受動的の意味
「受動的」という言葉を知っていますか。日常会話の中でそれほど頻繁に使用される言葉ではありませんが、人の行動を表す言葉として意味を知っておかないとビジネスなどで手痛い失敗を起こすことになりかねません。まずは「受動的」の意味を紹介し、類義語や対義語、使い方などについて詳しく見ていきます。
自分の意志でなく他に動かされる事
「受動的」とは、「他から動作・作用を及ぼされるさま。自分の意志からでなく、他に動かされてするさま」を表します。これだけでは特徴がよく伝わらないかもしれません。
「受動的」は人の態度や姿勢について使われますが、他人に強制的にやらされたり、嫌々行動している状態を指します。つまり、自ら自発的に動いているのではなく、他の何かに動かされていることになります。
現実問題として、日常生活でこのような態度や姿勢に陥ることは少なくないはずです。しかし「受動的」という言葉が世の中に頻繁に飛び交っているわけではありません。実際のところは、他の言葉に置き換えられて使用されています。では次に、よく使用される「受動的」の類義語について見てみましょう。
受動的の類義語
上司から「あなたは受動的な姿勢だね」といわれてピンとこない部下がいるかもしれません。中には「褒められた」と勘違いする人もいるでしょう。しかし、決して褒められたわけではありません。実際には「受動的」という言葉ではなく、次の2つの類義語が会話などでは使用されることが多いので、類義語の意味も確認しておきましょう。
①消極的
「消極的」は、「受動的」の代表的な類義語です。「消極的」の意味は、「自分から進んで物事をしないこと、引っ込みがちなこと、否定的であること」を指します。「あなたは消極的な姿勢だね」と言われたら、ピンとこない人はいないでしょう。中には傷つく人もいるかもしれません。
「消極的」の対義語は「積極的」となります。こちらもよく使われる言葉です。「積極的に仕事をこなしている」「積極的に提案する」などの使い方がされます。
英語では「ネガティブ」
「消極的」と同じ意味で、英語表現で「ネガティブ」という言葉も頻繁に使われるので、「ネガティブ」も「受動的」の類義語として整理できます。例文としては、「あいつはネガティブな性格」というような使い方です。同様に、「積極的」と同じ意味の英語表現で「ポジティブ」という言葉も使われます。
印象の問題ですが、「消極的」「積極的」よりも「ネガティブ」「ポジティブ」を使った方が柔らかい表現になります。
②受け身
「消極的」の類義語の2つ目は「受け身」です。「受け身」というのは、柔道などの格闘技で、身体的ダメージを軽減するための防御の姿勢を指しますが、言語学上は、動作や作用の対象を主語として述べることを意味します。例えば、「車を動かす」を「車が動かされる」と表現することを指します。
ここから転じて、類義語の「受け身」には「主体性の無い意見ばかりしたり、何も考えずに命令でのみ動く姿勢」を意味します。まさに「受動的」と似た意味ですが、上記の「消極的」に比べると「受け身」は必ずしも悪い意味ではありません。柔道や言語学上の受動態の表現は、必要性がある動作だったり表現だったりするからです。
③他人任せ
「受動的」の類義語の3つ目は「他人任せ」です。「他人任せ」とは書いて字のごとく、自分では決めたり行ったりせず、他人をあてにしている状態を指していいます。「他人任せにせず、自分できっちりと仕事をしてください」「他人任せにする割には、人がやることには文句ばかり言う」などのような例文が挙げられます。
このように類義語としての「他人任せ」は、あまり良い評価を受けません。現実的には、他から動作・作用を受けることはあることから、「受動的」は必ずしもマイナスの意味ばかりではないのに対し、「他人任せ」は大方マイナスの意味で使われます。
④遠慮がち
「受動的」の類義語の4つ目は「遠慮がち」です。「遠慮がち」とは、遠慮して自分の意見や主張を控えることを指します。自分の意志で行動していないという点では、まさに「受動的」の類義語として近い性質があるといえます。
ただし、「遠慮がち」は自分の意見や主張を控えているだけであって必ずしも他の意見や主張を受け入れているとは限りません。その点、他の意見や主張を「受け入れている」意味である「受動的」とは違いがあります。
受動的の対義語
