あやかるの意味とは?
「あやかる」という言葉は「〇〇にあやかって」とか「〇〇にあやかる」というような使い方をし、日常でもよく聞く言葉です。しかし、改めて「あやかる」の意味を問われると即答できる人は数少ないのではないでしょうか。
「あやかる」とは好ましい状態にある人の影響が及んで、自分も同じような状態になることと辞書では示しています。幸せな状態にある人の影響を受けて自分もそうなりたいと願う時に使う言葉です。
また、人だけではなく、物にも使うときがあります。力のあるもの、人気のあるものから良い影響を受けたいと願って使う場合もあります。
「あやかる」にはもう一つの意味がある
「あやかる」の言葉には別な一面もあります。「幸運な人、力のある人の力を借りて物事を成功に導くという意味もあります。自分にはそんな力がないのに、人の力を借りて成功するということです。
「人を利用する」「人のふんどしで相撲を取る」など人の力を借りて目的を達成しようとするずるいやり方という意味も「あやかる」にはあります。
「あやかる」という言葉にはこのように少しネガティブな意味もあり、幸せな状態にある人や憧れている人のようになりたいと願うポジティブな意味もあるのです。「あやかる」の言葉を使う時にふっと二つの意味があるのだということを思い出して下されば幸いです。
あやかるの由来
「あやかる」の由来には諸説あります。ひとつには「似せる・のっとる」という意味を持つ「アエ(肖)」に「カカル」がついた「アエカカル」が「アヤカル」となったものという説、ひとつには「アエ(肖)」に「カル(仮)がつき、「アヤカル」となったという説です。
また、交わることで変化するという意味合いから「アヘ(和)」に「カル(仮)」がつき「アヤカル」となったという説もあり、綾糸で衣を作るということで「アヤ(綾)」に「カル(仮」がついて「アヤカル」となったという説など「あやかる」の由来にはいろいろな説があります。
あやかるの漢字表現
「あやかる」の漢字表記があるのをご存知でしょうか。「あやかる」とは漢字で書くと「肖る」と書きます。「肖」には似る、似せるという意味があり、元のものに似せる。似るということになります。
「肖」という漢字には肉体という意味を表す「月」と「小」の組み合わせによって表現された漢字です。親と子は体が小さいだけで顔形から話し方、癖に至るまでよく似ているものです。
「肖」にはそうした似ているが体が小さいということを表現しています。つまり、「肖」という漢字には他者と体が似ていて小さいという意味があるのです。
肖のつく言葉と意味
「肖」のつく言葉には肖者・肖似・肖像・不肖など多くの言葉があります。肖者(あえもの)とは似たいと願う対象、肖似(しょうじ)とはよく似ていること、酷似という意味です。
肖像とは人の姿や顔を写した絵や写真、彫刻などのことです。不肖とは「不肖の息子」という表現でもわかるように不肖とは似ていないことを表現します。「不肖の息子」となると、親に似ないで愚かな息子という意味となります。
「あやかる」がつく言葉
あやかる」がつく言葉としては、「あやかり商品」「あやかり商法」「あやかり者」などがあります。「あやかり商品」とは有名人や人気キャラクター、名所や話題になっている出来事に関連した商品のことです。その人や場所にあやかることで売り上げを伸ばそうという意味があります。
「あやかり商法」とはあやかり商品と同じく、話題になった人物やイベント、事件が起こったことに乗じて利益を得ようとする商法のことで、言い換えれば、便乗商法のことです。
「あやかり者」とはみんながあやかりたいと思うほどの幸せな者のこと、または同じ果報にめぐりあった幸せ者という意味で使われます。
「あやかる」と「あずかる」の違い
「あやかる」と同じような言葉に「あずかる」がありますが、「あずかる」を漢字で表すと「与る」となります。「あやかる」では好ましい状態の人と同じようになるように願うという意味がありましたが、「あずかる」では関与すること、受けることとなります。
