「感慨深い」の意味とは?
「感慨深い」とはどういう意味なのでしょうか。「感慨深い」とは、広辞苑によると「感慨を強く感じる」「深く身にしみて感ずる」を意味する形容詞です。「感慨深い」で「かんがいぶかい」と読みます。「○○なのは実に感慨深いことだ」のように日常で使用されるのを聞いたことがあるでしょう。
①感慨の度合いが強い
「感慨を強く感じる」とは感慨の度合いが強いということです。では「感慨」とはどういう意味なのかが問題となりますが、のちほど詳述しますが、「感慨」とは感情面で心が動かされることを意味します。
つまり、「感慨の度合いが強い」とは、感情面において強く心が動かされている状態のことを意味します。強く感動している状態といってもよいでしょう。
②過去や今までのことがしみじみ感じられる
一方、「感慨深い」の「深く身にしみて感ずる」の意味においては、感情面での心の動かされ方の強さというよりも、感情面でしみじみ感じられている状態を表します。感情面には、嬉しいとか悲しい、楽しいなど様々な気持ちがありますが、「感慨深い」は主に過去に行った出来事や経験が原因となっています。
つまり、「感慨深い」は過去に経験した出来事などをあらためて感じることで、心が感動している状態を意味します。
③悲しいことではなく嬉しいことで使う
上述のとおり感情には、嬉しい、悲しい、楽しい、苦しい、寂しいといったさまざまな心の動きが存在しています。ところで「感慨深い」と言った場合、悲しいとか苦しいといったマイナスの感情において使うことはまずありません。
むしろ、「感慨深い」は嬉しいとか心地よい、素晴らしいなどのプラスの感情の意味において使うことが多い言葉です。過去の出来事や経験を振り返ってみて、それが現在にどう影響しているかその意味を確かめたとき、「感慨深い」という感情が心の内からこみあげてきたことがある人は少なくないでしょう。
④目上の人に対してやや礼を欠く
「感慨深い」はある状態を表す形容詞です。「○○は感慨深い」という場合、○○には感慨深い物事が入ります。「不出来な息子が社会人になってとても感慨深い」とか「懐かしい写真が出てきて感慨深い」といった具合です。
目上の人に「感慨深い」を敬語表現するにはどうすればよいでしょうか。感慨深そうにしていたという使い方もされることがありますが、目上の人に対して使うにはやや礼を欠くというか不格好な印象を与えてしまいます。
一般的には「感激しておられる」とか「感極まっておられる」と置き換えられることが多いといえます。
「感慨」の意味とは?
「感慨深い」は「感慨」+「深い」という言葉で成り立っています。反対に「感慨」が浅いという使い方はされることがありません。「感慨深い」の「感慨」にはすでに深さに関する意味も内包されているともいえるのですが、そもそも「感慨」とはどういう意味なのでしょうか。ここでは、「感慨」の意味について詳しく見ていきます。
①物事に深く感じため息をもらす
「感慨深い」の「感慨」とは、「心に深く感じて、しみじみとした気持ちになること。また、その気持ち」を意味します。しみじみとした気持ちは内面の活動なので外からは認識できませんが、しみじみした気持ちがときに高揚するとため息として外に漏れることがありますが、そのような外部に表現されたものも「感慨」です。
「感慨」は、基本的に過去の出来事や経験が原因となることから、若い人よりも目上の人がよく感じる感情であるともいえます。
②物事に深く感じた時の気持ち
「感慨」は、物事に深く感じため息をもらすことのほか、そのような物事に深く感じた時の気持ちそのものを意味します。「感慨を込めて歌を歌う」という場合には、そのような意味で使われます。「感慨に浸る」とか「感慨にふける」という場合も同様で、そのような気持ちに入り込むことを意味する表現です。
「感」の意味
「感慨」の「感」は心の動きを意味します。「感動」とか「感服」、「感に入る」などの使い方をします。ところで、心の動きには、嬉しいとか悲しい、腹立たしい、楽しいなど様々な動きがありますが、これらは頭で考えたり自分の意志で起こすものではなく、自然と沸き上がってくるものです。
「感」という字は、「咸」(上の部分)と「心」(下の部分)から成り立っています。「咸」は、「口とまさかり」から作られていて、大きなまさかりの威圧の前に口から大声を出しきるという意味であると考えられています。「心」は言うまでもなく心臓を意味します。これらが組み合わさって、「感」は大きな威圧や刺激を前にして心が動くことを表します。
「慨」の意味
「慨」には、「いきどおる(=激しく腹を立てる)」のほか、「嘆く」「悲しむ」といった意味があります。「慨」は「心」(りっしんべん)と「既」が組み合わさってできた漢字です。
「既」の左部分は「食器に盛ったごちそう」の象形で、右部分は「顔をそむける」象形です。つまり「物を食べてむせる」ことを象形し、「慨」はここから「心がつまる」「なげく」意味を表すようになったと言われています。
「慨」そのものは「悲しい」といった負の感情を意味を表しますが、「感慨」にはそのような意味がなく、この辺りは漢字の不思議なところであると言えるでしょう。
「感慨深い」の類語とは?
