「ご連絡お待ちしております」の意味とは?
会話やメールなどで使われる「ご連絡お待ちしております」という慣用句は、頻繁に見聞きする言葉です。では「ご連絡お待ちしております」の意味とはなんでしょうか?
「見たまんまでしょ」というツッコミが入ることは想定されますが、噛み砕いて表現すると「相手からの知らせを今か今かと望みながら時を過ごす」ことです。
つまり「ご連絡お待ちしております」という言葉は、「相手からの知らせを望んでいる状態」を意味しています。そんな状態とはどんな状態が想定されるのでしょうか?
今回はそんな「ご連絡お待ちしております」について徹底紹介。「ご連絡お待ちしております」の由来から、特徴、敬語表現、使い方、注意点について順に紹介していき、「ご連絡お待ちしております」をマスターできるよう特集していきます。
「ご連絡」「お待ちしております」の由来
意味合いを確認できたところで、「ご連絡お待ちしております」の由来はどこにあるのでしょうか?馴染みある言葉ではあるが故に日本では古くから使用されてきた可能性があります。
「ご連絡お待ちしております」は「ご連絡」と「お待ちしております」の組み合わせで成立しています。「ご連絡」は「させていただきます」「ください」など、後に続く表現が多数存在しておりますし、「お待ちしております」も「戸の外で」「ご感想を」など修飾する語は「ご連絡」に限りません。
つまり「ご連絡お待ちしております」の「ご連絡」と「お待ちしております」それぞれが一緒に使われているだけではなく、独立して使用されている由来があるのです。
上記を踏まえて、「ご連絡お待ちしております」の「ご連絡」と「お待ちしております」それぞれの使用時期を辿った由来を以下より、ご紹介していきます。
「ご連絡」の由来
「ご連絡」の使用時期の由来を辿る文献は過去の作品で確認する事ができます。小説家の井上靖が「朝日新聞」に1971年(昭和46年)に発表した「星と祭」という作品です。下記の一説を紹介します。
「最近は佐和山もすっかり十一面に夢中になっております。おひとりでお出掛けの時は、佐和山にご連絡なさるのが宜しゅうございましょう」
「ご連絡」の使用時期の由来を辿る文献の2つ目として小説家の松本清張が「松本清張全集 月報」に1971年(昭和46年)に発表した「黒の回廊」という作品が上げられます。下記の一説を紹介します。
「ホテルのポーターがお荷物を間違えてよその部屋に運ぶ場合が多いですから、その際は、騒がれずに、すぐにお世話させていただく、わたくしにご連絡を願います」
「お待ちしております」の由来
「お待ちしております」の使用時期の由来を辿る文献も過去の作品で確認する事ができます。小説家の島田清次郎が1919年(大正8年)に発表した「地上」という作品です。下記の一説を紹介します。
「さっき電話をおかけなさって今夜は少し遅くなるかも知れないから、風呂を沸かして置いてくれろって仰しゃいましたので、さっきから太助が湯加減をしてお待ちしておりますが、まだお見えになりませんようでございます」
「お待ちしております」の使用時期の由来を辿る文献の2つ目として小説家の藤沢周平が「オール讀物」に1990年(平成2年)から連絡開始した「秘太刀馬の骨」という作品が上げられます。下記の一説を紹介します。
「こうして門前を掃きながら、旦那さまの御下城をお待ちしておりましたのも、一刻もはやく今日の出来事を申し上げたかったからでがんす。旦那さま、奥さまはもうご病人ではござりませぬ」
上記文献から、「ご連絡」「お待ちしております」がそれぞれ独立して使用されてきた事が理解でき、は少なくとも、大正から平成に至るまで、時代を跨いで使用されていたことがわかります。
「ご連絡お待ちしております」の特徴
「ご連絡お待ちしております」の意味と由来が理解できたところで、「ご連絡お待ちしております」の特徴にはどんなものが上げられるのでしょうか?
