祈念の意味とは?
祈念するという言葉は、ビジネスの場や、案内状などの文末に書かれているのを見かけます。しかし、どれくらいの方が、詳しい意味を掴み正しい使い方をされているのでしょうか。
社会人になって、畏まった文章を求められる時や、人前で厳粛な挨拶を任された時などには、必要な知識になってきますので、祈念の意味や正しい使い方、また類語について、例文を交えながら詳説してみますので、是非参考になさって下さい。
祈念という言葉の意味は、神仏に対して、願いや目的などが達成出来る様に祈る事です。祈念の意味にある、神仏に対するという意味は、宗教性を強く感じられますが、祈るという行為こそが神仏に聞いてもらうという意味を持ちますので、神様仏様に念じて聞いて頂くための祈りを意味します。
祈念の意味を知ると、その使い方も分ってきます。ほとんどがビジネスの場や、比較的畏まった席で使われます。日常会話ではあまり使われません。結婚式で「幸福を祈念します」とか会社訪問の時には「成功を祈念します」など、相手を敬う気持ちを持って使われる事が多いでしょう。
祈念の意味は祈るだけでは無く、祈って念じますので、祈るより深い意味を持つとされます。目的を達成するために念じる行為が、祈念になると思って下さい。少しややこしいですが、意味が理解できたら次は読み方です。
読み方は「きねん」ですが、「き」を強く発音して「ねん」を下げる読み方をします。「ねん」が強い読み方になると、同音異義語の「記念」と同じようになり、意味が変わってきます。間違えやすいですから、「ねん」は少し下げる読み方で、正しい読み方をする事が大事です。
祈念の対義語・類義語
祈念の対義語は存在しません。意味から見ても祈るの対義語というものも思いつかないでしょう。祈らないとか、そもそも無宗教だと言う方は、祈念するという言葉すら使わないはずです。対義語というのは、反対の意味を持つ言葉ですので、祈念に対義語は存在しないと思って良いでしょう。
その代わりというのも何ですが、祈念の類語はたくさん存在します。代表的なのは、祈願、祈祷、黙祷などでしょうか。どれも祈るという意味を持ちますが、類語は微妙に言葉の意味や使い方が異なります。この中で祈念に最も近しい類語は、祈願になります。
類語の祈念と祈願の違いは、若干意味が違い、神や仏に対して希望を叶えてもらうための祈りという意味は同じで、念じるのと願うの違いです。念じるのは自身が念じ、願うのは神や仏を頼るという意味になり、誰が叶えるために動くのかで、祈願の方が信仰的なります。
他の類語に、祈祷や黙祷があり、これも祈祷は神社で神主さんに祈祷して頂くという行為の類語です。黙祷は、自身が心の中で静かに念じ、祈ることを意味します。
文章で祈念の類語を使う事があっても、この祈祷と黙祷は少し意味が違いますが、あえて類語と言うなら、黙祷の方が近いかも知れません。しかし、どちらも類語ではありますが、正しい使い方とは言えないでしょう。類語でも意味が微妙に違う事を認識しましょう。
祈念の使い方・例文
祈念は、「祈念する」という動詞での使い方をし、ビジネスの場で使う事が多いため、「祈念します」と、敬語での使い方が多いでしょう。ただ、ビジネスの場だけでなく、生活の中の様々なシーンで使われます。どのような使い方するのかを、例文を挙げますので、参考になさって下さい。
例文①
まず例文の一つ目は、祈念を受験生や国家試験の結果を待つ、ご本人かご家族に対しての使い方例文です。試験で良い結果が出ますようにとの気持ちを込めて使う事に意味があります。「会計士の国家試験に良い結果が出ますよう祈念いたします」などの使い方です。
ただ、気を付けないといけないのが、受験生など相手が自分より年下の場合には、受験生の親御さんに、言葉を掛ける事が正しい使い方です。祈念を使う時には、自分を基準として、年上に限ります。年上や目上の方に、敬意を表して使う意味があり、子供や同級生には使いません。
例えば、受験生本人に声を掛ける時には、「合格を祈っていますよ」など、軽い口調で祈念は使いません。祈る気持ちは同じでも、祈念を使うかどうかは、年齢で判断しましょう。ただ、ビジネスの場では例外として年下にも使われますので、個人的な付き合いの時のみの年下と考えて下さい。
