ご厚志の意味とは?
会社で新年会や歓送迎会などで使われることの多い「ご厚志」という言葉ですが、「ご厚志」は「上司や主賓から頂いたお金」という意味があります。
もともと「厚志」は「親切な心遣い」や「思いやりの気持ち」という意味があり、ビジネスシーンでは気持ちを表す場合「お金を出す」や「お金を包む」という意味を表します。
転じて「主賓や上司など目上の人がお金を多く出すこと」を「ご」をつけて「ご厚志」とし敬意語として高い敬意を表す尊敬語となっています。
そんな「ご厚志」の意味や正しい使い方をご存知でしょうか?「ご厚志」を頂いた場合には会の最中に必ず紹介することがマナーとなっています。
また、後日にお礼のメールを参加者に送りますが、ふさわしい文を例文を挙げて解説します。万が一、会の最中に「ご厚志」の紹介をできなかったり、忘れてしまった場合の例文も紹介しますので覚えておくようにしましょう。
「ご厚志」の類語を紹介しますので状況に応じて使い分けたり、自分が「ご厚志」としてお金を出す場合の表現方法も示しておきます。
「ご厚志」の注意点もそれぞれ紹介しますのでポイントを押さえて幹事としてスマートな振る舞いをできるように備えておきましょう!
ご厚志の特徴
会社の歓迎会や忘年会などの催し時に主賓や目上の人に多めにいただくお金のことを「ご厚志」として呼びます。基本的に主賓である出席者からお金は受け取らないのが一般的ですが、主賓が目上で感謝の気持ちとして渡してくれる場合があります。
他にも葬儀の際に渡す香典の事を「ご厚志」と表現する意味もあります。それぞれ解説しますので使い方を覚えておきましょう。
歓迎会や新年会・忘年会で使われる
「ご厚志」は会社などで催す歓迎会や新年会・忘年会で使われることが多い言葉となっており、その意味は「目上の人が気遣いをしてお金を包んでくれること」となっています。「ご厚志」は尊敬語として目上の人に対して使う言葉となっています。
尊敬語表現ですので、自分がお金を包む場合などには使うことができません。自分が相手に対してお金を多く出す場合などは「寸志」と謙譲表現に言い換える必要がありますので覚えておいてください。
葬儀の場合「ご厚志」は「香典」という意味で使う
葬儀での香典を「ご厚志」と呼ぶ場合がありますが、こちらの場合も香典を出す側が使う言葉ではありません。香典を出してもらった立場の人がお礼のメールや手紙を出す時に「ご厚志」と言い換えて文章を作る場合に使う使い方が一般的です。
例文を挙げると「ご厚志を賜り、厚く御礼申し上げます」や「多くの気遣いを賜り、誠にありがとうございました」などの使い方が定型文として使われています。
もちろん「ご厚志」を香典とそのまま使っても間違いではありませんが、言い換え表現として覚えておくと良いでしょう。
ご厚志のマナー
会社の催し物などで「ご厚志」をいただく場合は多々ありますが、「ご厚志」を頂いた時にも頂いて、会が終わった後にもマナーがありますので覚えておきましょう。
会の参加者に事前に「ご厚志」をお願いしたり、また会の始まりの時には「ご厚志」を頂いた事を紹介するのを忘れないようにしましょう。
会が終わった後日に会計報告を兼ねたお礼のメールを参加者に送る事や「ご厚志」をいくら頂いたのか金額を明かさないなどがありますのでそれぞれ「ご厚志」にまつわるマナーを解説します。
ご厚志をお願いしない
「ご厚志」は紹介した意味の通り「気遣い」や「思いやり」を「お金として表した」ものとなっています。例え親しい関係の目上の人であっても「ご厚志をおねがいします」と頼むのは「気遣いしてください」とお願いしていることと同じ意味を表しますので大変失礼です。
過去の風習として目上の立場の人が多めに出すということが残っていますがそれに従わなければならないというルールはありませんので「多く出す人は多く出す」「そうでない人もいる」と理解しておきましょう。
逆の立場で考えるとよくわかりますが、好意を示すのは主体的であった方が気持ちいいのではないでしょうか?相手に好意や心遣いを強要されてもうれしくはないはずです。それは目上の人も同じだという事を忘れないでください。
ご厚志を出してくれた人を紹介する
この「ご厚志」のマナーは幹事である人が気をつけるべきこととなっています。それは会を開いた時に参加者には参加のお礼をし、「ご厚志」があったことを紹介することが「ご厚志」を出してくれた方へ対する配慮となります。
