感謝してもしきれないの意味とは?
「感謝してもしきれない」という言葉をよく耳にします。恩師へ、両親へ、友人へ、恩人へ、兄弟へといろいろな存在がありますが、この「感謝してもしきれない」という言葉はどんな意味をもつ表現なのでしょうか?
「感謝してもしきれない」とは「いくら感謝しても足りないくらい、感謝している」という意味で、受けた感謝を表現する際に使われる言葉です。
この言葉は自分の身の回りの日常生活でよく見聞きします。上記のような、自分と直接関わりがある、もしくは過去関わりがあった人たち、もしくはテレビやラジオで、著名人が語っていたりと、シーンに枚挙のいとまがありません。
メリットがたくさんある「感謝してもしきれない」という表現ですが、今回はそんな「感謝してもしきれない」の表現について徹底解剖。「感謝してもしきれない」の由来から、特徴、類語、使い方、注意点について順に紹介していき、「感謝してもしきれない」を説明していきます。
「感謝してもしきれない」という言葉のメリットを理解いただき、数多くのシーンで活用いただければ幸いです。
感謝してもしきれないの由来
「感謝してもしきれない」の意味がわかったところで、「感謝してもしきれない」の由来はどこにあるのでしょうか?「感謝してもしきれない」は1つの品詞ではなく文であり、この表現だけで一つの意味として完結しています。
では、「感謝してもしきれない」を「感謝」「しても」「しきれ」「ない」の4つの文節に分けてそれぞれ説明していきます。
まずは「感謝」の言葉ですが、この言葉は説明不要で「ありがたいと思うこと」という意味です。つぎは、「しても」ですが、これは「する」と「〜ても」に分けることができます。「ても」は連語で「〜でも」「たとえ〜でも」という語と語を結びつける用法です。
「しきれ」は「する」と「切る」とに分けることができます。「切る」は複合動詞で「する」を受けて完了を意味する言葉です。「振り切る」「噛み切る」「思い切る」と同じ使い方になります。そして「ない」は「無い」と書いて、「しきる」を受けてそれを否定する形容詞です。
つまり上記文節は「感謝」「する」「ても」「する」「切る」「ない」となり、語尾変化させ、「感謝してもしきれない」となっているわけです。「感謝をしても、感謝し切ることができない」という意味になります。
語の由来が理解できたところで次に、「感謝してもしきれない」は日本でどのくらいの前から使われていたのか?その使用時期の由来を辿ってみます。
上記の点を辿る資料として「感謝してもしきれない」は過去の文献でも確認することができます。その1つ目は小説家の谷崎潤一郎が雑誌「改造」に1928年(大正3年)から発表した「卍」という作品です。
下記の一説を紹介します。「わたし先生にはもう毎度々々おやさしいにしていただきますもんですから、つい御親切に甘える気いになって、御厄介にばっかりなりまして、どないに感謝してもしきれへんくらいや思てます」
このように「感謝してもしきれない」という表現は今から90年以上前には使われていたことが確認することができます。
感謝してもしきれないの特徴
「感謝してもしきれない」の意味、由来を理解してきましたが、「感謝してもしきれない」という言葉には使用するにあたってどんな特徴を持った言葉なのでしょうか?
