「各位」の意味とは?
「各位(かくい)」の意味は、文書やメールを書く時に、宛名に付ける敬称です。複数の人に対して一人一人に敬意を込める表現です。敬意の意味を持った言葉なので、上司や目上の人、取引先や顧客に対して使用しても失礼にあたりません。
しかし複数の人に宛てる文書やメールで使う言葉なので、特定の人ひとりには使えません。その場合は〇〇様になります。また複数の人に対して「皆様」という言葉もよく使いますが、「各位」の方が改まった表現なので敬意の意味がより多く伝わります。
また「皆様」は口語的で少し柔らかい表現なので話し言葉などで多く使用されますが、「各位」は文語的でかしこまった表現なので式典などの挨拶以外は、文書やメールなどで使用します。
つまり「各位」とは複数の方に送る文書やメールで、相手の名前が特定していない場合、宛名に〇〇様と書けない時に、一人一人に対して個人名の代わりの意味で、敬意を込めて使う敬称です。
「各位」を使う意味
文書やメールで相手の名前が特定できない場合や、式典やセレモニーで多くの人が集まった会場の挨拶で「各位」を使います。ではなぜ「各位」という言葉を使うのでしょう。「各位」を使う意味は何なのでしょう。
「各位」の「各」は「おのおの、めいめい、それぞれ」という意味です。「位」は「地位、等級、順位、階級」という意味があるので、「各位」は「それぞれ地位や階級のある方々」という意味合いの敬語になります。
複数の人に対しては、文書やメールでは相手の名前を宛名に書くことができません。式典ではそれぞれの人の名前をあげることができません。
その場合に相手に対して失礼にならないよう敬意を払う呼び名として「各位」を使います。つまり「各位」を使う意味と使途は、複数の人に対して同時に敬意を払うためです。
「各位」と類似した宛名表現との違い
「各位」と同じような意味で宛名につける敬称には「御中」や「様」「先生」などがあります。それぞれにはどのような意味があり、使い方に違いがあるのでしょうか。
手紙の表書きには「御中」や「様」はよく使いますが、「各位」は不特定多数という意味なので、表の宛名には使いません。「各位」は文書の本文の中でのみ使う言葉です。それでは使い方と意味の違いはどこにあるのでしょう。
「御中」の意味
「御中(おんちゅう)」は宛先が個人ではなく、会社や学校、病院や公共機関など組織や団体に宛てる場合に使う言葉です。
「御」という字は、次に続く名詞などを丁寧に飾る意味の接頭語で「御挨拶」や「御歳暮」「御中元」のように使います。「中」は字の通り「なか」という意味です。
つまり「御中」は「組織や団体のなかにいる人たちに宛てる」という意味になります。言い換えると組織や団体など宛先を直接敬う意味ではなく、厳密にはそのなかにいる人を敬うという意味で使う敬称です。
使い方は「〇〇株式会社御中」のように社名の後につけます。担当部署や課がある場合には「〇〇株式会社総務部企画課」のように部と課の後につけます。
ただ単に「〇〇株式会社御中」の場合は「会社の中の誰が読んでも構いません」という意味になるので、部や課をつけるのが一般的です。
ただし「御中」と「各位」は併用することはできません。「〇〇株式会社各位」と使うと意味が変わってしまいます。つまり宛先が組織や団体の場合は「御中」を使い、複数の人に対して使う場合は「各位」です。この意味と使い方の違いはしっかりと押さえておきましょう。
「様」の意味
「様」は個人名の後につける敬称で、相手の性別や年齢、職業や地位に関わりなく使うことができます。個人的な私用で手紙やメールを送る場合は、「〇〇様」のように個人名と様を書くだけで失礼にはなりません。
組織や団体に所属している個人に宛てる場合は、組織名、部署名、役職名、個人名の後に「様」をつけます。例えば「〇〇県労働局、産業流通課、課長、〇〇様」のような書き方をします。
ただし「〇〇課長様や〇〇社長様」のように役職名に様をつけるのはNGです。課長や社長はすでに意味が敬称なので「様」を付ければ意味が二重になるので注意しましょう。
また個人の敬称に「殿」があります。かしこまった場合に個人を敬う意味で使う言葉です。「殿様(とのさま)」という言葉があるように、相手を非常に尊敬するという意味があります。
使い方は「様」と全く変わりがありません。一昔前までは「殿」が多く使われていましたが、現在では「様」を使うことが一般的になっています。
このように「様」や「殿」は相手が個人一人の場合に使う敬称なので「各位」を代わりに使うことは出来ません。「各位」はあくまで相手が複数の場合でのみ使える敬称であることをしっかり押さえておきましょう。
