馬は特徴ごとに5つの種類に分類できる
馬の分類の仕方は国や利用目的によって異なります。外見的な特徴や運動性によって「混血種」「冷血種」の種類に分類する方法や、海外で多く用いられる「冷血種」「温血種」「熱血種」などの気質により種類を分類する方法があります。
日本では大きく「軽種」「中間種」「重種」「ポニー」「日本在来種」の5種類に分類されています。この分類の仕方は1937年に馬政局により定められた4種類の分類に、農林水産省が家畜統計としてポニーを加え5種類とした分類方です。
この5種類に分類された馬には、それぞれに様々な品種の馬があります。それではこれから分類された種類に属する馬の品種の名称と特徴を紹介します。
馬の種類①軽種の特徴と代表品種
「軽種」とは主に競走馬や乗用馬として使われる種類で、聞いたことがある品種が多いのではないでしょうか。体重は約400kg〜500kgと軽量でスマートな体型をしています。
軽量なので素早い動きができ、走るスピードが早いのが軽種の特徴です。それでは軽種に属する代表的な品種の体型や気質などの特徴に歴史も合わせて紹介します。
サラブレッド
サラブレッドはもっとも代表的な軽種で、世界各国で競争馬や乗馬用として活躍しています。18世紀初頭にイギリスでアラブ種や狩猟に用いられていたハンターを競争用に品種改良した馬です。
速く走ることを目的として交配と淘汰(とうた)を繰り返して進化し、人が作り出した最高の芸術品とも言われています。頭は小さく足が長くスマートで非常に美しい体型をしていますが、胸や臀部(でんぶ)の筋肉は発達しているので速く走ることに特化した馬と言えます。
気性は非常に繊細で、物音にも反応して急に動き出したりするような敏感な面を持っていてケガも多く、精神的にも肉体的にもデリケートなのが特徴です。また血統にこだわりがあり、競馬で優秀な成績を残した血統馬は億単位で取引されます。
サラブレッド(Thoroughbred)という言葉の語源は、Thorough(徹底的な)とbred(育てられた)という単語からなっているように「徹底的な管理のもとに大事に育てられた」というニュアンスがあります。
人の代名詞として育ちの良さを表わす時に「彼は〇〇界のサラブレッドです」のように使われます。このことからもサラブレッドという馬に多くの人が憧れと羨望(せんぼう)を抱いているのがよくわかります。
アラブ種
アラブ種は名前のようにアラビア半島原産の軽種の馬で、アラブ系の遊牧民たちの手によって改良されてきた品種で、サラブレッドより小柄で走る速力は劣りますが耐久性や耐候性に優れています。
現存する馬の中でもっとも最初に確立された馬種で、サラブレッドやクォーターホースなどもこのアラブ種を元に作られていて、世界の改良種にもっとも大きな影響を与えたと言われています。
しかし日本ではあまりアラブ種が普及しなかったため、日本でアラブ種といえばアングロアラブを指すことが多く、アラブ種のことは「純血アラブ」と呼んでいます。
アングロアラブ
アングロアラブは、サラブレッドとアラブ種を掛け合わせて作られた軽種です。サラブレッドの神経質でケガをしやすい弱点を改良するためアラブ種を掛け合わせて、頑丈さと温厚な気質にスピードを合わせ持たせたのがアングロアラブです。
原産はイギリスですが、ヨーロッパを中心に世界各国で生産され、競走馬や乗馬用として活躍しています。また抜群の跳躍力があるので馬術の障害物競技にもよく使われています。
日本では戦前は軍馬として使われていましたが、現在はサラブレッドに比べスピードが遅いので競走用にはあまり使われなくなり生産もほどんど行われていません。
アハルテケ
アハルテケは中央アジア南西部の砂漠の多いトルクメニスタン原産の馬で、現存する馬種の中でもっとも歴史が古い馬種の一つです。まっすぐな頭部と長い耳、アーモンド色の目、スリムな体型と容姿の美しさから「黄金の馬」と言われています。