では「感慨を強く感じる」「深く身にしみて感ずる」を意味する「感慨深い」にはどのような類語があるのでしょうか。上記のとおり、悲しいという負の感情よりも嬉しい、素晴らしいという正の感情を意味する言葉ですが、以下に紹介する言葉は日常でも比較的よく使用されるのできちんとマスターしておきましょう。
①懐古
「懐古」とは、「昔の事をなつかしく思い起こすこと」を意味します。「懐古」は「かいこ」と読みます。「古さ」を「懐かしく思う」で「懐古」です。「昔の事をなつかしく思う」なかで、深く心に身にしみることはあるでしょう。したがって、「感慨深い」とは非常に親和性のある言葉と言えます。
昔の事を思い起こすことが多いのは若い年齢の人よりは年配の人ですから、「懐古」は目上の人に対しても使用されます。
②郷愁
「郷愁」は「きょうしゅう」と読みますが、その意味は「異郷のさびしさから故郷に寄せる思い」を意味します。「ノスタルジア」と表現されることもあります。
「故郷」を跡にした人が感じる感情であり、年配の人、目上の人、若者を問わず感じる心の動きです。「郷愁」は嬉しいとか悲しいといったはっきりした感情ではなく、わびしい、なつかしいなど人によってはプラスにもマイナスにもなる故郷への想いです。
③回顧
「回顧」とは、「過ぎ去った過去を振り返ること」を意味します。「回顧」は「かいこ」と読みます。同じ発音の「懐古」との違いは、「懐古」は懐かしむ感情が入るのに対し、「回顧」は単純に振り返ることです。
したがって、「回顧」は必ずしも感情と関係しないことがあります。「今日の試合を回顧する」という場合、試合内容がどうだったか振り返ってみることを指し、「回顧」で心が動くとは限りません。
もちろん、「回顧」が嬉しいとか悲しいといった感情をもたらすことは当然あり得ます。また、「回顧」は年配や目上の人に限らず、若い人も多く行う行動であると言えます。
「感慨深い」の反対語は?
「感慨深い」の反対語にはどういう言葉があるのでしょうか。深いの反対は浅いですが、「感慨浅い」という使われ方はほとんど見受けられません。ピッタリと当てはまる「感慨深い」の反対語はないかもしれませんが、感慨がない場合に形容される表現はいくつかありますので、これらを知っておくとよいでしょう。
無神経
「無神経」とは、「物事の感じ方が鈍いこと」「外聞や恥辱、他人の感情などを気にかけない」ことを意味します。無神経の人は物事を感じ方が鈍いことから「感慨深い」経験をすることは少ないと考えられます。
しかし、神経は心の動きだけでなく、一般的に頭の動きなども入り範疇が広い言葉です。無神経な人であっても心が動くことはあることから、使い方には注意が必要です。とりわけ「無神経」というのは、それこそ感情を逆なでする表現なので、使うシーンには配慮しましょう。
無感動
「無感動」とは書いて字のごとく、「感動することがない」ことを意味します。「感慨深い」が心が動かされる心理状態を表すのに対し、「無感動」は心が動かない状態を指しますので、反対に位置している類似の言葉であると考えてよいでしょう。
無感動は、嬉しいも悲しいも感じない心理状態です。比較的年齢を重ねた目上の人には無感動な人が増えてくると言われますが、ビジネスシーンなどでは無感動な心理状態が冷静な状況分析をもたらし、好結果をもたらすこともあります。
「感慨深い」の英語表現とは?
