「それがし」の意味・使い方まとめ!由来・例文・類語やなにがしとの違いも解説!

「それがし」の意味・使い方まとめ!由来・例文・類語やなにがしとの違いも解説!

時代劇等でよく聞かれる「それがし」という言葉を知っていますか。それがしの意味や由来、類語等について実際の使い方を例文を交えながら紹介します。又それがしとよく似ている言葉である「なにがし」という言葉との意味の違いについても見ていきます。

記事の目次

  1. 1.それがしの意味とは?
  2. 2.それがしの対義語・類義語 
  3. 3.それがしの使い方・例文
  4. 4.それがしとなにがしの違い
  5. 5.それがしの由来・歴史
  6. 6.それがしの英語表記
  7. 7.それがしの漢字
  8. 8.「某」という漢字について
  9. 9.それがしは名が分からない人という意味

それがしの意味とは?

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「それがし」という言葉を聞いたことがありますか。時代劇や大河ドラマのような昔の様子を描いた作品等でよく聞かれる表現ですが、「それがし」の意味等について説明するようにと言われると難しいかもしれません。そうした「それがし」の意味や使い方、由来について紹介します。

意味①一人称として使う

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まずは「それがし」の意味から紹介します。「それがし」の一般的に広く知られている意味は一人称としての「私」です。

自分自身のことを「それがし」と述べ、現代で言うと「私は〜で」と話をする際に使う言葉として使われています。つまり「それがしは尾張の出で」と述べると、現代では「私は尾張出身で」という文章になり、自分のことを紹介することができます。

時代劇や大河ドラマの影響により、現在でもこの言葉を使って自分のことを指す人も稀にいます。しかし、「それがし」は本来は別の意味があり元々はそちらの意味で使われる言葉でした。では次にその本来の意味について紹介します。

意味②名が分からない・出さない人

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「それがし」は本来、自分が持っている名前をはっきりと述べずに人の名前や物の名前を指す意味を持つ言葉として使われていました。

又、名前をはっきりと明かさずぼやかして表現する際にも使われてきました。つまり、自分自身は相手に対して名前を明かす程の者ではないということも表している為、相手に対してへりくだった表現ともされています。

まとめると、本来の「それがし」の意味は「誰も分からない人や物」ということです。先に紹介したような「私」を表す「それがし」の使い方は鎌倉時代以降に広まったと言われ、室町時代以降にはそちらの方がメジャーになったと言われています。

それがしの対義語・類義語 

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「それがし」の意味が分かった所で、「それがし」の対義語や類語を紹介しましょう。それがしの対義語や類語のそれぞれの意味についても紹介する為、一緒に覚えておくようにしましょう。まずは「それがし」の対義語からです。

それがしの対義語

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まず、「それがし」の対義語は「御手前」と書いて「おてまえ」と読むこの言葉です。「御手前」と聞くと、茶道の場で聞かれるお茶の作法や出来映え、技量を表す言葉と先に想像できるかもしれませんが、「それがし」の対義語には御手前のもう一つの意味の方を使います。

御手前の意味

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「御手前」のもう一つの意味は、主に武士が自分と対等な立場の人間や近しい人間に対して使う二人称です。二人称の為、御手前が表すのは私自身ではなく、あなたや君といった相手のことを指します。例えば「御手前は誰ぞ」を現代語訳すると「君は誰だ」となります。

それがしの類語

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次に「それがし」の類語を紹介します。「それがし」は一人称の意味を持つ言葉である為、「私」や「僕」といった言葉も類語と言えます。その中で今回は同じく一人称の類語である「手前」について紹介します。

手前の意味

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「それがし」の類語である「手前」は自分や私、自分の目の前という意味です。ドラマ等で「てめえ」という台詞を聞くことがありますが、これも「手前」を意味しています。

自分のことを「手前」という人は日常生活ではあまり見かけることはありません。日常生活ではどちらかと言えば、自分の目の前という意味で使われることが多く、例えば「手前の角を曲がって」と言う際等にこの手前を使います。

しかし、自分のこととして「手前」という言葉を使っている人はゼロではありません。飲食店のスタッフやホテルスタッフではしばしば「手前」を使って自分のことを表現している所もあります。「手前」は本来は丁寧な言葉の為、そうした場面で使われています。

それがしの同義語「拙者」

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「手前」の他に「それがし」の同義語として「拙者」という言葉もあります。類語とほぼ同じではありますが同義語として分類される言葉です。