1つ目の特徴は先述した「ご連絡お待ちしております」=「相手からの知らせを望んでいる状態」と関係があります。これは私たちが常に日常生活で接し、感じている状態です。2つ目の特徴は「ご連絡お待ちしております」の「表現」に関係しています。
上記「相手からの知らせを望んでいる状態」と「表現」を踏まえて、「ご連絡お待ちしております」の特徴を下記にてご紹介していきます。
ビジネスシーンで主に使う事ができる
「ご連絡お待ちしております」の1つ目の特徴として「相手からの知らせを望んでいる状態」が想定できるビジネスシーンです。
ビジネスシーンは「相手からの知らせを望んでいる状態」ですので、「ご連絡お待ちしております」という言葉で頻繁に見聞きする言葉です。対面で、電話で、メールで、さまざまなシーンが想定できます。
ビジネスシーンはお客様が物やサービスを購入することで始めて成立する世界です。物やサービスを購入する過程の中で、「連絡が来る」ということが「商品についてのお客様のサイン」とみる事ができます。
「ご連絡お待ちしております」という言葉は「連絡が来る」という、実際に商品を購入する、検討するなどのその具体的な一歩を促すための言葉としてその存在価値があります。
敬語表現である
特徴の2つ目としては、「ご連絡お待ちしております」は敬語表現であるということが上げられるポイントになります。
「ご連絡お待ちしております」がビジネスシーンなどで多く使うことは先述しましたが、そのことは、つまり社会における人間関係で使う機会が多いということにつながります。
敬語表現は、日本においては、身分社会が確立されていた封建社会から使用されており、「上位身分への敬意」として機能しておりました。
一方現代社会での、敬意表現の使用の意味は「上位身分への敬意」の意味においての使用ではありません。あくまでビジネス上の立場の差を敬語で表現することによって人間関係を円滑にしている点で使用され続けています。
対面であれ、メールであれ、相手へ敬意を払うことがビジネス上の社会生活において不文律となっていることが現在社会においては着目すべきポイントです。では、以下より「ご連絡お待ちしております」がどんな敬語によって成り立っているのかを詳しくご紹介いたします。
「ご連絡お待ちしております」の敬語
「ご連絡お待ちしております」は先述の「特徴」で述べたように「敬語表現」になります。「敬語表現」は相手を敬う表現であることは先述しました。ではどんな敬語が使われているのでしょうか?
「ご連絡お待ちしております」は慣用句です。この文の敬語表現を分析するには文節に区切って、それぞれを検証していく必要があります。
まず、敬語の種類を以下より説明しつつ、「ご連絡」「お待ちして」「おります」に分割してそれぞれの敬語の種類を検証していきます。
敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」がある
「ご連絡お待ちしております」をそれぞれの文節に分けて敬語をご紹介する前に、敬語の種類とそれぞれの特徴をご紹介していきます。
敬語には3種類あり、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」があります。「尊敬語」は敬意対象が話の行為の主体の場合の表現になります。例えば、「言う」は「おっしゃる」、「いる」は「いらっしゃる」、「座る」は「お掛けになる」などです。
「謙譲語」は、話し手が行為の主体です。敬意対象である話の受けてに対して、自身の行為を謙り表現することで、敬意対象の立場を上げる表現になります。「言う」は「申す、申し上げる」、「いる」は「おる」、「座る」は「座らせていただく」などです。
「丁寧語」は、話し手が聞き手に対して、丁寧に表現することです。主に語尾変化を伴うことで表現されます。「言う」は「言います」、「いる」は「います」、「座る」は「座ります」などです。
このように、話の行為の主体が誰かということで、「尊敬語」「謙譲語」の使い方が決まってきますし、一つの文章の中で尊敬語、謙譲語、丁寧語の全て入っているケースも珍しい事例ではありません。
例えば「このようなお褒めのメールを頂戴しまして、幸甚の至りに存じます」という一文がある場合、尊敬語は行為の主体に使われる敬語なので、「お褒め」になります。
謙譲語は話し手が自分の行為を謙って、敬意の対象の立場を上げるので、この中の話し手の行為は「頂戴(受け取るの謙譲語)」「存じます(思うの謙譲語)」
丁寧語が話し手が聞き手に対して、丁寧に表現する敬語なので、この中の話し手が聞き手への丁寧な表現としては「しまして」「ます」が当てはまります。
「ご連絡」「お待ちして」「おります」はどんな敬語?
上記の「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の性質がひと通り理解できたところで、今回の「ご連絡お待ちしております」の敬語の種類を確認していきます。先述したように「ご連絡」「お待ちして」「おります」をそれぞれ順を追って説明していきます。
まずは「ご連絡」。これは「連絡」をする行為の主体は敬意の対象であるので、「ご連絡」は尊敬語が当てはまります。
次は「お待ちして」。これは「お待ちする」する行為の主体は話し手になります。よって「お待ちする」は謙譲語が当てはまります。
最後に「おります」これは「おる」に「ます」がついて言葉です。「おる」のは話し手が行為の主体です。また、「ます」は「おる」を丁寧に表現させる補助動詞であり、四段活用した「おる」の連用形に接続しております。
つまり「ご連絡お待ちしております」は、文節ごとに分解してみると尊敬語と謙譲語と丁寧語のすべての敬語が含まれている言葉であることが理解する事ができます。
「ご連絡お待ちしております」の使い方
それでは先述の特徴「ビジネスシーン」で「敬語表現」として使われている「ご連絡お待ちしております」という言葉は私たちの実生活でどのように使うことができるのでしょうか?
