「骨を折る」の意味とは?
「骨を折る」を辞書で引くと、文字どおり「骨折する」ことの他に「苦労をいとわずに精を出して仕事に励む」「面倒がらずに努力する」「苦心して人の世話をする」などの意味が出てきます。
つまり「骨を折る」とは「骨折するように苦しいことでも、いとわずに努力する」または「人のために苦労をいとわずに一生懸命世話をする」のように物事に対して全力で取り組む姿勢を意味する慣用句です。
「骨を折る」の対義語・類語
類語とは似たような意味を持ち、同じような使い方をする言葉や慣用句のことです。対義語とは字のとおり「義=意味」が「対」をなす、つまり反対の意味を持つ言葉のことです。
「骨を折る」は、苦労をいとわずに努力するさまを意味する慣用句なので、「骨を折る」の類語とは「努力するさま」を表す言葉になります。対義語は反対に「努力しないさま」を表す言葉になります。
「骨を折る」の類語や対義語を探すことは「骨を折る」の意味をより深く解釈する助けになります。例えば類語には、お酒やワインの試飲会でお酒という同じカテゴリーの飲物を飲み比べることで味や香りの違いを確認するのと同じ効果があります。
つまり似たような類語や慣用句を並べ比べることはワインを試飲するのと同じように「骨を折る」の意味をより明確に解釈することができます。
対義語の場合は、例えばあっさりした「お茶漬け」と、全くテイストも香りも違う「カレーライス」を食べ比べることによって、互いの味の特徴がよりはっきりと理解できるのと似ています。
つまり「骨を折る」と似ている類語や、反対の意味を持つ対義語や慣用句を探すことで「骨を折る」の意味がより明確になり、正しい意味を解釈することができるのです。
類語・慣用句
「骨を折る」は努力するという意味なので、同じような意味を持つ「苦労する」「尽力(じんりょく)する」「骨身を削る」「身を粉にする」「粉骨砕身(ふんこつさいしん)する」「奮闘する」などが類語になります。
またよく使われる慣用句としては「力の限りを尽くし精一杯行う」「寝食を忘れて全力で取り組む」「精魂込めて全力投球する」「力を惜しまず手を尽くす」なども「骨を折る」と同じ意味合いで使われます。この他にも「骨を折る」の類語や慣用句はたくさんあります。ぜひ色々と探してみてください。
対義語
「骨を折る」の反対の意味は「努力しない」ことなので「横着(おうちゃく)」「不精(ぶしょう)」「手抜き」「放置」「棚上げ」「お粗末」「生半可(なまはんか)」「大雑把(おおざっぱ)」「怠惰(たいだ)」「怠ける」などが対義語になります。
慣用句としては「手間を省いて間に合わせる」「棚上げにしてなおざりにする」「横着をして楽な方に流れる」「とおり一遍の仕事で済ませてしまう」などが「骨を折る」の反対の意味で使われます。
つまり「骨を折る」とは、これらの対義語・慣用句と逆の行動をすること、または逆の姿勢を持つことだと理解できたのではないでしょうか。
「骨を折る」の使い方・例文
ここまで「骨を折る」の意味や、類語や対義語を紹介してきました。それでは「骨を折る」という言葉はどのような場面でどのような使い方をするのでしょうか。
具体的な使い方を習得するためには、「骨を折る」を使った例文を検証するのが最も理解しやすい方法です。それでは場面ごとに「骨を折る」を使った例文と「骨を折る」の類語や言い換え表現の例文を合わせて紹介します。
例文①
「骨を折る」は努力するという意味です。まず自分のスキルアップのために「骨を折る」を使った例文を紹介します。「英語を習得するために、主にリスニングとスピーキングから骨を折ることに留意しています」の例文のような使い方をします。
ビジネスでは「苦手な仕事でも進んで骨を折ることが、スキルアップに繋がると信じて努力しています」「上司から与えられた仕事をいとわずに骨を折る経験が、スキルの向上に役立つと思い努力しています」のように使います。
また「何事にも力を惜しまず全力投球することは、将来の自分の糧になる良い経験になるはずです」の例文のように「骨を折る」の類語「全力投球」を用いて同じ意味合いを表現することができます。この他にも言い換え表現として類語を使うことができます。
例文②