最大の特徴は光沢のある毛づやで、この光沢の色は明るい鹿毛や月毛、河原毛で見ることができます。砂漠が多いトルクメニスタン地方ではこの毛色がカモフラージュとなっていたと考えられ、また砂漠という過酷な環境にも適応するタフで丈夫さを持っています。
アハルテケは美しい容姿だけでなく、運動能力も非常に高く無駄のないスリムな体型をしていて持久力にも優れているので馬場馬術や障害飛越競技などで活躍しています。
ヨーロッパやオーストラリア、北アメリカなどで生産されていますが、特にロシアで人気が高い馬です。またアハルテケは非常にプライドや情が厚く、一人の人にしか慕わないとも言われています。
リピッツァナー
リピッツァナーは16世紀のオーストリアのリピッツア牧場で品種改良を始めたことに名前の由来があります。当初の生産の目的は当時の王室に気品のある良質の馬を提供することにありました。
特徴は肉体的には丈夫で柔軟性を備え、精神的には忍耐強く感受性に優れとても賢い軽種の馬です。18世紀半ばまでは主に軍馬として活躍し世界最良の軍馬の一つと言われていました。現在は乗馬用として使われておりウィーンのスペイン乗馬学校の馬場馬術にも使われています。
トラケナー
トラケナーは18世紀にプロイセン王国(現在のドイツ北部からポーランド西部)で、オーストリアで育成されたリピッツァナーに対抗する軍馬としてトラケーネン牧場で改良された軽種品種です。
トラケナーはスピードや持久力に優れており18世紀半ばにはリピッツァナーと並び世界最良の軍馬の一つとして認められるようになりました。
19世紀後半になるとスピード能力においては、その地位をサラブレッドにゆずる形となり現在は馬場馬術用として活躍しています。
アンダルシアン
アンダルシアンはスペイン原産の馬を改良した品種で、別名「スパニッシュホース」と呼ばれスペインの闘牛士の伝統的な乗用馬として使われてきました。
見た目も優雅で高貴な雰囲気を持っているため、スペインの他にもイギリスやデンマークの王室用の馬の基礎として使われています。また柔軟な関節と強靭な脚があり、軽やかな歩き方や様々な動きができ性格も従順なので高等技術の演技ができる品種です。
日本でも飼育されており、馬事公苑ではアンダルシアンホースダンスといって音楽に合わせて華麗な動きや演技をする姿は見事です。アンダルシアンは数ある軽種の中でもっとも演技能力の高い品種と言えます。
馬の種類②中間種の特徴と代表品種
中間種とは体格や体重が中間という意味ではなく、速く走ることを目的とした軽種と重い荷物を引くことを重視した重種の中間という意味の分類です。
中間種は乗馬用や馬術競技、馬車を引く馬まで用途に合わせて多彩な品種があります。馬術用の中でも馬場馬術、障害飛越、ウエスタン乗馬など目的に合わせて育成されています。
中間種は軽種に比べるとスピードでは劣りますが、おとなしく従順な馬が多く丈夫なので馬術競技を中心に活躍しています。それでは中間種の主な品種を紹介します。
クォーターホース
クォーターホースの正式名称はアメリカンクォーターホースと言いアメリカバージニア州が原産の中間種です。サラブレッドに比べやや小柄ですががっしりとした筋肉質の体型で、短距離のダッシュ力に優れ急発進や急停止ができ400m以下ならサラブレッドと互角以上のスピードを持っています。
クォーターホースの名前はクォーターマイル(1600mの4分の1)を速く走ることができることに由来しています。その機動力の高さから昔のアメリカでは農作業や牛追い、運搬 、馬車馬、戦闘馬などカウボーイが乗る馬として活躍しました。