「感謝してもしきれない」とは、日常に身近にある言葉であります。たしかにメリットばかりの言葉ですが、いざ発信となるとそうそう使うシーンに巡り合うものではありません。
以上から「感謝してもしきれない」が日常にありふれていながら、使うことはあまりないというポイントからどういう言葉であるのかを紹介していきます。
感謝の最上級の言葉
「感謝してもしきれない」の特徴の1つは、感謝の最上級の言葉であるということです。「感謝してもしきれない」という言葉が言える出来事は、日々の生活を送る上で掛け替えのないものであるが故に、めったにあるものではありません。
それは「感謝してもしきれない」程の出来事があって始めてこの言葉が使うことができるからです。具体的なシーンは「使い方」に譲りますが、数年間お世話になった先生、数十年間育てた親、危篤状態を助けてくれた命の恩人などいろいろな出来事が前提として存在しています。
受け手が存命でなくても使える言葉
「感謝してもしきれない」という言葉はめったにある出来事でも無い限り、多用することはあまりない言葉です。発信者からも特別な意味を持つ言葉であると同時に、過去を懐古して使うケースとしても特徴的な言葉です。
詳しい例文は使い方に譲りますが、「感謝してもしきれない」シーンは対象が存命していない場合でも使える言葉です。過去を省みて「感謝してもしきれない」ことを感じその方を忍ぶ言葉としても使うことができます。
感謝してもしきれないの類語
では、この特別な意味を持つ表現「感謝してもしきれない」の類語にはどんな表現があるのでしょうか?感謝するシーンは私たち日常生活にはたくさんあります。
その行為に対して、感謝の言葉を覚えておくことは、気持ちを言葉にできる発信者ばかりではなく受け手である人にとっても嬉しい気持ちになり、そのメリットから覚えておいて損はありません。
類語を抑えておくことで「感謝してもしきれない」言葉の意味付けがより明確になるメリットがあります。以下で「感謝してもしきれない」の類語にはどんな表現があるのかを紹介していきます。
感謝の極みはこの上ない感謝の意味
「感謝してもしきれない」の類語として「感謝の極み」という言葉があります。この類語「感謝の極み」という言葉もこの上ない感謝の気持ちを表現している言葉です。
類語「感謝の極み」も完結している句としての性質を持っており、「感謝」「の」「極み」と分けることができます。
「感謝」は先述した通り。「の」は助詞で「極み」をつないでいます。「極み」は「至り」と同じでこれ以上ない状態です。
つまり「感謝の極み」は「この上な最高の感謝」という意味になり、「感謝してもしきれない」と同等の強い感謝を表現しています。
感謝に堪えないは強い感謝の意味
「感謝してもしきれない」の類語として「感謝に堪えない」という言葉があります。この類語「感謝に堪えない」という言葉もこの上ない感謝の気持ちを表現している言葉です。
「感謝に堪えない」も「感謝してもしきれない」同様、言葉で表現する際、完結している文としての性質を持っており、「感謝」「に」「堪え」「ない」と分けることができます。
「感謝」は先述した通りで、「に」は助詞で感謝を受けて「堪える」をつないでいます。「堪える」は「我慢する」という動詞、「ない」は打ち消しの形容詞になっています。
つまり「感謝に堪えない」は「感謝をすることを我慢できない」という意味になり、「感謝してもしきれない」と同じように強い感謝を表現しています。
感謝してもしきれないの使い方
では現在、「感謝してもしきれない」は実生活でどのように使うことができるのでしょうか?この言葉は特別な出来事を受けてこそ意味があり、めったに使うことのない言葉ではあります。
しかし、この言葉を発する時は、第三者からでもその発信者と受け手の背景の人間関係の歴史をイメージすることができます。この言葉には効果という点で、そのくらいメリットがあるのです。
そんなシーンを4つの例文に分けてそれぞれご紹介していきます。今後の「感謝してもしきれない」の言葉を使う際の参考にしてみてください。
例文①
「感謝してもしきれない」の使い方の1つ目の例文として、卒業式などの別れがあります。生徒代表のお別れの言葉などで以下の一文があげられます。
「夜遅くまで部活動の練習に付き添ってくれた〇〇先生、わかるまで課題を指導していただいた〇〇先生はじめ、さまざまな先生方の温かいご指導に感謝してもしきれない思いでいっぱいです」
「感謝してもしきなれい」はこうした人生一度きりの卒業式などの別れ、旅立ちの時に今までの感謝の思いを述べる際に言葉の効果を上げるメリットがあります。
