不肖の意味とは?
「不肖(ふしょう)の息子ですが」などという言い方をする人がいますが、「不肖」とはいったいどういう意味なのか「不肖」の正しい意味を知らずに「不肖」という言葉を使う人もいます。
また「不肖」という言葉を聞いても意味が全く分からない人もいますが、「不肖」という言葉は昨今ではあまり使われませんので、「不肖」の意味を知らなくても仕方がないと言えます。
「不肖」という言葉にはいったいどのような意味があるのか、まずは「不肖」の意味についてご紹介しましょう。
おろかという意味
「不肖」の意味の一つ目は、「おろか」という意味です。「おろか」の意味は「知恵や思慮が足りない」という意味ですが、「不肖」をこの意味で使うのは「親や師に似ずおろか」という意味です。
「不肖の息子」と言うのは「親に似ずおろか」という意味で「不肖」を使っています。「不肖の息子」だけではなく「不肖の子」などという言い方もしますが、一般的には「不肖の息子」と言います。
「不肖」はかなり昔から使われている言葉ですので、「不肖」を「子」に使う場合には「子」は「息子」を指します。
親に似ずおろかな息子のことを昔から「不肖の息子」と言ってきましたが、子自身が「不肖の息子」と言うこともあれば他人が「不肖の息子」と言うこともあります。
未熟で劣ることという意味
「不肖」の意味の二つ目は、「未熟で劣ること」という意味です。「未熟で劣ること」という意味で「不肖の息子」などと言うのは、他人がどこかの家の息子について言う場合です。
「あの家の子供は不肖の息子だ」などというようによその家の子供のことを「不肖の息子」と言う場合「未熟だ」という意味で「不肖」が使われます。
取るに足りないという意味
「不肖」の意味の三つ目は、「取るに足りない」という意味です。「取るに足りない」の意味は「取り上げるだけの価値がない」という意味で、「つまらない」「くだらない」という意味になります。
よその家の息子を「不肖の息子」と言う場合には、こちらの「取るに足りない」という意味でも「不肖」が使われます。
自分の謙称の意味
「不肖」の意味の四つ目は、「自分の謙称」という意味です。「不肖」の使い方は「不肖の息子」だけではなく、「不肖私が」「不肖田中が」などというように自分の謙称での使い方もあります。
昔は会社の忘年会などの司会者が「不肖私が」などという言い方をしていましたが、昨今ではこのような言い方はめったにされません。
不肖の対義語・類語
「不肖」の意味についてご紹介しましたので、次は「不肖」の対義語と類語についてご紹介します。「不肖」には「おろか」「未熟で劣る」「取るに足りない」「自分の謙称」という意味があります。
なのでこれらの意味とは反対の意味を持つ言葉が対義語になり、似た意味を持つ言葉が類語ということになります。
「不肖」という言葉にはいったいどのような対義語や類語があるのか、「不肖」の対義語と類語についてご紹介しましょう。
不肖の対義語
まずは「不肖」の対義語についてご紹介します。「不肖」の意味は「おろか」「未熟で劣る」「取るに足りない」「自分の謙称」なので、これらとは反対の意味を持つ言葉が「不肖」の対義語になります。
「不肖」にはあまり良い意味がありませんので、逆に良い意味を持つ言葉が「不肖」の対義語になると言えます。それでは、「不肖」の対義語についてご紹介しましょう。
熟練
「不肖」の対義語の一つ目は、「熟練」です。「熟練」の意味は「物事に良く慣れていて上手にできる」という意味ですので、「不肖」の意味「未熟で劣る」とは正反対の意味を持つ対義語になります。
「熟練」は「不肖」の対義語ではありますが、「熟練の息子」などという言い方はしませんので、そういった点では「熟練」は「不肖」の対義語としては少し足りないと言えます。
賢明
「不肖」の対義語の二つ目は、「賢明」です。「賢明」の意味は「賢くて物事の判断が適切にできること」という意味ですので、「不肖」の意味「おろかな」とは反対の意味を持つ対義語になります。
「賢明」は「賢明な息子さん」などという使い方をすることもできますので、使い方という点でも「不肖」の対義語だと言えます。
利発
「不肖」の対義語の三つ目は、「利発」です。「利発」の意味は「賢いこと」「頭の回転が速いこと」という意味で、「不肖」の意味「おろか」とは反対の意味を持つため「不肖」の対義語になります。