現在ではウエスタンスタイルの乗馬や、ロデオ競技、トレッキング、馬場馬術、障害飛越競技など様々な用途で使われています。馬ができることなら何でもできると言われるほど機能性の高い品種なので全世界で400万頭以上が登録されておりもっとも頭数の多い馬です。
セルフランセ
セルフランセは1965年にフランスで成立した比較的新しい中間種で、歴史が浅く純系化が進んでいないため、馬により体型や性質にバラツキが見られます。
しかしセルフランセとして登録するためには能力が高い優秀な馬でないと登録できません。例えば種牡馬選定基準は障害のジャンプ力で選定されます。そのためセルフランセとして登録された馬は優秀で総合馬術競技などで活躍しています。
またセルフランセとサラブレッドやアングロアラブと交配した品種は障害競走などで能力を発揮し、オリンピックなどの大会で優秀な成績をを上げた馬には億単位の値がつきます。
スタンダードブレッド
スタンダードブレッドはクォーターホースと同様に19世紀のアメリカ開拓期に成立した中間種で、サラブレッドより丈夫でがっしりとした体型で、体は長いのですが脚はやや短めで走ることより速歩が得意なところが最大の特徴です。
また持久力や心肺機能が優れているため、フランスやイタリアで人気がある「繋駕速歩(けいがそくほ)競走=騎手が乗った2輪馬車を速歩のみで疾走する競走」で活躍しています。
スタンダードブレッドの名前は1マイル(約1600m)を2分30秒という標準(スタンダード)記録に達しなければならなかったことに由来しています。
ハクニー
ハクニーはイギリス原産の中間種で、小さな頭に小さな小さな耳、大きな目と、尾が高い位置に水平についていてたくましい体格が特徴です。特に脚が丈夫で馬車を引いてもスピードと持久力が落ちないので馬車馬としては最上級の品種として認められています。
昔は馬車が交通手段でハクニーが活躍しましたが、現在では自動車が普及したので交通手段より馬車競技と活躍しています。馬車競技ではスピードより歩く姿の美しさ「歩様」を重視して競います。
その歩様が美しいのがハクニーの特徴で、この歩様を際立たせるために蹄(ひずめ)は長く伸ばしています。馬車を引く力強さより芸術性や美しさを重視した改良育成が進められています。
アパルーサ
アパルーサはアメリカ北西部が原産の中間種で、何と言ってもカラフルな斑点があるのが特徴の品種です。アパルーサはアメリカの原住民ネズパース族がスペインから持ち込んだマスタング種をサラブレッドを用いて改良してとされています。
アパルーサは丈夫で持久力があり、病気にも強く粗食にも耐える扱いやすい品種で、馬場馬術、障害馬術、クロスカントリー、馬車やサーカスのショーでも使われています。
また西部劇の映画などでもアパルーサはよく登場します。それは印象的な斑点の効果もありますが、アパルーサの素直な気性と賢さにも起因しているのではないでしょうか。
ハノーバー
ハノーバーは、気性の良さや機敏な動き優雅な美しさがあり、世界の馬術競技でおよそ80%で使用されていると言われるほど評価の高い品種です。
ハノーバーは1600年代にドイツで成立した中間種で、平らな頭部で体型はたくましく気性も素直なので元々は馬車用として使われていました。その後サラブレッドの血を合わせることで機敏性を増し馬術競技用に改良に成功しました。
オリンピックでハノーバーに乗った騎手が馬術競技で金メダルをとった実績がこの馬の優秀さを証明しています。
ウェストファーレン
ウェストファーレンはドイツ西部のウェストファーレン地域原産の馬で、馬術競技馬として世界的評価の高いハノーバーと原種が近くドイツではハノーバーの次に生産量が多い人気の高い品種です。
昔のドイツでは騎兵隊の軍馬として使われていましたが、現在では非常に弾力のある歩様に魅力があることからハノーバーとともに馬術競技で活躍しています。
馬の種類③重種の特徴と代表品種
