ご賞味くださいの意味とは?
「ご賞味ください」とよく食べ物の広告やレストランで食事をする前に店員さんから声を掛けられることがありますが、「ご賞味ください」の意味をご存知でしょうか?「ご賞味ください」の意味は「賞賛しながら食べてください」というニュアンスがあります。
転じて「自信をもって美味しいと言えますので食べてください」という意味を持ち、企業が食品や飲み物をPRする時に良く使われるフレーズとなっています。敬語の形としては丁寧語の表現ですが、表す意味が「上から目線」なニュアンスがありますので使い方には注意が必要です。
「ご賞味ください」の類語と使い方をそれぞれ例文を紹介しながら解説します。また「ご賞味ください」と並んで良く使われる「お召し上がりください」の違いと注意点を解説し、併せて「ご賞味ください」の英語表記を紹介します。適切な使い方を覚えましょう!
ご賞味くださいの類語
「ご賞味ください」は普段自分が使う言葉としてよりも企業の広告やPRなどで良く耳にする言葉となっています。意味としては「おいしさを良く味わうこと」や「称賛しながら食べること」の意味があります。
相手に「ご賞味ください」というと「褒めながら食べてください」と言っているのと同じ意味を表しますので言葉としては丁寧語なのですが、意味がやや上から目線に感じてしまう言葉となっています。
目上の人や状況によっては「ご賞味ください」というよりもここで紹介する類語を使う方がいい場合がありますので言い換えられる類語「お召し上がりください」「ご笑納ください」「お試しください」「ご堪能ください」の4つをそれぞれ解説します。
類語①
「ご賞味ください」の類語①は「お召し上がりください」です。「お召し上がりください」は「食べる」の尊敬語としての使い方となり、目上の人に使うことのできる丁寧な敬語表現となっています。
「ご賞味ください」と使ってもいいのか迷う場合は「お召し上がりください」というと間違いありません。「お召し上がりください」の例文を示すと「お土産を買ってきましたので皆さんでお召し上がりください」
「こころばかりですが、よろしければ召し上がってください」などの使い方があります。また「ご賞味ください」という場面で「お召し上がりください」と言い換えても問題はありません。
しかし、「お召し上がりください」を「ご賞味ください」に言い換えると適切ではない場合がありますので気をつけて使うようにしましょう。
本来的には「お召し上がりください」は「召し上がってください」と表現するのが正しく、「お召し上がりください」とした場合には、二重敬語として誤用となってしまうのですが、ビジネスや普段のシーンに定着し、使っても間違いではないとされています。
小説やドラマなどでは「召し上がれ」と気軽に使われています。「召し上がる」は「食べる」の謙譲表現となっていますが、「召し上がれ」とすると命令形の表現となってしまいますので、ビジネス上の関係で目下の人にもあまり使わない方が無難です。
目下の人にも「食べて」という場合も「召し上がってください」や単に「どうぞ食べてください」や「お食べください」という方が丁寧さが伝わる表現となります。
他にも「召し上がる」は便利に使うことができる言い回しとなっており、「部長は〇〇を召し上がりますか?」の趣向を聞く使い方もできますし、「何を召し上がりますか?」や「何をお召しになりますか?」と接待などのシーンで相手に注文を確認する意味でも使うことができます。
他にもお礼の手紙やメールなどの文章表現で相手に対して「お歳暮を送りましたので、皆様で召し上がってください」や「心ばかりの品をお送りしました、お口汚しですが召し上がってください」などと使うこともできます。
目上にも目下にも丁寧な表現として使うことのできる「お召し上がりください」は「食べてください」の敬語表現として万能な言い回しとなっていますのでビジネスシーンで間違いのない表現となっていますので社会人として使えるようにしておくことをおすすめします。
類語②
「ご賞味ください」の類語②は「ご笑味ください」です「ご笑味ください」はへりくだった敬語である謙譲語となっています。元々進物を相手に届ける時に使う言葉「ご笑納」の「納」という字を「味」と入れ替えて「ご笑味ください」と使っています。