「受動的」の類義語は「なるほど」と思えるものばかりだったのではないでしょうか。次に「受動的」の対義語について見てみましょう。
「受動的」が「他から動作・作用を及ぼされるさま。自分の意志からでなく、他に動かされてするさま」を意味するので、その対義語は、自ら動作や作用を及ぼしたり、自らの意志で動くさまを意味する言葉になります。以下3つの対義語を紹介します。
①能動的
「受動的」の対義語の1つ目は、「能動的」です。「能動的」は、「進んで物事をしようとするさま」や「自分から他へはたらきかけるさま」を意味します。「能動的」は、まさに「受動的」の対義語の1番手として国語の問題などで出題されたります。「能動的に活動する」「能動的な性格」という使い方がされます。
ただし、「受動的」がそうであるように「能動的」も日常会話ではそれほどには頻繁に使われません。むしろ、文章などの書き言葉で使われることの方が多いでしょう。
②積極的
「受動的」の対義語の2つ目は、「積極的」です。「積極的」とは、「進んでことをしようとするさま」を意味します。「積極的に清掃活動を行う」「積極的にアプローチする」のような使い方がされます。「積極的」は「消極的」の対義語の筆頭として挙げられる言葉です。
「能動的」との違いは、「能動的」は動きの源が自分から発せられているのに対し、「積極的」は自他どちらから発せられるかは問わない点です。つまり、「能動的」ではなくても「積極的」に動くことはあるということになります。
③自発的
「受動的」の対義語の3つ目は、「自発的」です。「自発的」は「自ら発する」であり、「自らが進んでも行うさま」を表します。「自発的な学習を促す」「研修に自発的に参加する」のような例文で使われます。
自ら進んで行う点では「能動的」と同じですが、「能動的」との違いは、「能動的」は「自分から他へ働きかけるさま」を表すのに対し、「自発的」はそのような働きかけがあるとは限らないことです。
なお、「自発的」という言葉の対になる対義語として「他発的」という言葉はありません。一見ありそうな印象を受けますが、そのような単語はありませんので注意しましょう。
受動的と能動的の違い
「能動的」と「受動的」は対義語であると紹介しました。わかりやすくいうと、「能動的」は「自分」から「他人」へ働きかける行為であり、「受動的」は「他人」が「自分」へ働きかける行為を指します。
場合によっては「他人」が意識されない場面でも、自らがどんどんと取り組んでいる場合も「能動的」と表現されます。「能動的」の「能」は、英語の「can」であり、「できる」という意味です。
能動的は自発的に行動する事
「能動的」は、他からつき動かされているのではなく、自分で動くことが可能な状態を表します。すなわち、自発的に行動するということを意味します。「受動的」は、自分で動くのではなく、他からつき動かされている状態を指しますので、両者は根本的に異なります。
「能動的」と少し似た言葉に「自動」があります。これも「自ら動く」ことを指す言葉ですが、その対義語は「手動」であったり「他動」であったりします。「手動」は機械が自ら動くのではなく手で動かすことを指し、「他動」は他の力を得て動くことさまを表します。
受動の用例
「受動的」という言葉は「受動」+「的」であり、「受動」の性質や様子を持っているの意味を表します。「平和的」とか「教育的」とかよく「○○的」という言葉が使われますが、その一種です。つまり、「受動的」は「受動」という言葉の使い方の一つであり、その代表格です。ここでは、「受動的」のほかに「受動」の用例には何があるのかを紹介します。
受動性
「受動性」は「他からの働きかけを受け入れる性質」のことを指します。「○○のシステムには受動性がない」「○○さんは受動性に富んでいる」のような例文が挙げられます。人の性格や態度について使われる場合には、人の意見を受け入れるタイプであることを指します。つまり「受動性がない」とはいわゆる「頑固」と同義といえます。
文章の上では、「受動的」が形容詞として働くのに対し、「受動性」は名詞として働きます。
受動喫煙
「受動喫煙」「受動喫煙防止」「受動喫煙防止条例」など、「受動」の用例の筆頭といえるのが「受動喫煙」です。「受動喫煙」とは「喫煙により生じた副流煙、呼出煙を発生源とする、有害物質を含む環境たばこ煙に曝露され、それを吸入すること」を指します。まさに他から自へ作用を及ぼされているケースの例といえます。
