小職の意味とは?
「小職」という言葉の意味をご存知ですか?「聞いた事がない」「特殊な役職かなにか?」「意味も読み方も不明」など、その意味まではあまり詳しく知られておりません。
まずは読み方から。「小職」は、「しょうしょく」と読みます。確かに上記のように頻繁に目にする言葉ではありませんが、昨今ビジネスシーンなどで「小職」という表現が使われるようになってきています。
「小職」とは、「官職についている人が自分をへりくだって」いう意味の謙譲表現です。意味に「官職」とありますが、最近では民間の大企業でも自分の立場を「小職」と称して表現することもあります。
「小職」はその意味合いから、ビジネスシーンとも親和性が強い言葉です。日本では自分をへりくだり相手を立てる「謙譲」の文化が存在するからです。
今回はそんな「小職」について徹底紹介。「小職」の対義語と類語、使い方、当職との違い、注意点、由来・歴史、英語表記、漢字表記について順に紹介していき、「小職」を使いこなせることができるよう深堀していきます。
小職の対義語・類義語
まずは「小職」の対義語・類語からです。一体「小職」という言葉にはどんな対義語・類語が存在しているのでしょうか?
「小職」はその意味「官職についている人が自分をへりくだって」称する意味であり、先述した私企業においても使われ始めている事情を勘案すると、国内に6,000万人以上のビジネスマンがいる私たちに身近な存在の言葉といえます。
そして、私たちと密接なつながりの意味を持つ「小職」の対義語・類語を知ることは、「小職」の意味づけをより明確にするきっかけとなります。以下から「小職」の対義語・類語を紹介していきます。
相手の身分を敬っていう意味
まずは「小職」の対義語から紹介していきます。ずばり「小職」はビジネス上、自分の立場をへりくだって称する語なので、対義語はどんな言葉があてはまるのでしょうか?
この問いに対する答えとしては「小職」の対義語は「貴職」という言葉があてはまります。「貴職」は「相手の身分や職名を敬っていう」語の意味があります。
「小職」は「一人称」に対し対義語「貴職」は「二人称」を指しており、両者とも敬意表現がその意味に含んでいます。こういった背景を踏まえると「小職」の対義語は「貴職」が一番あてはまる語です。
しかし「貴職」は「主に手紙や電子メール」などの「書き言葉」で使われる言葉です。意味の対義語には当てはまるからといって「話し言葉」には馴染みのない言葉なので。使い方には注意を要します。
自らを称していう意味
次は「小職」の類語ですが「当職」が当てはまります。類語「当職」は「現にその職業についている人が自らを称していう語」を意味します。
現在でも類語「当職」は「当職では話し相手になれないか?」「当職の受けた印象とすれば」という言葉で使われている語です。ただ、類語「当職」はどの職にも馴染む語ではなく、弁護士や税理士などの法律専門性を有した資格者が自分を指していう意味で使われることが多い言葉です。
また、「当職」は自らをへりくだる「謙称」の意味はその言葉の中には含まれていないことも特記すべきポイントです。
小職の使い方・例文
それでは「小職」は実生活でどのように使うことができるのでしょうか?ビジネスシーンには取引先や顧客との直接の商談や相談、電話応対、メールや手紙などの対応など様々なシーンがイメージできます。
「小職」は先述したように、官職以外の私企業にも使われてきている現代事情もあり、今後の頻出も想定すれば、その意味合いから覚えておいて損はない言葉です。
上記を踏まえて「小職」の例文を下記にケース別でご紹介しますので、その使い方をご参考いただき、実生活で活用いただければ幸いです。
例文①
「小職」の使い方の1つの例文として、対外的なビジネスシーンが上げられます。メールなどで「小職」が使われています。
「小職としては、この企画に是非参画していきたい所存です」このような例文の使い方のように、電子メールなどで「小職」と謙称してビジネス上の相手方に意思表示する際想定できます。
例文②
「小職」の使い方の1つの例文として、下請先などとのビジネスシーンが上げられます。打ち合わせなどで「小職」が使われています。