「ご連絡お待ちしております」はあまりにも当たり前に日常生活に浸透しているため、「ご連絡お待ちしております」が正しいシーンで使われているかを点検をして、検証することを忘れがちになります。
点検をすることで「ご連絡お待ちしております」以外の敬語表現も合わせて正しく使われているかも確認することができます。この点検作業はメールや会話をビジネス上頻繁に行う上で、大切になる要素です。
上記を踏まえて「ご連絡お待ちしております」の例文を下記にケース別でご紹介します。ぜひこの際「ご連絡お待ちしております」使い方をご参考いただければ幸いです。
例文①
「ご連絡お待ちしております」の使い方の1つの例文として、メールなどのビジネスシーンが上げられます。ビジネスメールなどで「ご連絡お待ちしております」が使われています。
「本日はお忙しい中、弊社に御来社いただきまして、ありがとうございました。(中略)何かご不明な点やご興味がお有りになる点などございましたらなんなりとお伝えいただければ幸いです。ではご連絡お待ちしております」
上記のようなビジネスメールなどのシーンで「ご連絡お待ちしております」という用語の使い方が想定できます。
上記例文における敬語は、先述の敬語の種類の判別に従うと、尊敬語は「お忙しい」「御来社」「ご不明」「ご興味」「お有り」「お伝え」、謙譲語は「いただく」「おる」、丁寧語は「ございました」「です」という敬語が使われている事がわかります。
例文②
「ご連絡お待ちしております」の使い方の1つの例文として、接客などのビジネスシーンが上げられます。対面などで「ご連絡お待ちしております」が使われています。
「この商品のお受け取り先などは、後々の電話かメールで大丈夫です。ではご連絡お待ちしております」このようなシーンで「ご連絡お待ちしております」という用語の使い方が想定できます。
上記例文における敬語は、尊敬語は「お受け取り」、丁寧語は「です」という敬語が使われている事がわかります。
例文③
「ご連絡お待ちしております」の使い方の1つの例文として、手紙などのビジネスシーンが上げられます。商品を購入した後に「ご連絡お待ちしております」が使われています。
「この度は本商品をご購入いただきありがとうございました。本商品をご購入の方に、今後の製品やサービスの向上につなげるためアンケートにご協力いただいております。(中略)では、ご連絡お待ちしております」
このようなシーンで「ご連絡お待ちしております」という用語の使い方が想定できます。メールでも想定できますが、手紙の方が誠実さが相手方に伝わります。
上記例文における敬語は、尊敬語は「ご購入」「ご協力」、謙譲語は「いただき」「おる」、丁寧語は「ございました」「ます」という敬語が使われている事がわかります。
例文④
「ご連絡お待ちしております」の使い方の1つの例文として、社内のビジネスシーンが上げられます。目上の立場の方へのメールや電話などで「ご連絡お待ちしております」が使われています。
「〇〇さんが月末であればお時間は大丈夫ということでしたので、ぜひ同席いただければと思います。詳しい日時など、ご連絡お待ちしております」という用語の使い方が想定できます。
上記例文における敬語は、尊敬語は「お時間」、謙譲語は「いただく」、丁寧語は「でした」「ます」という敬語が使われている事がわかります。会社の社風やしきたりに依りますが、目上とはいえ社内なので、あまり過度な敬語にならないような表現に抑えるようにご留意ください。
「ご連絡お待ちしております」の注意点
「ご連絡お待ちしております」を使う上で気をつけなければならない点はどこにあるのでしょうか?以下に「ご連絡お待ちしております」を使う際の注意点をご紹介していきます。実用につながる大切な部分なので、実際に「ご連絡お待ちしております」を使う際、参考になれば幸いです。
仕事上自分より立場の低い人へは使えない
「ご連絡お待ちしております」を使う上で気を付けるポイントは「仕事上自分より立場の低い人へは使えない」と言う点です。
先述したように、「ご連絡お待ちしております」は尊敬語、謙譲語、丁寧語を複合的に使用している敬語表現で、例文でもご紹介したように、お客様や目上の人と親和性がある言葉です。
部下や同僚など、ビジネスの立場上、対等だったり、低い人へ「ご連絡お待ちしております」を使用することは、相手方にとって「堅苦しい」、「かしこまりすぎている」感が出てしまい、無駄な距離感が生まれてしまいかねないので注意が必要です。
「ご連絡お待ちしております」は「相手からの知らせを望む」意味
「ご連絡お待ちしております」の意味、由来、特徴、敬語、使い方、注意点を順を追って見てきました。「ご連絡お待ちしております」は「相手からの知らせを望んである」ことを意味としている敬語表現です。
敬語表現は人間関係を円滑にする上で大切な要素です。「ご連絡お待ちしております」の使い方をぜひご参考いただき、より充実した対人関係を構築していただければ幸いです。