「お待ちください」の意味とは?
「お待ちください」という言葉をよくお使いになりますか?ビジネスシーンや急な来訪者、メールの返信や電話などで、「お待ちください」を使う場合は大変多いです。
「お待ちください」は何気なく日常に溶け込んでいる表現ですが、「お待ちください」の相手が祖父だったり、会社の役員だったり、自分よりも目上の方の場合でも使っても良い表現なのでしょうか?
「お待ちください」は「待って」の敬語表現です。「待って」は相手に待ってもらうわけです。相手が行為の主体である場合に使う尊敬語「待つ」と、実質動詞の後に来て、補完する働きをする補助動詞「ください」から成り立ちます。
今回はそんな素朴な疑問を元に「お待ちください」を徹底解剖。「お待ちください」がどんなシチュエーションで使われているか?文章中の前後の敬語表現にも注目しつつ、実際の例文などで掘り下げていき、様々な疑問を払拭していきます。
「お待ちください」の類義語
実際の「使い方」を探る前に、まずは「お待ちください」の類語にはどんな言葉が存在しているのかを確認していきます。
「お待ちください」は日常に溶け込んだ言葉あるが故に、あまりその文法的な表現を意識して使っていないのが実情です。ある意味探る必要を考えないほどの日常的な言葉です。
ただ、そんな何気ない言葉「お待ちください」も兄弟姉妹のような類語表現が存在しており、その表現自体もあまり意識して使っておらず、「感覚的にチョイス」しています。
そんな身近な「お待ちください」の類語を知ることは、「お待ちください」の意味のニュアンスをより明確にする契機となります。以下から「お待ちください」の類語を紹介していきます。
「待って欲しい意味合い」の敬語表現
1つ目の「お待ちください」の類語には「お待ち願います」が挙げられます。この類語「お待ち願います」も日常に頻繁に使われる言葉です。
この類語は「少々お待ち願いますか?」などの表現で、メールの返信などの「書き言葉」のやり取りよりも電話などの「話し言葉」として汎用性が高い言葉です。
もちろん敬語として、尊敬語の「お待ち」と願望を表す敬意表現「願う」に丁寧語「ます」で語尾をしめくくっています。願望が強いニュアンスがあるので、「おまちください」より「待って欲しい」意図を覗かせます。
「多少くだけた意味合い」の敬語表現
2つ目の「お待ちください」の類語には「待ってくださいね」が挙げられます。この類語「待ってくださいね」も日常に頻繁に使われる言葉です。
「ちょっと待ってくださいね」などの表現で、メールの返信などの「書き言葉」のやり取りでも、電話などの「話し言葉」でも広く使われる言葉です。
敬語としては「ください」のみで、あまり敬語表現は強くなく、最後の終助詞「ね」がポイントです。自分と同等の立場の人や親しい間柄、病院などのリラックスさせる必要のある場で使える助詞で、文全体の印象を柔らかくしているニュアンスです。
「お待ちください」の使い方・例文
類語との違いを理解できところで、「お待ちください」の実際の使い方です。「お待ちください」という言葉は日常生活において汎用性がある語なので今後も頻出します。
特にビジネスシーンで「お待ちください」を使用する場合はその実用性を鑑みて「敬語表現」も意識していく必要性があります。
上記を踏まえて「お待ちください」の例文を下記にケース別でご紹介しますので、その使い方をご参考いただければ幸いです。
例文①
「お待ちください」の使い方の1つの例文として、問い合わせなどのビジネスメールが上げられます。お客様からの問い合わせメールなどで「お待ちください」が使われています。
「メール内容を担当に確認を取りますので、お待ちください。追って担当者からメールを返信させていただきます」このようなビジネスメールで「お待ちください」という用語の使い方が想定できます。
このケースには「お待ちください」の他にも敬語が使われています。丁寧語「ます」、謙譲語「いただく」という敬語が使われている事がわかります。
上記はメールの事例ですが、電話などの問い合わせでも「お待ちください」を使う事ができます。メールでの返信が「折り返し」「追って」連絡という表現に差し変わります。
例文②