「骨を折る」を「尽力する」という意味の使い方をする場合は「就活では自分に合った企業を見つけるために、様々な企業の資料を集めることに骨を折る努力をしました。その結果現在の会社に就職することができました」のように表現します。
この例文の「骨を折る」のところに「尽力する」「奮闘する」などの類語を置き換えても意味が変わらず違和感がありません。
また「彼が骨を折ることで今回のプロジェクトが成功したと言っても過言ではありません」「就活に成功できたのは、学生時代の恩師が骨を折ってくれたおかげです」の例文のように受動的な「骨を折る」の使い方ができます。
このように「骨を折る」は、自分や他の人のために努力したり尽力を尽くす能動的な使い方と、他の人に骨を折ってもらったり尽力を尽くしてもらう受動的に使われる両方の場合があります。これらの例文を参考にして能動的と受動的を上手に使い分けてください。
「骨を折る」と「努力する」の違い
「骨を折る」が「努力する」「尽力する」という意味ならば「骨を折ること」と「努力すること」は全く同じことなのでしょうか。この両者には違いがないのでしょうか。もし意味に違いがないとするならば、なぜ異なる漢字を使う表現が存在するのでしょう。
それでは「骨を折る」と「努力する」の違いを、もう一度意味や使い方、語源・由来など角度を変えて詳しく探ってみましょう。
「努力する」は「力を尽くして励む」という意味
「努力する」を辞書で引くと「ある目的のために力を尽くして励むこと」と出てきて意味の上では「骨を折る」との違いが見当たりません。
「努(つとめる)」という漢字は、右手と両手をしなやかに重ねひざまずく女性と、力強い腕の図を組み合わせてできた漢字です。努力は「努」と「力」を組み合わせることでさらに力を強調しています。つまり「努力する」とは女性のようにひたむきに努める様を表しています。
いっぽう「骨を折る」は、骨を骨折するくらいの苦しいことを努めるという比喩です。つまり「努力する」は女性の従順さの比喩が語源で「骨を折る」は骨折の比喩が語源になっているところに違いがあります。
また「努力する」は自分の行動や姿勢に対して使う言葉ですが、「骨を折る」の場合は、自分だけでなく他の人の行動や姿勢を表現する時にも使うところに両者の違いがあるのではないでしょうか。
「骨を折る」の語源
前述のように「骨を折る」の語源は、努力する姿勢を骨折することにたとえた比喩表現です。目的のために文字通り骨が折れるほどの苦労を厭(いと)わずに努力するという意味です。
「骨を折る」の類語に「粉骨砕身(ふんこつさいしん)」という四字熟語があります。この四字熟語の語源も「骨を粉にして、身を砕くような努力」つまり自分の骨や身を犠牲にするほどの並々ならぬ努力を比喩した言葉です。
歴史
「骨を折る」という言葉は、古くから様々な教訓や風刺、ことわざの語源になっています。例えば物事に全力を尽くすことを「肝胆を砕く(かんたんをくだく)」と言います。
これは体の中の「肝胆(かんたん)」=「肝臓(かんぞう)や胆のう」などの臓器を犠牲にするほどの努力を比喩しています。「骨を折る」の骨や身を犠牲にする比喩と同じ意味合いを語源にしています。
少し変わったところでは、夢占いで「骨を折る」の語源が利用されています。占いとは長い歴史の中で積み重ねたデータに基づく暗示です。見る夢の「骨を折る」場所により暗示するものが違います。
指の骨を折る夢は、理性や感情を上手くコントロールできない心理状態を暗示しています。指は物事を指し示す時に使う部分なので、その指を折ることは目標をうまく指し示すことができないので理性や感情のコントロールを失うと暗示しています。
腕にはその人を支える「右腕」と言う言葉があるように、人を支える大切な力を意味しています。つまり腕を折る夢は信頼や頼りにしている人を失うことを暗示します。また足は生活基盤や行動力を表すように、夢占いでは骨を折る場所により暗示するものが変わります。
これは歴史の中で得た経験から、骨を折る(骨折する)ことが、いかに人の行動に与える影響が大きいかを物語っています。だからこそ「骨を折る」という比喩を語源にする教訓や風刺が多く存在するのではないでしょうか。