例文②
「感謝してもしきれない」の使い方の2つ目の例文として、結婚式があります。新郎新婦の挨拶の言葉などで以下の一文があげられます。
「私をいままで育ててくれたお父さん、時にはやさしくいたわってくれたお母さん、本当にありがとう。いままでのことを感謝してもしきれないよ」このように、卒業式同様、晴れの時に今までの感謝の思いを述べる際に使うと、第三者にもしっかりと伝わるメリットがあります。
例文③
「感謝してもしきれない」の使い方の3つ目の例文として、告別式があります。会社などの上司が逝去された場合などで、別れの挨拶でスピーチをする際以下の一文があげられます。
「これまで◯◯部長からは、この上ない愛情をもって接していただきました。時には厳しく、ときには優しく、その毎日がかけがえなく、今では感謝してもしきれない思いに溢れております」
「特徴」でも述べましたが、「感謝してもしきれない」は故人に対して、今までの感謝の思いを伝える際でも使うことができるメリットがあります。
例文②は身内ということで、敬語を使わない表現を表現しましたが、今回のシーンは告別式といってもビジネスシーンです。前後関係の敬語表現をしっかり使って、第三者が聞いても礼に失しないような言い方に気をつける必要があります。
例文④
「感謝してもしきれない」の使い方の4つ目の例文として、ビジネスシーンや日常での手紙の表現で使われることがあげられます。
「この度は大変ありがとうございました。おかげさまで、順調に事が運んでおります。それもあの時の〇〇(してくれたこと)のおかげだと思っております。感謝してもしきれない思いです」
「感謝してもしきれない」は話し言葉だけではなく、「書き言葉」としても通用する言葉です。手紙は電子メールよりもより誠実さと丁寧さが伝わるメリットがあります。ただ、この際も文中の敬語表現にご留意ください。
感謝してもしきれないを使う際の注意点
「感謝してもしきれない」の意味、由来、特徴、類語、使い方を順を追って見てきましたが、「感謝してもしきれない」を使う際の注意点はどこにありのでしょうか?
「感謝してもしきれない」は頻繁に使うことがない「特別な意味」をもった言葉であるということを「特徴」で先述しました。そして、この言葉には敬意表現が含まれています。以上の点から、「感謝してもしきれない」を使う上で注意すべき2つのポイントをご紹介していきます。
多用は控える
「感謝してもしきれない」は「特徴」でご紹介したように、特別な出来事に対して最上の感謝の言葉を相手に発することです。日常でありふれてながら、あまり口に出さないように、頻繁に「感謝してもしきれない」という言葉を発することは控えた方が無難です。
この上ない感謝は発信者側の気持ちなので、一概には言えませんが、本当にその気持ちなった場合に使うべきで、社交辞令などの慣用的な使用はあまりそぐわない表現です。
たしかにこの言葉は相手側にとってはメリットとなり、発信側もこの言葉によって相手との円滑な人間関係に寄与する場合も考えられますが、頻繁に多用すると安易で大袈裟な表現と捉えられる可能性もありますのでご留意ください。
敬語ではない
「感謝してもしきれない」を使う際に気を付けなければならない点は、敬語ではないという点です。敬語とは、相手に敬意を払う表現方法で、尊敬語、謙譲語、丁寧語という種類があります。
ビジネスシーンにおいての「使い方」でも先述しましたが、敬語は相手によって使い方を変化させる必要があります。相手が目上の方であれば、「感謝してもしきれません」のように語尾を丁寧語にすることが必要です。
「感謝してもしきれない」の言葉を発するシーンは、相手が目上である方の場合が多いので、もちろん文中で敬語を使うシーンが想定されます。その場合「感謝してもしきれない」自体が敬語だと勘違いして、語尾を敬語変化することを忘れないようにご留意ください。
「使い方」でも紹介しましたが、敬語に関する一例としては、目上の方への言葉の場合は「感謝してもしきれない」で終わらせず、語尾を敬語変化して、「感謝してもしきれません」とする必要があります。
感謝してもしきれないは最高の感謝の意味
「感謝してもしきれない」の意味は「感謝しても、感謝しきることができない」という「最高の感謝」を相手に示す言葉です。
メリットが多く使い勝手が良さそうですが、特別な出来事に対して使うにふさわしい言葉とも言えます。本記事が「感謝してもしきれない」の使い方の一助になれば幸いです。