ダマスカス鋼は高級包丁などによく使われている
ダマスカス鋼と言えばゲームで馴染みのある幻の金属ですが、現実世界においてもダマスカス鋼は実は存在しています。ダマスカス鋼は錆びないという特徴をもつ金属で包丁などの製造に使用されている鋼材です。
別名ウーツ鋼と呼ばれる高炭素鋼材で、インドにゆかりのある鉱物です。ウーツとはサンスクリット語で硬いという意味があります。しかし、現在においてはこのダマスカス鋼の製法は失われています。
ですので、現在作られている包丁やナイフなどのダマスカス鋼製の刃物は、ダマスカス鋼の製法に似せて作られたダマスカス鋼風の製品です。
ダマスカス鋼の縞模様ができる理由
失われた製法で作られたダマスカス鋼で鍛えられた剣は錆びにくく、大変切れ味が良く、中世ヨーロッパの騎士達にとってあこがれの剣だったそうです。
独特の模様は製造過程で発生するものだと現在の研究では明らかになっています。現在のダマスカス鋼はこの模様を再現するために、同じ鋼材を重ねて、何度も繰り返し鍛造する事によって模様を作り出しています。
また、現在の使われているダマスカス鋼の鍛造では、刃の部分には別の鍛造で刃を作っているため、旧来のダマスカス鋼、ウーツ鋼で作られた刃より切れ味は優れていません。
錆びにくいことも特徴
ダマスカス鋼は錆びにくい特徴があります。失われた製法で作られたダマスカス鋼は錆びない特徴を持つ金属でした。現代で作られているダマスカス鋼も金属の中にステンレスなどの錆びに強い金属を混ぜてあるため、錆びにくい特徴を持つ金属になっています。
ヨーロッパでは現在でもダマスカス鋼で作られた鉄柱などが現存しています。1000年以上経っても錆びずに存在しているダマスカス鋼、夢のような金属なのに現在に製法が残っていないのは残念でなりません。
ダマスカス鋼は元はウーツ鋼と呼ばれていた
ダマスカス鋼とウーツ鋼はどちらもゲームで馴染みにあるファンタジー世界によく登場する金属です。どちらも現実に存在する金属で、この二つの金属は同一の金属です。ウーツ鋼は古代インドで作られていた金属で、後に広まってダマスカス鋼と呼ばれるようになった金属です。
ウーツ鋼は古代インドでも、その特徴的な模様に加えて錆びない特徴を持つ金属で重宝され、刃物や防具などの製造に使用されていたのでしょう。ちなみに、ウーツ鋼のウーツにはサンスクリット語で硬いという意味が込められています。
古代インドにおけるウーツ鋼
古代インドにおけるウーツ鋼は、錆びない特徴から刃物などの刀剣類以外にも建築物にも使用されていたようです。インドの世界遺産クトゥブ・ミナール内に錆びない鉄柱と呼ばれる鉄柱があり、これが紀元前400年頃に建築されたものと言われています。
1600年間錆びない鉄柱とはとても神秘的でロマンに溢れています。この鉄柱は現在も錆びていない事からウーツ鋼で建築されたものではないかと言われています。
ウーツ鋼は硬く錆びない特徴を持っています。刀剣にすれば、硬く切れ味の鋭い刃物になります。この特徴から古代インドでも、建築物に使われていたとしてもおかしくないでしょう。
ダマスカス鋼の製法
ウーツ鋼は古代インドにおいては、るつぼを使用した製法を用いられていました。ウーツ鋼の作り方は、るつぼに鉄鋼石に木炭や木の葉を入れて炉で加熱することでウーツ鋼の塊となります。このウーツ鋼の塊を刃物や建築物の材料として加工していたようです。
また、ウーツ鋼の特徴的なダマスク模様は、鉄鉱石の中にバナジウムと呼ばれる不純物が必要です。この、バナジウムを含む鉄鉱石が枯渇したことにより、ウーツ鋼の製法は失われました。
ちなみに、なぜウーツ鋼がダマスカス鋼と呼ばれるようになったかというと、ウーツ鋼をシリアのダマスカスで刃物などに加工したのが始まりです。ですので、ウーツ鋼とダマスカス鋼は同一の鉱物になります。
数種の金属の板を重ねて作る
古代インドで作られていたウーツ鋼、別名ダマスカス鋼はバナジウムを含んだ鉄鉱石が枯渇して失われました。現在のダマスカス鋼は古代インドのウーツ鋼を指しているのではなく、ウーツ鋼を真似て、金属を重ねて製鉄する方法で作られる積層鋼、この金属の別名として使われています。
日本刀と製法が似ている
