「拝読」の意味とは?
「拝読(はいどく)」には「読む」といった意味があります。しかし「拝読」は敬語ですから単に「読む」動作を表すのではなく、目上の人に対して尊敬の念を込めてへりくだった表現として使うのです。
また「読む」を意味するだけでなく、広義には「理解した」「承知した」といった意味も含んでいます。したがって、目上の人が作った文書などを「よく読んで理解すること」だと覚えておくと良いでしょう。
拝読の対義語・類義語
「拝読」の正しい意味を理解するには、対義語や類義語を知ることも1つの方法だといえます。というのも、対義語を知ることで「拝読」を使うべき文脈をより深く理解できるからです。
また、類義語は全く同じ意味をもつ言葉ではありません。しかし、類義語との微妙なニュアンスの違いを理解することで「拝読」の正確な意味を身に付けることができるのです。そこで、拝読の対義語・類義語の中でも代表定なものを紹介します。
拝読の対義語
「拝読」の対義語を考える場合、「言葉の意味」という観点からすると「読む」の対義語である「書く」「話す」を意味する言葉となります。
また「敬語」の種類といった観点からすると「拝読」は「読む」の「謙譲語」です。したがって、「尊敬語」である「読まれる」「お読みになる」が「拝読」の対義語となるのです。
陳述(ちんじゅつ)
「陳述」とは自分の意見や考えを述べることを意味する言葉です。「読む」の対義語である「話す」「述べる」といった意味をもつことから「拝読」の対義語と言えるでしょう。
「陳述」を使った例文・使い方としては「住民の意見をまとめて議員に陳述しました」「裁判所に陳述しましょう」となります。
この例文だと「陳述」しているのは自分自身ですが、謙譲語ではありませんから他人の行為に対しても使うことが可能です。また「陳述」は単に「話す」ではなく「自分の考えを主張した上で相手を理解させる」といったニュアンスが含まれます。
申述(しんじゅつ)
「申述」とは自分の意見や考えを申し述べる、声に出して話すことを意味する言葉になります。「読む」の対義語である「話す」「述べる」といった意味をもつことから「拝読」の対義語と言えるのです。
「申述」を使った例文としては「上司に対して新たなプランを申述しました」「次回のプレゼンテーションに盛り込む意見を申述します」となります。
この例文だと「申述」しているのは自分自身ですが、謙譲語ではありませんから他人の行為に対しても使うことが可能です。また「申述」は「自分の考えを話す」といった意味が含まれますが、「陳述」とは異なり「自分の主張を理解させる」といった意味合いは弱くなります。
お書きします
拝読を意味する「読む」の対義語は「書く」となります。「書く」の謙譲語は「お書きします」となりますから、まさに「拝読」の対義語と言えるでしょう。
「お書きします」の使い方・例文としては「お忙しそうなので私が申し込み書をお書きします」「ご面倒であれば私がお書きします」となります。
「お書きします」は「拝読」と同様に謙譲語になります。したがって、例文のように「書く」行為は自分自身となり、他人の行為に対しては使えません。
読まれる
「読まれる」は「読む」の尊敬語となります。したがって、敬語の種類といった観点からすると謙譲語である「拝読」の対義語であると言えるのです。
「読まれる」の使い方・例文としては「上司がプレゼンテーションの資料を読まれた」「社長が挨拶原稿を読まれることになりました」となります。この例文では「読む」の自分ではなく他人です。
また、単に「読んだ」と表現するのではなく、尊敬語・謙譲語である「読まれた」を使うことで、相手に対する尊敬の念を表現することができます。
拝読の類義語
「拝読」は「読む」を意味する敬語ですが謙譲語にあたりますから単に読むだけでなく、作者に対する尊敬の念が表現されています。したがって、厳密には「拝読」の類語はありません。そこで「拝読」を意味する「読む」「理解する」から類語を考えてみましょう。
熟読(じゅくどく)
「熟読」とは書物や資料などに書かれている文章の意味を、じっくりと考えながら深く読み込むことを意味する言葉です。「深く読み込む」といった意味から「拝読」の類語だと言えるでしょう。
「熟読」の使い方・例文としては「明日の資料を熟読しておきました。」となります。この例文だと「熟読」しているのが自分自身ですから、類語である「拝読」に置き換えることが可能です。