重種という種類の馬は、言葉の通り体重や体が大きくスピードはないけれど重い荷物や馬車を引いたり、畑を耕すなどの力仕事に使われる品種で体重は800kgから1トンを超えるものまであります。
馬と人間のつながりの中でもっとも歴史が古いのが重種なのではないでしょうか。古き時代では人が馬に乗ってまたがることなど全く考えていなかったはずです。
馬は力仕事を人の代わりにするアイテムとして捉えていたので、古代の馬と人間の関わりは農耕や荷物を運搬する家畜でした。それが古代オリンピックの競技や古代ローマの戦車に使われ、後の戦争では騎馬として人が馬に乗って戦うことで馬の歴史が一変しました。
つまり馬の品種改良の歴史は、在来の重種の馬を目的に合わすために軽種の馬と掛け合わせてより目的に合う良質な品種を作り出す歴史なのではないでしょうか。それでは重種に属する代表的な品種を紹介します。
ペルシュロン
ペルシュロンの起源は8世紀と古く、フランス原産の重種にアラブ種などを交配して成立したと言われています。平均体高は160cm〜170cmですが、記録で最高なのが体高211cm体重は1372kgとなんと1トンを超える馬が存在していました。
ペルシュロンはその大きな体を生かし、昔は軍馬や馬車、農用や重砲兵用として使われました。現在では北海道でペルシュロンの血を引く馬が、1トン近いソリを引いて坂を駆け上がる「ばんえい競馬」で活躍しています。
ブルトン
ブルトンはフランス北西部のブルターニュ地方原産の重種です。強力な筋肉を持ち短い頸(くび)と太くてたくましい胴体が特徴で主に馬車馬や農耕馬として育成されています。
ペルシュロンとともに北海道の「ばんえい競馬」に用いられています。また活発に農作業をこなせることからフランスではぶどう園の作業でも活躍しています。
シャイアー
シャイアーはイギリス中部が原産で重種の中でも特に大きな品種です。この品種の1846年生まれの「サンプソン号」は体高216cm体重1524kgを記録し、記録が残っている馬の中で史上最大と言われています。
長いクビと雄大でたくましい肩と腰を持ち四肢は長めで脚元が白い馬が多いのが特徴です。その大きさから「マンモス」という俗名がつけられたほどです。
10馬力をはるかに超える力があるので、昔は重い荷物を牽引する馬として重宝されましたが、機械化が進むにつれ需要が減少して一時は絶滅の危機に瀕しました。現在は保護活動が広がり再び頭数が増加しています。
クライズデール
クライズデールはイギリスのスコットランド地方原産の重種で、体型は重種の中では比較的小型の品種で、顔の幅が広く鼻孔が大きく長いクビとたくましい背中、蹄の上に伸びる脚元の豊かな距毛(きょもう)が特徴です。
シャイアーの血の影響も受けていることから顔や脚元に白い模様がある馬が多く見られます。近年になるとショーやパレードで印象的に見せるために改良が加えられ、現在では大きな体を持つクライズデールが増えてきました。
馬の種類④ポニーの特徴と代表品種
馬の種類でポニーとは、体高が147cm以下の馬の総称で特定の種類を指すのではありません。日本在来種の馬は体高が147cm以下なので実際にはポニーの種類に分類されます。
ポニーは子供の乗馬用やマスコット的に飼育され、体こそ小さいけれど走れば時速40kmのスピードが出せるくらいに運動能力と持久力に優れています。それでは日本在来種以外の代表的なポニーを紹介します。
シェトランドポニー
シェトランドポニーはイギリスの北方シェトランド諸島が原産で、起源は約1万年前と言われています。荒涼とした強風が吹くシェトランド諸島が原産だけに寒さから身を守るための厚い冬毛や長いタテガミと尾が特徴です。
体高は71cm〜107cmとポニーの中でも特に小型です。寒い地方の馬の共通した特徴として、吸った冷たい空気を暖ためて肺に入るよう鼻梁(びりょう=鼻すじ)が非常に大きくなっています。