「小職から発注させていただきました例の案件ですが、今後もう少し価格を見直していただけませんでしょうか?」このような例文の使い方のように、下請けとの直接の打ち合わせなどで、自らを「小職」と謙称してビジネス上の相手方に意思表示する際に想定できます。
例文③
「小職」の使い方の1つの例文として、公務員のビジネスシーンが上げられます。面談などで「小職」が使われています。
「まずはこの件について確認させていただきまして、小職から改めてご連絡差し上げます」このような例文の使い方のように、市民との面談などで自らを「小職」と謙称して相手方に要件を伝達する際想定できます。
例文④
「小職」の使い方の1つの例文として、得意先との商談のビジネスシーンが上げられます。直接の打ち合わせなどで「小職」を使う事ができます。
「小職としましても、このような案件を受注させていただくことは光栄の至りです。一生懸命頑張らせていただきます」このような例文の使い方のように、直接の打ち合わせなどで自らを「小職」と謙称してビジネス上の相手方に意思表示する際に想定できます。
小職と小生の違い
次に「小職」と「小生」との違いについて紹介していきます。この「小職」と「小生」、両者はその漢字の文字数も同じで、意味もとても似ている言葉です。
ではどんな違いがあるのかを、以下「小職」「小生」それぞれの意味をそれぞれ比較していきながら、その違いを説明していき、実際の「小生」の使い方を見ていきます。
小生は自分をへりくだるという意味
でははじめに「小生」について見ていきます。「小生」は「手紙文などで自分をへりくだっていう語」の意味を持っています。
「紹介者などなくても、小生が何者であるかは、新聞紙上でよくご承知のことと思います」江戸川乱歩の「怪人二十面相」など、古くから「小生」は書き言葉として使用されていた言葉であるのは多くの文献から明らかになっています。
「小生」という語の「生」は象形文字で、地上に芽生える草木の様に象って、「うまれる」「いきる」「いのち」などの意味を表している語です。その語源から「学問・修業をしている人」という意味が派生して生まれました。
つまり、「小生」は「まだまだ勉強の身である」ことを意味しており、その言葉自体、「みずからをへりくだる 」という意味となっています。
これに対して「小職」とは、「自分の職をへりくだっている語」という意味です。「職」というフィルターを介して自分をへりくだっていることが「小生」との違いです。
両者の上記の意味の違いから、それぞれ使い方が変わってきます。「小職」は例文で指し示したような使い方になりますが、「小生」は友人などへ電子メールや手紙などで「〇〇君へ、小生の方で確認して追ってお電話します」という使い方になります。
上記の場合は「私の方で確認して、数日後には連絡します」という意味になります。友人などのプライベートの相手に向けた言葉である事がポイントです。
小職を使う際の注意点
「小職」を使う上で注意すべきポイントは一体どこにあるのでしょうか?先述で「小職」と「小生」との意味の違いを説明してきましたが、注意点はこの両者の意味の違いと関係していきます。
上記の点を踏まえて以下に「小職」を使う際の注意点をご紹介していきます。とても大切なポイントなので、実際にビジネスシーンなどで「小職」を使う際の参考になれば幸いです。
個人的な意味では使えない
「小職」は「小生」の意味では使う事ができないことが大切な注意点です。「違い」で先述したように、「小職」は「自分の職」をへりくだった表現で、小生は「自分」をへりくだった表現です。
先述の例文で紹介した「小生」を「小職」にして「小職の方で確認して追ってお電話します」といった手紙を友人に送るというシーンに当てはめてみるとその誤用が明白になります。
先述したように「小生」はプライベートで「自分を」へりくだる意味を持っている語なので、受け取った友人は「会社として処理するの?」と勘違いしてしまうことになります。
よって「小職」はプライベートなどで使用する語「小生」に代用して使う事ができず、個人的な意味では使えない語です。実際に「小職」「小生」を見かけた時はその使い方を意識してご覧ください。
小職の由来・歴史
「小職」の意味、類義語、小生との違い、使い方が理解できたところで、「小職」の由来は一体どこにあるのでしょうか?
