ジレンマの意味とは?
ジレンマは英語でdilemmaと書き、ギリシャ語を語源とする言葉です。日本語でジレンマと言ったときは、「ふたつの選択肢のうちどちらも選ぶことができず、思い悩む」という意味になります。
たとえば、放課後、友達に会うために学習塾に行きたいけれど、塾に行くと苦手な勉強をしなくてはならないためジレンマになってしまう、という意味で使われます。
要するに、目の前にふたつの選択肢があり、どちらも選ぶことができるけれど、どちらを選んでも自分にとって困った状況になってしまう、という意味が含まれています。
また、ジレンマは「やるべきこと」と「やりたいこと」のはざまで起きることが多く、大人になるほど自制心が強くなるため、その分ジレンマも激しくなります。
ジレンマの由来
ジレンマの語源はギリシャ語にあります。ギリシャ語のジレンマは「di(ふたつの)」と「lemma(前提)」という語が組み合わさった言葉であり、ふたつの選択肢の間で思い悩む状況、という意味になります。
ジレンマはふたつの選択肢によって引き起こされるため、ひとつの事柄についてあれこれと思い悩むのはジレンマの意味にはなりません。
たとえば、「雨が降っているけど学校に行くべきかどうか」という場合、「学校に行く」というひとつの事柄だけで悩んでいますので、正確な意味でのジレンマにはなりません。
これがもしも、「夏休みには海外旅行か、受験勉強に専念か」ということになると選択肢がふたつになりますので、ジレンマに悩んでいる、という意味になります。
ジレンマの類語表現と意味
ジレンマの意味についてさらに深く知るためには、ジレンマの類語についても基本的な部分からおさえておく必要があります。ここでは、ジレンマの類語表現とそれぞれの意味について詳しく見ていきましょう。
類語表現①葛藤
ジレンマの類語表現として真っ先に挙げられるのが葛藤です。ジレンマも葛藤も、複数の選択肢の間であれこれと思い悩む、という意味になりますが、厳密な意味は異なっています。
ジレンマは「ふたつの選択肢のはざまで思い悩む」という意味の言葉ですが、葛藤は「ふたつ以上の選択肢で思い悩む複雑な心理状態」を意味します。
また、ジレンマそのものがひとつの状態であるのに対し、葛藤のほうは「思い悩む行為」も意味として含んでいます。
つまり、「葛藤する」は言葉として意味も成立しますが、「ジレンマする」という表現はなく、意味としても成立しませんので、意味を整理しておく必要があります。
類語表現②板ばさみ
ジレンマとはまさに、「ふたつの選択肢の間で思い悩む」という意味の言葉です。ここでいう選択肢とは欲求と言い換えても良く、意味としては成立しています。
また、ふたつの選択肢、または欲求はその時点で等価値でなくてはなりません。要するに、「どっちもやりたいけど今はできない!」という状況であり、当人にとってはどっちつかずの状況とも言えます。
あるいは、特定の欲求を満たしてしまうと別のところでネガティブな影響が出てしまう、という場合もジレンマとなり、ネガティブな影響が強くなるほど板ばさみの苦しみも大きくなってしまいます。
また、当人にとっては板ばさみの意味を持つ状況であっても、客観的に見て出口が見えている状況の場合は厳密な意味でのジレンマとは言いませんので注意が必要です。
類語表現③痛し痒し
ジレンマは英語表現ですが、日本風に表すと「痛し痒し」になります。例文としては「あいつを現時点で手放すとチームワークは保たれるが、業績としては痛し痒しだな」という使い方になります。
また、中国の表現としては、意味は多少変わりますが「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」という例文があります。馬謖とは三国志にも登場する中国の武将で、軍の規律を乱したことで最終的に追放されました。
このように、ジレンマには「まったく等価値のものを天秤にかける」という意味もあり、何かを得れば何かを失う、という使い方が多いようです。
類語表現④あちらを立てればこちらが立たず
こちらも非常に日本的な例文です。ふたつの選択肢のバランスをうまく取ろうとするからこそジレンマが起きるのであり、忖度が一切存在しなければそもそもジレンマなどほとんど起きません。
その意味で、ジレンマは人間的な状態であると解釈することもでき、適度なジレンマがあるからこそ日常生活にもほどよい緊張感が生まれ、人間関係も良好に保たれている、という側面もあります。
ジレンマの解消法とそれぞれの意味