報告するタイミングは会の雰囲気によってもかわりますので一概には言えませんが、一般的には会に先立ち乾杯をすることが多くなっていますので、冒頭の挨拶の時に紹介すると「紹介を忘れてしまった」ということを防ぐことができますのでおすすめです。
次いで紹介するタイミングは中締めが多くなりますが、中締めの頃になるとお酒が入っている場合も多く、盛り上がりの余り、紹介できなくなることも考えられますので紹介のタイミングを見計らうことは幹事として大切なこととなります。
例文を挙げると「会に先立ちまして、〇〇部長からご厚志を頂戴しておりますのでご紹介いたします」や複数の人から「ご厚志」があった場合立場が高い人から紹介するようにしましょう。
こちらも例文を挙げると「本日歓送迎会を行うにあたり、〇〇部長、△△課長からご厚志をいただきました、〇〇部長、△△課長ありがとうございます」などがあります。
会計報告をする
会が終わった後日にはお礼を兼ねた連絡を参加者全員に行います。その時に会計報告を忘れずに行いましょう。会費をいくら徴収して、いくら払ったのかその時に「ご厚志」を誰から頂いたのかを記載することがマナーとなります。
その結果、会費が余るのであれば余ったことを報告しましょう。余った金額を参加者に平等に返金しますが、よく催しを開くのであれば次回に持ち越しとしておくこともありますのでこれまでの例に従うと良いでしょう。
また会費の余りを参加者の人数で割った時に1000円以下の小銭となる時は多くの場合次回に持ち越すことにしている場合がありますので併せて確認しておくと無難でしょう。
参加者にお礼のメールを送る
会の参加者にお礼を兼ねたメールを忘れずに送るようにしましょう。できるだけ早くすると好印象です。この時に「ご厚志」を頂いた事を紹介し忘れていたのであれば報告をしておきましょう。
忘れた場合の例文としては「先日はお忙しい中、会に参加していただきありがとうございました。お楽しみいただけましたでしょうか?幹事の不手際の為、ご紹介が遅れましたが、〇〇様からご厚志を頂戴しましたことをご報告いたします。〇〇様ありがとうございました」
以上のような例文がありますが、紹介を忘れた場合はメールをいち早く出すことが誠意ある対応となり、マナーある行動に繋がります。会が盛り上がりすぎて紹介を忘れてしまうこともありますので次善の策として覚えておきましょう。
ご厚志の金額は明かさない
「ご厚志」を頂いた紹介をする時に具体的な金額を明かすのは失礼に値します。いくら頂いたとしても「ご厚志を頂きました」「ご厚志を賜りました」とご厚志があったという事実だけの紹介に留めるのがマナーです。
また本人にお礼をいう場合も具体的な金額を言わずに「ご厚志いただき、ありがとうございました」と事実に対してお礼をいうようにしましょう。
ご厚志の類語
目上の人からお金を余分に頂く意味の「ご厚志」には言い換えすることができる類語や逆に自分がお金を出す場合に使うことができる言葉があります。
お祝いとしてのお金や贈り物を頂いた時のお礼としても使うことができる言葉がありますので、状況に応じて使い分けるようにしましょう。ここでは「ご厚志」の類語「お心遣い」「ご厚情」「ご芳志」「寸志」の4つの言葉をそれぞれ解説します。
類語①
「ご厚志」の類語①は「お心遣い」です。「お心遣い」は「心遣い」を丁寧な表現にした敬語となっています。「心遣い」の意味は「人の為を思って配慮すること」となっています。
言葉通り「相手を気遣う」という意味がありますが、お祝いを頂いた場合にはお金のことを言い換えている場合がほとんどです。
例文を挙げるとお金を貰った場合は「先日はお心遣いありがとうございました。」やお金ではなくお世話になった場合には「今回の案件に関しまして、ご指摘やお心遣い賜り誠にありがとうございました」などの使い方ができる類語となっています。
類語②
「ご厚志」の類語②は「ご厚情」です。「ご厚情」の「厚情」は「厚い情け」や「深い思いやりの気持ち」という意味があります。「ご厚情」とすることで目上の人から受けた「情け」や「思いやり」の気持ちを表し、感謝の言葉と合わせて使う場合が多くなります。