拙者もそれがしと同じく時代劇等でよく登場する言葉で、自分や私を意味しています。「拙者は〜で」とするとそれがしと同じく、「私は〜で」と自分のことを述べることもできます。そうしたことからそれがしと類語であり、同義語であるとされています。

又、拙者は劣っているという意味を成す「拙い」という漢字を使用している為、こちらもそれがしと同様に自分自身をへりくだって述べる言葉とされています。それがしとの明確な使い分けのルールがない為、自分自身を述べる際にはどちらを使っても構いません。

それがしの使い方・例文

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では紹介してきた「それがし」の意味を踏まえた上で、「それがし」の具体的な使い方を例文を用いながら紹介しましょう。現代の会話の中では使われることはあまりありませんが、時代劇や大河ドラマ等を見る際に「それがし」の使い方や例文を知っておくだけでも楽しみ方が変わります。

例文①

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まずは「それがし」を一人称の私や自分として使う際の使い方を例文を使って見てみましょう。この使い方が1番簡単な「それがし」の使い方です。

「それがしがこの馬の持ち主である」、「それがしは豊後国より参った」、「それがしがおほくの民を率いた」等。これらは全て「それがし」を一人称で表した際の例文です。それがし以降の文章を変えることで自己紹介や自分の身の回りのことを説明できます。

例文を一つずつ現代語として訳してみると、「私がこの馬の持ち主です」、「私は豊後国より来ました」、「私が多くの群衆を率いました」と訳すことができます。一人称での使い方はとても簡単ですので、試しに使ってみても良いでしょう。

例文②

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次の「それがし」を使った例文は「それがし」の元々の意味として紹介した、誰か分からない人という意味を使って作ってみます。

「あの山に住むそれがしは何者であろうか」、「森に潜むそれがしは何奴か」、「通りすがりのそれがしに助けられたわい」等。これらの例文を見て分かる通り、「それがし」が指している物は誰なのか、何なのかがはっきりとは見えません。

この使い方こそが本来の「それがし」の使い方です。それぞれの例文を現代語として訳すと、「あの山に住んでいる人は誰でしょうか」、「森に潜んでいる人物若しくは生き物はなんだ」、「通りすがりの誰だか分からない人に助けられました」と訳すことができます。

それがしとなにがしの違い

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「それがし」という言葉と似た言葉のように聞こえる「なにがし」という言葉があります。実はそれがしとなにがしは漢字も同じですが、意味や使い方が違う言葉です。漢字については後程説明しますが、ここではそれがしとなにがしの意味や使い方等の違いについて紹介します。

なにがしは言い表そうとする人という意味

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ではまずは、「なにがし」の意味から見てみましょう。「それがし」とよく似ている「なにがし」ですが、意味はそれぞれ違います。

「なにがし」は言い表そうとする人や物の名前、又そうした人や物の名前をわざとはっきりさせない際に使います。後半のはっきりさせない時は敢えてはっきりさせない場合にわざと「なにがし」と言ってぼやかすような時にも使用します。

その他に「なにがし」には数量を表す言葉としての意味もあります。表される数量はあまり多いものではなく、その数量が少ないことをぼやかす際に「なにがし」として使用します。人や物の名にしても数量にしてもはっきりとさせずぼやかすというのが「なにがし」という言葉です。

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ぼやかすという点では「それがし」と「なにがし」は似ており、一見すると類語のようにも感じられますが、「それがし」は自分自身のこと、「なにがし」は自分以外の全く名の知らない人や物に対して使われます。そうした所にこの2つの言葉の大きな違いがあります。

なにがしの使い方

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「それがし」と「なにがし」の違いが分かった所で、「なにがし」の使い方をなにがしの意味を踏まえた上で見てみましょう。

例えば、誰かの名前を言う際に相手の下の名前を知らない、又はどうしても思い出せないという際には「山田なにがしという者が参った」とすれば「山田なんとかさんという方が来ました」というような曖昧な下の名前の部分がぼやかされた文章を作ることができます。

そして数量を表す際に、例えば少ない金額をぼやかしながらも何か相手に協力をしようと述べたい場合は、「なにがしかの協力はさせていただこう」とすると「少ない金額ですが協力はさせていただきます」という文章ができます。露骨な量を言うのを憚られる際に「なにがし」を使います。