「先生」の意味
「先生」という敬称は、弁護士や教師、医師などの特別な資格を持っている職業の人に対して使う敬称です。使い方は「様」や「殿」と同じで個人名の後につけて使います。
「先生」は「先に生まれた」と書き「自分より先に生まれた人生の先輩」という意味合いから「学問や技術、芸能に秀でた人」という意味になるので、医師や弁護士、代議士、教師や師匠、恩師などを総称して敬う呼び名です。
宛名に使う場合も「〇〇様」と同じように「〇〇先生」と使います。「様」と意味合いが違うのは敬愛の度合いが大きいことです。例文では「〇〇先生のセミナーを卒業して早5年が経ちました、その後いかがお過ごしでしょうか」のように恩師に対して敬愛の情を表現する意味で使います。
また「今回先生に弁護を依頼するのは、先生の経験と実績を活かしてもらえると思うからです」のように儀礼的な意味で尊敬の念を表現する場合に使います。
「先生」という敬称は個人に対して使う敬称ですが「今回お集まりいただいた趣旨は、先生方各位の忌憚(きたん)のないご意見を拝聴するためです」のように「各位」を同時に使うことができます。
この場合は「先生」を個人の名称ではなく、先生方というグループの名称という意味で使っているので「各位」を使うことができるのです。
このように「各位」には、「御中」「様」「殿」「先生」など類似の敬称があります。使う場面や意味、使い方にそれぞれに違いがあります。その意味の違いをしっかりと押さえておきましょう。
「各位」の英語表現
「各位」の意味を英語ではどのように表現するのでしょう。英語の手紙やメールでは日本語のように儀礼的な表現はあまり使いません。したがって「各位」という日本語に相当する単語が英語にはありません。
英語レターの考え方は、ビジネスでも親しい個人間でも手紙やメールは、お互いの意思を書面で確認して記録に残すものという意味で捉えています。そのために儀礼的な文章や表現は必要がないという文化的な背景があります。
また英語には、個人間のメールは「Personal Letters」、日常生活ではさほど親しくない人宛には「Social Letters」、招待状などの社交儀礼では「Formal Letters」、ビジネスで出す場合は「Business Letters」という仕分けがあります。
しかし宛名に関する表現においては特別な仕分けはありません。日本語の「様」にあたるのが「Dear〜」「各位」に近い表現が「To whom〜」になります。
「Dear」の意味
英語の「Dear〜」は「親愛な、敬愛する〜」という意味で、文書やメールで宛名に使う敬称ですが「dear child(愛する子供)」「dear friend(親友)」「dear heart(愛しい人)」のようにも使います。
つまり「Dear」は相手に対する宛名表現というよりも、親愛の情を表現する意味が多く含まれている言葉です。英語の文書やメールでは「Dear Takahashi(親愛なる高橋様)」のように名前の前に「Dear」をつけて使います。
「Dear」の意味は日本語の「様」と同じですが、使う位置が名前の前になり「様」とは逆になります。また「親愛なる〜」という意味が含まれているので「様」より表現が柔らかく温かみを感じさせます。
「To whom」の意味
英語の「To whom」の「whom」は疑問代名詞の「who」の目的格で「誰を」という意味で、前に「To」をつけることで「誰に」という意味になります。「To whom〜」では「〜宛」という意味になり日本語の「各位」と同じような意味合いになります。
「To whom it may concern.」の例文の「concern」は「関係している」という意味で、直訳すると「関係している方々に宛てる」になるので翻訳すると「関係者各位」または「担当者各位」の意味になります。
もう少し「各位」の範囲を絞る場合は「To the press and whom it may concern,」のように「the press and」を入れることで「報道関係者各位」の意味になります。「the press」を他の単語に置き換えれば色々な関係者を表現することができます。
「各位」の使い方
「各位」は「会員各位」「役員各位」のように、関係している人のグループ名や役職名に続けて使い相手に敬意を払う意味があります。
また「各位」は意味がそもそも敬称なので「会員各位様」や「役員各位殿」など「様」や「殿」をつけると二重敬語になり誤用になるので注意しましょう。