「感慨深い」は日本人だけでなく、感情豊かな欧米人にも当てはまる心理状態です。ただし、ただの感動とは異なり、「感慨深い」は「しみじみ」感じるという点がポイントです。得てして欧米人は、感情と表情が豊かでリアクションも大きいことから、「しみじみ」感じ入るということがそれほどなく、英語で表現しにくい状態であるといえます。
以下「感慨深い」の英語表現について紹介しますが、英語の表現の仕方は一筋縄でないことが分かってもらえるでしょう。
しみじみ感じられるの言い換え
では、「しみじみ感じられる」は英語ではどのように表現されるのでしょうか。英語においては「しみじみ」を別の意味に変換して表現されることがあります。上述のように「感慨深い」のは過去の何らかの出来事や経験がもたらしているのですが、それら悲しい経験や嬉しい出来事などが「多くの意味をもたらしている」ことを「しみじみ」と解釈するわけです。
It means so much to me
「It means so much to me」は、「しみじみ」を「たくさんの意味をもたらしている」「多くの意味が私にとって存在している」というようにとらえて使われる英語の表現です。「mean」は「意味する」という意味で、「means so much」で「たくさんのことを意味する」という意味です。
「to me」は「私にとって」という意味なので、「It(それ)」は「私にとってたくさんのことを意味している」という意味になります。
It means a lot to me
同じように、「私にとってたくさんの意味がある」「多くのことをもたらす」という意味で、「It means a lot to me」という英語の表現もあります。「It means so much to me」とほぼ同じ意味です。
英語では「しみじみ」を量的に「so much」とか「a lot」と表現していますが、実際には「しみじみ」というのは量的なものと割り切ることもできないといえます。
感動的という意味の言い換え
「感慨深い」の英語は、人に与える意味が多い少ないというよりも、心を動かしている、感動的であるという形容詞で英語表記される場合があります。英語にも「悲しい」を表す「sad」や、「嬉しい」を表す「happy」などの単語はありますが、これらの心の状態をひっくるめて概括的に「感動的である」という英語の表現を使うとどうなるのでしょうか。
moving
「moving」は、「move」という動詞の現在進行形の単語です。「動いている」という意味の英語です。動く対象はさまざまなものがあり、必ずしも心の動きだけに使われる英単語ではありませんが、心の状態を表す場合には「moving」という表現が使われることがあります。
嬉しいとか悲しいといった個別の感情の枠を超えて、いかにも今心が動いていることがわかる単語です。「My heart is moving」で「私の心が動いている」となり、感動していることを意味します。
impressive
「impressive」は、「印象的な、深い感銘を与える」という意味の英語です。「印象を与える」とか「印象付ける」という意味の動詞である「impress」の形容詞です。「im」は「中へ」という意味であり、それに「押す」を意味する「press」とが組み合わさって「impress」という単語ができています。
「That's impressive!」で「素晴らしいですね」という意味になり、強く感動したときに使われる表現です。
「感慨深い」の使い方とは?
ここからは「感慨深い」の使い方を例文を示してご紹介します。単語自体は少し難しい印象のある「感慨深い」ですが使い方は単純です。目上の人に限らず、何かしらの出来事を経験したり、見聞きして、心に印象を与えたり、深く心が動かされたときに使える表現ですので、しっかり覚えておきましょう。
例文①感慨深い思いです
「今日こうしてこの場で賞を受け取ることができて大変感慨深い思いをしています」「皆がこうして無事卒業式を迎えることができて、先生は感慨深い思いでいっぱいです」「こうしてまた○○さんと同じ仕事に関わることになるのは、感慨深い思いです」のような例文です。
例文②感慨深い気持ちです
上記は「感慨深い思い」という使い方ですが、「感慨深い気持ち」に変えてもほぼ同じ意味で伝えることが可能です。
「今日こうしてこの場で賞を受け取ることができて大変感慨深い気持ちです」「皆がこうして無事卒業式を迎えることができて、先生は感慨深い気持ちでいっぱいです」「こうしてまた○○さんと同じ仕事に関わることになるのは、感慨深い気持ちです」となります。
例文③感慨深いものです
「○○なのは感慨深いものです」という例文もよくある使われ方です。「○○」には印象的だったり、感動的な出来事が入ります。「これだけ偉大な賞をいただけることは感慨深いものです」「あれだけ練習をして努力してきたので、こうして試合に勝つことができるのは感慨深いものがあります」などのような使い方です。
「感慨深い」と「考え深い」の意味の違いとは?
