国民健康保険の確定申告・年末調整の方法
この記事では、国民健康保険の確定申告や年末調整をする方法をご紹介します。国民健康保険は自営業の方や高齢者の方が多く入っているものになります。
国民健康保険の保険料は確定申告や年末調整をすると、支払った分の税金を安くすることができます。ですので、確定申告や年末調整は必須です!
とはいえ、確定申告や年末調整はなんとなく難しいというイメージを持っている方も多いはずです。なので、この記事を読んで確定申告や年末調整について、しっかりと理解していきましょう!
確定申告用紙の準備
確定申告をする場合は、まず確定申告の用紙を用意する必要があります。確定申告用紙は税務署にあり、郵送してもらうことも可能です。また、国税庁のHPにはダウンロード用のファイルもあるので、それをダウンロードして自分で印刷してもOKです。
また、国税庁のHPには確定申告の項目をWEB上で埋めていき、必要項目を埋めた状態で確定申告用紙を印刷できる「確定申告書等作成コーナー」も用意されていますので、それを利用しても構いません。
必要書類の準備
確定申告をする際の準備としては、源泉徴収対象の仕事をしていた場合は源泉徴収票を用意しましょう。ここに会社に勤めていたときに支払った(天引きされていた)社会保険料の合計金額などが書いてあります。
また、国民健康保険に関しては別途「納付済証明書」を用意しましょう。これは自治体によって有無が異なりますので、無い場合は通帳や領収書など支払ったことを証明できる書類を用意します。
そのほかの年金なども控除(税金を安くするために所得や税額を減らすこと)の対象なので、これを支払った証明書もあわせて用意しましょう。
なお、これらの作業は年末調整をしていない人のものです。年末調整をしている場合は確定申告をする必要はありません。ただ、年末調整で一部申告を忘れたという場合には、その分だけ確定申告をすることで控除してもらえます。
ですので、年末調整で書類を出し忘れたというときでも慌てずに、確定申告の準備をしていきましょう。
納税通知書は世帯主の名前で届く
国民健康保険は個々人が加入するものですが、納付書などの納税通知書や納付済証明書は世帯主あてに届くので注意が必要です。
そのため、世帯主が国民健康保険に入っていなくても、保険料納付の義務は世帯主が負います。ただ、支払うのは誰でも良く、実際に加入している人が払っても、家族内で分担しても構いません。
控除も支払った金額分は支払った本人を対象として行われますので、自分あてに納税通知書などが届かなくても心配はいりません。また、世帯主あてでも、家族で自分しか国民健康保険に加入していない場合の対象は自分ですので、支払い額などは確認しておきましょう。
保険料の金額と税額の計算
国民健康保険の保険料ですが、これは自治体によってまちまちです。国民健康保険に加入している年齢層や高齢化率の高低などで必要な保険給付額に差があるため、保険料は自治体(市区町村)が決めています。
国民健康保険の内訳としては、「医療分」、「後期支援分」、「介護分」に分かれていて、この合計金額を保険料として納めることになります。なお、介護分は40歳以上の方のみが納めます。
課税額の決め方は少し複雑で、いくつかの出し方を組み合わせています。この組み合わせや税額・税率は自治体により様々です。
ここからは、課税額の決定方法について詳しく見ていきます。課税額を算出する方法は計4つで、それらを各自治体が適宜組み合わせます。その4つとは、「所得割」、「資産割」、「均等割」、「平等割」の4つです。
「所得割」は所得の何%かを納めてくださいというものです。「資産割」は固定資産の額の何%かを納めてくださいというものですが、近年は使う自治体が減っています。
そして、「均等割」は加入者1人あたりいくら払ってくださいというものです。続いて「平等割」は加入世帯あたりいくら払ってくださいというものです。この4つを組み合わせて、国民健康保険の保険料が決まります。
例えば、神奈川県が横浜市に出している2019年度の標準税率・税額は介護分を含んで、「所得割」で11.53%、「均等割」で48860円、「平等割」で30813円となっています。
所得300万円の人の場合、単純に計算すると「所得割」で345900円払いますので、「均等割」と「平等割」もあわせると年間425573円を支払うことになります。
これらを加入者ごとに計算していき、最終的に世帯ごとに合算します。そして、この結果が世帯主に送られてくることで、保険料を納めることになるわけです。
申告期間と還付期間
確定申告の申告期間は例年2月16日から3月15日になっています。確定申告で申告する内容は前年の1月1日から12月31日までの所得や控除対象への支払額になります。