昨今は受動喫煙対策が強化され、公共施設等では受動喫煙が生じないよう隔離された施設等で喫煙するよう措置されています。今後も「受動喫煙対策」の流れは拡大していくでしょう。最終的な本丸はパチンコ店でしょうか。
受動光ネットワーク
受動光(じゅどうひかり)ネットワークは、光ファイバーの伝送の仕組みの方法の1つです。1本の光ファイバー回線を複数の加入者で共用するために用いられる多重化システムです。PDS(Passive Double Star)と呼ばれることもあります。複数の加入者で共用するため、物理的なコストが安く上がるメリットがあります。
「受動光ネットワーク」はまさに専門用語であり、あまり聞いたことがない人も多いかもしれませんし、意味を知らなくても問題はありません。
受動的の使い方と例文
ここから「受動的」の使い方を例文を示しながら紹介しましょう。「受動的」は他の動きを受けるさまを表しますが、「受け身」と同様に必ずしも悪い意味だけで使われるわけではありません。以下、ポジティブな使い方とネガティブな使い方の2つのケースについて紹介します。
ポジティブな使い方
例文としては、「①駐車場の所有者にとって、周辺にアミューズメント施設ができるのは受動的な収入を得るチャンスが生まれる」「②音楽には能動的な楽器演奏の場合と、受動的な鑑賞の2つの側面がある」「③昨今のインターネットでは、受動的に情報を得ることが可能だ」などを挙げることができます。
「受動的」は便利なケースもある
上記の例文①③のケースでは、こちらから行動しなくても、勝手に収入が得られたり、情報を得られたりすることを示すものです。例文②の場合も、聴くという点ではなく演奏という点でいえば、受動的なケースを表します。
このように、「受動的」は「他は動くことにより自分は動かなくてもすむ」という点では、便利で省力的、合理的であるともいえます。このようなケースでは、「受動的」はネガティブではなくポジティブな使い方をすることが可能です。
ネガティブな使い方
次に「受動的」のネガティブな使い方の例文です。「①学校から出された課題に受動的に答えるだけの教育では、これからの時代を生き抜いていけない」「②受動的な喫煙を禁止するための措置を強化しないといけない」「③受動的な目標ではなく、自らが目標を立てることが大事だ」の例文が挙げられます。
例文の①や③は学問やスポーツなどの場面で使われます。これらのケースでは自分で課題を見つけたり、問題解決することが望まれます。例文②は受動喫煙のケースで、「能動喫煙」がポジティブでよいとは言いませんが、自分が望まないことを受けているケースなので、ネガティブな印象を与えます。
受動的な人の特徴
「受動的」は人の行動や性格、態度などに対して形容されることが多い言葉です。では、受動的な人にはどういう特徴があるのでしょうか。「受動的」は必ずしもネガティブというわけではないのですが、一般的には受動的な人の特徴として挙げられるのはあまり良くない特徴だらけです。
①意志がない
自分でどうしたらいいか、何をしたらいいかを考えていない人を見かけませんか。そんなタイプは受動的な人の特徴です。あるいは、自分が「こうだ」と思っていても、他人が「こうじゃない?」と言ったらすぐに自分の意見を曲げたり、引っこめたりする人もいます。これら、意志がない、あるいは意志が弱い人は受動的な人の特徴です。
こういう人は、その状態に慣れてしまっているので自分で受動的であると気づかないことも多いでしょう。しかし、常に自分を引っ張っていってくれる人が周りにいるとは限りません。時には自分でしっかりと意志を持つことが必要です。
②聞かれるまで話さない
自分から話を切り出すのではなく、人から聞かれるまで話をしない、そんなタイプの人を見たりすることはないでしょうか。これも受動的な人の特徴です。話をすること自体が嫌いな人もいますが、中には話をすること自体は嫌いじゃないけどどういう話をしたらいいかわからないという人もいるでしょう。
変な質問をしたら嫌われるんじゃないかとか考えてしまい引っ込み思案になってしまう、そんな思考回路も受動的な人の特徴です。そういう人は自意識過剰でもあり、ちょっとしたきっかけで会話は上達するものです。受動的でも良いので、まずは相手との会話を楽しめるよう、相手に興味を持つようにしてみましょう。
③人に合わせる
