惰性とはどんな意味?類語・例文・正しい使い方などを詳しく解説!

惰性とはどんな意味?類語・例文・正しい使い方などを詳しく解説!

「惰性」とは何か、その意味や使い方を、類語や例文を示して解説いたします。「惰性」とは、「今まで続いてきた習慣・癖」という意味と物体が同じ運動を続けようとする性質の二つの意味がありますが、本記事では普段の仕事の現場でも役立つよう「習慣・癖」に焦点を当てます。

記事の目次

  1. 1.惰性の意味とは
  2. 2.惰性の類語や意味とは
  3. 3.惰性的な行動をする心理とは
  4. 4.惰性の使い方とは
  5. 5.惰性の例文とは
  6. 6.惰性の対義語とは
  7. 7.惰性とは今まで通り現状維持しようとする習慣を指す

惰性の意味とは

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上司から「惰性で仕事をするんじゃない」と指摘された。5年付き合っている彼女から、「あなたとの付き合いも、今となっては惰性でしかないわね」といわれた。こんなことをいわれたら、その意味をどう受け止め、どう対処したらいいのでしょう。

「惰性(だせい)」とは「今までの習慣や癖を無批判に続けること、勢い」という意味ですが、あまりいいイメージの言葉ではありません。でも、この言葉の意味・使い方を知れば、相手の言葉の向こう側にある本当の気持ちを知り、対処法も見つかるかも知れません。

本記事では、「惰性」の意味や使い方、その心理を解説し、類語や例文などをその意味とともにご紹介いたします。この記事を読むことで、仕事の場や普段の生活の中で、よりよい人間関係を築いていく一助にしていただけたら、と思います。ぜひ参考にしてみてください。

意味①今まで続いてきた習慣・癖

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何かを始める時、人は情熱をもって始めるものですが、やがてその熱は冷めていきます。それでもやめずに新しい挑戦をするなどして、新たな火を燃やしていければいいのですが、なんとなく「今までやってきたから」という理由で続ける、ということもあります。

いわゆる「マンネリ化」というものですが、これが「惰性」です。大して情熱もなく、目的や思慮もなく、なんら改良されないまま、だらだらとやってしまう状態のことです。ですから、上司の「惰性で仕事をするんじゃない」という言葉の意味は、「もっと情熱をもって、主体的に考えながら仕事をしなさい」という意味になります。

これは「癖」についてもいえます。何かをするときに、何も考えず、決まり事のようにやってしまう「癖」は、「惰性」のもつ意味に含まれています。

意味②物体が同じ運動を続けようとする性質

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一方、「惰性」という言葉は、物体の運動を表す言葉でもあります。同じように物体の運動を表す言葉としては「慣性」という言葉もあり、その意味で使われるなら、「惰性」は「慣性」の類語になります。

学校の物理で「慣性の法則」を習ったのを、覚えていらっしゃる方も多いでしょう。「慣性の法則」とは、止まっている物体は外から何らかの力が加わらないかぎり止まり続け、動いている物体は外から何らかの力が加わらないかぎり動き続ける、という法則です。

「慣性」と「惰性」はほぼ同じ意味の類語ですが、少し違う部分もあります。「慣性」が物体のみが対象なのに対し、「惰性」は人間の心理や行動や癖を表す場合にも物体の運動を表す場合にも使える言葉なのです。

惰性の類語や意味とは

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それでは「惰性」の物理的な意味はひとまず置いておき、人間の行動に関する意味の方に焦点をあてて、その類語をご紹介します。

類語は「因習」「流儀」「怠惰」の3つをご紹介し、その意味を解説いたします。「惰性」はどちらかというとマイナスイメージをもつ言葉ですが、同じ類語でもプラスイメージをもつものもありますので、使用する時には注意したいところです。

①因習・意味

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「因習」とは、辞書によると「古くから伝わり、弊害を生むしきたり」という意味が書かれています。もともとは何らかの肯定的な意味があって生まれたしきたりも、長い時間が経つにつれて本来の意義は薄れ、単に習慣化し、弊害ばかり目立つようになることがあります。それを「因習」といいます。

「惰性」にも「古くからの習慣に従う」という意味がありますので、その意味で使われるなら「因習」も「惰性」の類語であり、いい換えも可能です。

例文をあげてみます。例えば「このふたりは愛し合っていたが、村の因習によって引き裂かれてしまった」というように使います。

②流儀・意味

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「流儀」とは、辞書によると「技能・芸術など、その人・家・派などの独特のやり方・しきたり。また一般に、物事のやり方」という意味が書かれています。この言葉は「惰性」のようなマイナスイメージはなく、プラスのイメージがあります。磨き上げ、完成の域にまで高めた技能や行動原理のことを指します。