確定申告の結果、源泉徴収で払いすぎていた税金があった場合は還付が行われます。還付とは、払いすぎていた分が返ってくることです。
源泉徴収は大雑把に天引きしているので、控除などが行われるとたいてい払いすぎが生じます。このため、多くの人は還付金を受け取れます。ただし、逆に納付額が足りないと追加で払うことになるので気を付けましょう。
この還付が行われるのは、確定申告を終えてから1か月から1か月半後です。確定申告期間は大量の申告があり、そのチェックなどもあるので、すぐには還付を受け取れないことがほとんどです。必ず還付金は振り込まれますので、気を長くして待ちましょう。
国民健康保険の確定申告・年末調整の添付書類
ここからは、国民健康保険の控除をする際に添付する必要のある書類について、解説していきます。確定申告の場合は税務署に、年末調整の場合に会社に支払額を伝えますが、その際に何か必要な書類はあるのでしょうか。
必要だった書類を添付し忘れてしまったがために、ペナルティなどがあると怖いですので、しっかり確認しておきましょう。
確定申告で申告する場合
確定申告の場合、国民健康保険の控除をしてもらうために必要な添付書類はありません。国民健康保険は自治体に保険料を払うので、支払われたかどうかは確認済です。したがって、わざわざこちらが支払いを証明する必要がないのです。
なお、多くの自治体では、その年の保険料支払額を世帯主あてに送ってくれますが、この金額はその世帯の合計額になります。先ほども書きましたが、あくまで納付義務は世帯主が負うので、このようなシステムになっています。
このため、同じ世帯に複数人の国民健康保険加入者がいる場合は、自分の払った額がいくらなのか通帳や領収書で確認する必要があります。これで確認した金額を確定申告書に書き込めばOKです。なお、ほかの社会保険料控除がある場合はそれらとの合計を書きます。
年末調整で申告する場合
年末調整の場合も同様で、国民健康保険の控除をしてもらうために必要になる書類はありませんが、会社によっては確認のために何か提出させる場合もあります。これは会社のルールによりますので、それに従ってください。
年末調整の場合は12月末よりも前に書類を提出しますので、その年に払うべき金額をすべて払わない段階で書類提出する可能性があります。この場合は、支払うであろう見込み額も含めて申告して構いません。
ただし、何らかの理由で払えなかった場合は、別途確定申告が必要です。また、控除の対象はその年の1月1日から12月31日に支払った国民健康保険料です。翌年の3月までは年度こそ同じですが、控除の対象にはなりませんので、気をつけてください。
国民健康保険の確定申告・年末調整の控除額
国民健康保険の控除について、詳しく説明していきます。確定申告と年末調整は税額の計算と申告を自分でするか、会社がするかの違いなので、控除についての違いはありません。
ポイントは、国民健康保険はいくら控除されるのかです。控除額が大きければ大きいほど税金が安くなったり、還付金が増えたりするので、一度確認しておきましょう。
国民健康保険の控除は、国民健康保険の支払額は全額が控除の対象です。支払った分がそのまま所得から引かれます。このため、確定申告や年末調整で申告するとしないとでは、税額や還付金に大きな違いが出てきます。ここからはその違いを見ていきます。
申告による控除がある場合
例として、売上300万円のライター(個人事業主・一人暮らし)の場合で考えてみます。経費100万円、控除は簡単にするため所得税の基礎控除38万円、住民税の基礎控除33万円、社会保険料控除として国民健康保険31万円、国民年金19万6920円のみで計算します。
こうすると、申告を行った場合の所得税は5万5650円、住民税は12万1300円となります。なお、住民税は所得割10%、均等割5000円として計算しています。したがって、合計税額は17万6950円となります。
さらに、原稿料は10.21%が源泉徴収されるので、30万6300円が源泉徴収されています。所得税の税額は5万5650円ですので、これとの差額25万650円が還付されることになります。
申告による控除がない場合
国民健康保険の申告を行わなかった場合は、所得税が7万1150円、住民税は15万2300円となります。申告した場合と比べると、所得税は1万5500円増額、住民税は3万1000円増額ですので、計4万6500円の増額です。
還付に関しても同様に計算すると、23万5150円となり、申告した場合に比べて1万5500円減少しています。税金が4万6500円増え、還付金が1万5500円減少しているので、トータル6万2000円の損が発生するということです。
