「差し出がましい」とはどういう意味?
「差し出がましい」という言葉。聞いたことはあるという方でも、どういう意味なのか、どう使えばいいのかを改めて聞かれると、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。
しかし、うまく使うことができれば、自分の思いをきちんと伝えることもできますし、フォーマルな文章で使えればカッコイイ言葉です。
そこで、この記事では「差し出がましい」の意味や例文、使い方、似た意味を持つ言葉を紹介していきます。さらに、敬語なのか、英語ではどう言えばいいのか、どういう経緯で生まれた言葉なのかも紹介します。
「差し出がましい」の意味
「差し出がましい」は、他人に必要以上に関わろうすることや、出過ぎた状態を意味する形容詞です。本来しなくてもいいことまでやったりすること、あるいは立場や身分からすると、本来遠慮したほうがいいことまですることを表現したいときに使うことができる言葉になります。
「差し出がましい」は敬語?
「差し出がましい」は、ビジネスシーンなどのフォーマルな場所や文章で使われることの多い表現ですが、敬語なのでしょうか。
そもそも敬語というのは、「尊敬語」、「謙譲語」、「丁寧語」の3種類から成り立っています。「尊敬語」は相手の行動を敬った言い方で、「謙譲語」は自分の行動をへりくだって言うものです。「丁寧語」は「です」などで、丁寧な言葉遣いをするものになります。
なお、最近では「美化語」などをいれて、敬語を5種類に分類する考え方もあります。いずれにせよ、敬語というのは、その言葉を使うことで相手のことを敬っている気持ちを示す意味がある表現になります。
今回テーマになっている「差し出がましい」に関しては、それ単独で相手のことを敬っている表現にはなりません。例えば、「差し出がましい真似をするな」という例文があるように、相手を批判したりする使い方もあるためです。このため、敬語であるとは言えません。
敬語としての使い方をしたい場合は、敬語表現と組み合わせて使うようにしましょう。後で出てくる、「差し出がましいことを申しますが」などがその例です。ここでは「言う」の謙譲語である「申す」を組み合わせて、敬語として機能させています。
「差し出がましい」の類語・意味
ここからは「差し出がましい」の類語や意味について、より詳しく紹介していきます。「差し出がましい」について、もっと理解を深めていきましょう。
類語などを知っておくと、使う時のバリエーションも多くなり、適切な使い方をすることができるようになります。
「差し出がましい」は余計なことを意味する
「差し出がましい」は先ほども書いたように「出過ぎた状態」を意味する言葉です。別の言い方をすれば、「余計なこと」とも言えます。
では、似たような意味の言葉にはどんなものがあるのでしょうか。ここからは、類語のご紹介をしていきます。
「差し出がましい」の類語・意味・使い方
「差し出がましい」の類語としては、「僭越(せんえつ)」、「厚かましい」、「おせっかい」、「出しゃばり」、「余計な」などがあります。たくさんあるように思えるかもしれませんが、意味、語源、使い分けなどを1つずつ丁寧に説明していきますので、しっかりとした使い分けができるようになるはずです。
僭越(せんえつ)
「僭越」は、自分の地位や身分を超えたことやその様子を意味する類語です。多くの場合、「僭越ながら~させていただきます」のように使います。これにより、「失礼なことは分かっていますが~」という意味が加わり、自分の言動を謙遜して表すことができます。
やや形式ばった表現なのでスピーチや司会、乾杯などを頼まれたときに使うと自然に受け取ってもらいやすい表現になります。例文としては、「僭越ながら、司会を務めさせていただきます○○と申します」のようなものがあります。
なお、「僭」は「身分不相応なことをする」という意味があります。世界史を勉強すると出てくる、古代ギリシアの時代に出てくる非合法な手段で権力を握った「僭主(せんしゅ)」もこの意味を利用した訳語です。
厚かましい
「厚かましい」は、「慎みがない様子」や「遠慮がない様子」を示した類語です。これは「面の皮が厚い」という表現から派生して出てきた言葉だと考えられています。
まず、人のことや行動を「厚かましい」と批判的に言う場合に使えます。また、「厚かましいとは存じますが」のように使うことで「失礼なことは分かっていますが」の意味になるので、目上の立場の人に自分の希望などを伝える際にも使用できます。
おせっかい