「ご笑納ください」が「つまらないものですが、どうか笑って受け取ってください」という意味を持つ言葉ですので、「ご笑味ください」はそれに準じた意味を持ち、贈り物が食べ物である場合に使う言葉となっています。
「ご笑味ください」の例文を示すと手紙にて「心ばかりの品ですが、皆様でご笑味ください」などの使い方ができます。口語としては「ご賞味ください」と同じ読みとなりますのであまり使うことはありません。
食べる贈り物を送った時に手紙に「ご笑味ください」と書いてあると粋な言い回しで気が利いていると相手に感じてもらうことができるかもしれません。
謙譲表現としての「ご笑味ください」や「ご笑納ください」という表現は日本語として独特のものとなっています。相手に対して自分を下げて相手に対する敬意を表すことが美徳とされており、そういった感情は日常に溢れています。
例えば相手に褒められた場合は「そんなことはないです」と謙遜したり、身内を褒められた時に「勿体ないお言葉です」などと自分を下げて「褒めてくれた」相手を持ち上げるような話し方が好まれます。
日本独特ですが、謙譲表現として相手を持ち上げることが一般的な常識となっていますので合わせて覚えておくと良いでしょう。
類語③
「ご賞味ください」の類語③は「お試しください」です。「お試しください」は試供品やお試しで商品やサービスを使ってもらいたい時に良く使われる言葉となります。
コマーシャルなどで「〇〇をお試しください」と使われることがあります。「お試しください」は使う物だけでなく食べ物を勧める時にも使うことができます。
実際に使う場合は「口に合うかわかりませんが食べてみてください」という意味を表しており敬語としては尊敬語の表現となりますので目上の人にも使うことができる言い回しです。
「お試しください」の例文を示すと「新商品の〇〇です、ぜひお試しください」や「今、人気の商品ですので、どうぞお試しください」などの使い方ができる表現です。
類語④
「ご賞味ください」の類語④は「ご堪能ください」です。「ご堪能ください」の「堪能」は「十分満足すること」「満ち足りること」の意味があり、「堪能」に「ご」をつけることで敬語として「十分満足してお楽しみください」という意味を相手に伝える表現となります。
類語③の「お試しください」と同じように食べ物以外にも旅行やサービスなどの「モノやコト」にも「ご堪能ください」と使うことができます。
「ご堪能ください」の例文を示すと「旬の料理をご堪能ください」や「地産の野菜を使った料理をどうぞご堪能ください」などの使い方ができます。
ここまでの類語は「お召し上がりください」が万能に使える以外は多くの場合、企業からお客様へ商品やサービスをおすすめする意味で使われることがほとんどです。接待などで迷った時には「お召し上がりください」とすれば間違いありません。
ご賞味くださいの使い方・例文
「ご賞味ください」の使い方を例文で示しながら意味や使い方を解説します。「ご賞味ください」は言葉としては丁寧語となり敬語ですので本来的には目上の人に使っても間違えた使い方ではないのですが、「ご賞味ください」自体の持つ意味が目上の人に使うと失礼になります。
「ご賞味ください」はそもそも企業や料理人が自分の作った商品をおすすめする意味での言い回しとなりますのでビジネスシーンではあまり使いません。ここで紹介する「ご賞味ください」の例文もそういった言い回しになりますので覚えておいてください。
逆にいうと自分が商品の宣伝をする人であったり料理を提供する側の立場であれば問題なく使うことができますので「ご賞味ください」が商品をアピールするのにふさわしい意味を持っている言い回しだといえます。
例文①
「ご賞味ください」の例文①は「どうぞご賞味ください」です。「どうぞご賞味ください」はお店で料理を 出した時の決まり文句として使われたり、料理の広告で料理の紹介の結びの文章として使われることが多くあります。
やはり企業がお客さんに「おいしいと言ってたべてもらいたい」という意味とニュアンスが込められた使い方となっています。自作の料理を知り合いに振舞う時に使うと相手から「余程の自信家」なんだなと思われてしまうかもしれません。
普段から気が通じ合ったり、気心が知れた仲であれば気軽に冗談として使ってみてもかまいませんが、あまり知らない間柄の人や目上の人に使うと上記の様に思われてしまうかもしれませんので「召し上がってください」と言い換えると無難でしょう。