また過酷な環境で育ってきただけあって、シェトランドポニーは丈夫で力強く、脚は短いのですが素早く自在に膝を持ち上げることができます。
ファラベラ
ファラベラはアルゼンチン原産で、世界一小さいミニチュアホースとして有名です。体高は平均で70cm〜78cmほどで中には40cm台しかなく犬とほとんで変わらない大きさのファラベラもあります。
体型が小さいのでさすがに乗馬には向きませんが、愛くるしい姿と人懐っこい性格からペットとして人気があります。また学習能力が高く調教しやすいことからホースショーなどにも使われ、騎乗者なしで90cmほどの障害をジャンプすることができます。
ハフリンガー
ハフリンガーは平均体高は約130cmで、ほとんどの馬の毛色が栗色で尾とタテガミは淡色と均質性の高い品種で、見栄えのする美しい外見が特徴です。
美しい外見なので乗馬クラブのマスコット的に使われる場合もありますが、意外にパワフルで体格のよい大人でも軽々と乗せることができます。
また病気にも強くどんな飼料も消化する強靭な胃袋を持っているので、原産地のイタリア、オーストリア、ドイツなどでは農耕馬としても重宝されています。
フェルポニー
フェルポニーはイギリスのペナイン山脈が原産で、厳しい山脈の環境で育っただけあって耐寒性と気候に対する適応能力に優れ、強靭な脚力があるので起伏の多い地形でも苦もなく歩くことができ、1週間で400kmを移動したとされています。
またキビキビとした歩様で、速歩は非常に快適な乗り心地です。20世紀までは郵便配達サービスにもフェルポニーが使われていました。現在は乗馬用としても、馬車競技やトレッキングなどでも優れた能力を発揮しています。
ウェルシュポニー&コブ
ウェルシュポニー&コブはイギリスのウエールズ地方の高原の野生ポニーを祖先とし、紀元前1600年頃にはすでに存在していた非常に歴史の古い品種です。
ポニーの血統を管理するウェルシュ・ポニー・スタッドブックでは、大きさによりA、B、C、Dの4種類に分類され多様性に重点を置いて作られてきた品種です。小型のものは子供の乗馬用として人気があります。
馬の種類⑤日本在来種の特徴と代表品種
日本在来種の馬とは、古くから日本に存在していた馬種のことで、洋馬種などの外来種と交配することなく現在まで純血を守って残っている品種です。
その在来種は、北は北海道から南は沖縄の宮古島に至るまで8種類の品種が分布しています。どの品種も体高は147cm以下でポニー種に属しています。それでは日本在来種の特徴を紹介します。
北海道和種
北海道和種は北海道を中心に飼育されていて道産子(どさんこ)の俗称でも親しまれており、頭数は約1800頭で日本在来種の75%を占める最も多い馬です。体高は約125cmから135cm、体重は約350kg〜400kgと日本在来種の中では比較的大きい品種です。
北海道和種は江戸時代に南部から連れてこられた馬が冬にそのまま放置され、北海道の気候風土に適応するようになったのが先祖と言われています。
北海道の厳しい寒さで鍛えられた強靭な強さと原野を走り回る体力があり、昔は物資の運搬などで活躍していました。機械化が進んだ現代では乗用馬としてホーストレッキングや流鏑馬、障がい者乗馬などで活躍しています。
木曽馬
木曽馬は長野県の木曽や岐阜県の飛騨地方を中心に飼育されていて長野県の天然記念物にも指定されている品種です。体格は在来種の中では中型に属し、胴長短足でお腹がぽっこり出ていて、人懐っこい性格が特徴です。
山間部で飼育されていたので足腰が強く蹄(ひづめ)も硬いので軽い運動なら蹄鉄(ていてつ)を打たなくてもよいくらいです。頭数は約200頭ほどで乗用馬として活躍しています。性格がおとなしいので子供を乗せても安心と人気がある品種です。