それがしの由来・歴史

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「それがし」の意味や使い方、類語や「なにがし」との違い等、「それがし」を取り巻く様々な事柄について見てきました。では、そうした「それがし」という言葉はどのような由来のある言葉なのでしょうか。ここからは「それがし」の由来について紹介します。

「梅」がそれがしの由来

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「それがし」の由来には実は「梅」が関係していると言われています。全く接点がないように思えますが、由来となった理由は次の通りです。

それがしは後々再度紹介しますが、漢字で表すと「某」です。「某」は「木」の上に「甘」を書きます。「甘」の中には1本横線があり、それが口の中に何か物を含んでいる様子を表しています。そうしたことから口の中に実を含む「梅」を意味していました。

その梅という漢字を読む時の音が暗い意味を成す他の漢字と同じだったことから、「某」は暗くてよく分からないものとなりました。そうしたことが由来となり、紹介してきたような誰も分からない人や自分の名前をはっきり表さないという意味の言葉になったとされています。

それがしの歴史

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そうした由来から「それがし」が使われ始めた後、最もよくそれがしが使われていた江戸時代では自分の名前をへりくだって述べる言葉という点から、上級の武士や位の高い貴族達ではなく、下流武士や中流武士の一人称として最も良く使われていました。

それがしの英語表記

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「それがし」は現代の言葉ではなく、古くからの言葉です。ですが、実は英語で表すこともできます。日本語でそのまま現代の文章に交えて使おうと思うとそれがしは難しい言葉に感じますが、英語にするととても簡単な単語で言い表せます。

someoneでそれがしを表現できる

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「それがし」を英語で表すと、「someone」です。someoneは訳すと誰かという意味になるので、それがしの意味とも一致します。

又、「unknown person」と表すこともできます。直訳すると知らない人となり、それがしの言葉の意味にあるような誰か分からない人という部分と一致します。英語にするとよく英文に出てくるようなとても簡単な表記でそれがしを表すことができます。

その他に、「それがし」は一人称の意味があり、日本語で現代語訳しても私や僕にできることから、「I」や「me」で表すことも可能です。一人称で自分自身を表すことができる為、これでも十分と言えます。それがしの英語はとても簡単な為、一緒に覚えておきましょう。

なにがしの英語表記

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ちなみに、「なにがし」を英語で表すと「a certain person」です。直訳すると、ある人となり、こちらもなにがしが持つぼやかしたような雰囲気と一致します。こちらも簡単な英語ですので、それがしの英語と共に覚えておきましょう。

それがしの漢字

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では最後に「それがし」の漢字を紹介します。それがしの漢字はもう何度も文中に登場している通り、「某」です。そしてなにがしも同じ漢字「某」を表して書きます。ではもう少し詳しくこの「某」という漢字について見ていきましょう。

「某」という漢字について

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この「某」という漢字は訓読みで読むと、これまで紹介してきた「それがし」や「なにがし」と読む漢字です。

音読みで読むと「ボウ」と読める漢字です。この「ボウ」という読みを使ってできる熟語に、「某所」や「某国」等があります。この熟語はそれぞれある場所や国を名前をしっかりと明言せずにぼやかして伝えています。つまり、それがしやなにがしと全く同じ使い方がされています。

「某」そのものにそうしたわざと隠す等してぼやかすという意味があることからそうした熟語が生まれました。テレビ等である地点をぼやかして伝える際にもよく「某所」という言葉を使ってどこかにあるその場所を表しています。敢えてそうして隠すことでその場所への配慮を表しています。

「某」を使った難読熟語

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ちなみに「なにがし」は「何某」として難読な熟語として表すこともできます。その他にも「某」を使った難読の熟語として「誰某」と書いて、「だれそれ」という熟語もあります。こちらもそれがし等と同じく、はっきりした名前を述べず人や物を指す際に使用する言葉です。

それがしは名が分からない人という意味

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「それがし」は名前が分からない人や物を表したり、一人称として自分自身を表すという意味のある言葉です。現代の日常生活の中ではめったに使われない言葉ではありますが、意味や使い方、由来等を知っておくと今後時代劇や大河ドラマ等を鑑賞する際に楽しみが増えるでしょう。

sadah
ライター

sadah

エレクトーンやピアノを演奏する音楽大好き人です!たまに弾き語りもやります。聴くのが好きなのはロック、演奏するのはディズニーや映画・ドラマ音楽などを中心にいろいろ演奏します♫演奏をして音楽を届けるように、様々な楽しい記事をお届けできるように頑張ります!

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