「小職」は例文などでご紹介したように、その謙譲的な意味合いからビジネスシーンで広く使う事ができる汎用性がある語です。そんなビジネスと親和性がある語で、日本文化の中では古くから使用されてきた可能性が残ります。
上記を踏まえながら「小職」の語源と「小職」が日本でどのように使われていたか?その使用時期を辿っていき、「小職」の由来と歴史を紐解いていきます。
由来
まずはじめに「小職」をそれぞれ「小」「職」に分けて、それぞれの語源を解剖していき、「小職」の意味の由来を探っていきます。
まずは「小」。この語は指事文字でちいさい点を三つ重ねて構成されています。水滴や火花などのように、ちいさい存在の意味を表しています。
上記の語源から「自分に関することを謙遜していう語」いう意味が生まれました。先述した「小生」の「小」も同じ意味で使われています。
つぎに「職」。この語は形声文字で、偏の耳と、音符戠(読み方:シヨク)から成り立っています。耳に聞いて知り覚えるという意味を表しています。上記の語源から転じて「しょく。いとなみ。仕事」を意味し、「官職・公職」という意味に派生しました。
つまり上記「小」「職」をつなげて「官職についている人が自分をへりくだって」いう語という意味となりました。ただで現在では「官職」だけではなく、私企業でも使われていることは先述した通りです。
歴史
上記の点を辿る資料として「小職」は過去の文献でも確認することができます。その1つ目は1876年(明治9年)第一法規出版の「文部省年報」に見られます。下記の一説を紹介します。
「小職切望スル所ノモノハ寧校ヲ永遠ニ保績シ」とあります。左記の一文からもわかるように今から140年以上前には「小職」は使われていたことが確認できます。
「小職」は「官職についている人が自分をへりくだっていう語」の意味の他に、「娼家で雑用する少女や子供をののしっていう語」という意味があります。この意味においては「小職」は「こじょく」と読みます。
その使用時期の由来を辿る文献は近松門左衛門が1701年(明治24年)に発表した人情浄瑠璃「孕常盤」いう作品です。下記の一説を紹介します。
「ここな小職めを知つたか」現在の「小職」とは意味が異なりますが、このような文献からもわかるように、今から約300年以上前にも「小職」が使われているのが理解できます。
小職の英語表記
「小職」は英語ではどのような表現をすることができるのでしょうか?英語圏では日本語圏と比べて、ビジネス上で自らをへりくだる文化が発達しておりません。
「小職」に直接該当する言葉は英語では存在しておらず、しいてあげれば「I(わたしという意味)」が挙げられますが、この「I」には謙譲表現は含まれていませんので、ご留意ください。
小職の漢字
「小職」を別の漢字で表現するとどんな漢字があてはまるのでしょうか?「小職」は謙称していることは先述してきましたが、その存在の有無も含めて確認していきます。
「小職」の類語は「当職」であると先述しましたが、「当職」には専門的な職ついている人が自分を称していう語であり、自らをへりくだっている謙称としての意味は含まれていないため、「小職」の代用としての機能は厳しいのが現状です。
上記を踏まえると「小職」は「弊職」という語が代用することが可能性としては残ります。「弊職」の「弊」には謙称も含まれており、一見代用にはふさわしい語と認識できます。
しかし「弊職」は「弊社」と「小職」が組み合わされた「造語」であり、まだまだ国内のビジネスシーンには馴染んでいない言葉です。よって、「小職」を代用す漢字は「ない」という結論に至ります。
小職は職についている者が自らをへりくだっていう意味
「小職」の意味、類語、使い方、小生との違い、注意点、由来・歴史、漢字表記、英語表記を順を追って見てきました。「小職」は職についているものが、自らをへりくだっている意味をもつ言葉です。
自らをへりくだる表現は人間関係を円滑にしてくれる大変大切な要素をもっています。敬意表現の意味をその言葉の中に持つ「小職」をうまく活用いただき、よりよい人間関係を構築していただければ幸いです。