例文を挙げると「今回のプロジェクトを完成させたのは皆さまのご厚情の賜物でございます」や「ご厚情賜り、誠にありがとうございます」などの使い方ができる類語となっています。
類語③
「ご厚志」の類語③は「ご芳志」です。「ご芳志」は「ご厚志」と同じく「目上の人からいただいた心遣い」「お金」の意味がありますが、「ご厚志」と比較するとよりフォーマルな表現となります。
会社の上司など近い関係性の目上の人に使うよりも外部の主賓などの目上の人からお金を頂いた場合に使う使い方が多い言葉です。例文を挙げると「本日、主賓の〇〇さまよりご芳志を賜りました」などがあります。
マナーの項目でも触れましたが、外部の人へは後日、メールなどの連絡が難しい場合がありますので必ず紹介する事を忘れないようにしましょう。
類語④
「ご厚志」の類語④は「寸志」です。「寸志」はへりくだって敬意を表す謙譲語の表現となっています。催し物などで自分がお金を出す場合は「ご厚志」を使うことができません。それは「ご厚志」が尊敬語となる為自分の行動に使うことは誤用となる為です。
自分がお金を出す場合は謙譲語の「寸志」と言い換えて渡すようにしましょう。「寸志」は「寸」は」わずかばかり」の「志」が「気持ち」という意味を合わせて「ほんの少しの気持ちですが」や「わずかばかりですが」という意味を表します。
新入社員の最初のボーナスを「寸志」というのと同じ意味を表しており、「まだ社歴が浅くボーナスはあげられないけど気持ちだけで悪いですがお礼を渡します」という意味で使われています。
このことからもわかる様に「寸志」は目上の立場から目下の立場に使われる謙譲表現となっています。どちらの場合も「寸志」としてお金を頂いた場合は「御志」または「ご厚志」と言い換えてお礼をいうようにしましょう。
ご厚志の使い方
「ご厚志」と言い換えることのできる類語をわかった上で「ご厚志」の具体的な使い方を例文を挙げながら解説します。主に宴会の挨拶での使い方や催し後のお礼のメールの例文を紹介します。
しかし、葬儀の際に使われる「ご厚志ご辞退」だけは他の例文と異なり特殊な使い方となりますので例文の最後に紹介します。
例文①
「ご厚志」の例文①は「ご厚志を頂戴しております」です。「ご厚志を頂戴しております」は宴会での挨拶時に「ご厚志」を受け取った事を紹介するに一番オーソドックスな言葉の選択となっています。
例文を挙げると「〇〇様からご厚志を頂戴しております」や「〇〇様、〇〇様ご両名からご厚志を頂戴しております」などがありますが、複数の人から「ご厚志」を受け取った場合は立場が上の人から順番に紹介することを忘れないように気をつけましょう。
例文②
「ご厚志」の例文②は「ご厚志をいただきました」です。「ご厚志をいただきました」は宴会の挨拶としても使えますし、会の後に送るお礼のメールの文にも使いやすい使い方となります。
基本的に会の最中に「ご厚志」の紹介することがマナーですが、会の状況で紹介できなかった場合は早めにメールで「ご厚志」があった事を報告するようにしましょう。
例文を挙げると「先日は新年会にご参加いただきありがとうございました。幹事の不手際の為、遅れてしまいましたが、〇〇様からご厚志をいただきましたことをご報告いたします。〇〇様、いつもありがとうございます」
「皆さま、先日はお忙しい中、歓迎会へのご参加ありがとうございました。幹事として至らぬ点があったことをお詫びいたします。改めてご報告させていただきますが、当日〇〇部長よりご厚志をいただきました。〇〇部長ありがとうございました」
幹事として至らなかったとまずはお詫びの意味を表し、改めてお礼を述べるようにすると良いでしょう。忘れてしまった場合はなるべく早く例文の様なメールを参加者全員に送ることがマナーとなります。
「ご厚志」を送った人が「自分がたくさん出した」と誇示したいと思っているとは考えられませんが、会を催すにあたって心遣いを頂いた事を参加者に周知するのは大切なこととなっています。せっかく「ご厚志」を頂いたのですから、誰にとっても気持ちの良い会を進行したいものです。
例文③
「ご厚志」の例文③は「ご厚志を賜りました」です。「ご厚志を賜りました」は例文②と同じ意味を表しますが、「賜りました」とすることでより格式のある丁寧な表現をすることができます。