なお「熟読」は敬語・謙譲語には該当しません。「拝読」が書き手に対する尊敬の念を表現するのに対し「熟読」は単に読み込むことを目的としている点が類語であっても異なります。
閲読(えつどく)
「閲読」とは書物や文書などに書かれている内容を、自分で調べながら読むことを意味します。「読む」といった言葉の意味からは「拝読」の類語と言えるのです。
「閲読」の使い方・例文としては「古い書物を閲読してみました」「休日には古い文学小説を閲読したいものです」となり、類語である「拝読」にも置き換えられます。
この例文だと「閲読」しているのが自分自身ですから、「拝読」に置き換えることが可能です。なお「閲読」は謙譲語には該当しませんが、「読む」を丁寧にした表現となります。
拝誦(はいしょう)
「拝誦」とは書物や文書などに書かれている内容を暗記して読むことを意味します。「読む」といった意味からは「拝読」の類語と言えるのでしょう。
「拝誦」の使い方・例文としては「先生の詩文を拝誦しました」「今期の安全スローガンを拝誦しました」となります。この例文だと「拝誦」しているのが自分自身ですから、類語である「拝読」に置き換えることが可能です。
なお「拝誦」は敬語・謙譲語になりますから、「拝読」と同様に自分自身の行動を表現する言葉となります。ただし、「拝誦」には「声に出して読む」といったニュアンスも含まれており、類語とは言え「拝読」とは異なる注意点です。
判読(はんどく)
「判読」とは書物などに書かれている難しい内容の文書を判断・推察しながら読むことを意味します。「読む」といった意味からは「拝読」の類語だと言えるでしょう。
「判読」を使った例文としては「上司から預かった企画書を自宅で判読しました」となります。この例文だと「判読」しているのが自分自身ですから、「拝読」に置き換えても類語として意味は通じるのです。
ただし「判読」は謙譲語ではありませんから作成者に対する尊敬の念は含まれず、ひたすら難しい文書を読みながらその内容を解明する様子を表す言葉となります。したがって、作者に対するリスペクトの有無によって「拝読」と使い方を区別するとよいでしょう。
拝読の使い方・例文
「拝読」の言葉の意味や対義語・類語を理解していても、いざ使おうとすると上手く文章にできないことも少なくありません。つまり、言葉はビジネスシーンや日常生活の中で、実際に使えるようにならなければ意味がないと言えます。
言葉をマスターするには数多くの例文に触れ、文脈やニュアンス、使い方を学ぶことが大切です。そこで、様々なシーンに応じた「拝読」の使い方・例文について紹介します。
例文①
上司が作成した資料を自らが「読む」場合には「拝読」を使うことで、作成者に対する敬意を表すことができます。ビジネスシーンでは頻繁に出てくる使い方なので、確実にマスターしておきましょう。
例文・使い方としては「マネージャーが作成した資料を拝読して準備します」「先輩の資料を拝読して勉強します」となります。
この例文では「拝読」を「熟読」などの類語に置き換えても意味は通じるでしょう。しかし、作成者に対する敬意が全く伝わってこないことが、他の類語と使い分ける際の注意点です。
例文②
作家や文筆家などの作品を自らが「読む」場合に「拝読」を使うことで、作者に対する称賛の意を込めることができます。日常生活の中でもよく使われるので、正しい使い方をマスターしておくと良いでしょう。
例文・使い方として「先生の新作を拝読しました。これまで以上に感動いたしました」「巨匠の作品を拝読すれば、きっと心も豊かになると思います」となります。
この例文では「拝読」を類語である「読書」に置き換えても意味は通りますが、作者に対する尊敬の年や作品が心に響いたのか否かが伝わりません。しかし「拝読」を使うことで、著者や作品に対する想いを込める使い方ができるのです。
例文③
社外の人物が作成した書類や資料を「読む」場合には、相手のポジションに関係なく「拝読」を使うと良いでしょう。とりわけ、ビジネスシーンでは今後の関係構築にも有効な使い方です。
例文・使い方としては「仕様書を拝読いたしましたところ、訂正をお願いしたい部分がありました」「企画書を拝読しましたので注意点について打ち合わせを行いませんか」となります。
相手が取引先である場合、役職からすると明らかに自分の方がが目上の場合もあります。しかし、こちらからへりくだった言葉を使うことで、不快感を示す人はいません。あえて「拝読」を使うこともビジネスシーンでは大切な使い方なのです。