取引先の企業の社長さんが自分より若い方でも、相手は取引先のお偉い方ですので、挨拶などでは祈念を使います。また、子供の学校の先生が相手の時も同じです。立ち場を踏まえての使い方に意味があり、特に若くても知識をお持ちの方にこそ、正しい使い方で接しましょう。
例文②
次の祈念を使うシーンは、子供の成長を祈念する親御さんへの使い方例文です。出産、七五三、入学などで、お祝いを贈る時に添える手紙や、渡す時の例文です。「この度はおめでとうございます。お子様の健やかなご成長を祈念いたします」と使います。
他にも、子供だけに限らずご家族への思いを含めての例文は、「今後のご家族皆様のご健康とご多幸を祈念いたします」などです。企業への年賀状なら文末に、「貴社のご繁栄を祈念致しますとともに、本年も宜しくお願い申し上げます」と、付け足すのも意味があります。
例文③
次の祈念を使うシーンは、祝賀会や結婚式など、大勢の前で挨拶をする時の使い方です。大半が挨拶の最後の締めとして使われます。
「お二人(皆様)のご健勝とご多幸を祈念しまして、ご挨拶に代えさせて頂きます」などです。祈念の前の言葉では、ご健勝やご多幸の他に、ご清祥やご活躍なども意味は変わらず使えます。
また、会社の社長就任や、栄転の祝賀会などでは、個人に対しての祝福という意味で、今後の発展を祝いますので、「益々の事業のご発展と、何十年先の祝賀会も、開催されますことを祈念いたします」など、「お祈りします」を「祈念いたします」に変えることで締まります。
例文④
次の祈念の正しい使い方のシーンは、病院にお見舞いに行った時に、付き添いの方にご挨拶する時です。「ご主人様が一日でも早く回復されますよう祈念いたします」また、入院先が遠方でお見舞いに行けない時には、電報という方法もあり、そちらでの意味の伝わる例文です。
「ご入院されたという一報を受け大変驚いております。なかなか遠方でお見舞いに伺えず申し訳ございません。一日も早い回復を祈念いたしまして、心からお見舞い申し上げます」文中に、相手を気遣う「ゆっくりご静養下さい」などの文章を入れても良いでしょう。
祈念と記念の違い
前記でも少し触れましたが、読み方の同じ「祈念」と「記念」の違いを、もう少し掘り下げます。祈念は、「祈念する」や「祈念いたします」などの動詞で使い、記念は、動詞も名詞もあり「創立記念館」や「記念式典」など、思い出を未来の発展に向けてという意味の行事を指します。
意味の違い
祈念は目的を達成出来る様に心から祈る事で、読み方が同じでも、記念は、思い出を残すための行為や物で、同じ読み方でも心境が異なるので、双方の意味の違いが分ります。記念には、思い出だけでなく記憶を新たにするという意味も含まれ、祈念は現在進行している願いです。
記念は思い出に残すという意味
記念というのは、後々振り返った時に、思い出として残っている日や、それを残しておく物という意味で、記念日や一周年記念などという使い方がされる行事も含まれます。出来事を忘れない意味で残された記念碑などは、記念ではなく祈念館と祈念を使っている所もあります。
広島や長崎の原爆が投下された場所では、どちらも原爆死没者追悼平和祈念館となっています。学校や、社会に貢献した方の思い出を残すという意味で建てられた会館に関しては、記念館とされていて、岡本太郎記念館や、葛飾柴又寅さん記念館などがそれに当たります。
祈念を使う際の注意点
祈念の使い方は、ご理解頂けたでしょうが、正しい使用法としての注意点は、相手を選択する事です。相応しい相手にのみ使う事で、つまり目上の方や正式な場所での使い方に限る事です。前記にもありますが、意味なく年下や子供に使うのは正しいとは言えません。
注意点の意味
口頭で述べる時の注意点は正しい発音です。冒頭にも記しましたが、祈念の「き」を強く「ねん」が弱く下がります。この読み方に気を付けないと記念と間違われます。また、PCで文章を作成する場合には、変換ミスに注意しましょう。「きねん」と打つと、最初にほぼ「記念」が出ます。
弔事では使えない