「おせっかい」は日常生活でもよく使う類語です。意味としては、「出しゃばって、世話を焼いてしまうこと」になります。「おせっかい」は猫がものを前足でかき寄せる様子を示す「ちょっかい」と同じ語源ではないかとされています。
本来しなくてもいいのに手を出してしまうという意味なので、「差し出がましい」と似ている部分があります。ビジネスシーンで使うことはあまり多くなく、「あの人はおせっかいだ」といった例文のように、日常生活の中で使われることの多い表現です。
出しゃばり
「出しゃばり」は、「出しゃばること」や「出しゃばる人」のことを指す類語です。「出しゃばる」は、「出るべきでないところにまで、出ていってしまう」という意味になります。「しゃしゃり出る」や「しゃしゃる」と同じようなグループの表現になります。
「あの人は出しゃばりだ」という例文のように使うことができますが、ほかの言葉よりも意味合いが強く、「他人を押しのける」や「他人の迷惑を顧みず」というニュアンスが入っているため、使う場合には注意が必要になります。
余計な
類語の1つである「余計(だ)」には「ものが余っている」という意味もありますが、「必要なレベルを超えた、むしろ効果のないもの」といった意味もあります。この形容動詞の連体形が「余計な」になります。
「余計な」は「余計だ」の連体形ですので、必ず名詞に接続します。したがって、「余計な口出し」や「余計な行動」などのように使います。こうすると、「必要でないもの」という意味で、「差し出がましい」と同じような使い方をすることができます。
「差し出がましい」と「おこがましい」は同じ意味?
「差し出がましい」と似た意味を持つ類語の1つに「おこがましい」というものもありますが、この2つの言葉の意味は同じものなのでしょうか。また、どのように使い分ければいいのでしょうか。前から疑問に思っていた人もいるかもしれませんが、そんな方はこれを読んで疑問を解決しましょう!
「おこがましい」の意味
「おこがましい」は、「身の程をわきまえない」といった意味になります。身分にふさわしくないふるまいをしているということなので、基本的には「差し出がましい」と同じ意味になり、類語の1つと言うことができます。
使い分けも明確なものはなく、「差し出がましい」とほとんど同じように使うことができます。ただし、「おこがましい」は「ばかげている」という意味も持つ言葉であるため、文脈によっては誤解を生む可能性もありますので、少し気を付けましょう。
「おこがましい」の使い方
「おこがましい」は、類語ということもあり「差し出がましい」の使い方とほとんど同じになります。つまり、「言動を批判的に語る使い方」や「自分の言動をへりくだって言う使い方」の大きく2つです。
まず「言動を批判的に語る使い方」の例文としては、「彼の行動はおこがましい」や「今考えると自分のあのときの行動はおこがましかった」のようなものをあげることができます。
「自分の言動をへりくだって言う使い方」の場合は、「おこがましいようですが、~に対しては別の意見があります」や「おこがましいお願いなのですが、打ち合わせの予定の変更をお願いできないでしょうか」といった例文があります。
「差し出がましい」の正しい使い方・例文
ここまで「差し出がましい」の意味や似た言葉について見てきましたが、ここからは実際にどう使えばいいのかを見ていきましょう。
今すぐ使える例文で紹介していきますので、日々の生活にとても活かしやすくなっています。
差し出がましいことを申しますが
まず最初に「差し出がましいことを申しますが」です。これは、後に何か意見やお願いを述べたい場合に使う表現です。「差し出がましいことを申しますが、このデータは根拠が弱いのではないでしょうか」といった例文のように使います。
直接自分の意思を言ってしまうと波風が立ってしまうような場面で使うことで、相手に自分の考えを聞いてもらいやすくなります。自分のお客様や取引先に使うことの多い表現になります。
なお、「申します」は「言う」の謙譲語である「申す」を丁寧に言ったものになりますので、敬語表現のように使えます。
差し出がましいことを申しまして
次に「差し出がましいことを申しまして」ですが、これは基本的に後ろに謝罪の言葉や謝罪のニュアンスが入ります。例文としては、「差し出がましいことを申しまして、申し訳ございません」のようなかたちがあります。
先ほどは意見の前に「差し出がましい」を使った表現を使いましたが、こちらは後ろにつけるパターンになります。これでも、相手に配慮しながら意見などを述べたことが分かります。
こちらも「差し出がましいことを申しますが」と同じで、「申す」を使っているので敬語のように使うことができます。