「恩恵にあずかる」「お褒めにあずかる」など、目上の人の好意を受ける時に使う表現です。「あやかる」はその人の状態に近づきたいと願うことであり、「あずかる」とは相手から好意や善意を受けることを意味します。
言い換えれば「あやかる」は尊敬したり憧れている人やものに対して自分もそうなりたいと願うことを言い、「あずかる」とは関与する、物事に関わること、あるいは目上の人から恩恵を受ける、分け前をもらうという意味となります。
あやかるの使い方
ここで、「あやかる」の正しい使い方を見ていきましょう。「あやかる」は日頃よく聞く言葉なのですが、使い方を間違えやすい言葉でもあります。例えば「ご利益にあやかる」は間違いであって、正しい使い方はは「ご利益にあずかる」となります。
そうした意味では「おこぼれにあやかる」は間違った表現で、正しくは「おこぼれにあずかる」が正しい表現となります。日本語の難しいところですが、ここで例文を用いて「あやかる」の使い方をマスターしましょう。
例文①
ここでは尊敬する人や憧れの人に対して使うときの「あやかる」の使い方をご紹介します。「この子の名前は歴史上の人物にあやかってつけた」「成績の良い彼にあやかって同じ手帳を買ってみた」
「成績トップの彼が羨ましい。我々もあやかりたいものだ」「夫婦仲の良い両親が羨ましい。僕たちもあやかりたいものだ」などの使い方があります。
例文②
「あやかる」は人に対するものばかりではありません。物事に対して使う場合もあります。例えば「〇〇ブームにあやかる」「幸せにあやかる」などです。
ブームにあやかるとは今人気の物や流行っている事柄に便乗しようとするものです。「〇〇ブームにあやかってうちもこの商品を売ろう」などと使います。例えばラグビーブームに乗って選手のTシャツを売り出すような時に使います。
例文③
「あやかる」の言葉は「〇〇の運にあやかる」という使い方もあります。「彼のくじ運にあやかりたい」「九死に一生を得た彼女の強運にあやかりたい」などです。人の幸運を羨ましく思い、自分もそうなりたいと願う心を表しています。
例文④
今度は間違った「あやかる」の使い方を見ていきましょう。「恩恵にあやかる」「ご相伴にあやかる」「ご利益にあやかる」などです。これらは全て「あずかる」が正しいのです。
「ご相伴にあずかる」は食事やお酒の誘いを受けて同席させてもらうという意味ですが、「ご相伴にあやかる」となると自ら同席を希望することになってしまいます。
「あやかる」と「あずかる」は似たような言葉ですが、使い方を間違えないように気をつけたいものです。
あやかるの類語
「あやかる」の類語としては次にあげるものがあります。「便乗する」「幸運のおすそ分けにあずかる」「ご利益をもらう」「他人の成功に乗っかる」「勝ち馬に乗る」などです。
「便乗する」は「便乗値上げ」「便乗商法」のようにたくみに機会を捉えて利用することです。「勝ち馬に乗る」は勝負事などにおいて、勝利した側、あるいは勝利しそうな側について勝利に便乗するという意味を持っています。
また、「浴する」「まねる」「同化する」「感化される」なども「あやかる」の類語です。「尻馬に乗る」「虎の威を借る」なども「あやかる」の類語の仲間です。
「あやかる」の言い換え
「ちなむ」という言葉があります。これは「あやかる」の類語ではりませんが、「あやかる」の言葉の言い換えに使えます。「あの有名人にあやかってこの子の名前をつけた」というところを「あの有名人にちなんでこの子の名前をつけた」と言い換えることができます。
「似せる」という言葉も「あやかる」の類語ではありませんが、「似るようにする」という意味があり、「あやかる」と同じような意味を持ちます。
「虎の威を借る狐」も「あやかる」と同じ意味を持つ言葉として有名な言葉です。力のあるものにあやかり目的を達成するという意味で、同じ「あやかる」でもネガティブな表現です。
あやかるは自分も幸福を得たいという意味
「あやかる」とは幸せな人の影響を受け、自分も良い状態になりたいと願う気持ちを表しています。また、「あやかる」は人を祝福する時や憧れの気持ちを伝えたい時にも便利に使えます。ビジネスシーンでも使えるように「あやかる」の使い方を熟知しましょう。