例文④
上司など目上の人が作成した資料や文書などを「読みたい」場合、「拝読」を使って申し出ると良いでしょう。特に言葉使いに厳しい上司に対しては有効な使い方です。
例文・使い方としては「先般のプレゼンテーションで使用した資料をもう一度、拝読してもよろしいでしょうか」「田中さんが作成した資料を拝読させてもらえませんか」となります。
この例文では「拝読」を類語である「読ませて」に置き換えても意味は通りますが、感謝の意があまり感じられないのが注意点です。また「拝読」を使う際、尊敬の念を示すのは、あくまでも作成者であることも「拝読」を使う際の注意点になります。
例文⑤
取引先の会社から発表された資料・文章を「読む」場合、作成者がわからなくとも「拝読」を使うことは間違いではありません。むしろ「拝読」は取引先に対する尊敬の念を表す敬語・謙譲語ですから、積極的に使うべきでしょう。
例文・使い方としては「御社から発表された決算報告書を拝読しましたので、契約を進めていきましょう」「御社の企業概要を拝読させてください」となります。
「拝読」は敬語の中でも謙譲語にあたりますから「読む」行為をへりくだった表現にします。注意点としては、対象が人物だとは限らないことです。例文のように「会社」「団体」「組織」などに対して敬意を示す使い方も間違いではありません。
拝読は「読む」の敬語
「拝読」は「読む」の敬語にあたりますが、日常生活で使うことは比較的少ない言葉です。しかし、職場や冠婚葬祭にかかる式典など、正式・公式な場面では頻繁に使われる敬語でもあります。
したがって「拝読」の使い方を間違えてしまうと、相手に対して大変失礼にあたることも十分に考えられますから注意しましょう。
したがって「拝読」を正しく使うには、その意味を理解するだけでは十分ではありません。「拝読」のもつ言葉の意味とともに敬語・謙譲語の正しい使い方も確認しておくことが注意点となります。
拝読は謙譲語
敬語には「丁寧語」「尊敬語」「謙譲語」とありますが、「拝読」は謙譲語にあたります。謙譲語は、目上の人に対して自分の行動を伝える表現です。したがって、動作の主体は自分自身であり、「自分が読むこと」を相手に伝える言葉になります。
なお、伝える「相手」は基本的に自分よりも「目上の人」となりますが、単に年齢や役職で決まるものではありません。
「目上の人」となるのは、年齢や役職に限らず自分が尊敬できる相手になります。また、注意点としては「人」だけでなく会社や団体、組織が対象となる場合があることです。
拝読と拝見の違い
「拝読」とは自分自身が「読むこと」「理解すること」をへりくだって相手に伝える敬語・謙譲語です。これによく似た敬語・謙譲語に「拝見」があり、使い方を間違えてしまうことも少なくありません。
同じ「拝」が使われている敬語・謙譲語ですが、「拝読」と「拝見」で意味は異なることをしっかりと理解したいものです。そこで、「拝読」と「拝見」の違いについて解説します。
拝見は「謹んで見る」という意味
「拝見」と「拝読」は同じ敬語・謙譲語であり、ともに「拝」の文字が使われています。「拝」には「おじぎをする」「ありがたがる」「謹み敬う」といった意味があり、非常に似通った言葉なので使い方に迷う場面も少なくありません。
「拝見」の正しい使い方をマスターするには「見」の意味を正確に理解することが大切です。「見」には「見る」「目を通す」のほかに「(見たものを)理解する」といった意味が含まれています。
したがって、文章や資料などを単に「見た」のであれば「拝見」を使いましょう。なお、「拝見」は文章だけではなく、写真や図形や事象などを「見た」場合に使えることが「拝読」と大きく異なる注意点です。
拝見の具体的な意味と例文
上司や目上の人が作成した資料などを自ら「見る」場合には、「拝見」を使うことで作成者に対する敬意を表すことができます。ビジネスシーンでは頻繁に出てくる使い方なので、「拝読」とは確実に使い分けましょう。
例文・使い方としては「マネージャが作成した売り上げに関するグラフを拝見しました」「建設予定地の写真を拝見しましたので打ち合わせに入りましょう」となります。
この例文で「拝見」を「拝読」に置き換えると、データや写真は「読む」ものではありませんから意味が通じません。したがって、対象が「見るもの」なのか「読むもの」なのかを見極めることが、使い方を間違えないための注意点です。
