国民健康保険と社会保険の違い
早速ですが、国民健康保険と社会保険の違いは何なのでしょうか。細かい部分で多くの違いがありますが、まずは、国民健康保険と社会保険の大きな違いについて二つ挙げていきます。一つは保険の運営、もう一つは保険の加入資格です。この二つについて、それぞれ詳しく見ていきましょう。
運営が違う
まず、国民健康保険と社会保険の大きな違いは、運営です。国民健康保険は、各市町村が運営しています。社会保険は、各都道府県の全国健康保険協会、略して「協会けんぽ」が日本年金機構と連携して運営しています。企業によっては、協会けんぽではなく、健康保険組合を設けているところもあり、健康保険組合に加入することもあります。
加入資格が違う
国民健康保険と社会保険の大きな違いの二つ目は、加入資格です。社会保険は企業に勤めている方で、1週間の勤務時間が30時間以上の方が加入できる保険です。企業に勤めていても1週間の勤務時間が30時間未満の方、自営業やフリーランスの方は国民健康保険に加入することになります。
配偶者・扶養家族は注意が必要
社会保険に加入している人で、家族を扶養に入れたいという方については、扶養に入ることができる条件を満たしていなければなりません。働いている家族を扶養に入れたい場合は、年間の収入金額が103万円未満であることが条件です。また、年金を受給している親御さんを扶養に入れたい場合も、年齢と年金の受給額によって加入の可否が変わってきます。
条件としては、親御さんが75歳未満で、年間の年金受給額が180万円未満、さらに社会保険の被保険者が親御さんの年金受給額の2倍以上収入を得ていることです。75歳以上になると、後期高齢者医療保険の対象となるため、扶養に入れることができません。
国民健康保険と社会保険の保険料の違い
ここまで国民健康保険と社会保険の違いを紹介してきました。この項では、国民健康保険と社会保険で保険料の負担額はどのように変わってくるのかを紹介していきます。国民健康保険料、社会保険料、それぞれ算出方法が異なり、また、負担額は人それぞれです。保険料の負担額が気になる方は、こちらを参考にしてみてください。
負担額はどちらも個人によって違う
保険料の負担額は、国民健康保険と社会保険、共に個人によって異なり、個人の収入によって変動します。収入が少ない人は保険料の負担額が少なく、収入が多い人は保険料の負担額が大きくなります。それでは、国民健康保険、社会保険それぞれの保険料の負担額の算出方法を見ていきましょう。
国保の保険料の算出方法
国民健康保険の保険料の負担額は、前年度の収入を元に計算されますが、各市町村によって保険料率が異なるため、各市町村によって保険料の負担額も変わってきます。詳しくはご自身がお住いの市町村のホームページを見たり、各市役所、各役場に問い合わせてみてください。国民健康保険には「扶養」という概念がないため、世帯人数によっても変動します。
社会保険の保険料の算出方法
社会保険の保険料は、標準報酬月額という保険料のランクがあり、1ヶ月の収入によってその標準報酬月額が決定します。例えば、月20万円収入がある人は、標準報酬月額は20万円となり、その金額相当の保険料を負担することになります。協会けんぽのホームページに標準報酬月額の早見表が載っていますので、気になる方は検索して見てみてください。
また、年に1回この標準報酬月額の見直しを行う「算定基礎」という作業が総務部で行われます。4~6月分の給与支給額を、社会保険加入者全員分日本年金機構に提出し、9月分の保険料から、保険料の負担額が改定になります。
配偶者・扶養家族の保険料について
また、配偶者と扶養家族の保険料についてですが、こちらは結論から言うと、納付不要です。表現が適切かどうかはわかりませんが、配偶者と扶養家族の保険料については、社会保険の被保険者に便乗して保険料を支払う形となります。こういった点を考えると、社会保険被保険者は、家族を扶養に入れるとお得です。
国民健康保険と社会保険の高額医療の違い
もし、病気やケガで入院することになった際には、「高額療養費」という1ヶ月にかかった医療費が限度額を超えた場合に、越えた金額分が払い戻される制度があります。こちらも、国民健康保険と社会保険で異なる部分があります。その異なる部分とは何かについて紹介していきますので、よくご確認ください。
年収が同じでも差が出る場合がある
