「縁」の意味とは?
縁はもともと仏教用語です。「因縁」という言葉がありますが、本来は「因縁生起」です。「因」は原因をあらわし、「縁」は結果を作るきっかけを意味します。この世に生まれたことが「因」であり、生まれたからこそ「縁」があるのだとする考え方です。
このように、もともと「縁」は仏教の根本的な思想で使われている言葉でしたが、現代では様々な意味に派生しています。ここでは「縁」の読み方や「縁」の持つ様々な意味、子どもの名前に「縁」を使う場合の例などもご紹介していきます。
関わり合い
「縁」と聞いて一番初めに想像するのは「関わり合い」という意味でしょう。「ご縁」などと使われることで分かるように「めぐり合わせ」「導き」などを意味します。「つながり」という意味で「縁」を使うこともあります。
「ゆかりのある土地」など、「縁」を「ゆかり」と読むこともあります。人間に対してだけではなく、人と物などに対しても「関係や関わりがある」という場合に「縁」を使うことがあります。いずれの場合も無意識下の関わり合いを意味しています。
血縁・婚姻
「血縁関係」という言葉があるように、家族や婚姻関係などの血の繋がった関係を「縁」ということがあります。実際に血が繋がった関係だけではなく、婚姻関係や血の繋がっていない親戚のような相手に対しても「縁」を使うことがあります。
「縁」を「えん」と読むだけではなく「えにし」「よすが」と読むことがあります。「えにし」は「縁」に強調の意味の助詞である「し」をつけたもので、「よすが」は拠り所から派生して身寄りや血縁者となり「縁」という字になりました。
きっかけ
単純な「きっかけ」という意味で「縁」を使うこともあります。関係を結ぶきっかけの意味での「縁」や物事が発生するきっかけを意味する「縁」があります。この場合の「縁」は、「関わり合い」の意味である「縁」によく似ています。
「関わり合い」の意味で使う「縁」との大きな違いは、時間の違いです。「関わり合い」の意味で使うときは過去から繋がっていたということを強調しています。反して「きっかけ」として使う場合は、その出来事自体を指し示すだけです。
端の部分
心理的なことや仏教の教えなどに基づいた「縁」をご紹介しましたが、最後にご紹介する「縁」は、全く意味が異なります。単に「端」という意味を示す「縁」の使い方です。「縁側」「縁取り」などのように、「端」の部分を指す言葉です。
「縁」を「ふち」「へり」と読ませることで、これまでの「縁」とは違うことが分かります。「窓際」に使われている「きわ」と「縁」は同じ意味であり、「畳の縁」は「たたみのへり」と読み、やはり「端」という意味です。
「縁」の由来
漢字には六書(りくしょ)というものがあります。漢字を分類したもので構成の視点からまとめた。象形文字、指示文字、会意文字、形成文字の四つと、使用方法の視点からまとめた転注文字と仮借文字の合計六種類にまとめたものです。
「縁」という言葉や漢字の由来とは、どういったものなのでしょうか。特に子どもの名前に「縁」を使うならば、音感だけではなく「縁」の由来や深い意味などを把握した上で使わないといけません。「縁」の由来をご紹介します。
衣服のふち飾り
旧字体の「縁」には、「衣服のふち飾り」の意味がありました。漢字の「縁」の右側の「つくり」の部分が意味するのは「垂れ下がる」という意味でした。そして左側の「いとへん」が意味するのは、衣服や布というものでした。
この二つの意味が合わさって、「衣服などに垂れ下がった飾り」を表現したのではないかというのが「縁」の由来の一つの説です。古代の祭事には衣装と装飾品は重要なものであり、これらの関係性が「因縁生起」に繋がったとされます。
「縁」の様々な読み方
「縁」という漢字の読み方は、意味からすれば幾つかに限定されます。ところが文字は時代と共に派生するのが常です。熟語になれば濁音になったりもします。言葉を扱うことを生業としている作家などが、「縁」を独特の読み方で表現することもあります。
「縁」は音読みで「エン」ですが、訓読みでは「ふち」「えにし」「へり」「ゆかり」「よすが」「よ・る」など多くの読み方が存在し、派生したであろうことが想像できます。「縁」の読み方について、まとめてみました。
読み方①えん
日本文学作品の中で「縁」が使われているものを調べてみると、「縁」は約20%の割合で音読みの「エン」という読み方をされています。主に熟語表現で扱われているものが多く、例えば「腐れ縁」「縁側」「縁日」などがあります。
日常生活で目にしたり耳にしたりする「縁」の読み方であれば、「ご縁」という使われ方が一般的といわれています。もともとの仏教用語から発生した「因縁生起」に由来する「縁」の使われ方に近い読み方が「エン」といえます。
読み方②ふち
「縁」を訓読みである「ふち」とする読み方は、日本文学作品の中では38%にもなるといわれています。日本文学だからこそ、訓読みする和語が多く使われているのでしょう。「縁」の由来である「へり」「まわり」の意味で使われています。
「額縁」「縁取り」などは、「縁」の由来である「祭事に使われた衣服の装飾」に近い使われ方をしています。派生して「単なる端の部分」を意味する使われ方としては「がけの縁」「帽子の縁」と使うことがあります。