最も重要な注意点は、弔事では使えない事です。お悔やみを伝える時に一般的に使われるフレーズで、「お祈り」の代わりに「祈念」を使うことは避けます。祈念の本来の意味は、願いを叶えてほしい時の表現ですから、亡くなって願いが叶ったと受け取られる可能性があります。
使えない意味
「ご冥福を祈念する」という使い方で、意味をこのまま考えると冥福すること、つまりあの世に言っても幸福である事を、強く祈るという意味にもなりますが、まず、そのような受け取り方はしないでしょう。冥福は、祈念するものでは無いという意味を認識しましょう。
祈念という言葉を知ったからと言っても、意味をはき違えたり使い方を間違うと、大恥をかきますので注意しましょう。お通夜の席や告別式で喪主の方に声を掛けるにしても、決して祈念しますとは言わないよう注意する事です。
そして、講演会や挨拶を述べる時には、会場の方々に対してではなく、主催者に対して使われる事が多く、そのイベントを企画した主催者に対しての感謝や繁栄の気持ちを意味し、祈念しますと使います。企画された行事などが、何を目的に開催されているかの意味を理解して使います。
祈念の由来・歴史
祈念に関する由来や歴史というものは殆ど存在せず、平和を願う祈念の付く像などは各所に存在します。平和祈念像の代表的な長崎の平和祈念像の由来に少し触れてみます。また像ではなく、戦火の犠牲者を祈る意味の会館は、広島にも平和祈念館が存在します。
由来
昭和20年8月6日に広島、8月9日に長崎に原爆が投下され、多くの犠牲者が出ました。長崎では、その10年後の被爆10周年の記念式典の前日に平和祈念像が完成し、翌日の平和祈念式典の一環として、長崎市松山町の平和公園の中で披露されました。
像の意味は、被爆犠牲者への深い悲しみと神の愛、仏の慈悲を含んだ表情で、原爆の脅威で天に向けて右手を上げ、平和を意味する左手を水平に伸ばし、原爆投下の直後の静けさを横に倒した右足で、左足が立っているのは救命を表し、目を閉じ、戦争の犠牲者の冥福を祈ります。
この像の姿そのものが由来になっています。いつまでも当時の悲惨さを忘れず二度と無いように願う意味の像です。この像を建築したのは、長崎出身の彫刻家の北村西望(せいぼう)氏で、まさに平和を祈念する思いを形として残す意味で像が造られました。長崎の人々の祈念が込められます。
歴史
祈念の語源も鎌倉時代の平家物語にも書かれていますので、その頃から使われていたようです。源氏の兵の弓矢の達人那須与一が、平家の舟の扇に向かって矢を射ろうとした時に、心の中で射らせないでほしいと祈念したという意味の一説があります。
このように、祈念の歴史は古いという事は立証されていますが、はっきりとした詳細は分りかねます。従って、祈念の付く祈念館の歴史を見てみます。
平成6年「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の第41条の規定に基づいて、広島と長崎に国立原爆死没者追悼平和祈念館が建てられました。死没者の遺影と名簿が永久保存され、原爆で亡くなった方々や、戦後に無くなった被爆者に追悼の意を込め平和を願う施設です。
祈念の英語表記
祈念という言葉を英語ではどのような表記になるのでしょうか。祈念のみでしたら「Prayer」で、祈念するなら「Pray」になります。
例文で、「平和を祈念する」という意味の「Pray for peace」、「成功を祈念する」の意味は「Pray for success」になり、これが日本語の敬語の例文なら「ご健勝を祈念します」という意味で「I wish you good health」になります。
直訳すると「私は、あなたの健康をお祈りしています」意味ですが、一概に「Pray」だけが使われるのでは無く、祈念を敬語にすると、英語では「I wish you」に変わってしまいます。日本で使われる祈念は、前向きな意味ですが、英語圏での「Pray」は病気見舞いなどで使用されます。
祈念は心から願うという意味
社会人として、大人の対応を要求された時には、言葉の意味を理解して使用しなくてはいけません。祈念は心から願うという意味だと、お分かり頂けたでしょうか。祈りながら念じる気持ちを持って使われる言葉です。皆様の今後のご活躍を心から祈念いたします。