目上の人でも普段から関係がある人に対してよりも遠い関係にある目上の人に敬意を表す意味で使うことができる例文となっています。
会の後のメール、挨拶時の紹介どちらにも使うことができます。また主賓から「ご厚志」を頂いた場合には「ご芳志」と言い換えるとより格式のあるフォーマルな表現をすることができますので併せて覚えておくと良いでしょう。
例文を挙げると「宴会に先立ちまして、〇〇様からご厚志を賜りましたのでご紹介いたします」や「ご厚志」を言い換えた「宴会に先立ちまして、〇〇様からご芳志を賜りましたのでご紹介いたします」などの使い方ができる例文となっています。
例文④
「ご厚志」の例文④は「ご厚志ご辞退」です。「ご厚志ご辞退」は「葬儀の際にお供えや香典を受け取らない」という意思を表す表現です。葬儀後に香典返しをすることなどを省略したいという希望があり、「ご厚志ご辞退」と葬儀の案内に記載をします。
しかし、「ご厚志ご辞退」と知らされていても念の為、香典を持参しておいた方が無難です。「ご厚志ご辞退」は「何も受け取らない」という意思表示ですが、お供えや供花だけを辞退している場合があるからです。
いずれの場合にしても葬儀はご遺族の意思を尊重する場となりますのでどういう場合にも対応できるように備えて参列するようにしておくと間違いありません。
ご厚志の注意点
「ご厚志」の意味や使い方、類語を解説しました。実際に「ご厚志」を頂いた場合や会が終わったあとのお礼のメールや会費の取り扱い、逆にお金を渡す場合の注意点をまとめておきます。また「ご厚志ご辞退」の注意点も改めてまとめておきますので併せて覚えておきましょう。
ご厚志を頂いた場合の対応
目上の方や、本来なら会費を受け取らない人から「ご厚志」を頂いた場合は催しの挨拶時に「ご厚志」を頂いたことを必ず紹介しましょう。複数の人から「ご厚志」を頂いた場合は格の高い順に紹介する配慮が必要です。
会の流れなどでどうしても「ご厚志」を頂いたことが紹介できなかった場合は後日参加者全員に送るお礼のメールで紹介できなかったことに対してのお詫びとお礼をできるだけ早く送るように心掛けましょう。
また、自分がお金を送る場合には「ご厚志」を「厚志」として渡すのは間違えた言葉の使い方となります。正しくは「寸志」と表書をした白い封筒に入れて渡す様にすると良いでしょう。
「ご厚志」はあくまでも受ける側が使う尊敬語としての言葉となり尊敬語を自分の動作に使うことは誤用となります。自分の動作を丁寧な表現にする場合は謙譲語を使うことが正しい言葉の使い方となりますので覚えておきましょう。
会費が余っても返金しない
催しが終わったあとにはお金を支払いますが、多くの場合会費を参加者から募っていますので会計報告をすることがマナーとなります。「ご厚志」を頂いたことはメールで知らせますが、「〇〇円いただいた」とはせずに「ご厚志」を頂いたことだけを報告しましょう。
その上で余った会費は参加者に平等に返金しますが、小銭となるような場合は次回の催しに繰り越す場合が多くなっており、1000円以上の返金がある場合も慣例として持ち越す場合がありますのでこれまでの方法を確認しておくと安心です。
葬儀でご厚志辞退といわれた場合は?
葬儀では多くの場合、香典やお供えをするのが一般的ですが故人の遺志や喪家の事情で「ご厚志ご辞退」とする場合があります。葬儀は故人を偲ぶ場となりますので「ご厚志ご辞退」と言われた場合には配慮して参列するだけに留めると良いでしょう。
しかし「ご厚志ご辞退」といっても香典は受け取る「供物・供花ご辞退」の場合もありますので念の為に香典だけは用意して葬儀に向かう方が良いでしょう。
ご厚志は目上の人から頂くお金という意味
「ご厚志」は「心遣い」や「こころざし」という意味があります。催し事などで「心遣い」という場合は「お金」という意味を表し、「目上の人から頂くお金」という意味を表します。
「ご厚志」頂いた場合は頂いたことをその場で紹介するのがマナーとなりますので忘れないようにしましょう。万が一、紹介できなかった場合はできるだけ早くメールでお詫びと紹介をすることがマナーとなります。
目上の人でも格式張った表現が必要な場合は「ご厚志」を「ご芳志」と言い換えるとより丁寧さが伝わる表現となります。また、自分がお金を渡す場合は「寸志」と言い換えることを忘れないようにしましょう。