差し出がましいこととは存じますが
「差し出がましいこととは存じますが」も、自分の意見や考えを伝えるときに使える表現になります。「差し出がましいこととは存じますが、AはBのようにしてはいかがでしょうか」という例文のように使うことができます。
「存じます」は「思う」の謙譲語である「存じる」に丁寧語の「ます」がついたものです。ですので、少し砕けて「差し出がましいこととは思いますが」でも、相手との関係によっては許容されるでしょう。
差し出がましいようですが
「差し出がましいようですが」も同様に意見を述べるときに使う表現ですが、ほかの例文とは異なり、敬語表現との組み合わせがありません。そのため、「差し出がましい」を使う表現の中でも、ややストレートなニュアンスが出ます。
このため、議論の中での反論などで使うことが多い表現かもしれません。敬語表現がなく、ほかの使い方に比べると丁寧さに少し欠けるので使うときは注意しましょう。場合によっては、後でフォローの言葉を入れるべきかもしれません。
差し出がましくて申し訳ありません
最後に「差し出がましくて申し訳ありません」ですが、こちらは意見以外の行動などの後に使いやすい表現になります。例文としては、飲み物を用意して、「差し出がましくて申し訳ありませんが、暑いですので、お飲み物を用意させていただきました」のように使います。
この表現は基本的に自分の行動を謙遜したい場合に使うので、言わないからといってすぐに失礼になるとは限りませんが、使ったほうが相手に与える印象は良いものになるでしょう。
「差し出がましい」はメールでも使える?
「差し出がましい」は、話す中で使うことの多い表現かもしれませんが、メールなどの文章の中では使えるのでしょうか。
最近は、仕事でもメールやチャットなどでやり取りすることも多いですので、しっかり確認しておきましょう。
クッション言葉として使える
結論から言うと、「差し出がましい」はメールなどでも使うことができます。むしろフォーマルなやり取りでは使えることを知っていたほうが便利だと言えます。
具体的には、クッション言葉として使うことができます。クッションと聞くと、ソファなどにある柔らかいものをイメージするかもしれませんが、意味としては同じようなものです。
つまり、直接言うとストレートになりすぎるものの前に入れることで、言いたいことを柔らかく相手に伝えることができるようになるのです。
ビジネスシーンなどでは、言いにくくてもどうしても言わなければいけないことがあるわけですが、そのようなものを言いたいときに使うと便利なのがクッション言葉になります。
そして、「差し出がましい」はこのクッション言葉として使いやすいものになります。今までの例で見てきたように、「差し出がましい」は意見や自分の考え、お願いを伝えるときに使いやすいものですので、クッション言葉にはうってつけなのです。
何か意見や指摘、お願いごとをしたいときには、メールでも積極的に「差し出がましい」を使ってみてください。「差し出がましいようで申し訳ございませんが、先ほどのファイルに誤りがありましたので、お知らせいたします」という例文のような使い方があります。
「差し出がましい」の英語表現
場合によっては、「差し出がましい」を英語で表現しなければいけない場面もあるかもしれません。
そんなときのために、英語で「差し出がましい」の意味を伝えることのできる表現を紹介していきます。
「出過ぎたこと」という意味の英語表現
学校で習う英単語である「forward」は、「前へ」といった意味で使うことが多いのですが、「図々しい」、「出しゃばり」という意味でも使えるので、「差し出がましい」と言いたいときに使える英語表現になります。
具体的には「forward with~」で「~に対して差し出がましい」、「forward of A(to do~)」で「Aが(~するとは)差し出がましい」という意味になります。後者の用法は類語である「impertinent」でも代用可能です。
「おせっかい」というニュアンスでは「meddlesome」や「officious」という英語も使うことができます。ほかに「intrusive」という単語も類語なので、「差し出がましい」と同じような意味で使用できます。
これらに加えて「pushy」というものもありますが、フォーマルな場では使いにくい英語になりますので、日常会話で使うにとどめるようにしましょう。
クッション言葉としての「差し出がましい」の英語表現
