藤の花とは
日本では万葉の昔から愛でられてきた藤の花。木から垂れ下がる風情あるその姿は古来から詩に詠まれたり、日本画にもよく描かれています。
藤はマメ科でフジ属のツル性落葉木です。太陽の光を好むので直接日光の当たる場所でよく生育します。藤のツルは木に巻きつき長くしだれた花は長さが20cmから80cmにも達します。花びらは薄い紫色なので「藤」の名前はこれに由来します。
藤は樹齢がとても長く、日本で一番古い藤は日本三大名藤の一つである埼玉県春日部市にある「牛島の藤」で樹齢1200年にもなります。古来から日本文化に欠かせない代表的な花の一つといえるでしょう。色は3色ほどですが種類は多いです。
藤の特徴
日本を代表する花の一つである藤の特徴として一本のツルから花が垂れ下がって咲き右巻のツルと左巻きのツルがあります。種類では右巻のツルは一般的に「フジ」「ノダフジ」と呼ばれ、左巻きのツルは「ヤマフジ」「ノフジ」と呼ばれています。
園芸分類は庭木、花木です。花色は紫、淡紫、白、ピンクなどがあります。開花時期は4月から6月で中でも5月が最盛期です。藤棚がよく知られていますがベランダなどの小さな場所でも鉢植えで支柱を作りツルを這わせると栽培できます。
藤の花の特徴として花言葉が女性的で優しくポジティブなものが多いのですが、「決して離れない」などの受け取り方によってはネガティブで怖いともとれる花言葉もあります。他の植物に巻き付き締め付ける姿は恋に執着する女性の怖さを表す花言葉と言えるでしょう。
藤の名前の由来
藤の花の花名の由来は諸説あります。一説には藤の花が風に吹かれて花びらが舞い落ちるところから「吹き散る」と呼ばれ、それが変化して藤となったことに由来すると言われたり、茎に節があるところからふしからフジ(藤)になったとする説もあります。
「藤」という字には「上に登る植物」と「ツル」という意味があります。紫色の花が咲きツルのような性質を持つことから「紫藤」と呼ばれ、それが「藤」になったという説もあります。また和名「野田藤」は藤の名所大阪市福島区野田の地名に由来します。
藤全般の花言葉・意味
藤の全般の花言葉には「優しさ」「歓迎」「佳客」「恋に酔う」「忠実な」「陶酔する恋」「決して離れない」などがあります。たおやかで女性的な花言葉が多いのも藤の花の特徴と言えるでしょう。
優美な女性を代表するような藤は花言葉「優しさ」と共に、女性が男性にもたれかかっている姿がまるで「恋に酔っている」かのようで、垂れ下がった豪華な花びらがお辞儀しているように人を温かく迎え入れ、「歓迎」しているように花言葉がつけられています。
また木に絡まったツルは、「決して離れない」の花言葉のように激しい執着をあらわす意味もあるとされています。ヤマフジのツルは長さが20メートルにも及びます。藤の花を贈る時には花言葉の意味と相手との関係性を考えてからにしたほうがよいでしょう。
西洋での花言葉は?
英語名Wisteria(藤)の花言葉(Language of flowers)は西洋でもほとんど日本の花言葉と同じです。welcome(歓迎)steadfast(確固たる)(しっかりした)(不動の)(忠実な)、フランス語でJ'aspire a' amourは(あなたの愛を熱望する)などの花言葉があります。
藤は日本の和を感じさせる花なので外国人にも人気があります。花言葉のwelcome(歓迎)は西洋でも藤はお辞儀をするように垂れ下がり、来客を優しく迎えてくれるイメージを共有してこの花言葉が付けられたのかもしれません。
藤の花言葉が怖いと言われる理由
藤の花言葉の一つに「決して離れない」というものがあります。藤には優しく柔らかな女性的な花言葉が多いです。この「決して離れない」の花言葉は特に恋愛などにおいてポジティブな意味と同時に恋に執着しすぎる重く怖い意味も含んでいます。
藤の中でも特にヤマフジはツルが20メートルの長さになります。木に巻き付ききつくしめつけるので、恋の妄執のようなある種のすさまじさを感じさせる花言葉が生まれたのかもしれません。このように藤の花言葉には受け取り方によっては非常に怖いものもあります。
ちなみに紫の物語とも言われる源氏物語は、六条の御息所の怨霊が現れ、源氏の正室葵上や紫の上を苦しめます。これこそ花言葉「決して離れない」の怖ろしい女性の執念や嫉妬を表していると言えるでしょう。
受け止め方により怖い「決して離れない」
恋愛やその他の人間関係において藤の花言葉「決して離れない」は頼もしい信頼をあらわすと共に、花言葉の受け止め方によってはネガティブで怖いイメージを持っています。