例文②
「ご賞味ください」の例文②は「ぜひご賞味ください」です。「ぜひご賞味ください」は「ご賞味ください」に「是非」をつけた言い回しです。「是非」には「是が非でも」「相手に行動を強く希望する」「どうしても」という意味があります。
漢字・ひらがなともに意味は同じです。「ぜひご賞味ください」の表す言葉の意味は「絶対においしいから食べてみてください」というニュアンスが強い言葉となります。例文①と同じように企業がお客様にアピールする使い方となっています。
例文③
「ご賞味ください」の例文③は「新商品です。ぜひご賞味ください」です。「新商品です。ぜひご賞味ください」は例文に書いてある通り新しい商品や料理を広告にしてアピールする文として良く使われる使い方です。
「新商品」を「季節の料理」や「味自慢の一品」としても使うことができます。言葉の持つイメージとしてはグイグイと勢いがある言葉となり「よっぽどおいしいのかな?」と思わせる表現となっています。
引きの強い言葉となっていますので商品アピールには持ってこいの言い回しです。商品をアピールする立場の人は宣伝するときの言葉として覚えておくといいかもしれません。
例文④
「ご賞味ください」の例文④は「地元産の野菜を丁寧に調理した〇〇です。ぜひご賞味ください」です。「地元産の野菜を丁寧に調理した〇〇です。ぜひご賞味ください」は例文③の変化形で「ご賞味ください」の前につける紹介文を丁寧にした文となります。
多くの場合、道の駅や地元の郷土品やお土産のPR文句としてこの例文は使われています。前に置く文章をより商品の魅力が伝わるような作り方をすると、後に置く「ご賞味ください」が魅力を引き立ててくれる使い方となっています。
ここまで「ご賞味ください」の例文を紹介してきましたが、いずれの場合も個人から個人へ「食べて欲しい」「食べてください」という意味を伝える使い方ではなく企業から個人に対して商品や食べ物の魅力をアピールする使い方が一般的です。
ビジネスシーンや接待では「お召し上がりください」という言い回しの方が単に「食べてください」という意味を相手に敬意を持った表現とすることができますので個人対個人の場合は「お召し上がりください」とするとよいでしょう。
ご賞味くださいとお召し上がりださいの違い
「ご賞味ください」が企業などから個人へ商品をアピールする言い回しだと解説してきました。より凡庸性の高い「お召し上がりください」との違いを解説します。「ご賞味ください」は丁寧語の表現となり本来的には立場を超えて使うことができます。
一方の「お召し上がりください」は尊敬語としての敬語の表現となりますので、目上の人に対して敬意を伝えるのに最適な言葉となっています。それぞれの意味は「ご賞味ください」は「おいしいと褒めて食べてください」となります。
「お召し上がりください」は「食べてください」を丁寧に言い表した言葉となっていますので目上の人やお客様に使っても失礼にならない正しい敬語表現です。
お召し上がりくださいは目上の人に使える敬語という意味
「ご賞味ください」は企業から個人に向けたアピールの意味が強い言葉となり、「お召し上がりください」は尊敬語としての敬語で目上の人に使うことができる言葉となります。
「個人と企業では客として個人の方が目上なのでは?」と疑問に思われるかもしれませんが、言葉として「ご賞味ください」という言い回し定着しており、使っても問題ありません。
ビジネスシーンや目上の人に対して「食べること」を促す場合は「お召し上がりください」とし、企業で商品をアピールする立ち位置であれば「ご賞味ください」と使っても良いということになります。
ご賞味くださいを使う際の注意点
「ご賞味ください」を使う際の注意点は繰り返しになりますが、企業が個人に商品をアピールする使われ方が強い意味の言葉だと紹介しました。ビジネスでは丁寧語となるので使うことは本来的には問題はありません。
しかし、意味が上から目線のニュアンスが強い為、目上の人に使うと失礼になります。逆に会社へ訪問した際に相手先から「ご賞味ください」と言われたときの正しい返し方もありますのでそれぞれ解説します。
ご賞味くださいは目上の人には使えない
