「話を伺う」の意味
顧客や取引先などビジネスシーンではよく使われている「話を伺う」ですが、「はなしをうかがう」と読みます。「相手の話を聞く」という意味としてとらえている方も多いでしょう。しかし、相手の受け取り方によっては、誤解を招くこともあるので注意をしなくてはいけません。
「話を伺う」の「話」には言葉をかわす、会話、声を出して言うという意味があります。また、「伺う」には聞く・訪ねるといった意味の謙譲語です。つまり、「話を伺う」には「相手の言葉を聞きます」「話を聞きに訪う」という意味の言葉になるので詳しく解説しましょう。
話を聞くという意味の敬語表現
「話を伺う」には、一般的に理解されているように「お話しを聞きますよ」という意味ですが、「聞く」の謙譲語である「伺う」を使うことによって、より丁寧な敬語になります。次の例文を確認してみてください。
「お話を伺うことができ、光栄です」「話しを伺いにまいりました」「お話しを伺いたいのですが、この後お時間はよろしいでしょうか」「伺う」には、自分が耳を傾け聞くという意味だけではなく、相手に対して質問・問いかける、ある場所に訪れるという意味も含まれています。
「聞く・問いかける・訪れる」という自分がすることに対して、へりくだった表現をする場合に「伺う」を使用するので覚えておきましょう。敬語で「話を伺う」を使う場合については、後にご紹介する「話を伺うの敬語での使い方」を参考にしてください。
「話を伺う」の言い換え
「話を伺う」ですが、誰に対しても使っていいという言葉ではありません。「話を伺う」は基本的に目上の方や上司、顧客などのお客様を相手に使う言葉です。そのため、同じような意味を持つ言葉に言い換えることによって、適切なシーンで正しく使い分ける必要があります。
そこで、「話を伺う」の言い換えた使い方についてご紹介していきましょう。中には、同じ意味であっても使う時と場所によっては、「話を伺う」よりも適した言い換え方法があるので注目してみてください。
お話を聞かせてください
「話を伺う」と言い換えることができる言葉として、「話をお聞かせください」という言葉があります。例文として、以下を参考にしてください。
「ぜひ、話をお聞かせください」「~について、詳しく話をお聞かせください」もともと、「伺う」には「聞く」という意味でも使われるため、このように言い換えることができるのです。
「話を伺う」と「話をお聞かせください」は意味のニュアンスは同じですが、使い方を間違えると失礼にあたるので注意が必要です。「お聞かせください」という言い方は、命令口調ともいえるので、上司や目上の人には向かない言葉になるため気をつけましょう。
目上の人に対しては「話を伺う」、部下や同僚には「話をお聞かせください」といったように使い分けるのがおすすめです。
ご意見を伺う
「話を伺う」の言い換えとして「ご意見を伺う」という言葉もあります。意味としては、「いい案や意見があれば教えてほしい」となり使い方としては、以下のようになるので参考にしてください。
口頭であれば、「このパンフレットを見て、ご意見を伺ってもよろしいでしょうか」「何かご意見があれば伺います」といった表現になります。
しかし、メールでは「ご意見をお聞かせいただけますか」といったように、「伺う」を「お聞きする」に変換した方が、より丁寧な文書として感じるでしょう。
「話を伺う」のメールでの使い方については、後ほど詳しく解説しているので確認しておきましょう。「ご意見を伺う」とは、相手から意見を話してもらうという意味があるので、尊敬語を用いて「意見」に「ご」をつけて話しをするのがおすすめです。
お尋ねします
相手から話や意見を聞くという意味では、「お尋ねします」も「話を伺う」と言い換えることができます。ただ、「お尋ねします」と「話を伺う」では、少しニュアンスが異なるので確認しましょう。
「話を伺う」には、相手に話てもらうという印象を受けやすいのに対し、「お尋ねします」には自分から相手に質問がある・話をしたいという印象を持ちます。例文にすると以下のようになるので確認してください。
「お尋ねしますが、~は可能でしょうか?」「Aの行事について、2、3質問をしてもよろしいでしょうか」自分が相手に話を聞きたいのか、それとも相手からの話を聞きたいのか、その時の状況に応じて言い換えるようにしましょう。
「話を伺う」の敬語での使い方
