「激励」の意味とは?
「激励(げきれい)」は「励まして奮い立たせる」「元気づける」「勇気を与える」という意味があります。スポーツでは「選手団を壮行会で激励する」「選手を応援するために激励のエールを送る」のような使い方をする言葉です。
ビジネスシーンでは「上司が部下を叱咤激励(しったげきれい)する」のように社員の気分や意識を奮起させる意味で使われます。
また「激励の意を伝える」や「激励の言葉をいただく」のように、相手を元気づける場合と、元気をもらう場合の両方の意味で使われる言葉です。
「激励」の対義語・類語
対義語とは、反対の意味や反対のニュアンスを持つ言葉のことで反対語とも呼びます。類語は似た意味や使い方をする言葉のことで類義語、同義語とも言います。
「激励」は「励まして奮い立たせる」という意味なので、反対の意味は「気分をおとしめる」ということになるので「罵倒(ばとう)」や「嘲笑(ちょうしょう)」が対義語になります。
「激励」の類語の方が、対義語に比べて多くの言葉があります。その中から主なものを選んで意味や使い方、違いなどをこれから紹介します。
対義語
対義語は反対の意味や使い方をする言葉で、対義語を調べることは「激励」の意味をさらに深く解釈する効果があります。
対義語という反対の意味と、元になる「激励」の意味を対比することで、本来の意味がよりハッキリと浮かび上がり認識できることがあります。それでは「罵倒」と「嘲笑」の2つの対義語の意味や使い方を紹介します。
「罵倒」の意味
対義語の「罵倒(ばとう)」は「激しい言葉でののしる」という意味です。人前で罵倒されれば、誰でも身がちじむ思いで意気が消沈してしまいます。「激励」された場合と反対の精神状態になるので対義語になります。
罵倒の「罵」という漢字には、馬の上に「四」の字のようなものが乗っていますが、本来は口が横に2つ並んだ形です。つまり複数の馬がそれぞれ勝手に鳴き声をあげうるさいという意味です。
「罵倒」は馬のうるさい鳴き声を倒す勢いの雑言という意味で、かなり激しい言葉でののしるという意味になります。ですから罵倒されればかなりのショックを受けます。
激励されれば元気になりますが、罵倒されれば元気が失われてしまいます。例えば「ミスをした時に、上司から罵倒されて一気にやる気をなくしてしまいました」の例文のように「罵倒」は相手の意欲を奪う対義語です。
一方「激励」は相手の意欲を奮い立たせる言葉です。全く反対の影響を精神的に相手に与えるから対義語になるのです。
また「罵倒」は乱暴な性格を意味しているので、ビジネスや人生では嫌われる行動です。感情が高ぶって精神をコントロールできなくなった時に「罵倒」してしまうことがあるので気をつけましょう。
「嘲笑」の意味
「嘲笑(ちょうしょう)」とは「あざけり笑う」という意味で「他人の失敗を嘲笑する」のような使い方をして、相手をさげすみ笑うという意味があるので「激励」の対義語です。
さげすみ笑われれば、人の気持ちや意気は落ち込みます。例えば「鼻であしらうような彼の嘲笑に、暗い気持ちにさせられた」のように激励されるのとは反対の精神状態になるので対義語に数えられます。
「嘲笑される」とはただ単に笑われるのとは意味が違います。人が笑うのは、おかしくて笑う場合、楽しくて笑う場合がほとんどですが「嘲笑」は相手をさげすみあざ笑うという陰湿な笑いです。だから心が傷つけられ沈み込むのです。
類語
「激励」の類語とは「励ます」「元気づける」「勇気を与える」「奮起させる」などの意味合いを持つ言葉やフレーズのことです。
類語には対義語と同じように、本来の意味をより深く解釈できるメリットがあります。ワインやお酒の試飲会で、飲み比べることで味や特徴がよくわかるのと似ています。似たような類語の意味を比べることで本来の意味がより鮮明に見えてきます。
また「激励」と同じような意味や使い方をする類語にも、それぞれで微妙な違いがあります。それでは類語の正しい意味や使い方、「激励」との違いを検証してみましょう。
「鼓舞する」の意味
「鼓舞(こぶ)する」とは「大いに励まし気持ちを奮い立たせる」という意味の類語です。「鼓舞」の「鼓」とは日本古来の楽器の「つづみ」のことです。「舞」は踊りをおどるという意味です。
つまり昔(戦国時代)には、戦に出る兵士や武将の士気を高めるために、鼓(つづみ)と舞(まい)で激励していました。その名残が「鼓舞する」という言葉の意味の由来です。