読み方③へり
「縁」を「へり」と訓読みさせるのは、日本文学作品の中では19%程度です。「エン」と音読みする比率とほぼ同じくらいです。「口の縁まで出かかった」「鴨川の縁を歩く」「畳の縁」など、「ふち」と同じ意味で使われています。
読み方④えにし
「縁」を訓読みの「えにし」とする読み方は、相当凝った読み方であるといえます。日本文学作品中でも僅か6%程度しかありません。本来音読みである「エン」の「ン」を「に」に変えて「えに」とし、さらに強調の「し」を加えたものです。
日本文学作品中では主に「男女の縁」のことを指すときに使われている読み方です。強いつながりを意味し、前世からの見えない赤い糸で繋がっていることなどを指すときに、かつて使われていた言葉といわれています。
読み方⑤べり
「へり」が濁音化した「べり」は、更に比率が低くなり、日本文学作品中では3%未満の読み方です。一般的にはひらがなで「川べり」と書くときの「べり」が「縁」という漢字なのです。意味は「ふち」と同じで「端の部分」です。
「縁」の画数
子どもの名前を考えるとき、姓名判断なども参考にすることがあります。苗字と名前との画数の組み合わせや親の名前の画数と子どもの名前の画数の組み合わせなど、姓名判断は様々なデータの組み合わせを使って占うといわれています。
「縁」という漢字が持つ意味や由来などをご紹介してきましたが、姓名判断などに使われる「画数」はどうでしょうか。まさに「縁起が良い」とされる漢字なのでしょうか。「縁」の画数などについてのご紹介です。
総画数15画
姓名判断に使う漢字は、常用漢字である場合も旧字体である場合もあります。姓名判断の流派によって画数にも違いがあるので、注意しましょう。新字体の「縁」は15画の漢字です。ここでは新字体の「縁」の場合を想定します。
15画の漢字であれば「マイペース」な性格を持ち、「人との争いを好まない」という性格を持つとされています。「縁の下の力持ち」などという諺の意味を合わせていくと、子どもの名前に使うには良い漢字であるといえます。
「縁」を使った子どもへの名付け方の例
具体的な「縁」を含む子どもの名前の例をご紹介しましょう。戸籍法では常用漢字と人名漢字のあわせて約3000字が使用できます。戸籍には「読み方」は記載されません。このため、「読み方」を先に決めて漢字を当て字にすることもあります。
「縁」は漢字検定4級の漢字であり、中学校で習う漢字です。学校で習うのは音読みの「エン」と訓読みの「ふち」だけですが、子どもの名前には「まさ」「むね」「やす」「よし」「より」というような読み方をする例もあります。
男の子
男の子の名前に「縁」を使うときは、一般的な意味の「ご縁」「つながり」「必然」などを含めることが多いようです。その他にも、例えば「縁の下の力持ち」などをもとにして、「コツコツと努力する人」という意味で使われることもあります。
縁貴(やすき)
「縁」を「やす」という読み方にします。そこに「貴重」という意味の漢字を組み合わせて、「貴重なご縁がありますように」という意味で「縁貴」と名付けているのです。
縁朗(やすお)
「縁」を「やす」という読み方にします。「朗らかな」という漢字と組み合わせれば、「多くの人と朗らかなつながりを持って欲しい」と願う親の気持ちがうかがえます。誰にでも好かれる我が子であって欲しいと、「縁朗」と名付けたのです。
縁之(まさゆき)
「之」の意味は、「歩き始める」という意味です。派生して「出る」「至る」という意味にもなりました。これと「縁」を「まさ」という読み方で組み合わせ、「必然」「まっすぐな運命」などという意味で「縁之」と名付けた例です。
女の子
女の子の名前に「縁」を使うのは「巡りあわせ」の意味を持たせることが多いようです。ロマンチックな意味としての「ご縁」を名前にこめて、良い人と出逢えますようにという親の気持ちを込めた名付けといえるでしょう。
縁希(ゆき)
「縁」を「ゆ」という読み方にし、そこに「希少」という意味を加えます。「希」は「稀」とも書き、めったにないことを意味します。つまり「本当に大事な、滅多にない人とのつながり」という意味で名付けられています。
縁子(やすこ)
「やすこ」という読み方もありますし、「よしこ」という読み方をすることもあります。「ご縁に恵まれた子」という意味は共通です。「人とのつながり」「大切な人との絆」という意味で、人から大事にされて欲しい親の気持ちが含まれています。
縁香(ゆか)
「香」には「品のある美しい女性」という意味があります。かぐわしき女性に成長し、人とのご縁に恵まれるようにという、娘をもつ親の気持ちが込められています。女の子の名前で「香」を含む名前は近年流行しているようです。
「縁」は人との関わりを意味する
「ご縁」という意味で使うならば、名付けには良い漢字であるといえます。人と人とのつながりが、デジタルの反乱によって希薄になったと言われる時代といわれています。そのような時代において、「ご縁」は貴重なものです。
子どもの名前に「縁」を使うのは、珍しいかもしれません。しかし「縁」の持つ意味を考えれば、現代人にはとても大切な「人との関わり」が含まれる名前となり、良い印象を持つ名前になるといえるでしょう。