先にご紹介した「話を伺うの意味」でも少しふれましたが、「話を伺う」の「伺う」は「聞く」の謙譲語です。謙譲語とは、相手を持ちあげるために自分を下げて相手に敬意を示す(へりくだる)言葉になります。
謙譲語は、自分が主語として話をする場合に使われる言葉であり、すでに敬語になります。それを踏まえて「話を伺う」の使い方についてお話ししましょう。
お話を伺いたく存じます
「話を伺う」を敬語として使う場合、「お話しを伺いたく存じます」という使い方が一般的です。少々硬い言い方に聞こえるかも知れませんが、取引先の相手などに用いることが多い使い方になります。しかし、この敬語の使い方も気をつけなくては、誤解されやすいので気をつけましょう。
例えば、「先日お話しした件について、お話しを伺いたく存じます」では、相手へ会いに行って話をするのか、それとも別の方法で話をするのか判断が付きにくいです。特に、メールで伝えた場合は文面だけでは判断できないでしょう。
そのため、敬語として「話を伺う」を使ったとしても、どういった形で話をしたいのか、誤解のないように伝えるようにしてください。
「お話をお伺いする」は間違い?
ビジネスシーンでもよく耳にする「お話しをお伺いする」は、聞きなれているせいか違和感なく受け入れている方も多いでしょう。中にはとても丁寧な言い方だと思っている方もいます。しかしそれは正しい日本語としては大きな間違いです。
実は「伺う」に「お」をつけることによって、二重敬語になります。先にお話ししたように、「伺う」は謙譲語です。すでに敬語であるのにもかかわらず、「お」をつけてしまうことで二重敬語になってしまい日本語としてはおかしい文になります。
「お話しをお伺いします」では、「丁寧語+謙譲語」になってしまい、日本語としては間違いになるので覚えておきましょう。
ただ、「話を伺う」では敬語にあまり聞こえず、目上の人には適さないと感じる方も多いです。もし相手に敬意をもって「話を伺う」を使う場合は、「お話を伺う」もしくは先にご紹介した「お話を伺いたく存じます」がおすすめです。
「お話を伺う」は「話」に「お」を使うことで丁寧語になり、会話の語尾に「です・ます」をつけることによって、より丁寧な言葉に聞こえます。
「お話を伺う」は一般的に使われている言葉でもあり、ビジネスシーンでも広く使われています。「お話をお伺いする」は、特に語学に富んだ方を相手に使う場合、違和感を持たれやすいので注意しましょう。
最悪は「日本語ちゃんとわかってない人」といった印象になってしまう可能性もあります。また、「話」に「お」をつけないことによって、違和感を感じてしまう方もいます。
「敬語をきちんと話せない人」といった印象を持たれてしまうので、目上の人と話をする場合は特に「お話を伺う」という使い方をする方がいいでしょう。
「話を伺う」のメールでの使い方
メールで取引先などと連絡を取るシーンも多いです。メールは文字として残ってしまうので、もし間違えた使い方をするととても恥ずかしい思いをするでしょう。また、何度も言いますが「話を伺う」は、誤解も招きやすい言葉です。
そこで、「話を伺う」という言葉のメールでの使い方についてお話ししましょう。「話を伺う」を用いた文を作るときの注意点もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
「伺う」の使い方に注意が必要
メールは文字なので、実際の声のトーンや口調を感じ取ることが難しいです。よく知った友人同士であれば、何を言いたいのか感じ取れることもありますが、ビジネス上では誤解を招く可能性があります。
そのため、メールで「話を伺う」を用いる場合、「伺う」の使い方に気をつけなくてはいけません。相手に意見をもとめるメールを送る場合の例文としては、次のようになります。
「先ほどの資料の件で、お話を伺いたいのですがよろしいいでしょうか」「Aさんの言葉でお話を伺いたいのですが」などといった形になります。相手の意見を聞きたい場合は、はっきりと意見を知りたいという意思表示をするようなメール文にすることが大切です。
「伺う」には訪問するの「訪う」といった意味もあります。そのため、訪問して話を聞きたいといった場合は、「話を伺いたい」ではなく、次の例文のように「行きたい」「会いたい」といった意思を伝えることが大切です。