現在でもスポーツの試合の応援で、ブラバンの音や太鼓、チアリーダーの踊りなどで選手の士気を鼓舞しています。今も昔も戦士(選手)を激励する方法はそんなに変わっていないのです。
つまり「鼓舞する」とは「大いに励まし士気を高揚させる」という意味です。「激励」と意味の違いはほとんどない類語です。強いて言えば漢字の由来や語源が違うところです。
「背中を押す」の意味
「背中を押す」は、行動しようかどうか迷っている人に、最後の一押しをする、決断を促すという意味で使われる言葉です。決断を励まし後押しをするという意味が似ているので類語になります。
「彼女に背中を押されたので、このプロジェクトに参加する決断がつきました」「コーチが背中を押してくれたので、この大会にでる決断ができました。結果としてメダルが取れたのです」の例文のような使い方をします。
このように「背中を押す」とは、単に激励して勇気を与えるだけでなく、使い方次第で人生も変える力がある言葉です。「背中を押す」は何気ない表現ですが、そういう意味では「激励」よりパワーを内に秘めている類語かもしれません。
「エールを送る」の意味
「エールを送る」は「声援を送る」「応援する」「盛り上げる」という意味があり「激励」の類語です。エールは、英語の「yell」のことで、本来の「叫び声をあげる」「大声で叫ぶ」という意味が転じて「声援を送る」という意味になっています。
「激励会を開催して、全校挙げて選手にエールを送った」「今回〇〇賞を受賞した彼女に、エールを送る意味で花束が贈呈された」の例文のように表現します。
「エールを送る」という類語は、激励するために声援を送りますが、声を上げるという動作のイメージが強いところが「激励」とは若干違います。
「発破をかける」の意味
「発破(はっぱ)をかける」は「激しい言葉をかけて奮い立たせる」という意味で、「激励」の意味の「奮い立たせる」という部分が似ているので類語になっています。
「発破(はっぱ)」は、元の意味は鉱山や土木工事でダイナマイトやTNT火薬などで爆発させることです。激励をする場合で使う「発破をかける」は「発破のようにインパクトのある激しい言葉で、奮起させる」という意味です。
例文では「職場内の空気が少し低迷していたので、上司が発破をかけてやる気を出させた」「チームのプレイが雑になっていたので、コーチが一丸となって相手にぶつかるように発破をかけた」のような使い方をします。
つまり「発破をかける」は優しい言葉で激励するのではなく、気力や雰囲気がだらけている時に、激しく強い言葉を飛ばすことで、やる気や力を奮い立たせることです。
「激励」の使い方・例文
「激励」という言葉は、相手を励ます能動的な使い方と、受動的に励まされる場合があります。また場面や状況によって使い方は様々に変わります。
「叱咤激励」「激励の意」「激励をする」「激励をいただく」「激励の言葉」などいろいろな言葉や言い回しがあります。ここでは、能動的に「励ます」と受動的に「励まされる」の場合に分けて「激励」の使い方を例文を交えて紹介します。
例文①「励ます」
「激励」を能動的(励ます)に使う場面は、大勢の人が集まる「壮行会」「激励会」「送別会」「卒業式」などのセレモニーや、個人的に送る手紙やメールでよく使われます。
例文では「今日の壮行会では、選手のみなさんの活躍を激励する意を込めて、集まった全員でエールを送りましょう」と表現します。
「本日退職される彼女に対し、これまでの感謝と今後の新しい人生でのさらなる活躍を激励する花束を送りたいと思います」などの例文は会合などのスピーチの激励の使い方です。
また個人的な手紙やメールでは「来月転職されると聞きました。努力家のあなたなならどんな場面でも活躍できると信じています。陰ながら激励しています」の例文のように使います。
行動として使う例文では「大学受験を明日に控えた息子に、合格祈願と激励の意を込めてお守りを送った」「試合に臨む彼らに、叱咤激励の意味でエールを送った」のように表現します。
例文②「励まされる」
「励まされる」場合には様々なケースがあります。壮行会や送別会などで「激励の言葉」で元気をもらい、贈り物やプレゼントで感謝の励ましをもらう場合、コーチや先生からの叱咤激励で勇気をもらう場合、仲間からの友情で励まされる場合と様々です。