自分の意見を持たないで人の意見に同調するだけの人は周りにいないでしょうか。あるいは、人が身につけているものを自分も購入して身につける人とかどうでしょうか。これらも受動的な人の特徴です。①の「意志がない」と似た特徴ですが、意志がないからこそ人に合わせるともいえるので、両者は同じ人に該当する特徴であるケースも多いでしょう。
ただし、人に合わせるは必ずしも悪いことばかりではありません。周りが概ね意見が統一しようとしているのに、自分の意見を押し通すだけの人は見ていて鬱陶しいでしょう。
要はケースバイケースです。常に人に合わせるのはどうかと思われますが、場合によっては周りに合わせることは必要な素養だと考えられます。
④流れに身を任せる
③の「人に合わせる」と似ていますが、「流れに身を任せる」のも受動的な人の特徴です。自分は違う意見を持っているけど、周りが概ね別の意見で統一しようとしている状況において、意見を発さずにその状況をそのまま静観するのは、まさに「流れに身を任せる」ケースです。
人生ときには、自分で流れをつくる必要もあります。成功するか失敗するかはともかく、流れに身を任せていては幸せな人生は訪れません。流れに身を任せるべきか、自分で流れをつくってその流れに乗るべきか、その見極めはしっかりとしたいところです。
⑤好奇心が無い
「好奇心がない」のも受動的な人の特徴といえるでしょう。好きなことは熱中しやすくて、いろいろと積極的な行動を取りやすいものです。「好きこそものの上手なれ」といわれる所以です。好きとまではいかなくても、興味があったり好奇心があるといろいろと自分で体が動くものですが、受動的な人だとなかなかそうなりません。
自発的に好奇心を持たなくても、人から勧められて好奇心を持つこともあるので、受動的だからといって常に好奇心が薄いとはいいませんが、そもそも好奇心がないと何か新しいことをしようとか行動的でなくなるケースが多いでしょう。
⑥行動範囲が狭い
結果、好奇心がないと行動的でなくなったり、行動範囲が狭くなります。つまり、行動的でなかったり、行動範囲が狭いのも受動的な人の特徴といえるでしょう。ただし、人に勧められて旅行に行ったり、スポーツをしたりすることも「受動的」な行動です。したがって、受動的だからといって行動範囲が狭いと決めるのは短絡的です。
行動範囲が狭いと受動的というのは傾向としては成立するかもしれませんがしても、その逆は必ずしも成立しません。能動的に行動する人もいれば、受動的に行動する人も世の中には多いからです。
⑦声が小さい
受動的な人は自分から意見を言ったり、主張することが少ないといえます。この性質が、あがり症や対人恐怖症といったレベルにまでなると、声が小さくなるということもあるでしょう。その逆に能動的な人は、自分の意見をはっきり言うタイプなので、堂々と声も大きくなるという傾向もあるでしょう。
聞いてほしいと思うから大きな声になりますし、聞いてもらう気がない、あるいは聞いてほしくないというのなら声が小さくなるというのは、自然の理でしょうか。
ただし、これも一つの例であって、声が小さいからといって受動的であるともいえません。口元や耳など身体的な特徴が原因で声が小さいということも考えられるからです。
⑧慎重
いままで上げた受動的な人の特徴は、えてしてあまりいい印象を与えないものが多いのですが、「受動的」は悪いことばかりではありません。上記の例文でも示したとおり、ポジティブな場合とネガティブな場合があったように、悪い特徴ばかりではありません。
例えば、「慎重」「分析的」「調和的」といった特徴も受動的な人の特徴といえます。自分の意見を言う前に、人がどう考えているか知りたいというケースもあるでしょう。これらを踏まえたうえで、自分としてどういう行動を取るかを考えるタイプです。
そうなるとこの手のタイプは、もはや「能動的」なのか「受動的」なのか判別しにくいといえるでしょう。大事なのは「受動」をそのまま良しとして採用せず、自分でいったん評価した上で行動に移すことでしょうか。
受動的とは他人に動かされる事をいう
今回は「受動的」の意味や類義語、対義語、例文、受動的な人の特徴などについて詳しく紹介しました。「受動的」は必ずしも悪い意味ばかりではありません。他人に動かされることも時には必要です。きっかけはどうであれ、最終的には自分の意志です。受動的な活動も能動的と区別がつかないところにまで自分の意志を反映できるようにすることが大切です。