「入れ違い」と「行き違い」の意味とは?
「入れ違い」と「行き違い」、2つの言葉は生活の中、およびビジネスで使われる言葉です。よく似た言葉ですがそれぞれの使い方があって、どちらを使っても構わないということはありません。
まず、「入れ違い」と「行き違い」、それぞれの意味を説明し、実際にどのような場合に、どのように使うのかを紹介します。
「入れ違い」の意味とは?
「入れ違い」とは、例えばある部屋において、一方が出たあとに入れ替わりで他方が入ってくることを表す言葉です。
一方が家に来るのを待っていたけど来なかったので出かけたら、その直後にもう一方が遅れてやって来て会えなかったというような場合に使われる言葉が「入れ違い」です。
「行き違い」の意味とは?
「行き違い」の意味は、時間や経路のずれや違いによって、お互いが会う予定だったのが会えなかったような場合を指します。
例えば、一方は電車で向かったが、もう一方はバスを使ったためお互いがすれ違い、会うことができなかったというようなパターンがあります。
「入れ違い」と「行き違い」の由来
「入れ違い」と「行き違い」、「違い」の前に「入れ(る)」、「行く」がついていますが、もともとは両者(3者以上でも)が会えないことを指します。
会えないことを指す類義語に、「食い違い」や「すれ違い」がありますが、この2つの言葉をさらに状況に合わせて表現できるのが、「入れ違い」と「行き違い」なのです。
「入れ違い」の「入れ(る)」は例えば1つの同じ部屋、同じ場所を指しますが、「行き違い」の「行く」は目的地へ向かう(行く)、特に場所を特定しないことを意味しています。
つまり、この2つの言葉の由来は、「食い違い」や「すれ違い」という表現をもう少し具体的に、かつ明確にするためのものと考えられます。
「入れ違い」と「行き違い」の特徴
「入れ違い」と「行き違い」の2つは似た意味を持っていますが、この2つを区別するにはそれぞれの特徴を知ることが早道です。
特にビジネスメールではこの2つはよく使われる言葉で、間違えると誤解が生じたり、ちょっと恥ずかしい思いをすることになり兼ねないので、それぞれの特徴について、説明していきます。
「入れ違い」の特徴
「入れ違い」の特徴には大きく2つあって、ひとつは対象が主に「人」であること、そしてもうひとつは同じ場所で起こるということです。
ただし、次のように対象が人ではなく使われる場合があります。「上りの列車がホームを出るのと入れ違いに下りの列車がホームに入ってきた」
対象が人の場合でもそれ以外の場合でも、共通するのは「同じ場所」において、「入る」と「出る」の両方が行われることです。
「行き違い」の特徴
「入れ違い」は「人」が対象であるのに対して、「行き違い」は人以外の場合にも使われるという違いがあります。
また、「行き違い」はお互いの場所や時間への認識が異なることで生じるため、場所の特定はないのが普通です。
「入れ違い」と「行き違い」には別の意味がある
「入れ違い」と「行き違い」について、その意味を説明しましたが、本来の意味が転じて違う意味に使われることがあります。
ここでは本来の意味との違いについて紹介します。実際にこの意味で使ったことがあると、あらためて気づかれる方もいるでしょう。
「入れ違い」の別の意味
「入れ違い」は本来、同じ場所(部屋)において、一方が出たあとに他方が入るという意味ですが、これが転じて「間違って入ること」という意味もあります。
この場合の「入れ(る)」というのは人だけではなく、物に対していうことがあります。「間違って入る」のは主に「順序」です。
商品などを箱に入れる際、Aを入れるつもりが間違ってBを入れたりする場合に使います。この場合は「入れ違い」というよりは「入れ違え」と言った方が分かりやすいかもしれません。
「行き違い」の別の意味
「行き違い」の別の意味として、2者間で意見が合わない場合などに使われます。使われるシーンはいくつかありますが、主に考え方や方法の違いによって生じる、同様の言葉である「食い違い」の類義語として使われます。
例文として、「彼との入れ違いがあって、最後まで結論が出なかった」のような使い方をします。つまり行き違いの原因は、主にずれや誤解によるものです。