例えば「初めての試合で緊張とプレシャーに押しつぶされそうになっていたのが、応援している仲間からの激励のエールで、ハッと我にかえり実力を出せました」「壮行会では皆からの激励の言葉に勇気づけられ励まされました」の例文のように使います。
また「送別会で頂いた花束には、激励の言葉が添えられていて、新たな人生を踏み出す元気をもらい励まされました」のように激励を使います。
「あの時先生の叱咤激励がければ、社会人として今のように前向きに仕事ができませんでした。先生の言葉を激励の言葉として今も人生の糧にしています」のような例文もあります。
「コーチの激しい言葉や厳しい指導は、当時は辛く思ったこともありましたが、今では激励の言葉と受け取ることができるようになり結果も出せるようになりました」の例文のように激励の仕方も様々です。
少し変わった使い方では「失恋で落ち込んでいる時に、ラジオから流れてきた歌に激励されて、なぜか希望が湧いてきました」「ミスをして落ち込んでいる時に、彼の一言が激励の言葉になり救われました」のような例文があります。
例文でもわかるように、激励の使い方には勇気や元気を与えるだけでなく、プレッシャーを取り除いたり、落ち込んだ心を救い穏やかな心を取り戻す使い方があります。これらの例文の意味や使い方を参考にして人生やビジネスシーンに役立ててください。
「激励する」と「檄を飛ばす」の違い
「檄(げき)を飛ばす」というフレーズは、ビジネスシーンでよく耳にする言葉です。しかしこの言葉は「激励する」の類語としてよく間違えられる言葉です。
「檄」と「激」は同じ「げき」と読み、字もよく似ているので間違えて誤用してしまうのです。それでは「激励する」と「檄を飛ばす」の違いを検証するために、「檄を飛ばす」の正しい意味と使い方、違いを紹介します。
「檄を飛ばす」は「同意を求める」という意味
「檄を飛ばす」は「自分の主張や考えを広く人々に知らせ同意を求める」というのが本来の意味です。「檄(げき)を飛ばす」を「激(げき)を飛ばす」と勘違いしたことから誤用が起きます。
漢字の「檄」は、古代中国では説諭などの文書を木札に示したことから「自分の考えや主張を述べて大衆に行動を促す文書」という意味があり漢字の「檄」の偏(へん)には木偏がついています。
一方「激励」の「激」は偏が「さんずい」で、「はげしい・勢いが強い」という意味です。もともと使われている漢字と意味が違うのですが、字が似ていることと意味のイメージが似ていることで誤用につながっています。
「叱咤激励する」の場合の「激励」は、強い口調で奮起を促すという意味です。「檄を飛ばす」は、強い口調で意見を主張するという意味です。非常にニュアンスは似ていますが根本的に意味が違います。
例えば「社員の意欲が落ちているので叱咤激励した」と「社員の意欲が落ちているので檄を飛ばした」では一見違いがないように見えます。
しかし前者は意欲が落ちているのを奮起させるために激励しています。後者は意欲が落ちるのは「良い仕事に繋がらないぞ」という意見を伝えるために檄を飛ばしています。そこに違いがあるのです。
「激励」を使う際の注意点
「激励」という言葉を使う場合は、上司など目上の人が目下の社員に対して叱咤激励する場合や、コーチや監督など目上の立場にいる人が選手にいう場合、同僚や仲間が応援するために使う言葉です。
つまり「激励する」とは上から目線の言葉なのです。ですから上司や目上の人に対しては使い方に注意しなければなりません。そんな注意点をこれから紹介します。
「目上の人に使う場合」では使えない
先輩や目上の人が転勤する際に「ご栄転おめでとうございます。新天地でのご活躍を激励いたします」はNGです。
なぜならば「激励」するということは「相手を励ます」「勇気づける」という意味です。励ますまたは勇気づけるという行為は、目上の者かまたは同等の立場にいる者が使う言葉なので、目上の人に対しては失礼に当たります。
目上の人に対しては「激励」に代わる言い換え表現が必要になります。これにも注意が必要です。「頑張ってください」や「期待しています」は親しい関係の目上の人なら構いませんが、それ以外には上から目線に捉えられてしまいます。
「応援していおります」「ご健闘をお祈りしています」「陰ながらお祈りしております」「ご活躍を祈念しております」などの控えめな言い換え表現が目上の人には無難です。
目上の人とは?