一般的に伝統芸能や職人の技などによく使われますが、ある個人が考え抜いた上で身につけた行動原理を指す場合もあります。「しきたりや物事のやり方」という意味では「惰性」の類語といえますが、完成度という点で全く反対ですので、両者のいい換えはできません。

例文をあげます。「一流の職人の仕事は彼らなりの流儀が込められている」、「その申し出は、私の流儀に反しますのでお断りします」といった使い方をします。

③怠惰・意味

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「怠惰」とは、「すべきことをなまけて、だらしない性質・様子」という意味です。おおよそ、ものごとが惰性に流れてしまうのは、根本にこの「怠惰」があるから、やるべきことをやらず、多少の不満があったとしても良しとしてしまうのです。

「惰性」も、やるべきことを怠けてしまい、ダラダラとしてしまうという意味ももっているので、その意味で使われる場合には、「怠惰」といい換えることができます。

惰性的な行動をする心理とは

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「水は低きに流れ、人は易き(やすき)に流れる」ということわざがあります。水が自然と低い方に流れていくように、人も安易な方を選んでいきがちだ、という意味です。

易き(やすき)に流れることなく、今までと違うことに挑戦するというのは、とてもエネルギーがいることです。これまでやってきたことを繰り返すだけなら、何も考えることはありませんし、失敗も少ないでしょう。

しかし安易に流れれば、成長は止まります。惰性に流される仕事ばかりしていれば、世の中の変化のスピードについていけなくなり、淘汰されてしまうことになりかねません。

①現状維持でよい

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慣れ親しんだ環境というのは、誰しもが安心感を覚えます。リラックスできますし、あまり考えなくても同じことをしていれば、物事は進んでいきます。この状態に満足しているか、この環境を変えるのは億劫(おっくう)だと思う時、惰性的な行動をしてしまいます。

現状維持でよいと思う心の裏側には、本当は改善点があると知っていたり多少の不満があったりしても、億劫(おっくう)だから目をつぶろうという心理が隠れていることがあります。現状維持でよいと本当に思っているのか、もしかしたら億劫(おっくう)なだけではないかと、一度は振り返ってみる必要がありそうです。

②今までもそうだった

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今までと同じことをやっていれば考える努力はしなくて済みますし、大きな失敗もないだろうということは自明のことのように思えます。今までやってきたことを変えてはいけない仕事もあります。しかし、それでも改善点があるならば検討の余地はあります。

「今までもそうしていた。だからこれからもそうしよう」という心理は誰にでも起こりがちですが、ここから惰性的な行動が生まれます。仕事のやり方、人付き合いのあり方、お金の使い方など、今までそうしてきたから、あるいはマニュアルにそう書いてあるからと主体的に考えないで行動してしまうことが、惰性につながっていくようです。

惰性の使い方とは

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「惰性」とは、これまでやってきて習慣になっているものや癖になってしまっているものを、検証もせずにそのままやってしまうという意味をもっていました。あるいは、そのままの勢いで自然に行ってしまうという意味ももっています。つまり「惰性」という言葉は、一般的に人間の内面や心理を表現したいときに使われる言葉です。

人の内面・心理的なものを表現したい時

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「惰性」という言葉には、行動や態度・生活習慣といった動作を伴う要素と、無意識に自然にそうしてしまう癖の要素、怠け心といった心理を表す要素があります。

「惰性」を人の内面・心理的なものを表現したい時には、例えば「彼は惰性で仕事をしている」といった批判の気持ちを表現したり、「自分たちの恋愛は、もはや惰性的なものでしかない」というようないい方で、自嘲的な気持ちを表したりするときに使うことができます。

惰性の例文とは

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それでは「惰性」を使った例文にはどんなものがあるか、いくつかご紹介いたします。「惰性」の使い方は、それ単体で使う場合、「惰性で〜する」というように、後に続く文を説明する場合、「惰性的」というように「的」をつける場合などがあります。「惰性的」という場合には、惰性であると断定しない、「惰性とも考えられる状態」のことを意味します。

①目的がない

まず最初にあげたい「惰性」の例文は、「仕事をしていく目的を見失って、今は惰性で会社と家とを往復している」です。

「惰性」の意味そのままの表現で、だらだらと会社に行き、同じような仕事をこなし、だらだらと帰ってくるという、何の変化もない毎日という意味を表現しています。「惰性」は単体で使っています。

②だらだらと発展性がない状態

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次にあげる例文は、「A社との取引は慣習に従って注文を出してきたが、もはや惰性でそうしているといわざるを得ない」というものです。

会社は常に利益を出すことが使命であるにも関わらず、慣習がそうだったからというだけで続けていてもまったく利益率アップには貢献しない、といった場合の「惰性」は「だらだらと発展性がない状態」を意味しています。