「ご賞味ください」は丁寧語となります。基本的に使えるのは目上の人以下に使うことができます。目上の人以下ということは同僚や部下などに使える丁寧語としての表現だと覚えておくと良いでしょう。
ここまでも紹介してきた通り企業が個人に対して商品アピールする意味で使うことがほとんどとなります。「ご賞味ください」の「賞味」の意味を考えると良くわかります。
「賞味」には大きく2つの意味があり、1つはここまでも紹介してきた「褒めながら食べること」の意味です。「褒めながら食べる」に丁寧語の「ください」をつけて「ご賞味ください」となります。
合わせて「褒めながら食べてください」や「称賛しながら食べてください」となります。もう一つの「賞味」の意味は日常生活の中で食品で良く見かける「賞味期限」にまつわる意味となります。
「賞味期限」の意味は「食品をおいしく食べることのできる期間」となりますので「ご賞味ください」をこちらの意味で解釈すると「おいしさを味わって食べてください」となります。
どちらの意味にとってもニュアンスとしては上から目線の意味を表しますので個人間でのやりとりでは、やはり目上の人に使うのはおすすめできません。
ご賞味くださいと言われた時の正しい返事
取引先や付き合いのある会社で食事を供されたりする場合に相手先から「ご賞味ください」といわれることもあります。その場合の返事としては「賞味させていただきました」が正しい返事となります。
他にも取引先から贈り物を受け取り、食べたことのお礼をする手紙やメールなどで「賞味させていただきました」とすることができます。例文を挙げると「先日お送りいただいた〇〇は営業課一同おいしく賞味させていただきました」などがあります。
相手に対して「ご賞味ください」というのは丁寧語となりますが、自分の動作を表現する場合に「ご」をつけるのは誤用となりますので自分の動作を表す場合は「ご」をつけずに「賞味」と使うようにしましょう。
ご賞味くださいの英語表記
「ご賞味ください」を英語表記すると食事を勧める意味で「Please enjoy」とすれば「食べてください」という意味を英語で伝えることができます。英語には尊敬語や謙譲語という敬語の表現がありませんので立場を問わずに使うことができます。
他にも「Enjoy your meal」や「Here you go,please eat」、「To have eaten or drink」などが使うことができます。
尊敬語や謙譲語がないからといって英語に丁寧な表現がないという訳ではありません。ビジネス英語や丁寧な英語表現というのは実は簡単な法則があり、相手に依頼する核となる部分以外の言い換えが重要です。
例えば英語で「ペンを取って」というと「Take me a pen 」となります。次に「ペンをとってください」を英語でいうと「Please take a pen」となり、「ペンをとってくれますか?」を英語でいうと「Will you take me a pen?」となります。
さらに丁寧な言い方を英語でしようとすると「Can you take me a pen?」は「ペンをとってくれますか?」「Would you take me a pen?」は「ペンをとっていただけますか?」
「Could you take me a pen?」は「ペンをとっていただけますでしょうか?」という意味になります。依頼の核となる部分以外を入れ換えると他の英語文も丁寧な表現となります。
ご賞味くださいは是非食べてみて!という意味
「ご賞味ください」は個人から個人へ使う言葉というよりも企業から個人へ向けて対象となる食べ物や飲み物、商品を広告などでPRする場合や外食時に店員からお客様に向けて使うことが多い「食べてください」という意味の言い回しです。
「ご賞味ください」は敬語としては丁寧語となりますが表す意味が上からのニュアンスがありますので目上の人にはつかわないようにしましょう。ビジネスシーンで「食べてください」と相手に促す場合は類語である「お召し上がりください」を使うと間違いありません。
また、相手から「ご賞味ください」と言われた場合には「賞味させていただきました」と食べた後に返事するようにしましょう。英語表現としては「Please enjoy」とすると「食べてください」という意味を英語で伝えることができます。