国旗とは?
本題に入る前に国旗について考えてみましょう。国旗とは何でしょうか。一つで言えば国の象徴となるシンボルというものが挙げられます。実際に何かの行事においては国旗が掲揚されますし、オリンピックで優勝した際は、国旗をもってウィニングランをする姿も見られる光景です。
国旗が国の象徴的シンボルとすれば、国家としてのアイデンティティを示すものといっても良いかもしれません。もしそうであれば、国旗の由来を見るとその国のアイデンティティを見れるとも言えます。
国旗の意味とは?
実際の国旗を例に何を意味しているのかを見ていきます。まず、アメリカ国旗です。ご存じの方も多いとは思いますが、アメリカ国旗、左上の星の数は現在の州の数、13本の線は独立時の州の数を表します。アメリカにとっての州と独立の重要性を示しているとも言えます。
次にイギリス国旗です。イギリス国旗のニックネームはユニオン・フラッグですが、これはスコットランド国旗、ウェールズ国旗、北アイルランド国旗の三つを集約して、1つの君主が治める3つの国を意味します。これはイギリス国王と3つの国というイギリスという国の形を意味した国旗といえるでしょう。
このように国旗は国の在り方を示す場合が多いようです。アイルランド国旗アイルランドの国の在り方を示しているのです。
国旗の成立する流れとは?
では、国旗はどのように成立するのでしょうか。先ほどの例でいえば、アメリカは独立したことにより、イギリスであれば連合王国が成立したことにより、国旗が成立しています。
国旗の意味することにより成立した過程は違いますが、国旗は国の在り方、その歴史というのが重要になってきます。したがってアイルランド国旗を知る上では、アイルランドの歴史を知ることが重要になります。どのようにして国旗が成立したかその過程も見ていきます。
アイルランドの国旗の由来は?
アイルランドは北大西洋にあるアイルランド島に所在する国家です。イギリスと関係が深く、成立を知る上でも、その関係を避けて通ることはできません。そして、その歴史は国旗の色、由来に大いに関係しているのです。
アイルランドの国旗について、どうしてその色なのか、色の意味はなんなのか、どういう由来があるのか、その特徴は何か、といったことをまず、歴史から見ていきましょう。
オニール・ハーブがアイルランドのシンボル
アイルランドの国旗そのものには描かれていませんが、アイルランドでは黄色い天使の飾りのついた堅琴が特徴的なシンボルとして扱われています。この竪琴をオニール・ハープと呼んでおり、アイルランド国旗よりも歴史が長く、由来としてもなじみ深いものがあります。
なぜ、国旗よりもなじみ深いのでしょうか。それはアイルランドが歩んできた歴史に関係します。アイルランドにとってのオニール・ハープは切っても切り離せない歴史と由来があるのです。
アイルランドが併合された歴史との関係
1801年から1922年までの間、アイルランドはグレートブリテン王国、つまりイングランドに併合されていました。それまでもイングランドから支配を受けており、反植民地のような扱いを受けている状態ではありました。
しかし、併合という事はアイルランドが国家としての自主性すらも失うことを意味します。アイルランド人にとってそれは簡単に受け入れられることではなく、100年にわたる併合時代も独立運動は続いていくこととなりました。
この時に掲げられた民族旗には緑色に天使の意匠が施された特徴的な竪琴が描かれていました。これが先ほどのオニール・ハープです。当時のアイルランドに自国の国旗はありませんでしたが、アイルランド人としてのアイデンティティが民族旗に込められていました。ですから、オニール・ハープはその由来からもシンボルとされるのです。
アイルランドの国旗にまつわる風習【特徴】
アイルランドはその成立から見ることで、国旗にまつわる風習がわかります。これはアイルランドの国旗の由来や意味、その色の理由を知るうえでも大切な要素です。
ここではアイルランドの歴史をみつつ、どのような風習があるかを見ていきます。ここでも隣の国、イングランドとの関係は切り離せないものがあります。
アイルランドは国旗を掲げられなかった
アイルランドは先ほども述べたように約100年間、イングランドに併合されていました。つまり国家でなかったわけです。当然ですが、国家でなければ国旗は存在しません。その代わりに非公式ではありますが、民族旗が国旗に代わるものとなっていました。