日常でもこのような使われ方をしますが、ビジネスシーンにおいては、特に会議での決定事項が考え方の相違で行き違いが生じて、ペンディング事項になることがあります。
「入れ違い」と「行き違い」の使い方
「入れ違い」と「行き違い」には別の意味があると言いましたが、ここではその意味も含めてよく使われる使い方を例文を挙げて紹介します。
例文を見ることで、「入れ違い」と「行き違い」の意味の違いや使われ方がさらに理解しやすくなることでしょう。
例文①
「入れ違い」の最もポピュラーな使い方としては、「~と入れ違いに~が入ってきた」という表現です。つまり、ある時刻に会う約束をしていた人は部屋で待っていましたが、時間になっても来ないので部屋を出て行った直後に約束していた人が部屋に入って来たような場合に使います。
例文としては、「家で友達を待っていたが時間を過ぎても来ないので出かけたら、入れ違いに友達が来た」などが一般的な使い方になります。
例文②
「入れ違い」のもうひとつ別の意味として、「間違って」という意味があると説明しましたが、ただ単に「間違い」という意味ではなく、微妙にニュアンスに違いがあります。
分かりやすい例文として、「商品の入れ違いがあったため、誤った商品が客先に届いてしまった」とした場合、このときの「入れ違い」は単に「間違って」ではなく、本来Aの商品を入れるべきに、誤ってB商品を入れてしまったような場合に使われます。
例文③
「行き違い」はお互いのルートや方法が食い違うことで結果的に会えなかったというような場合に使われます。
例文としては、「待ち合わせの時間を過ぎたが彼女が来ないので、探しに行きたいがすれ違いになるといけないので、待ち合わせの場所で待っていた」などの使い方があります。
例文④
「行き違い」は対象が人ではなく、電話やメールなどの確認の際にも使われます。この意味ではビジネスメールなどで結構多く使われています。
例えば、お客さまからの連絡を待っていたが来ない場合の催促メールにおいて、「すでに行き違いで連絡をいただいておりましたらご容赦ください。」と付け加えることによって、万が一お客様からの連絡メールが来ていた場合にも、失礼にならない便利な1文です。
「行き違い」という言葉はビジネスマンにとっては、日常の会話よりむしろ、こちらの使い方の方が多いのではないでしょうか。
「入れ違い」と「行き違い」の注意点
「入れ違い」と「行き違い」、似た意味で似た言葉です。なので、そんなに使い分けを気にしなくても良いという人もいます。
確かに日常会話程度であれば、使い方を誤っても特に相手も気にしないのかもしれませんが、これがビジネスメールなどとなると、やはりきっちりと使い分けなければなりません。
「入れ違い」と「行き違い」は使い分ける必要がある
ここまで説明してきて何度も言っていますが、この2つの言葉は意味の違いがあります。なので、やはり正しく使い分けなければなりません。
特に注意しなければならないのは、ビジネスメールにおいてよく使われる「行き違いの場合はご容赦願います。」というところに「入れ違いの場合はご容赦願います。」とすると、相手の方は確実に違和感を覚えるはずです。
送った相手にあなた自身の語彙力に疑問を持たれたりもするので、特にビジネスシーンでよく使う「行き違いの場合はご容赦願います。」のように正しく送ることが大切です。
「入れ違い」と「行き違い」は「すれ違い」という意味
以上、「入れ違い」と「行き違い」それぞれの意味と、その違いについて説明してきましたが、お分かりいただけたでしょうか。
いずれも相手と合わないために起こるという、あまり良い意味ではありません。言い換えれば、「入れ違い」と「行き違い」は場面は違っても、共通の意味としては途中の説明でも紹介しましたが、「すれ違い」により起こるという意味になります。
ここまで読んでいただいたあなたは「入れ違い」と「行き違い」の意味と使い方をしっかりと理解していただけ、使い分けもちゃんとできるようになったことでしょう。
正しい日本語が話せない人が多くなった昨今ですが、やはりビジネスにおいてはきちんとした日本語を使うべきですし、また、文字として残るメールでは特に間違いたくありません。この記事を読んで、誤った使い方はもうしないと、自信をもっていただくことができれば幸いです。