結論から言うと、年収が同じでも社会保険の方が医療費がかかっても得することになります。医療費の限度額は、国民健康保険は昨年度の所得金額から、社会保険は月収から計算することになります。収入から必要経費を引いた額が所得になりますが、国民健康保険の場合は、さらにそこから33万円を引いた額が所得となります。
そのため、年収が同じでも国民健康保険の場合は、自己負担限度額が社会保険よりも低くなってしまいます。この点では、国民健康保険に加入している方は損をすることになってしまいます。
社会保険にしかないメリット
実は社会保険には、国民健康保険料にはない大きなメリットが存在します。それは、社会保険被保険者の保険料の負担額が少なく済むという点です。国民健康保険料は被保険者本人が全て負担しなればなりませんが、社会保険は保険料の負担を補助してくれる制度があります。こちらについて詳しく紹介していきます。
企業が保険料を半額負担してくれる
社会保険に加入すると、保険料は社会保険の被保険者と企業で折半して負担することになります。つまり、社会保険の被保険者が負担するべき保険料は、従来負担するべき保険料額の半額だけで良いのです。収入が多い人ほど保険料の負担額が減ります。保険料の負担が半額だけで良いのは大きなメリットです。
扶養家族の保険料を納付しなくてよい
また前述したように、社会保険の保険料を納付すべきなのは社会保険の被保険者のみで、扶養家族は保険料を納付しなくて済みます。扶養家族の保険料は社会保険の被保険者に便乗する形で納付することになるため、扶養家族の保険料の負担額は0円です。こちらも社会保険の大きなメリットです。
国民健康保険と社会保険を切り替える方法
もしも会社を退職することになり、社会保険から国民健康保険に切り替えることになった、逆に就職することになり、国民健康保険から社会保険に切り替えることになった場合、どのような手続きを行ったらよいのでしょうか。この項では、社会保険から国民健康保険、国民健康保険から社会保険の切り替えそれぞれを紹介していきます。
国民健康保険に切り替える手続き
会社を退職することになり、国民健康保険に切り替える際は、まず社会保険の資格の喪失の手続きを行います。その後、自身で各役所、役場に行って、国民健康保険に切り替える手続きを行う形となります。この項では、詳しく国民健康保険への切り替えの手順を紹介していきます。必要書類もありますので、よく確認して下さい。
会社側の手続き
まず、会社で社会保険の資格喪失の手続きを行います。次に、○○さんが令和●年△月□日をもって社会保険の資格を喪失しましたという「健康保険資格喪失証明書」を発行します。会社を退職すると、こちらの健康保険資格喪失証明書が会社から届くはずです。届かない場合は、会社の総務部に問い合わせてください。
対象者の手続き
会社を退職したら、まず社会保険の健康保険証を会社に返却してください。扶養家族がいる場合は、扶養家族全員分を返却してください。その後、前述した健康保険資格喪失証明書が会社から郵送で届くはずですので、そちらと年金手帳を各役所、役場に持参して国民健康保険への切り替えの手続きを行ってください。数日で国民健康保険の健康保険証が届きます。
社会保険に切り替える場合の手続き
会社に就職し、社会保険に加入することになった際は、基礎年金番号もしくはマイナンバーを会社の総務部に提出してください。扶養家族がいる場合は、扶養家族の氏名、生年月日、職業、収入、配偶者を扶養に入れる場合は、配偶者の基礎年金番号もしくはマイナンバーを提出してください。
その後、会社の方で社会保険加入の手続きを行い、健康保険証は2~3週間で届きます。社会保険の健康保険証が届いたら、国民健康保険の方については各役所、役場の手順に従って、資格喪失の手続きを取ってください。
もし、健康保険証が届く前に病院にかかりたい場合は、その旨を会社の総務部に申し出ると、「健康保険加入証明書」が発行されますので、病院でそちらを提示してください。
国民健康保険と社会保険で切り替えるときの注意点
さて、国民健康保険から社会保険、社会保険から国民健康保険の切り替えの方法を紹介しましたが、切り替えの際や切り替えをした直後に注意しなければならない点があります。保険料の二重払いや保険料額の変更等、いくつかありますので、次に保険を切り替える際の注意点について紹介します。
保険料を二重払いに注意
