「今一度」の意味とは?
「今一度」は「前にやった事と同じことを繰り返すこと」という意味です。ビジネスシーンにおいて使われるように、丁寧な言い方をしなければならない場合の敬語表現として使われます。
この場合の「今」には「一度やったことを」という意味を含みます。つまり「今一度」は「一度やったとは思いますが、さらにもう1回やっていただけますか?」といった意味になります。
「今一度」の類語
「今一度」の類語をいくつか紹介します。類語は「前にやった事と同じことを繰り返すこと」の意味を持つ言葉になります。
類語というよりもほぼ同じ意味の使い方をされる言葉は「もう一度」です。「もう一度」は「今一度」よりも少し砕けた言い方になりますが、ビジネスシーンでも使うことができます。「もう一度」と似た類語では、「もう1回」や「もう一遍」などがあります。
その他の類語では、「再度」や「重ねて」があります。「再度」はビジネスにおいて敬語として使われますが、日常会話でも使われることがあります。「重ねて」はこれらよりもさらにかしこまった場面で使われます。
「今一度」の使い方・例文
実際に「今一度」という言葉はどのような場面で、どのような使い方をするのでしょうか。ここでは例文で具体的な「今一度」の使い方について紹介します。
以下の例文における「今一度」の意味はいずれもほぼ同じですが、いろいろなシーンで使える、便利な言葉でもあります。
また、類語のところで紹介した「もう一度」は「今一度」と同じ意味で、ビジネスシーンで敬語表現としても使えるので、以下の例文の「今一度」をそのまま「もう一度」に置き換えることができます。
例文①
「今一度、出演者のみなさんに大きな拍手をお願いします。」では「今一度」の意味のところで説明したように、「先ほど拍手をしていただきましたが、もう一度、改めて拍手をお願いします」といった意味になります。
舞台や講演会などでは終了した時点でお客さんは拍手をしますが、退出する際に司会者の方からこのようなお願いがされるので、みなさんも経験があるでしょう。
例文②
「お手数ですが、今一度やっていただけないでしょうか。」、これは今すでにやってもらったことと同じことを、またやってもらえるように促す使い方です。
例文①の場合と少し違った意味合いでの使い方になります。つまり、例文①でははその場を盛り上げたり、主役に対する感謝の意味を込めてという思いがあります。
そしてこの例文②の場合の「今一度」は、一度やったことをもう一度やってもらって間違いがないかを確認したいという思いが含まれています。
例文③
「先ほどの結果が正しいか、今一度ご確認のほどお願いします。」、これも前の例文と同じように一度確認してもらったことを同じように確認し直して欲しいとお願いする表現です。
前の例文で使われる「今一度」との意味にあまり差異はなく、いずれもビジネスなどの場で使われますが、強いて言えば、それぞれの例文で意味を説明した際の表現の違いです。
例文②の場合は相手にそうしてもらうように「促す」ニュアンスがあり、この例文③では確認してもらうように「お願いする」ニュアンスが強くなっていて、それぞれ相手との距離や上下関係の違いによる言い回しとなっています。
例文④
「今一度、考え直してはいただけないでしょうか。」、この場合の「今一度」はただ単に繰り返し行ってもらうという意味よりも、一度考えた結果の結論について疑問があるため、もう1回考えてもらって、違う結論を期待するものです。
一度出した結論を見直して欲しいという思いがある場合の使い方です。相手が一度出した結論に対して異議を唱えることにもなるため、相手の立場などをよく考えて使わなければなりません。
「今一度」と「もう一度」の違い
「今一度」の類語である「もう一度」は「今一度」の代わりに用いることができる、ほぼ同じ意味の言葉と紹介しましたが、逆の場合にはこの限りではありません。
「もう一度」は「今一度」よりも少しくだけた言い方なので、友人や家族などにも使うことができます。しかし、「今一度」はかしこまった言葉なので、友人や家族に対しては使いません。
つまり、「もう一度」を使っているところに「今一度」は必ずしも置き換えることができないということです。