緑色に竪琴が特徴となる旗、オニール・ハープは国旗でこそありませんでしたが、民族としての象徴であったのです。現在では緑に竪琴の旗は、アイルランド東部の旗として残っています。また、大統領旗や軍艦用国籍旗にも竪琴は残っています。
アイルランドは「ニール」と呼ばれていた
アイルランドの先住民族であるケルト人は、アイルランドのことをニールと呼んでいました。時を経て、ニールがアイルという発音に変わり、土地という意味のランドと合わさってアイルランドとなったのです。
ニールというのは土地だけではなく、男性の姓にも見られます。アイルランド西部にあるコノートという地方の首長から始まりとされます。5世紀の初めにはアイルランドを統一していたともいわれています。現在のニール、オニールといった姓は、ニールの子孫という意味を持ちます。
そういう意味では、ニール、つまりアイルという言葉は、古くからアイルランドに存在した言葉ですし、国名としてふさわしいとも言えるかもしれません。
アイルランドが誕生した歴史の背景
ここまでは国旗に関することを主体に見てきましたが、アイルランドがどのような歴史を歩んできたかに大きく関係していることが分かってきました。
次はアイルランドがどのように成立したのかをもう少し深く見ていきましょう。ここでも出てくるのはイングランドです。アイルランドとイングランドは近く、かつ、深い関係にあり、特徴となっています。
アイルランドとイングランドの関係
アイルランドには元々大小の王国が存在していました。そうした中、12世紀に事件が起こります。ノルマン人の勢力がアイルランド島で拡大していたことに危機感を覚えたイングランドはアイルランド島に上陸し、支配権を獲得したのです。その後、アイルランドでは融和と反乱が繰り返され、15世紀には一時的ですがイングランドの影響は小さくなりました。
しかし、宗教改革が始まり、プロテスタントに転じたイングランドとカトリックを守るアイルランド対立が生じます。その対立からイングランドはアイルランドの再征服を開始し、17世紀にはイングランドの植民地となってしまいました。
アイルランドは国外植民地となりつつも、一応の独立を維持していましたが1801年の連合法を受けてイギリスに併合されることとなります。その中にあってもアイルランドは独立運動を行ってきました。
その運動は暴力的なものであり、最後には英愛戦争へと発展しました。そして、この戦争の結果、英愛条約がイギリスとアイルランドの間で締結されます。
英愛条約により独立国になった
この英愛条約の結果、アリランドは自由国として独立しました。しかしながら、この条約ではアルスターの6州は独立することがかないませんでした。
この問題は北アイルランド問題として今でも続いており、過激派によるテロがこれまでも行われてきました。この現状は、落ち着てきたものの継続しており、予断を許さない状態となっています。
アイルランドの人種構成
アイルランドは欧州の中でも人種構成に特徴があります。そして、それは国旗の色にも由来として関係があります。
この特徴はアイルランドの領土と欧州の歴史に端を発します。どのようにしてアイルランドの領土の人口構成が形成されていったのか、その歴史、由来を見ていきます。
アイルランドの領土
アイルランドはブリテン島の西、アイルランド島の内、北アイルランド6州を除く部分を領土として持ちます。いうまでもなく島国であり、その特徴として大陸とは違った文化も残っています。
首都ダブリンはアイルランドの3分の1の人口を有し、欧州有数の都市となっています。しかしながら町並みは東京などと比しても大きな建物が建っているわけではなく、レンガ造りが特徴的な建物も多く残っており、印象としては大きな地方都市といった風情があります。
ケルト系またはアングロサクソン系が多い
アイルランドの人口構成はほとんどがアングロサクソン系か、ケルト系で占められています。欧州ではアングロサクソン系は言語として残っていますが、アングロサクソン人という人はほとんど見られません。ケルト系も大陸ではほとんど見られません。この点から非常に特徴的な人口構成といえます。
