していきます。
例文①
商売などのビジネスでよくあるシーンとして、限定販売が売り切れた場合などの注意書きです。まずは例文を見てみましょう。
「1店舗50個までの限定で販売しております。数に限りがございますので、列にお並びになっていても完売してしまう可能性もございます。その場合は、悪しからずご容赦ください」
この場合、列に並んだとしても販売数に達した時点で終了となるので理解してほしいという意味で「悪しからず」が使われています。
「悪しからず」が使われることによって、「並んでいただいたのに申し訳ないですが許してください」とったお店側の気持ちがより伝わりやすくなります。
また、「悪しからず」の類語である「申し訳ありません」を使って次のような使い方をすることも可能です。
「数に限りがございますので、列にお並びになっていても完売してしまう可能性もございます。その場合は、申し訳ございませんがご容赦ください」
例文②
ビジネスでは、依頼されたことを断るシーンもあります。その場合、相手との関係に角が立たないように断ることが大切になります。「悪しからず」をクッションのような意味合いで使うことで、次の例文のように断ることも可能です。
「この度は、ご依頼いただきありがとうございました。スケジュールの都合がつかないため、せっかくのご依頼ですが、他にふさわしい方にお願いしていただけないでしょうか。悪しからず、ご容赦ください」
「他にふさわしい方にお願いしていただけないでしょうか。悪しからず」といったように、「悪しからず」で終わらせることも可能ですが、取引先の方へ断る使い方としては、やや上から目線にも感じられかねません。
そのため、この場合の例文では「悪しからず」の後に「ご容赦ください」とつけることで、断ることを心苦しく感じていると伝えることができます。またこの例文も「申し訳ございませんが」に言い換えることも可能です。
例文③
ビジネスでは、案内状などの文書でも「悪しからず」を使うことができます。次の例文を見てみましょう。
「研修会について再度確認を刺させていたきたくご案内いたします。研修会への参加の可否につきまして、必ず期日までにご連絡いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。なお、本状との行き違いの際は、悪しからずご容赦願います」
連絡をしたのにもかかわらず、期日までに返答を求められると、気分を悪くする方や、返答したのにといったように誤解されてしまう可能性もあるので、特に目上の人や取引先に出す場合は注意が必要です。
文書を出すタイミングなどによって、行き違いもよくあることです。そのため、すでに返答している方がいた場合のために、例文のように「悪しからず」を使うことによって、謝罪の意味を持たせることができます。
「悪しからず」の使うシーンによっては、「悪気はないので、ご理解ください」といった意味を伝える使い方が可能です。
例文④
就職や、公募などの場面でも「悪しからず」を使うことが可能です。まずは例文を見てみましょう。「先日お知らせしておりました限定品に対し、予想よりも応募者多数のため、募集を打ち切らせていただきます。悪しからずご了承くださいませ」
「この度は応募いただきありがとうございました。今回の欠員募集につきまして、ご意向に添いかねる結果となりましたこと、お知らせいたします。悪しからず、ご理解いただけますようよろしくお願いいたします」
例文のような使い方をすることで、相手の意向に添えない結果になったことは不本意に思っていることを、伝えることができるでしょう。謝罪の意味を込めて「悪しからず」を使う場合は、「悪しからず」の後に「ご容赦ください」などといった言葉を加えることが大切です。
「悪しからず」の注意点
ここまで、「悪しからず」の意味や英語表現などをご紹介してきました。「悪しからず」は使い方によっては誤解を招きやすい言葉なので、特に目上の人やビジネスでの使い方には注意が必要です。
そこで、「悪しからず」の使い方として注意点をまとめてお話ししますので、ぜひ参考にしてください。
「悪しからず」は高圧的な意味と誤解されやすい
ここまで、何度かふれてきましたが、「悪しからず」という言葉は、相手に対し「悪く思わないでください」という気遣いの意味がある言葉ではあるものの、ビジネスシーンで目上の人に対して使う場合は、注意が必要になります。
特に、「悪しからず」という言葉は、意味の受け取り方によっては不躾けに聞こえたり、高圧的に聞こえたりするケースも少なくありません。
また、相手を気遣う意味の言葉ではありつつも、「仕方のないことなので悪く思わないでくださいね」といったように悪い意味にとらえることもできます。
言葉としては、目上の人に使っても全く問題ありませんが、言い方を間違えたり、使い方を間違えると悪い印象を与えてしまいかねません。「申し訳ございません」など謝罪の言葉を述べた後に「悪しからず」を用いるなど、使い方に注意が必要です。
「悪しからず」を文末にすると失礼になることもある
先に、「悪しからずの特徴」で文末に使われることが多いというお話をしました。しかし、文末に使うことによって失礼になってしまうことがあるため、特に目上の人やビジネスで使う場合は注意が必要です。
たとえば、「当日は、都合によりキャンセルになることも考えられますので悪しからず」という文ではどういった印象を受けるでしょうか。
こちらの都合でキャンセルになるのにも関わらず、配慮もなく了承してくださいといった意味に感じる方も多いでしょう。
しかし、次の例文ではどうでしょうか。「当日は、都合によりキャンセルになることも考えられますので、悪しからずご容赦ください」「当日は、都合によりキャンセルになることも考えられます。悪しからずご了承のほどお願い申し上げます」
このような文章であれば、キャンセルになってしまった場合も謝罪の気持ちが伝わるのではないでしょうか。
「悪しからず」は意味は分かりやすいですが、使い方に注意をしなくては勝手な言い分として取られてしまう可能性のある言葉なので注意しましょう。
ビジネスでは「ご容赦ください」などと合わせて使う
ビジネスでは、会社やお店の都合などによって「仕方ないことなので了承してほしい」というシーンは数多くあります。そのため「悪しからず」のを使って文書を作成する機会も多いでしょう。
しかし、ただ「悪しからず」では先にお話ししたように少々勝手にも聞こえてしまいます。そのため、「悪しからず」の後に必ず理解して許してほしいという意味を込めて、「ご容赦ください」や「ご了承のほどお願いします」などといった言葉をつなげましょう。
理解してくださいといった言葉とつなげることで、「悪しからず」の意味をより丁寧に伝えることが可能です。
「悪しからず」は本当に悪いことをした場合は使わない
「悪しからず」は、相手に対し「悪く思わないで」という意味で使いますが、「悪いとは思うが、自分の力ではどうしようもないんだ」という意味合いが強いものです。
そのため、本当に悪いことをしてしまって謝罪をするようなシーンでは使いません。そのようなシーンで使ってしまうと、相手には「本当に悪いと思ってないんだな」といった意味に受け取られても仕方ないので注意してください。
「悪しからず」は「悪く思わないで」という意味
ここまで「悪しからず」の意味や使い方、ビジネスで使う場合や目上の人に対して使う場合の注意点など詳しく解説してきました。「悪しからず」には「気を悪くしないで」「理解してほしい」という意味があります。
使い方としては、自分の都合によって相手の意見に添えない場合など、理解を促しながら謝罪するときに使います。
ただ、使い方によっては上から目線でものを言っているようにも取られてしまう可能性があるので、注意が必要です。目上の方への使い方や英語での表現などをただしくマスターして、失礼のないように「悪しからず」を使いこなしましょう。