古来より女性は藤に男性は松に例えられてきました。藤の花のツルが松の木の幹にしっかりと巻き付き、木全体を束縛し支配する様を恋愛中の女性の執着心の強さを重くて怖い様子に例えたこの「決して離れない」の花言葉は女性の怖さを表しています。
藤は「不治の病」を連想させる花でもある
樹齢が長い藤ですが、藤という言葉の語感が「不治の病」を思わせるため縁起が悪い花とも言われることがあります。病人のお見舞いなどには注意が必要です。ちなみに同じ藤の語感でも「不死」というポジティブで縁起の良いイメージもあります。
藤の色別の花言葉・意味
藤の花色は紫、白、ピンクですがそれぞれ色別に花言葉が付けられています。藤は女性的な花なので花言葉も「優しさ」「歓迎」「恋に酔う」「決して離れない」など女性の気持ちを表している花言葉が多いです。ここでは白と紫の藤の花言葉と意味をご紹介します。
白い藤の花言葉
白い藤の花言葉は「可憐」「恋に酔う」「あなたを歓迎します」「懐かしい思い出」です。白の清楚で可憐な藤は昔の懐かしい思い出を連想させ、豊饒に垂れ下がるたおやかな藤はまるで恋に酔っている女性のように見えるところからこの花言葉が付けられたのでしょう。
紫の藤の花言葉
優美な紫の藤の花言葉は「君の愛に酔う」です。花が連なって咲き誇るところから、深まっていく愛を象徴しているかのようです。紫の藤は大きな愛を表していると言われます。お互いの愛が深く進展している時などに紫の藤をこの花言葉と共に贈ると最適でしょう。
藤の種類
藤の種類は大きく分けてノダフジとヤマフジの二つがあります。ノダフジはツルの巻き方が右回りで花房が長めで、庭植えに適しています。ヤマフジはツルの巻き方が左回りで、花房は短めで鉢植えに適しています。
藤の種類には他にも花の色や花房の形などによってシロバナフジ、ノダナガフジ、アケボノフジ、アカハナフジ、ヤエフジなどの多くの園芸品種があります。現在では藤は世界中で植えられ和を感じさせる花として鑑賞されています。
シロバナフジ
シロバナフジは藤の種類の中でも純白色で花の中心が黄緑色の優美な藤です。ツルは右巻で花穂が長いとう特徴があります。
シロバナフジの長く垂れさがった花房は上品で優雅な女性を連想させます。紫色の藤より開花の時期が遅いのも特徴の一つです。花言葉は「可憐」「歓迎」「恋に酔う」です。いずれも清純なシロバナフジにふさわしい花言葉といえるでしょう。
アカバナフジ
アカバナフジは別名桃色藤(モモイロフジ)とも呼ばれピンク色の花を咲かせます。開花時には濃い赤色をしていますが、次第にピンク色に変化していく特徴があります。ツルは右巻で花房は短めで優しいピンク色が美しい品種です。花言葉は「君の愛に酔う」です。
野田藤
藤の種類の中で日本ではこの野田藤が最も目にする機会が多いと言えます。日本原産で最古の園芸品種です。本州はもちろん日本全国で自生しています。薄紫のあでやかな花を咲かせ、藤特有の甘い香りも特徴の一つです。ツルは右巻です。
「野田藤」の名称の由来は、日本三大名藤の一つの大阪市の福島区の野田にちなんだものです。ちなみにあとの二つの名藤は奈良県春日大社の「春日野の藤」、埼玉県春日部市の「牛島の藤」と言われています。
アケボノフジ
アケボノフジが別名口紅フジとも呼ばれるのは、蕾の頃は淡紅色で開花すると白色で、花の先端が赤色になるという特徴が口紅に似ているということからそう名付けられました。穂先は30cmから50cmほどの長さになります。倉敷の阿知神社内の阿知の藤が有名です。
ヤマフジ
ヤマフジは別名野藤(ノフジ)とも呼ばれ、日本固有の種で本州の西部地方から四国、九州の山地で広く自生しています。他の木に巻き付き大きく成長します。ツルは左巻きで花や葉は他の藤に比べ小さめで、淡紫色の花を咲かせる特徴があります。
ヤマフジのツルは太く長いので木に巻き付く力がとても強く、このことから花言葉「決して離れない」が生まれたのかもしれません。この花言葉からは強い決意と共に、見方によっては女性の激しい恋への執念を感じさせる怖い花言葉とも言えるでしょう。
藤の花を贈る際は相手により注意も必要!
花のプレゼントは贈る方も受け取る方も嬉しいものですが、藤の花を贈る際には注意が必要です。藤の花言葉にはポジティブで女性らしいものが多いのですが、中にはちょっと怖い花言葉もあるからです。
そのひとつの「決して離れない」という花言葉は、受け止め方によっては肯定的にも否定的にもとらえられます。男女間の恋で女性に例えられる藤のツルが木に巻き付いて離れないように、女性の激しい恋心の執着心の表れととらえられる恐れがあるからです。
また藤は「不死」という縁起の良い言葉に聞こえるとともに「不治の病」を連想させる不吉で縁起の悪い言葉でもあります。病気の人や具合の悪い人に花をプレゼントする時は藤の花は避けた方がいいかもしれません。