「Aについてお話を伺いに行きたいのですが」「きちんとお会いしてお話を伺ってもよろしいでしょうか」
メールには、正確な自分の意思が伝わりにくい部分があります。そのため、どうしたいのかきちんと意思表示を失礼のない範囲で示すことが大切です。
「話を伺う」の口頭やメールの例文
ここからは、さまざまなシーンで口頭やメールを使った「話を伺う」の使い方について、例文とともにご紹介していきます。
先にふれたように、特にメールは自分の意思が間違って伝わってしまうこともあり、誤解を招きやすいツールです。相手に意思を伝えるためにも、「話を伺う」の正しい使い方について確認しましょう。
口頭の場合の例文
電話や会話で「話を伺う」を用いる場合、これから話を聞きたいのか、別の人から話をすでに聞いているのか、話をしてくれたことへの感謝を示すのかによって使い方が異なります。それぞれのシーン別に「話を伺う」を使った例文とともに、解説していくので参考にしてください。
まだ話を聞いてない
ビジネスでは、「話を伺う」と口頭で伝えるシーンは数多くありますが、まだ話を相手から聞いていない状況で、これから聞くという場合、次のような言い方ができます。
「お話を伺う機会をいただき、感謝しております」「Aの件についてお話を伺うことは可能でしょうか」「お話を伺うことを楽しみにしておりました」
相手から話を聞いていない状況では、「話を伺う」を用いることで、話をしたいという意思を示したり、話せる状況を作ってもらえたことに感謝の気持ちを表現することができます。
講演会や説明会、アポを取り時間を取ってくれた場合では、感謝とともにシーンに応じて楽しみにしている感情などを伝えると、より相手に感情が伝わりやすいのでおすすめです。
別の人から話を聞いている
別の人から話を聞き、そのうえで相手から話を聞きたいといった場合、また相手に同じ話をさせてしまっては、手間ですし無駄な時間をかけることになります。仕事を円滑に進めるためにも、相手に話を聞いていると伝えることは大切です。
そこで活用できるのが、「話を伺う」です。例えば、「Aの件については、佐藤よりお話を伺っております。」「以前より、お話を伺っております」といったように、事前に話を聞いていたことを伝えることができれば、重複して話をする手間もなく本題に入ることが可能です。
他の言葉で言い換える場合は、「お噂はかねがね伺っております」など、情報としては耳に入っているということを相手に伝えることができます。
話を聞いた後に感謝を伝える
例えば、取引先の担当者に時間をわざわざ作ってもらい、話を聞いた場合など感謝の意を伝えるシーンもよくあります。そうした場合は、次のような例文を使うといいでしょう。
「本日はお忙しい中、お話を伺う機会をくださりありがとうございました。」「お話を伺うことができて、とても有意義な時間を過ごせました。ありがとうございました。」
話を聞いた後に感謝を伝えるシーンで使う場合は、「話を伺う」は話を聞いたことではなく、話を聞く「機会」をくれたことに対して感謝しているという意味合いが強くなります。
ビジネスシーンでも、人と会う機会が多いといった方は、口頭でも「話を伺う」という言葉を、使いこなせるよになることで、より人との関係を円滑に進めることができるでしょう。
メールの場合の例文
ビジネスでは、メールを使って相手とコンタクトを取ったり、会社へ伺うことができるようアポイントメントを取ることもあります。前述した「話を伺うのメールでの使い方」でもお話ししたように、メールは顔を合わせずにやり取りをするからこそ、使い方には気をつけなければいけません。
これからシーン別にメールで「話を伺う」を使うときの例文をご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
相手に意見を求める
相手の意見を聞きたいといった場合、「話を伺う」は「Aの案件でお話をお伺いしたいのですが」「Aの件でBさんのお話を伺ってもよろしいでしょうか」といったように使います。
ただ、「話を伺ってもよろしいでしょうか」と聞いてしまうと何の話かも分からないので、再度メールもしくは電話などで確認しなくてはいけないという手間があります。そのため、メールで「話を伺う」を使う場合は、細かく誤解の内容な文章にすることが大切です。
具体的には、「話を伺う」だけではなく、具体的に何について話を聞きたいのか示すと、相手も回答しやすく、再度聞き直すといった手間もなくなります。