この内、後者のケルトはアイルランドにとって大きな意味を持ちます。それはアイルランド島に古くからいた民族ということと同時に、文化の根幹を作り上げた由来となる民族であるからです。では、ケルト人とはどのような人々だったのでしょうか。
アイルランドとケルト人には深いかかわりがあった
ケルトはもともとは大陸に所在した民族であり、その起こりは青銅器時代だといわれ、隆盛を築きました。その後、ローマの隆盛等により徐々に追いやられていき、中世の頃にはフランク人とほぼ一体化し、フランス人の起源となりました。
大陸でケルトは姿を消すこととなりましたが、島国であるブリテン島、アイルランド島は違いました。大陸と異なり完全に同一化することなく、独自の文化を残しています。アイルランドはそれが色濃く残っており、文化の根幹を意味するといっても過言ではありません。
島のケルト
このように大陸にいたケルトと島国にいたケルトは区分されることから大陸のケルト、島のケルトと呼称されます。大陸のケルトの文化はもうほとんど見られないため、島のケルトの文化がケルトを知る上で重要なものとなっています。
ケルトは自然崇拝が特徴的な民族であり、ドルイドと呼ばれる神官が中心となっていました。また、自然崇拝が高じたものとして、非常に美しい音楽を作り出しました。ケルト音楽と呼ばれるこの音楽では、ハープが主要な楽器として扱われます。ケルトは冒頭のオニール・ハープにつながるものでもあるのです。
アイルランドとケルト
このようにケルトはアイルランドでは起源となる民族として扱われます。特に音楽に関してはアイルランドにおいても盛んに行われており、ケルト文化として残っています。
一方でケルト系言語に関しては大きく衰退しています。ケルトの後継といってよいアイルランドにおいても話せる人は減っており、言語としてのケルトを残す努力を今では行っているようです。
アイルランド国旗の色の意味は?
ここまでは国旗に関わる歴史や風習を見てきましたが、最後に国旗の色が意味するものについて見ていきます。アイルランド国旗に関わる歴史、風習を見てきたので、国旗の色の意味を知れば、なぜその色になったのかわかりやすくなります。
アイルランド国旗にとって重要な要素は宗教、独立運動、ケルトという伝統、そしてそれに対を成すアングロサクソン等の新興的要素です。それぞれはアイルランド国旗にどのように盛り込まれているのでしょうか。
アイルランドの国旗は3色構成
アイルランド国旗は3色の構成となっており、縦横比が1:2となっています。この縦横比は非常に少なく、世界的に見ても2:3がほとんどであることから、アイルランド国旗の特徴となっています。
次に国旗の色ですが、左から緑・オレンジ・白となっています。この3色にはそれぞれの意味がアイルランド国旗の表す国の在り方となっています。では、それぞれの意味について見ていきましょう。
歴史的・宗教的な意味
まず、国旗の左、緑はアイルランドの宗教であるカトリック教徒と先住民族のケルトを意味します。伝統としての意味合いが強く、伝統の緑と言えます。
次に国旗の中央、白色は友愛を意味します。これは伝統と新興の融和を意味するものであり、独立運動の末に勝ち取った独立をどう維持していくかという考えと言えます。
最後に国旗の右、オレンジはアングロサクソン、プロテスタントを示します。緑の伝統との対比となっており、国旗は伝統と新興の融和を意味しているといってよいでしょう。
また、アイルランドは独立したという歴史からフランス国旗を参考にしたとされます。フランス独立戦争からアイルランド独立は150年近くの開きがありますが、アイルランド国旗のデザインは1848年には作られていました。
アイルランドにとって、国旗制定から独立まで100年近くかかったことを考えると、まさしく独立は悲願であり、アイルランドにとっての国旗が意味することの深さは想像以上のものがあるでしょう。
アイルランドの国旗は風習の影響が大きかった
このようにアイルランド国旗はその歴史とそれにより形作られてきた風習によるものの影響が大きいことが分かります。ただ国旗を見るだけでは分からないことも、歴史を知り、色の意味を知ることで深みを感じることができます。
アイルランドに関わらず、国旗は国の在り方を示す場合が多いので、国を知るためには意味、由来を知ることが国を知ることにつながります。他の国旗も意味や由来を知ることで国を知るのは非常に面白いことですので、調べてみてください。