「骨を折る」の英語表記
「骨を折る」を英語表記するには、大きく次の3つの場合に分けることができます。1つ目は文字通り物理的に怪我をして骨折するケースを表現する場合、2つ目は精神的に「努力する」という意味で使う場合、3つ目は「尽力する」という心理を英語表記する場合です。
それでは、それぞれのケースごとに使う英単語やフレーズ、言い回しを例文をあげて「骨を折る」の英語表現と日本語との表現の仕方の違いも合わせて紹介します。
「骨折する」の英語
骨折は骨が折れる、または骨が壊れることなので「fracture(骨折、挫傷、割れ目)」や「break(壊す)」という単語がよく使われます。しかし英語で「break」という単語(動詞)だけでは骨折したことの表現にはなりません。
何が折れて壊れたのかを具体的に伝えなければ「骨折」の意味にならないところが日本語と英語の違いです。つまり骨(bone)が折れた(breakした)と表現しなければ伝わりません。
例えば「I broke bone of the arm.(腕の骨を折ってしまった)」のように具体的にどこの骨を折ったのか明記することで初めて相手に骨折したことを伝えることができます。
また「fracture」を使う場合でも「I had a compression fracture.(圧迫骨折をしました)」「I was hospitalized due to a fracture.(私は骨折のために入院しました)」のようにcompression(圧迫)や hospitalized(入院)など具体的な言い回しをすることで初めて骨折を伝えることができます。
「努力する」の英語
日本語の「努力する」に相当する英単語は正直言ってありません。英語は日本語のように抽象的な特に精神的内面を一言で表現するのが苦手な言語です。そのために「努力する」を表現するには、その場面に合わせて様々な単語や言い回しが必要になります。
例えば「put forth one's best efforts(最善の努力をする)」「I will strive to make my dream come true.(夢を叶えるために努力する)」「I'll try for a scholarship.(奨学金をもらおうと努力する)」のように「best efforts」「make my dream」「try for」などで「努力する」と言う意味を表現します。
「尽力する」の英語
日本語の「尽力する」も英語で表現するためには抽象的な言葉なので難しい課題です。なぜならば一言で「尽力する」に相当する英単語がないからです。
日本語には漢字(象形文字)というビジュアル的に意味を伝えることができる文字があります。そのため日本語は漢字を見ただけで何となくイメージが伝わりますが、英語にはABCDというアルファベット記号しか文字がありません。
そのアルファベットという記号の組み合わせの英語にはビジュアル的に意味を伝える機能がありません。そのために「尽力する」の意味を表現するためには「努力する」と同様に様々な単語や言い回を使う必要があります。
例えば「to make every exertion(あらゆることに尽力する)」「give oneself the trouble to do(トラブルを避ける尽力をする)」「to perform services for the good of a country(国家のために尽力する)」のように具体的な目的をあげることで「尽力する」の意味を表現します。
このように「骨を折る」という抽象的な日本語を英語で表現するためには、抽象的な言い回しを嫌う英語では具体的な様々な英単語や言い回しが必要になることが理解できたのではないでしょうか。
「骨を折る」は「努力する」という意味
「骨を折る」とは文字通り怪我をして骨折することのほかに、苦労をいとわず努力する、また人のために尽力するという意味があります。
ここまで「骨を折る」の意味や類語・対義語、「骨を折る」の語源と歴史、具体的な使い方や例文、英語表記などを紹介してきました。この記事を参考にしてビジネスや人生の糧にしていただければ幸いです。