ビジネスシーンなどで使うことの多いクッション言葉としての「差し出がましい」の場合は英語特有の言い回しがありますので、覚えておくと非常に便利です。
まず、「I’m afraid this is none of my business, ~」があります。「be afraid ~」は英語の授業で習った記憶がある人もいるかもしれませんが、後ろにthat節が続くと「あいにくですが~だと思う」という意味になります。
後ろの「否定語+my business」は「私には権利がありませんが」ですので、あわせて「私が言えるようなことではありませんが~だと思います」という意味となり、「差し出がましい」と同じように使うことができます。
ほかに「At the risk of sounding too forward, ~」という言い回しもあります。こちらは直訳すると「差し出がましく聞こえてしまうのを覚悟で言いますが」になります。
もう少し短いものだと「Forgive me for saying so, but~」もあります。「forgive me, but~」で「失礼ですが」になるので、「失礼なことを言うようですが」という意味になります。
こう見ていくと、英語でも「差し出がましい」を意味する言葉や表現はたくさんあることが分かります。仕事がグローバル化してきている今、英語で取引先の相手のやり取りをしなくてはいけないという機会も増えつつあります。
そんな状況でも、「差し出がましい」の英語表現を知っていれば、相手に配慮しながらも、臆せず自分の意見を英語で伝えることができますので、ぜひ覚えておきましょう。
「差し出がましい」の語源・由来
ここまで「差し出がましい」の意味や使い方、英語表現などを見てきました、より深くこの言葉を理解するために「差し出がましい」の語源や由来についても見てみます。
言葉を覚えるときには、その由来などを一緒に覚えていくと定着率もいいですので、一緒に見ていきましょう。
古文での「差し出がましい」
そもそも、古文では「差し出がましい」はどのように使われていたのでしょうか。古文での形容詞は「~し」ですから、「差し出がまし」という古語があるのかなと思いがちですが、「差し出がまし」というかたちで調べても辞書などでは出てきません。
当時は「差し出づ(さしいづ)」(現代語では「差しだす」)という古語の意味の1つとして、現在の「差し出がましい」とほぼ同じである「出過ぎている」、「出しゃばっている」があり、それをそのまま使っていたようです。
なお、ここでの「差し」は接頭語と呼ばれるもので、意味を強める効果があります。ただ、明確に意味として現れるというよりも、はっきりしたニュアンスが出る程度と考えておいたほうが自然です。
現代語でも「出す」と「差し出す」、「替える」と「差し替える」では対象がはっきりするなどのニュアンスの違いを感じることができますが、それと同じです。
この接頭語の効果で、意味がよりはっきりするため、「差し出す」などの意味のほかに、「出過ぎる」という意味が加わったのではないかと推測されます。
「差し出がましい」の成り立ち
「差し出がましい」は2つの言葉に分けることができます。1つは古語由来の「差し出」、もう1つは「がましい」です。「がましい」はほかに「押しつけがましい」や「言い訳がましい」などで見ることができます。
この「がましい」は、名詞・副詞・動詞の連用形の後ろにくっついて、前の言葉に似ている様子を示します。「押しつけがましい」の場合は「押し付けているような感じがする」といった意味になります。
したがって、「差し出でがましい(さしいでがましい)」という言葉が最初にできたのではないかと思われます。その後、現代語では「出る」を「いづる」ではなく「でる」と読むようになったため、「差し出がましい(さしでがましい)」と読み方が変わったようです。
また、「がましい」の意味から、もともとは「出しゃばっている『感じがする』」といった意味だったのが、「差し出す」(古語の「差し出づ」)から「出過ぎている」という意味が無くなったため、「差し出がましい」単独で「出しゃばっている」を意味するように変わったものと考えられます。
「差し出がましい」という言葉で丁寧な印象を与えよう!
「差し出がましい」という言葉について、英語も含めた色々な角度からご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。「差し出がましい」はビジネスシーンなどで使うことが多い表現ですが、これを使うだけで相手に丁寧な印象を与えることができます。上手く使えれば、デキるビジネスパーソン、社会人に見られること間違いなしです!