「お待ちください」の使い方の1つの例文として、社内用のビジネスメールが上げられます。部署からの一斉配信メールなどで「お待ちください」が使われています。
「社員旅行の具体的な日程は調整中なので少々お待ちください。また、不明点などは〇〇部までメールにてお問い合わせください。後日返信いたします」このようなビジネスメールで「お待ちください」という用語の使い方が想定できます。
このケースにも「お待ちください」の他にも敬語が使われています。社内用なので、過度な敬意表現にせず、丁寧語「さい」「ます」の敬語に抑えられていることもポイントです。
例文③
「お待ちください」の使い方の1つの例文として、対面でのビジネスシーンが上げられます。お客様の来店・来社の際、「お待ちください」を使う事ができます。
「今担当者を呼んできますので、お掛けになって少々お待ちください」このようにメールの返信だけではなく、接客業務でも「お待ちください」を使う事ができます。
このケースにも「お待ちください」の他にも敬語が使われています。尊敬語「お掛けになる」丁寧語「ます」という敬語が使われている事がわかります。
例文④
「お待ちください」の使い方の1つの例文として、プライベートシーンが上げられます。自宅への(急な)来訪などのシーンで「お待ちください」を使うことができます。
「ただいまお呼びしますので、少々お待ちください」玄関先でこのように「お待ちください」の使い方をすることが可能です。
上記以外に業者からの電話などでも「お待ちください」が使えるシーンがあったりと、プライベートにおいても使える言葉であります。
「お待ちください」と「お時間をください」の違い
「お待ちください」がビジネスやプライベートでのメールの返信や電話・対面での返答で幅広く使える言葉であることが理解できました。
次に「お待ちください」と「お時間をください」との違いについて紹介していきます。この「お時間をください」は「お待ちください」と何気なく使い分けていますが、両者にどんな文法的な違いがあるのでしょうか?
以下にて両者「お待ちください」と「お時間をください」とのそれぞれの意味をそれぞれ比較していきながら違いを説明していきます。
「お時間を下さい」は「時間を頂戴」の意味
「お時間をください」は「時間を頂戴」を敬語表現している言葉です。メールの返信や電話の返答など、幅広い使い方ができる表現です。対して「お待ちください」は「待って」の敬語表現です。
上記を比べてみると「下さい」「ください」の扱い方が注意すべきポイントです。「お時間を下さい」の「下さい」は「与える・くれる」の尊敬語です。対して「お待ちください」の「ください」は先述した「待つ」の尊敬の補助動詞として、待つの尊敬の意味を強める働きをしています。
上記から「待って欲しい」意味と「時間が欲しい」意味とで、その違いが明白になります。同じ「ください」でも使われている意味が異なりますので、ご注意ください。
「お待ちください」を使う際の注意点
「お待ちください」を使う上で注意点はどこにあるのでしょうか?以下に「お待ちください」を使う際の注意点をご紹介していきます。「お待ちください」の敬語のニュアンスなど実用につながる大切な部分なので、実際に「お待ちください」を使う際、参考にしていただければ幸いです。
かなり目上の人へは積極的に使えない
「お待ちください」を使う上で注意すべきポイントは「トップ会合」など、自分の立場より、かけ離れた人に対しては、使えないフレーズであることが大きなポイントです。
たしかに「お待ちください」は文中に尊敬語が入っており、相手に敬意を払っていることには間違いありません。
しかし、敬語には強弱があります。「お待ちください」は社会生活に広くおしなべて通用する言葉ではありますが、あまり強い敬意表現とは言えません。
自分より立場がかけ離れた人に対する表現として、「お待ちいただくようお願い申し上げます」など、謙譲語などを交えて、最大限の敬意表現で伝えることで、社会生活上、円滑な関係性を維持できます。
「待つ」にまつわる敬語表現
今回のテーマ「お待ちください」という表現の中に含む言葉「待つ」。この「待つ」の敬語表現には、類語以外にも様々なバリエーションが存在します。