拝読と拝見に似た敬語の意味
「拝読」「拝見」と同様に「拝」を使った敬語は数多く存在します。代表的なものには「拝聴」「拝命」などがあり広範囲で使用されているのです。
これらの言葉には「謹み敬う」などの意味をもつ「拝」の漢字が使われていますから、敬語の種類においてはいずれも謙譲語になります。したがって、行為者は全て自分自身となり、相手に対してへりくだった表現となるのです。
ちなみに「拝聴」は音楽などを「聴くこと」を意味します。「拝命」は「命を受けること」を意味する敬語・謙譲語になります。いずれもビジネスシーンではよく出てきますかる、しっかりと使い方をマスターしておきましょう。
拝読を使う際の注意点
「拝読」は日常生活では使う機会は比較的少ない敬語・謙譲語です。しかし、ビジネスシーンでは社内・社外問わず頻繁に使われる敬語・謙譲語でもあります。
それだけに、しっかりと言葉の意味や使い方を理解しておかないと大きな失敗を招くことも少なくありません。そこで「拝読」の意味や使い方における注意点を紹介します。
「自身が読むこと」以外では使えない
「拝読」は敬語の種類としては謙譲語にあたりますから、あくまでも「自分が読むこと」以外で使えないのが注意点です。また「拝」には「謹み敬う」など、相手に対する尊敬の念が込められていることも大きな注意点になります。
したがって、基本的には「文章」そのものではなく「作者」に向けられた言葉であることを理解しておきましょう。
ただし「作者」が必ずしも「人物」である必要はありません。例えば、作者が不明であっても、発表した「会社」「団体」などにも「拝読」を使うことは可能です。
「拝読してください」は失礼な意味になる
「拝読してください」といった使い方は一見すると丁寧に感じますが、非常に失礼な意味になります。これは「拝読」を敬語として理解しつつも「尊敬語」と勘違いしていることから起こるミスです。
「拝読」はへりくだった表現となります。つまり、目上の人に対して「拝読してください」といった使い方をすると「謙って読んでください」との意味になってしまうのです。
したがって、目上の人に対して「読む」を使う例文としては「明日のプレゼンテーションの資料をお読みになってください」「明日の挨拶原稿をお読みいただけたでしょうか」になります。
「ご拝読いたしました」は二重敬語を意味する
「拝読」をより丁寧な表現とするために、「ご拝読いたしました」といった使い方をする人がいます。しかし、これは二重敬語にあたり文法的に間違っているのです。
「拝読」は「読む」の敬語・尊敬語ですが、さらに「ご」を加えると、同じ単語に2つの敬語・尊敬語を重ねてしまうことになります。
二重敬語は文法的に間違っているだけでなく、非常に回りくどい印象を与えます。ただし、ビジネスシーンでは「ご拝読いたしました」が使われているのも事実です。しかし、敬語は正しい使い方で本来の意味をなすものですから、「拝見いたしました」としましょう。
「拝読いたします」は二重敬語を意味しない
「拝読」の使い方として「拝読いたします」は二重敬語にあたると指摘する向きもあります。しかし、これは二重敬語にはあたらず文法的には何ら問題はありません。
「拝読いたします」を分解すると「拝読」と「いたします」となり、両方とも敬語・謙譲語になります。この場合の注意点は「拝読」「いたします」が独立した言葉であるか否かです。
「拝読いたします」の場合だと「拝読」は「読むこと」、「いたす」は「する」に分けられ、それぞれ独立した敬語ですから二重敬語とは言えません。したがって、ビジネスシーンなどで「拝読いたします」といった使い方をしても何ら問題ないのです。
「拝読」は「読む」という意味
「拝読」は「読む」をへりくだった表現とする敬語・尊敬語です。さらに「拝読」には「読む」に加え、作成者に対する尊敬の念や「理解した」「承知した」といった意味も含まれます。
したがって、「拝読」を使うのは自分が「読む」場合に限られるのです。また、尊敬の念を表すのは、読むものを作成した人もしくは団体などに向けられます。
「拝読」はビジネスシーンでは頻繁に使われる言葉です。それだけに間違った使い方をしてしまうと大きな失敗となります。正しく使うための注意点としては「拝読」の意味を理解するとともに敬語・謙譲語であることを意識することです。