ここからは「感慨深い」と「考え深い」の意味の違いについて紹介しましょう。若い人が意味を知らず、目上の人に対して「考え深い」などと使っていたりする姿をみると、痛くて目も当てられません。「感慨深い」と「考え深い」の違いを理解して、「考え深い」を使うように気をつけましょう。
「考え深い」は人の性格や表情に使う
「考え深い」は、「考え」+「深い」であり、書いて字のごとく「考えが深い」ことを表します。深く考えていたり、真剣に考えていることです。「考え」は「悲しい」とか「嬉しい」という「感情」は関係ありません。
例えば、あるプロジェクトでA案とB案があったとして、それぞれの案について効果やリスク分析などをしっかりと行っている場合に、「考え深い」と形容したりします。
「考え深い」は心の動きではなく、人の性格や表情について形容される言葉です。「感慨深い」が目上の人に対しては使いにくい言葉でしたが、同じように「考え深い」も、間違いではありませんが目上の人に使うと礼を欠く可能性があります。目上の人に対しては「思慮深い」とか「洞察力に富んでいる」のような使い方が無難でしょう。
「考え深い」の例文
「考え深い」は、物事について深く考えている様子を表すときに使います。実際には深く考えているかどうかは当の本人しかわからないので、表情に表れていたり、外部に出された計画や考え方など、外形的に判断されることになります。ここでは、「考え深い」の例文について紹介しましょう。
例文1.悩み続け考え深い顔をしていた
「彼は難しい問題に悩み続け考え深い顔をしていた」「彼女が悩み続け考え深い顔をしていたのは、今日だけに限ったことでない」のような使い方です。これらの例文では、考えの深さが「顔」の表情になって表れています。例えば、眉間に皺をよせた顔などが、考え深い顔の代表例と言えるでしょう。
例文2.彼は考え深い性格で慎重だ
「考え深い」が表情ではなく、性格として使用されることもあります。考え深い性格とは、いろいろと慎重に検討してあらゆる可能性を吟味して善悪や損得を考える性格です。「彼は考え深い性格で慎重である」とか「彼女は考え深い性格をしているので、こちらが提示した案をすぐに受け入れてくれない」などのように使われます。
「感慨深い」と「感動」の意味の違いとは?
嬉しいや悲しいなど、いろいろな心の動きが人にはありますが、「感慨深い」と「感動」は近いものの意味に違いもあります。「感動」も深く物事に感じて心を動かすことであり、嬉しいと悲しいという喜怒哀楽の感情でなく、素晴らしいものや美しいものなどに接して心を奪われることです。
「感動」は目の前の事柄に心が動くこと
「感慨深い」は、過去の出来事や経験をあらためて感じることで、しみじみと心が動かされることであることに対し、「感動」は今現在目の前にある事柄の素晴らしさに接して心が動くことを意味します。「感動」は目上の人をはじめ、年齢や性別を問わず、広く使われる表現です。
「感動」の例文
「痛みに耐えて、よく頑張った。感動した」は平成13年5月の大相撲夏場所に優勝した横綱貴乃花に小泉純一郎元首相が発した名言です。前日の取組で右足を負傷しながらも、貴乃花は優勝決定戦で武蔵丸を気迫の上手投げで勝利し、多くの人の心を動かしました。このように、感動の例文は「○○に感動した」というケースがほとんどです。
例文1.コンサートに感動し喚声をあげる
「コンサートに感動し喚声をあげる」をはじめ、「公開された映画に感動し、友人にその作品を薦めた」「イチロー選手のプレーに感動し、野球を始めた」「○○氏の講演に感動して、いろんな著書に触れてみたくなった」など、「○○に感動」の例文を挙げれば枚挙にいとまがありません。
例文2.感動のあまり涙があふれる
「感動のあまり○○した」という表現も「感動」の例文としてよく使用されます。「感動のあまり涙があふれる」などの例文となります。嬉しい感情が極まって感動を呼び起こし、涙が出ることもあります。「子どものころから○○さんのファンで、こうして会えたのは嬉しい気持ちが一杯で、感動のあまり涙があふれた」といった使い方です。
「感慨深い」の意味を正しく知って使おう!
今回は「感慨深い」の意味を紹介しました。「感慨深い」と「考え深い」の違い、「感動」との異同はわかってもらえたでしょうか。特に目上の人に対しては失礼がないようにしておきたいところです。この記事を参考にして、ビジネスシーンなどで失敗することは少なくなってくれれば幸いです。