「お待ちになる」「お待ちいただく」「お待ちしている」「お待たせする」など、似ていますが、それぞれの言葉には行為の主体とそれにまつわる敬語とその敬語自体のニュアンスが微妙に違います。
まず、「待つ」を敬語表現で変化させていこうとする場合は、「誰が」待つのかに注目することが大切です。敬語は先述した「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」に分かれております。相手の行為は「尊敬語」、自分の行為は「謙譲語」、接頭表現・語尾表現の「丁寧語」が存在しています。
「お待ちになる」の場合、「待つ」のは相手ですので、「お待ち」は尊敬語の「お」、「お待ちいただく」の場合、「待つ」のは相手ですので、「お待ち」は尊敬語の「お」、「いただく」は自分が「もらう」ので謙譲語になります。
「お待たせする」は「待たせた」のは自分なので謙譲語になります。このように、「誰が行為の主体なのか」で、結構敬語の種類が絞られていきますので、敬語を判別する際の参考にしていただければ幸いです。
「お待ちください」の由来・歴史
「お待ちください」の意味、類義語、他の語との違い、使い方がわかったところで、「お待ちください」の由来はどこにあるのでしょうか?
「お待ちください」の漢字の成り立ちである由来と「お待ちください」が日本で使われていた使用時期を辿っていき、「お待ちください」の由来と歴史を深堀していきます。
由来
「お待ちください」の文法的な解釈は「意味」で述べた通りですが、この「待つ」という言葉の成り立ちはどんな語源から成り立っているのでしょうか?
「待」は訓読みで「まつ」と読む事ができます。十字路の左半分を意味している偏「彳」と、植物の芽生えを意味する上半分と役人が親指で脈を測る下半分の象形の音符「寺(読み方:シからタイへ)」とから成り立ちます。ここから「歩くのを止めて、道に立ちどまってまつ」意味が生まれました。
歴史
「お待ちください」の使用時期の歴史を辿る文献として、小説家の松本清張が「オール讀物」に1960年(昭和35年)から連載が始まった「球形の荒野」という作品が上げられます。下記の一説を紹介します。
「つづいて新聞社の交換台の女の声に変わった。添田の名前を言うと、しばらくお待ち下さい、と言って声が引っ込んだ」今から約60年前には「お待ちください」が使われているのがわかります。
「お待ちください」の使用時期の歴史を辿る文献の2つ目として、小説家の豊島与志男が「帝大新聞」に1941年(昭和16年)に発表した「画舫」という作品が上げられます。下記の一説を紹介します。
「二三日黙ってお待ち下さい、すべてが明らかになりますでしょう。それだけをいって、私は逃げ出したのだった」今から約80年前の終戦前には既に「お待ちください」が使われているのがわかります。
「お待ちください」の英語表記
「お待ちください」は日本語だけでなく、英語でも表現する事ができます。まずは「 Wait a moment please.」「Just a moment.」 という表現です。
この表現はビジネスシーンなどの日常会話やメールの返信などのシーン以外でもモバイルアプリやTVゲームなどのローディング時間の表示など、広く使用されています。
「moment」は英語で「瞬間」という意味です。場合によっては「a mimute」と「分」になったり、「a second」「秒」になったりと、待ち時間によって変化するケースもあります。
「お待ちください」は「待って」の敬語表現の意味
「お待ちください」の意味、類語、使い方、「お時間を下さい」との違い、注意点、由来・歴史、英語表記を順を追って見てきました。「お待ちください」は、動詞「待つ」と補助動詞「ください」からなる、「待って」の尊敬の敬語表現であるという事です。
何気なく敬語表現を使用することは、相手との会話のリズムを壊さないという意味でも大切な習慣ではありますが、時には振り返って「自分の敬語表現を点検する」ことも大切です。
普段の返事や返信のシーンの中で、「お待ちください」のフレーズを意識し、その文法的な成り立ちや日本独特の敬語表現に興味を持っていただければ幸いです。