例外として「お客様各位」「お得意様各位」の場合の「お客様」や「お得意様」は1つのグループ名(名詞)として捉えることができるので誤用にはなりません。
それでは「各位」の使い方を、社外向け文書メール、社内向け文書メール、式典の挨拶などの場面に分けて例文をあげて紹介します。
例文①社外文書・メール
社外向けの文書やメールで「各位」を使う場合は、顧客や得意先、取引先などに新商品販売会やセールの案内を出す場合や、株主総会や販売店説明会など会議の案内、など様々あります。
例文では「お客様各位におかれましては、益々ご健勝のこととお慶び申し上げます。日頃のご愛顧に答えるべく来る◯月◯日に弊社△△店に於いて感謝セールを開催いたしますので、ぜひご来場いただければ幸いです」
「前略、株主各位におかれましては日頃より格別のお引き立てを賜り深く感謝申し上げます。ささやかではございますが株主優待券を同封させていただきます」のような使い方をします。
また「販売店各位におかれましては、日頃より弊社の製品をお取り扱いいただき感謝しております。つきましては販売促進を図るため関東地区販売店会議を以下の要領で開催いたします。ご理解とご協力のほど宜しくお願い申し上げます」の例文のように会議の案内に使用します。
この他にも「お得意様各位」「取引先各位」「会員各位」「担当者各位」「関係者各位」などいろいろの使い方があります。「各位」の前につけるグループ名は、それぞれの意味を考え相手にあった適切な名称を選ぶように心がけましょう。
例文②社内文書・メール
社内向けの文書やメールで「各位」を使う場合は、主に社内会議の案内や忘年会や社員旅行などイベントの案内などがあります。案内をする範囲も全社員の場合もあれば、課内、部内、役職別の場合があります。
またその対象には上司もいれば同僚もいます。シチュエーションや対象となる人によって文面を考える必要があります。課・部内の懇親会などイベントの案内ではあまり堅苦しい表現では参加者が応募しにくくなります。
逆に会議や役職別に出す文書やメールでは、あまり柔らかい表現では相手によっては不快に感じる人もいます。不特定多数の方に出すのですから、文書の内容の意味を考えて敬語の使い方には気をつけましょう。
イベント案内などの例文では「営業部社員各位へ忘年会のお知らせです。営業部内の親睦を図るため下記の要領で忘年会を開催します。参加の有無を◯日までにメールでお知らせください。」のように少し柔らかな表現の使い方をします。
研修会や会議のお知らせの例文は「下記の要領で研修会を開催いたします。入社3年未満の社員各位は全員参加するようご協力をお願いします」のように意味や内容がしかり伝わるように事務的な書き方をします。
また「役員各位におかれましては、益々ご清栄のことと存じます。次回の役員会は経営方針を定める重要な議題がございます。お忙しい中とは存じますが万障お繰り合わせの上ご参加をお願い申しあげます」の例文のように目上の人に宛てる文書では、言い回しや敬語に注意した書き方をします。
例文③式典・セレモニー
学校の入学式や卒業式、会社の入社式、贈呈式、竣工式など改まった式典やセレモニーの挨拶の中で「各位」はよく使われる言葉です。
「本日の生徒諸君が無事卒業式を迎えることができたのも、各ご家庭でご父兄各位の協力の賜物と感謝しております」「弊社が本年皆様のような新入社員を迎えることができたのは、先輩社員各位の努力と実績の賜物です」のように使います。
「本日の竣工祝賀会には、工事関係者各位、並びに不動産関係者各位など大勢の方々にご参列いただき誠にありがとうございます。施工主代表として僭越ながら乾杯の音頭をとらさせていただきます」
「本日の授賞式で私が〇〇学術賞を受賞できたのも、私個人だけの力ではございません。ともに研究をしてきた研究員各位の熱意や学術関係者各位のご指導があってのことです」のようにセレモニーの挨拶で使います。
このように「各位」は、文書やメールだけでなく式典やセレモニーの席上で、乾杯の発声、祝辞や挨拶の中でも使われる言葉です。
「各位」は「関係者」という意味
「各位」は相手が複数で、特定の名前を宛名にできない場合に、関係している方々をまとめて呼ぶ敬称です。文書やメールのほか挨拶でも使うことができる言葉です。
ここまで「各位」の意味や使い方のほか、類似する表現との違い、使い方の注意点、英語表現などを例文と合わせて紹介してきました。これらを参考にして正しい「各位」の使い方をビジネスなどに活かしてください。