また、相手の意見を聞きたいという意味での「話を伺う」なので、「Aの件について、ご意見を伺ってもよろしいでしょうか」といった形に言い換えることも可能です。
訪問して話を聞きたい
直接会って話を聞きたいとアポイントメントを取りたいときも、「話を伺う」という表現ができます。このような場合は、メールで会う約束をすることがメインになるため、誰が読んでも会ってお話しをしたいという意向がわかるような文にしなくてはいけません。
「直接お会いして、お話を伺いしたいのですが、ご都合のよろしい日時を教えていただけますか」「お会いしてお話を伺うことは可能でしょうか」などといったような使い方をするので覚えておきましょう。
会って話を聞きたいという意思表示には、「話を伺う」だけではなく「会う」や「時間を作って」などといった言葉を加えるようにしてください。また、「話を伺う」以外にも「直接お話をお聞きしたいのですが」といった形に言い換えることもできます。
「話を伺う」の英語表現
先に少しふれましたが、「話を伺う」は「話を聞く」の謙譲語になります。英語には、敬語表現というものがないと耳にしたことがある方も多いでしょう。確かに、英語には、丁寧語や謙譲語といったくくりになる言葉はありません。
しかし、丁寧に表現する文法があります。「話を伺う」も「話を聞く(尋ねる)」といった意味を持つとお話ししました。「話を伺う」を英語で表現した場合は、「話を聞く」という文法を使います。
ただ、同じ「話を伺う」という言葉であっても、相手に何かを訪ねるのか、相手に話を聞くのかによって英語の表現は変わります。それぞれの英語表現について例文とともにご紹介しましょう。
何かを尋ねる場合
人に何かを訪ねる意味で「話を伺う」という言葉を使う場合、英語では「ask」を用います。ただ、「ask」は動詞なので敬語ではありません。そのため、「ask」を使って「話を伺う」と英語で表現したい場合は、次のようになります。
「May I ask you something?(話を伺ってもよろしいでしょうか)」「I'd like to ask further details(より詳しくお話を伺ってもよろしいでしょうか)」
「would like to~」には~したい、「May I ~」には~してもいいですかという意味があります。「May I ask you something?」といった英語表記では、「I'd like to ask you something」へ言い換えることもできるので覚えておきましょう。
話を聞く場合
相手からの話を聞きたいといった意味での、「話を伺う」の英語表記では、「hear」や「listen」が使われることが多いです。
同じ「伺う(聞く)」という意味でも、「hear」は自然と耳に入ってくるという意味での「伺う」に使います。「listen」には「耳を傾ける」という意味での「伺う」に使い、英語表現としては以下を参考にしましょう。
「I'd like to hear your story(あなたの話を伺いたいです)」「I have learnt a lot by listening to your valuable lecture(あなたの貴重なお話を伺うことができて、大変勉強になりました」
英語は日本語ほど、敬語といっても謙譲語や丁寧語といったように細かく分かれているわけではありません。しかし、英語にもフランクな言葉使いとビジネスシーンでの言葉使いの表現方法があります。英語で敬語を表現する場合は、丁寧な言い回しをするように心がけましょう。
「話を伺う」は話を聞くという意味の敬語表現
ここまで、ビジネスシーンでよく使われる「話を伺う」について、意味や言い換えた場合の表現、そして英語での表現方法などお話してきました。
「話を伺う」には、相手の話を聞く・尋ねる・訪ねるといった意味があります。特にメールなど文書で使う場合は、顔を見て話をしているわけではないので誤解されやすいく注意が必要です。そのため、どんな意味で「話を伺う」のか相手に分かりやすく伝えるよう心がけることが大切になります。
また「話を伺う」は、「お話しをお伺いする」といったように、二重敬語で使っている方も多いです。正しい日本語を使うことでより自分の能力を示すことにもなるので、これを機会に「話を伺う」を正しい使い方を実践していきましょう。