添付書類の必要のない国民健康保険を申告するだけで6万円近くもお得ですので、申告しない手はありません。なお、国民年金に関しては添付用に控除証明書というものが送られてくるのですが、年金の支払い分を控除する場合はこれを添付する必要があります。添付書類の有無が国民健康保険と違うので要注意です。
国民健康保険の控除と確定申告・年末調整の関係
ここでは、国民健康保険の控除と確定申告・年末調整の関係について、詳しく説明していきます。
また、そもそも確定申告と年末調整の違いは何かということも解説します。両方とも目的は同じなのですが、誰がそれをやるかの違いなので、きちんと理解しておきましょう。
控除を受けるために確定申告が必要な人とは
国民健康保険の控除をするために確定申告をしなくてはいけないのは、年末調整を受けていない人です。年末調整というのは確定申告を会社が代わりにやってくれるような制度なので、年末調整をしていない場合は必然的に自分で確定申告をする必要があります。
また、年末調整の際に国民健康保険の控除に必要な書類を提出しなかったなどの場合も、国民健康保険分の控除を受けるためにはその分の確定申告が必要になります。
例えば、1~3月までは転職活動中で国民健康保険に入っていて、4月以降は企業勤めという場合は1~3月分の国民健康保険の支払い分は自分で申告しないと年末調整の対象になりませんので、申告しなかった場合は確定申告しないと控除されません。
控除の対象かの確認方法
国民健康保険の控除は保険料を支払っている人は誰でも対象になりますので、確定申告でも年末調整でも、申告さえすればOKです。先ほども書きましたが、添付書類は必要ないので、忘れずに申告するようにしましょう。
なお、確定申告が必要ない場合は国民健康保険の控除の意味がありませんが、控除によって還付金が発生する場合は確定申告することで、還付金を受け取れますので、一度WEB上などで申告用紙を作成してみると控除の必要性があるかを確認できます。
また、確定申告が必要なくても、収入によっては住民税の申告は必要になる場合がありますので、お金を稼いでいて年末調整をしていない人は、実際に申告するかはともかくとして、一度確定申告の準備をしてみるのがおすすめです。
国民健康保険の確定申告・年末調整の疑問点
最後に、国民健康保険における確定申告や年末調整の疑問点とその回答について、紹介していきます。
国民健康保険は加入が個々人であるにもかかわらず、納付義務を世帯主に負わせるという複雑なかたちになっているので、分かりづらい部分があります。ですので、ここで疑問を解消しておきましょう。
加入者個人ごとの納付済額通知書を交付できるか
国民健康保険は世帯主あてに納付済額通知書が届くということは、前に書きましたが、これを加入者別に出してもらうことは可能なのでしょうか。
残念ながら、これはできないことになっています。確かに加入者別に出してもらったほうが分かりやすいのですが、あくまで納付義務は世帯主にあるので、加入者別には通知を出していないのです。
確定申告や年末調整で自分の支払った額を調べるには通帳や領収書を見るしかないので、しっかり保管しておきましょう。
納付済額を電話で問い合わせることが可能か
また、納付済額通知書を発行しない自治体もありますが、自分がいくら支払ったのか確認したいという場合はあるはずです。この場合、電話で納付済額を問い合わせるという方法を思いつく方も多いでしょうが、こちらは可能でしょうか。
これについては対応している自治体が多くなっています。世帯主もしくは同一世帯の人ならば、本人確認のうえ、納付済額を教えてもらえます。
ただし、自治体によっては電話での対応はしていない場合もあるので、お住まいの自治体のHPなどを確認しておきましょう。
国民健康保険の確定申告・年末調整は人によって金額が異なる
今回は国民健康保険の確定申告・年末調整を通じての控除やその仕組み、確定申告や年末調整を行う際の添付書類や還付金についてなどを説明してきました。
国民健康保険の控除は支払った額がそのまま対象になりますが、その支払額の決定方法は複雑で、自治体ごとにも違いますし、人によっても異なります。ですので、自分がいくら納めなくてはいけないのか、一度確認しておくと良いでしょう。
国民健康保険の控除は添付書類などは必要なく、書類を会社に提出するか、確定申告書に通知書などをもとに書き込むだけで難しくはありません。しかし、控除をするのとしないのでは税額や還付金に大きな差が出ますので、この記事を参考にしっかり申告してください!