「利発」は「不肖の息子」とは正反対のことを指す「利発な息子さん」などという使い方がよくされますので、使い方という点でも「不肖」の対義語だと言うことができます。
貴殿
「不肖」の対義語の四つ目は、「貴殿」です。「貴殿」の意味は「男性が男性の相手を敬って言う敬称」で、「不肖」の意味「自分の謙称」とは逆の意味になる対義語です。
「不肖」を「自分の謙称」という意味で使う場合には自分をへりくだりますので、この意味での「不肖」の対義語は、相手を敬う敬称ということになります。
貴兄
「不肖」の対義語の五つ目は、「貴兄」です。「貴兄」の意味は「対等の立場の男性の相手に対する敬称」という意味で、「不肖」の「自分の謙称」という意味とは反対の意味になる対義語です。
「貴殿」「貴兄」に似た言葉に「貴公」という言葉もありますが、「貴公」は目下の相手に対して使う言葉で敬称ではありませんので、「不肖」の対義語とは言い難いです。
不肖の類語
「不肖」の対義語についてご紹介しましたので、次は「不肖」の類語についてご紹介します。「不肖」の意味は「おろか」「未熟で劣る」「取るに足りない」「自分の謙称」という意味なので、似た意味の言葉が「不肖」の類語になります。
「不肖」の意味はあまり良くない意味ですので、「不肖」の類語もあまり良くない意味を持つ言葉になります。それでは「不肖」の類語についてご紹介しましょう。
稚拙
「不肖」の類語の一つ目は、「稚拙」です。「稚拙」の意味は「幼稚で未熟なこと」という意味ですので、「不肖」の「未熟で劣る」という意味に良く似た意味を持つ類語になります。
「稚拙」には「幼稚」という意味がありますが、「不肖」には「幼い」というニュアンスもありますので、そういった点では「稚拙」は「不肖」にかなり近い意味を持つ類語だと言えます。
未熟
「不肖」の類語の二つ目は、「未熟」です。「未熟」の意味は「技術や教養などが熟練していないこと」という意味で、「不肖」の意味「未熟で劣る」に近い意味を持つ類語です。
「不肖の息子」を「未熟な息子」と言い換えることも可能ですので、そういった点でも「未熟」は「不肖」に良く似た意味を持つ類語だと言えます。
至らない
「不肖」の類語の三つ目は、「至らない」です。「至らない」の意味は「思慮や経験が足りず未熟」という意味ですので、「不肖」の意味「未熟で劣る」に近い意味を持つ類語になります。
「至らない」は「至らない息子」という使い方をすれば「不肖の息子」の言い換えにもなりますので、その点でも「至らない」は「不肖」の類語だと言うことができます。
愚生
「不肖」の類語の四つ目は、「愚生」です。「愚生」の意味は「男性が自分をへりくだって言う言葉」という意味ですので、「不肖」の意味「自分の謙称」に近い意味を持つ類語です。
男性が自分のことを「不肖」と言いたい時に「愚生」と言い換えることもできますので、その点でも「愚生」は「不肖」の類語になりますが、昨今では「不肖」も「愚生」もほとんど使われません。
拙子
「不肖」の類語の五つ目は、「拙子」です。「拙子」の意味は「男性が自分をへりくだって言う言葉」「拙者」という意味なので、「不肖」の意味「自分の謙称」に似た意味を持つ類語になります。
「不肖」には意外にたくさんの類語がありますが、「不肖」の代わりに使える言葉もあれば「不肖」の代わりには使えない言葉もありますので、言い換えができるかどうかという点では注意が必要です。
不肖の使い方・例文
「不肖」の対義語と類語についてご紹介しましたので、次は「不肖」の使い方の例文についてご紹介します。
「不肖」の意味は「おろか」「未熟で劣る」「取るに足りない」「自分の謙称」という意味なので、そのようなことを言いたい場合に「不肖」という言葉を使うことができます。
「不肖」という言葉はいったいどのような使い方をすれば良いのか、「不肖」の使い方の例文についてご紹介しましょう。
例文①
「不肖」の使い方の例文の一つ目は、「彼は自分のことを父親に似ず出来の悪い不肖の息子だと言うが、立派に社長の仕事をこなしている」という例文です。この例文では「(親や師に似ず)おろか」という意味で「不肖」が使われています。
「不肖」という言葉はこのように自分自身が「不肖の息子」だという言い方をすることが多く、実際には出来は悪くなくても謙遜して「不肖の息子だ」と言う場合が多いです。