国民健康保険から社会保険に切り替えをした際に、国民健康保険の資格喪失手続きを忘れてしまうと、国民健康保険と社会保険両方に加入していることになり、保険料を二重払いすることになってしまいます。そのため、社会保険に加入したら、国民健康保険の資格喪失手続きを忘れずに行いましょう。
もしも、何ヶ月も国民健康保険の資格喪失手続きを忘れてしまっていたら、二重払いがずっと続き、月の出費が従来の数万円も多くなってしまいます。もし、保険料を二重払いしてしまった場合はどのようにしたら良いのでしょうか。
二重払いの分は手続きをすれば返金される
何ヶ月も二重払いをしてしまった、という方、ご安心ください。保険料を二重払いしてしまった場合は、各役所、役場に行って二重払いをしてしまった期間を確認してもらい、必要な手続きを行うと、二重払いしてしまった分を返金してもらえます。ただし、二重払い分を返金してもらえるのは過去2年前までですので、くれぐれも気を付けましょう。
国民健康保険から切り替える注意点
こちらは、前述した通り保険料が二重払いにならないように、国民健康保険の資格喪失手続きを忘れないこともそうですが、各役所、役場に国民健康保険を脱退した日を伝える際に、日付を間違えないように気を付けましょう。例えば、4月1日から社会保険に加入することになった際の国民健康保険資格喪失日は4月1日です。
ここで3月31日で資格喪失と伝えてしまった場合、3月31日は国民健康保険と社会保険のどちらですか、ということになってしまいます。社会保険に加入した日が国民健康保険の資格喪失日です。気を付けましょう。
社会保険から切り替える注意点
こちらも、国民健康保険から社会保険に切り替えた際と同じです。社会保険の資格喪失日は、会社を退職した日の翌日です。会社を退職した日ではありません。例えば、5月15日に会社を退職した場合は、社会保険の資格喪失日は5月16日となります。そのため、5月15日を資格喪失日と各役所、役場に伝えてしまうと、5月15日分が空いてしまいます。
そうすると、会社に「○○さんの資格喪失日はいつでしょうか」と各役所、役場から連絡が入ってしまいます。被保険者本人ももちろんですが、会社の総務部の方も間違えないように気を付けましょう。
また、前述した通り、社会保険は保険料を会社と被保険者で折半でしたが、国民健康保険の場合は全額自費となるため、退職したら納付すべき健康保険料が倍になってしまいます。
国民健康保険と社会保険の健康保険証の違い
最後に、国民健康保険と社会保険の健康保険証の違いについて紹介します。国民健康保険と社会保険では、健康保険証の取り扱い方が変わってきますので、こちらをよく読んで、取り扱い方を間違わないように注意してください。主には有効期限の有無と、資格を喪失した際の健康保険証の対処方法が異なります。
国民健康保険の健康保険証
国民健康保険の健康保険証は、各市区町村によって異なります。厚紙でカード型、厚紙で折り畳み式のバタフライ型、と様式も様々です。国民健康保険の健康保険証は有効期間があり、有効期間が近づくと、郵送で新しい健康保険証が届きます。古くなった保険証は各役所、役場に返却するか、処分してください。
ただし、国民健康保険の資格を喪失して社会保険に加入する場合は、処分せずに、各役所、役場に返却してください。処分してしまった場合は、健康保険課の窓口でその旨を伝えてください。
社会保険の健康保険証
社会保険の健康保険証はカード型になっています。被保険者と扶養者全員分あり、扶養者の健康保険証には被保険者の名前が記載されています。裏に住所を記載する欄と、臓器提供の可否を記入する欄があります。社会保険の健康保険証は、国民健康保険の健康保険証と異なり、有効期限がなく、退職するまで使うことになります。
前述しましたが、社会保険を資格喪失した際は、健康保険証を会社に返却してください。間違っても処分しないでください。処分してしまうと、健康保険協会から催促状が郵便で届きます。万が一処分してしまった場合は、会社の総務部に連絡してください。
国民健康保険と社会保険は運営団体・加入条件などが違う
今回は、国民健康保険と社会保険の違いについて紹介しました。主には運営団体と加入条件が異なります。また、保険料の納付額、高額医療費についても国民健康保険と社会保険で差があります。国民健康保険と社会保険の違いがよくわからないという方は、どうかこちらの記事がお役に立てば幸いです。ご閲覧ありがとうございました。