野間馬
野間馬は愛媛県の今治市で主に飼育されていて今治市の天然記念物に指定されています。体高は110cm前後と小柄で毛色は鹿毛や栗色が中心で、祖先は縄文時代から存在していたと言われる歴史の古い品種です。
頑強で粗食にも耐え、江戸時代には農耕や荷物の運搬などに使われ300頭ほどいたのですが、明治政府が小型馬の生産を禁止したことから激減し一時は絶滅寸前になりました。最近になり野間馬保存会が結成され現在は80頭まで増えてきました。
御崎馬
御崎馬(みさきうま)は、宮崎県串間市の都井岬の牧場で300年以上の間人の手をほとんど加えない管理方法で放牧されていて国の天然記念物に指定されている品種です。
台風の通り道にもよくなる都井岬の自然環境に適応するために頑強な体質が形成され、餌を与えないため粗食にも耐える特徴があります。農耕馬として育てられた他の在来種と比べると脚が細くスマートな自然体が魅力です。
また自然飼育を基本にしているので、繁殖も自然任せ死んでも埋葬などはせずそのまま放置して土に還るようにされています。もちろん乗馬や触れることは禁止で見学は遠くから優しく見るのが基本です。
対州馬
対州馬(たいしゅうば)は「対馬うま=つしまうま」と呼ばれることがあるように長崎県の対馬を中心に飼育されてきた日本在来種で、鎌倉時代に蒙古が攻めてきた元寇(げんこう)では武将を乗せて活躍したと伝えられています。
対馬は坂道が多いので調教しなくても坂道を苦にしません。また剛健でひづめが硬いので蹄鉄をしなくても重い荷物を運ぶことができ農耕や木材、農作物の運搬に活躍してきましたが、現在では頭数が30頭以下となり絶滅が危惧されています。
トカラ馬
トカラ馬は鹿児島県のトカラ列島で飼育されてきた品種で鹿児島県の天然記念物に指定されています。トカラ列島とは屋久島と奄美大島の間に点在する12の島のことで、うち5つの島は無人島です。
トカラ馬は1952年に鹿児島大学の林田教授によってトカラ列島の宝島で確認されるまでは全く世間に知られていない存在でした。体高は100cm〜120cmと小柄で毛色も鹿毛がほとんどです。
他の在来種と違って発見されてからまだ70年と歴史が浅いため利用の方法として乗用、農耕運搬用、観光用などの方針が定まっていないのが現状です。トカラ馬の活用は今後の保護の上で大きな課題になっています。
宮古馬
宮古馬は沖縄県宮古島で飼育されている小型の日本在来馬で、沖縄県の天然記念物に指定されています。粗食で重労働に耐えることから宮古島でサトウキビの栽培が始まった明治時代にはその農耕で活躍しました。
また琉球王朝時代には伝統的な琉球競馬や王朝の公用馬として使われていました。おとなしい性格と扱いやすい安全性が公用馬には適していたのでしょう。ただ現在の頭数は約40頭なので今後見守る必要がある品種です。
与那国馬
与那国馬は沖縄県の与那国島で飼育された在来種ですが、どこからやってきたのかその由来はハッキリとしていません。しかし与那国島は日本最西端の離島であるため、他の品種の馬との交配などが行われず純血の系統が守られてきた品種です。
与那国馬はは宮古馬と同様に琉球競馬や農耕用に使われていましたが、現在はおとなしい性格と人懐っこいことで観光用の乗馬などで活躍しています。
馬は特徴ごとに向いていることが違う
一口に馬と言ってもその種類や品種の多さに驚かれた方が多いのではないでしょうか。また馬は品種ごとに特徴や向いていることが違います。
競馬などで速さを求める軽種、馬術競技などで能力を出す中間種、農耕や重たい荷物を運ぶ重種、可愛らしいポニー種、日本古来の純血を守ってきた在来種などを紹介してきました。
これらの記事から歴史の中で人間と馬がいかに深く関わってきたのか、現在でも人と馬の関係が続いていることを感じていただければ幸いです。