本当に出来の悪い息子が自分のことを「不肖の息子」と言うことはほぼありません。自分自身を「不肖の息子」と言う人は、出来が良いのに謙遜してそう言っているということです。
例文②
「不肖」の使い方の例文の二つ目は、「家業も継がずに小説家への夢ばかり追い続けている彼を、皆は不肖の息子だと言っている」という例文です。この例文でも「おろか」という意味で「不肖」が使われています。
「不肖」は「不肖の息子」という使い方が圧倒的に多いですが、自分自身を「不肖の息子」と言う場合と、他人がよその息子のことを「不肖の息子」と言う場合があります。
他人がよその息子のことを「不肖の息子」と言う場合には、「おろか」「未熟で劣る」「取るに足りない」のすべての意味を込めて言うことが多く、その息子は全ての面で良くないということを指します。
例文③
「不肖」の使い方の例文の三つ目は、「彼の息子は生活態度が悪いため不肖の息子だと言われるが、実は仕事の面ではとても有能だ」という例文です。この例文でも「おろか」という意味で「不肖」が使われています。
この例文でも他人がよその息子のことを「不肖の息子」だと言っていますが、この例文での「不肖」もやはり「おろか」だけでなく「未熟で劣る」「取るに足りない」という意味で使われていると言えます。
仕事の面で有能であっても、生活態度などが良くないと「不肖の息子」などと言われることがあります。つまり何か良くない点があるというだけで「不肖の息子」と言われることがあるということです。
例文④
「不肖」の使い方の例文の四つ目は、「宴もたけなわとなって参りましたので、不肖斉藤が一本締めの音頭を取らせていただきます」という例文です。この例文では「自分の謙称」という意味で「不肖」が使われています。
「不肖」を「自分の謙称」という意味で使う場合には「不肖私(わたくし)」という使い方をする時もあれば、自分の名前に「不肖」をつけることもあり、どちらを使っても構いません。
ですが昨今では「自分の謙称」という意味で「不肖」を使うことはほぼありませんので、「自分の謙称」という意味での「不肖」の使い方を覚えても、使うチャンスはほとんどないと言えます。
不肖を使う際の注意点
「不肖」の使い方の例文についてご紹介しましたので、次は「不肖」を使う際の注意点についてご紹介します。「不肖」という言葉は自分自身に対して使う場合と他人がよその息子に対して使う場合がありますが、使ってはいけない場合もあります。
「不肖の息子」という言葉は簡単に使うことができる言葉ではありますが、実は「不肖の息子」を使うととんでもない誤解を招くこともあります。
「不肖」という言葉を使う際にはいったいどのような点に注意をしなければならないのか、「不肖」を使う際の注意点についてもご紹介しましょう。
親が子に対して言う場合では使えない
「不肖」を使う際の注意点は、親が子に対して言う場合では使えないということです。「不肖」という言葉には「(親や師に似ず)おろか」という意味がありますが、この意味には「親や師の出来が良い」ということが含まれています。
そのため、親が子のことを「不肖の息子です」などと他人に対して言ってしまうと、「私は大変出来が良い」と自慢していることになってしまいます。
「不肖の息子」という言葉は自分自身に対して使ったり、よその息子に対して使ったりする言葉であって、親が子に対して使う言葉ではありませんので、その点では注意が必要です。
不肖の由来
「不肖」を使う際の注意点についてご紹介しましたので、次は「不肖」の由来についてご紹介します。日本語には語源や由来のある言葉が多いですが、「不肖」もそんな日本語の一つです。
「不肖」という言葉にはいったいどのような由来があるのか、「不肖」の由来についてもご紹介しましょう。
似るという意味の肖が由来
「不肖」の由来は「似る」という意味の「肖」にあります。「肖」という漢字には「親や師匠に似る」という意味がありますので、それに否定する「不」がついて「親や師に似ずおろか」という意味の「不肖」になりました。
不肖はおろかという意味
「不肖」の意味や使い方の例文、「不肖」の対義語や類語などについて色々とご紹介してきましたが、如何だったでしょうか。「不肖」の意味は「おろか」ですので、「不肖」の正しい意味を理解して正しく使いましょう。