③行動に影響を及ぼす

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次の例文は、「朝礼のとき、社長は惰性で訓示を垂れていることが明らかなので、社員の中で緊張して聞いている者は一人もいない」です。

この場合の「惰性」がもつ意味は「ものごとをだらだら続ける心理」のことを意味していて、それが行動に影響を及ぼしていることを示す例文になっています。昨日も訓示を垂れたから今日もやる、というように積極的な意思は働いていないので、内容も通り一遍のものになりがちです。

④心的状況も端的に表す

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次の例文は、「長い間、彼女と付き合ってきて本当はそれほど好きではないが、とうとう惰性で結婚してしまった」です。

ここでの「惰性」がもつ意味は、さまざな感情や心に起こった出来事を含んでいます。そういった複雑な心的状況を端的に表すこともできる言葉です。

⑤仕事に否定的な意味合いで使用

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次の例文は、「20年もこの仕事を続けてきたが、振り返ってみれば惰性で働いてきたに過ぎない」です。

仕事は、能動的な行動が求められるものですが、「惰性」という言葉のもつ「だらだらと継続する状態」という意味が、仕事で求められる行動力を否定する働きをしている例です。「惰性」は心理的なものを表す言葉なので、「惰性」という言葉を使うことによって主観的な意味合いを表現をしています。

⑥微妙な空気感を表現

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次の例文は、「会社帰りにちょっと一杯、と居酒屋に寄ってしまうのは、ぼくの惰性的な習慣だ」です。

「〜的」を単語の後に付ける意味は、「惰性である」と言い切らないということです。「惰性だ」と断定はしていないのですが、意図的に「〜的」ということで、「〜のようなもの」といった微妙な空気感を出しています。

惰性の対義語とは

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「惰性」には、「因習」「流儀」「怠惰」といった類語、あるいは「慣性」という同義語はありますが、対義語となると厳密には存在しません。「積極性」が一番近いようにも思えますが、「積極性」に「能動的な意図を持って続ける性質」というような意味はありません。

しかし、「惰性的」というように「〜的」といういい方に変えるならば、いくつかの対義語を見つけることはできます。「積極的」「意欲的「精力的」というような言葉があげられます。これらは「惰性」のもつ、「漫然と続けていくさま」という意味とは正反対の「積極的に行動して意欲に満ちているさま」という意味を表す言葉です。

例文①意中の彼女に積極的にアプローチして、結婚にこぎつけた

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「積極的」を使った例文です。「惰性的」が「だらだらとした心理状態」という意味をもっていることを表しているのに対し、「積極的」という言葉は「能動的な心理状態」の意味をもっていることを表していて、それが行動につながっています。「惰性」と同じように「積極性」も心の状態を表していて、どのような状態なのか説明するために使われれています。

例文②入社して初めての大きなプロジェクトに、意欲的に取り組む

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次に「意欲的」を使った例文をあげます。「惰性的」が、「大した考えもなく勢いで続けているさま」という意味であるに対し、「意欲的」という言葉は「強い意志を持って行動するさま」という意味を表しています。やる気に満ちて積極的に取り組んでいる状態を表しています。

例文③あの政治家は精力的に全国を遊説し、トップ当選した

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最後は「精力的」を使った例文です。「惰性的」が常に受け身であるのに対して、「精力的」は自分から働きかけている状態を表しています。「精力的」は、常に自分で考え、行動し、結果を振り返って次の行動に移すといった、自らがすすんで行動を起こすさまを示しています。

惰性とは今まで通り現状維持しようとする習慣を指す

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毎日を、同じことをして過ごしても時は過ぎていきます。仕事においても、多少の不満はあってもそこそこの結果を出していれば、それが習慣になり、これまでもそうだったからこれからも、という安易な方向に流れるようになるのもよくあることで、それが惰性につながっていきます。

日常のふとした時に、「自分は惰性に流れていないか?」と反省してみることは大事なことです。習慣化してしまったことが、本当に最善の方法なのか、習慣を変える必要があるのではないか、そう考えることで、また違った視点を見つけることができるかもしれません。

「惰性」という言葉の意味を考えるとき、この言葉はあまりいい言葉だとは思えませんが、この言葉を思い出すことによって、昨日より今日、今日よりも明日、マンネリを打破して進んでいけたらいいのではないでしょうか。

宇野誠治
ライター

宇野誠治

はじめまして、宇野誠治と申します。30年間、子どもの英語教室を運営する会社で編集の仕事に携わってきました。定年を過ぎて、自分が身につけたスキルを生かそうとフリーランスのライターの仕事を始めることにしました。どうぞよろしくお願いします。

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