現在のダマスカス鋼は、異なる金属を重ねて鍛造します。具体的には数種類の金属を板状に重ねて作ります。現代のダマスカス鋼は非常多くの種類があります。重ねた金属の枚数や鍛造するときの叩き具合によって無数に変化するためで、個人によって製法が変わるのも特徴です。
ダマスカス鋼と日本刀は意外な共通点があります。日本刀を見たことはある方はご存じでしょうが、日本刀は刃に特徴的な模様があります。この模様はダマスカス鋼とよく似た模様を出しています。
ダマスカス鋼の模様は美しくて人気
ダマスカス鋼の模様は現在では、数多くの種類が存在しており、どの模様も美しく人気を呼んでいます。現在では積層する金属の種類、ダマスカス鋼を加工する技術が向上しているため、積層のバリエーションが増えています。
現在ではダマスカス鋼を取り扱うのは鍛冶屋だけではなく、アクセサリー屋でも取り扱う事も増え、業界内では広く一般的に知られる鋼材となっています。
また、ダマスカス鋼は製造が複雑なため少量でも高額で、作りが複雑であったり、材料に希少金属などが使われているとさらに高額になります。
ツイスト模様
ツイスト模様の特徴は細く波打つような模様です。積層数の多いツイストは落ち着いた雰囲気を醸し出しています。積層数を減らすと細く違った雰囲気出してくれます。模様を良く見せるためナイフやフォーク、スプーンなどの食器類やジッポライターに多く取り入れられています。
ダマスカス鋼と聞くと、このツイスト模様がイメージに浮かぶのではないでしょうか。また、この模様は作る人によって多くのバリエーションがあります。
ローズ模様
別名目玉模様とも言います。この模様は鍛造の過程で、金属板を丸型のハンマーでくぼみを付けることで出来る模様です。独特な球状の形状が生まれるため、魅力的な雰囲気でアクセサリー加工などでよく用いられています。
この模様のダマスカス鋼は、アクセサリーの露店やアクセサリーを取り扱っている加工店などで、よく見かけるのではないでしょうか。こちらの模様も、作成者によって様々なローズ模様のダマスカス鋼があります。
ラダー模様
別名トーテム模様と言います。大小の球状が重なった模様で、トーテムポールのような模様に見えるためそう言われています。複雑な模様で大小の模様が栄えて見えるため、様々な刃物やアクセサリーに使われています。
見栄えがとても良いため、よく見かける模様ではないでしょうか。こちらの模様もダマスカス鋼の作成者によって、様々なトーテム模様のダマスカス鋼があります。
波目模様
ツイスト模様とよく似ていますが、波立っているに見えるため波目模様、別名ウェーブ模様ともいわれています。ツイスト模様と似ており、オーソドックスな模様でダマスカス鋼の作り方によって同じ模様が出来ないため、オリジナルティが出る模様でダマスカス鋼の作成者に人気です。
積層する金属や叩き方、削り方で違う波目模様が作られるため、ツイスト模様と同じくダマスカス鋼の作成者に人気の模様です。作成者によって波目模様の作られ方が変わるため、職人としてのブランドを出しやすいのかもしれません。
ワイヤーダマスカス
ワイヤーダマスカス模様は、少し特殊な作り方をする模様です。ワイヤーダマスカスは製造の過程で、加熱した線状の鋼材ひねり上げて独特な模様を作り上げます。加工が複雑なため、この模様のダマスカス鋼は他のダマスカス鋼より高額な場合が多いでしょう。
職人気質ので独自ブランドを保ちたいと考えている作成者は、ワイヤーダマスカスの製造にチャレンジされる方もいるでしょう。ワイヤーダマスカスは作成者の技量を示す良い模様なのかもしれません。
ダマスカス鋼は錆びにくく美しい刃物
ダマスカス鋼は古代の時代においてはウーツ鋼ともよばれ、硬く独特な模様を持ち、錆びないという特徴を持つ素晴らしい金属でした。材料になる鉄鉱石が枯渇したことにより製法が失われ、現在に残る事がなかった幻の金属でもあります。
古代のダマスカス鋼は現在でも謎が多く研究が盛んにおこなわれています。もしかすれば硬いうえに錆びない夢の金属だったかもしれません。現在の技術で作られているダマスカス鋼も錆びにくく硬い金属です。
その魅力的な模様や切れ味は金額に見合った性能であることは間違いないです。また、魅力的な模様が多いためアクセサリーとしても神秘的な雰囲気を醸し出しています。刃物を購入しにくい方はダマスカス鋼で作られたアクセサリーを手に取ってみてはいかがでしょうか。きっと気に入るでしょう。