「もう一度」がビジネスシーンなどで使われている場合には、基本的に「今一度」に置き換えることができますが、友人や家族の間で例えば「もう一度、お願い!」というところを「今一度、お願い!」とは置き換えられません。
「もう一度」は「親しいあなたへのお願い」という意味
「もう一度」はビジネスや大勢が集まるイベントだけでなく、友人や家族などの間でも気軽に使えると紹介しました。このことから「もう一度」は「今一度」より身近に感じられる言葉といえます。
「今一度」が使えないような身近な間柄でのみ使える「もう一度」は「親しいあなたへのお願い」という思いを込めた言葉です。
「今一度」を使う際の注意点
「今一度」を使う時の注意点については、かしこまった言い方なので友人や家族内では使わないということはすでに紹介しました。
他に「今一度」を使う上で注意すべき点は、「今一度」がもう1回やって欲しいとお願いする内容であるため、やって欲しいことが確認であったり、すでに結論が出た事柄に対して見直して欲しいという要求などの場合についてです。
相手は一旦その確認や結論付けを行っているため、再度やってもらうことに対して不快感を持たれないような言い方をしなければなりません。
「今一度」は 回数以外では使えない
「今一度」が身近な人に対して使えないことはすでに紹介しましたが、これ以外にあるのが「今ひとつ」との違いです。
「今ひとつ」という言葉の意味は「少し」や「ちょっと」などになります。この場合の「ひとつ」は1個、2個の「個数」ではありません。上の意味の言葉に「~だけ」をつければお分かりでしょう。ボリュームという意味を含んでいます。
これに対して「今一度」の「一度」は「1回」と回数を表す意味ですが、過去すでに一度やったことを繰り返すという意味では「今ひとつ」の「ひとつ」とは使い方が違います。あくまで回数の意味となります。
「今一度」の由来・歴史
「今一度」という言葉の由来や歴史についてはこれといったものがありません。「今一度」を「今」と「一度」に分解すると、「一度」の方は特筆すべき内容はありませんが、「今」にはいくつかの意味があります。
ここでは「今」という言葉の意味ができた経緯を紹介することで、「今一度」という言葉がよりはっきりと理解できると考え、以下解説していきます。
由来
すでに紹介しましたが、「今一度」はかしこまった言い方で、少しくだけた言い方では「もう一度」です。意味が同じなので、「今」と「もう」も同じ意味となるはずですが、実際には若干違います。
「今」は過去と未来の間の瞬間を指しています。これに対して「もう」は「もうできました」や「もう終わりました」のように、すでに過ぎてしまった事柄に対して使います。「今」と「もう」には時間的な違いがあります。
その2つの言葉に「一度」をつけると、なぜ同じ意味になるのでしょうか。それはすでに実施済みの事柄は過去のことであり、それに対して繰り返しやって欲しいことはこの先のこと(未来)を指しているので、結果的に両者は同じ時間軸を意味することになるのです。
歴史
「今一度」の歴史についても明確なものはありません。今まで紹介した「もう一度」が広く一般に使われていたのが、身分の上下関係ができるに連れて、目上の人に対して親しい人と同じように「もう一度」が使われるのは敬遠されるようになりました。
その結果、目上の人と話すなどかしこまった場面では敬語表現として「今一度」が使われ、両者が区別されるようになったと考えられます。
「今一度」の英語表記
「今一度」の英語表現は"once more"や、"once again"です。これらの英語表現は他の類語である「もう一度」や「再度」、「重ねて」などの意味でも使われます。
日本語の「重ねて」は敬語表現ですが、英語表現では特に敬語表現としては区別されずに使われます。なので、日本語に翻訳する際には文章自体や文脈から敬語表現をするかどうかを判断します。
「今一度」は「心を込めてお願いする」という意味
「今一度」はビジネスや大勢の人が集まる舞台や講演会などで使われる、少々堅い敬語表現です。ビジネスや講演会などの場面で使われる言葉なので、相手の気持ちを気遣い、不快感を与えないようにすることが大切です。
不快感を持たれないように「今一度」を使うということでは、「心を込めてお願いする」といった意味がピッタリの表現ではないでしょうか。