社会の中で生きていくかぎり、ある程度のジレンマはつきものです。ここからは、日常につきもののジレンマを短期間のうちに上手に解消し、心穏やかに暮らしていくためのポイントについて見ていきましょう。
まず状況の意味を整理する
ジレンマが起きるのは結局、複数の選択肢の中で優先順位がうまくつけられていないからです。言い換えれば、状況が見えていない、ということでもあるのではないでしょうか。
ジレンマで長く思い悩んでいるのなら、まず、現時点でどのような選択肢があるのか、ということを整理し、自分なりに優先順位をつけてみましょう。
選択肢をとりあえず紙に書きだすだけでも気持ちを落ち着けることにつながりますし、現実的な対処方法が見えてきますので気持ちがかなり楽になります。
悩む期間を決めておく
ジレンマの状態にあるからといっていつまでも思い悩んでいても、たいていの場合解決にはつながりません。
ジレンマを放置することはつまり、「本来やるべきことを長期間にわたって放置する」ということであり、客観的にも決して望ましい状態とは言えません。
とりあえず1週間はとことんまで悩んでみるなど、自分なりに明確な期限を区切ってみると、自分でも思っている以上に考えがまとまったり、気分が楽になったりするものです。
すべてをリセットしてみる
長引くジレンマは時として心身にネガティブな影響を与え、場合によっては深刻な心身症を引き起こします。仕事のジレンマからうつ病に至るケースも少なくありません。
自分でもどうにもならないと感じたら、一度すべてをリセットしてみましょう。目の前の選択肢がなくなればジレンマの原因もなくなり、辛い症状も軽減されるはずです。
社会的地位が高くなるほどリセットも難しくなるかもしれませんが、命あっての物種です。本当にどうにもならなくなる前に、自分自身をジレンマから解放してあげましょう。
ジレンマの使い方
ジレンマの意味や類語についておさえたところで、ここからはジレンマの具体的な使い方について例文とともに詳しく見ていきましょう。自分なりに例文をアレンジすると使い方がよりいっそう広がります。
例文①
「大学から東京で暮らしたいけれど、上京すれば地元の恋人とは別れることになってしまい、ジレンマを感じる」。ロマンチックな例文で、ジレンマの基本的な使い方と言えるでしょう。この手のジレンマは小説でもおなじみです。
例文②
「子どもと長く触れ合いたいが、休みを多く取ればその分収入が減ってしまう。政府はワーキングマザーのジレンマについて理解するべきだ」。
女性の社会進出が当たり前となった日本では、女性の働き方が広がる一方、ワーキングマザーのジレンマがますます深刻になっています。
家計をたったひとりで支えなくてはならないシングルマザーにとって、育児と就業の両立はまさに大きなジレンマであり、今後も国レベルで取り組むべき問題になっています。
例文③
「ヤマアラシのジレンマ」はジレンマの古典的な例文であり、使い方も定着しています。語源は心理学の専門用語であり、対人関係の難しさを表しています。
冬山の洞窟に避難した2匹のヤマアラシ。外は極寒なので体を寄せ合って温め合いたいところですが、近づきすぎるとお互いの針によってお互いを傷つけてしまう、というところが語源となっています。
この語源から転じて、他者とのかかわりを求めてはいるものの、心理的に傷つけられることを恐れて自分の殻に閉じこもってしまう現代人の心理を表す例文として使われるようになりました。
例文④
「囚人のジレンマ」はもともと数学のゲーム理論から意味が広がった言葉で、使い方もシンプルなため、一般的な例文としても用いられています。
2人の囚人が同じ罪でとらえられ、刑事からある取引を持ちかけられます。「2人がそろって自供すれば2人とも解放する」。ただ、どちらかが嘘をついていた場合には罪がさらに重くなってしまう。
このような条件では当然、2人がそろって自供するのが最善策となります。ただ、双方が「あいつが裏切ったらどうしよう」と考え、いつまでも黙秘した結果2人とも罪が重くなってしまうことを囚人のジレンマと言います。
使い方が多少難しいかもしれませんが、日常の場面で「それは囚人のジレンマだね」などとさりげなく使い、語源や使い方を説明することができればワンランク上のボキャブラリーが身につきます。
ジレンマは「ふたつの選択肢で板ばさみになる」という意味
ジレンマはギリシャ語を語源とする言葉で、「ふたつの選択肢で板ばさみになり、思い悩んでいる状態」という意味があります。
ジレンマの類語表現としては板ばさみ、葛藤、痛し痒しなどがありますが、それぞれに使い方が異なりますので、例文をできるかぎり多くストックして正しい使い方を身につけていきましょう。