目上の人に「激励」を間違えて使わないために、目上の人とはどういう人なのかを整理してみましょう。ビジネスでは上司や先輩が目上の人です。人生では先生や恩師、年上の人です。または尊敬できる人のことです。
中には尊敬できない上司や先輩がいるとしても、人生を長く生きているにはそれなりの意味や経験があります。表面的に判断するのはやめましょう。目上の人とは自分より人生を長く生きた人という意味です。
「激励」の英語表記
「激励」を英語ではどのように表記するのでしょう。その前に日本語と英語の文法が根本的に違う点を考えてみましょう。
日本語の「激励」は名詞ですが「激励する」は動詞になります。「激励的な」は形容詞になります。つまり日本語の名詞、動詞、形容詞、の違いは単語の後につける助詞で決まります。
つまり日本語の単語は基本的に名詞で動詞はありません。英語の場合は、名詞と動詞がはっきりと違う単語として存在します。
また「do」を「doing」のように動詞に助詞(ing)をつけて名詞にすることはできますが、その逆はできません。この英語と日本語の文法上の違いを踏まえて「激励」の英語表記を紹介します。
名詞として「激励」に相当する英語は、動詞に助詞をつけた形になります。「激励する」という意味の動詞「encourage」に助詞をつけた名詞形「encouragement」が「激励」に相当します。このほか「cheer up」も激励するという意味があります。
例文では「The boss encouraged his men.(上司が部下を激励した)」は動詞として使った場合で、名詞として使う場合は「The boss gave encouragement to his men.」のように「give encouragement to 〜」で激励するを英語表現します。
また「She came to see me and encourage me.(彼女は私を励ますために来てくれた)」のように「〜 to encourage」を使って「激励するために〜する」を英語で表現することができます。
「I cheer myself up.(自分で自分を励ます)」「He feels powerless and is unable to cheer his brother up.(彼は無力感を感じているので、弟を励ますことができない)」のように「cheer up」という英語で「励ます」という意味を表現します。
「For us, cheering is about more than just encouraging a team to win.(私たちにとって、応援することは単にチームが勝つために励ますだけではありません)」は「cheer」と「encourage」の両方を使った英語表現です。
また英語では「put spurs to a person(人を激励する)(人に刺激を与える)」「Go in and win!(頑張ってこいよ!)」のように「spurs(刺激)」や「win(勝つ)」などの直接的な言葉で「激励」を表現することもあります。
このように英語で「激励」を表現するには色々な言い回しやフレーズがあります。これらを参考にして日本語との文法上や表現方法の違いを念頭に置いて英語のボキャブラリーを増やしてください。
「激励」は「励まし奮い立たせる」という意味
「激励」は、相手を励まし奮い立たせ元気づけるという意味で、選手を送り出す「壮行会」や「激励会」、退職や転勤する人の「送別会」や手紙やメールで「激励の言葉」として使われます。
また上司が部下の士気を高める時や、コーチが選手を叱咤激励するときにも使います。逆に激励を受けて励まされる場合にも使われる言葉です。
ここまで「激励」の対義語や類語、使い方などを紹介してきました。「励ます」場合と「励まされる」場面により使い方が様々あることや、英語表記の仕方、文法の違いなども紹介しました。
言葉のボキャブラリーとは頭の中に図書館があるようなものです。これまでの記事を参考にして、頭の図書館の蔵書を増やして人生やビジネスに役立ててもらえれば幸いです。