適当の意味とは?
「適当」という言葉は日常生活の中でも当たり前のように使われている言葉ですが、「適当」の本当の意味を知らずに「雑に」「いいかげんに」といった悪い意味で使っている人はかなり多いと言えます。
実は「適当」という言葉にはもっと良い意味があり、本来の「適当」という言葉は良い意味で使うべき言葉ですが、「雑に」などといった悪い意味で「適当」を使う人の方が多いでしょう。
「適当」という言葉にはいったいどのような意味があるのか、まずは「適当」の意味についてご紹介しましょう。
ある状態や目的に程よく当てはまるという意味
「適当」の意味の一つ目は、「ある状態や目的に程よく当てはまる」という意味です。「ある状態や目的に程よく当てはまる」というとちょっと難しいですが、簡単に言えば「ふさわしい状態」という意味です。
何かをしようとしている時にその目的にふさわしい状態にすることを「適当」と言うということなので、決して「雑」や「いい加減」ではありません。
「いい加減」には「雑にする」という意味だけではなく「程よい加減」という意味もありますが、一般的に「適当」の意味として使われる「いい加減」は悪い意味の方になります。
分量や程度が程よいという意味
「適当」の意味の二つ目は、「分量や程度が程よい」という意味です。「適当」という言葉は「分量や程度が程よい」という意味で使われることも多く、料理などにおいてはこちらの意味で「適当」という言葉が使われます。
ですが「適当」という言葉は昨今では「雑に」という意味で受け取られることが多いため、料理番組などで「適当に」と言ってしまうと「雑に」と勘違いされることがあります。
なので料理番組などで材料の分量を説明する際には、「適当」ではなく「適宜」という言葉が使われることが多いです。
場に合わせて要領良くするという意味
「適当」の意味の三つ目は、「場に合わせて要領よくする」という意味です。「適当」という言葉は「雑に」「いい加減」といった意味で使われることが多いですが、それはこの「場に合わせて要領よくする」の意味から来ています。
「適当」の三つ目の意味「場に合わせて要領よくする」は簡単に言えば「いい加減」という意味になり、そのため「適当」の意味は「いい加減」だと思い込まれ、しまいには「雑に」という意味にすりかえられてきたということです。
「適当」には「ある状態や目的に程よく当てはまる」「分量や程度が程よい」「場に合わせて要領よくする」という三つの意味がありますので、それぞれの意味での使い方には注意が必要だと言えます。
適当の対義語・類語
「適当」の意味についてご紹介しましたので、次は「適当」の対義語と類語についてご紹介します。「適当」には三つの意味がありますが、そのすべてに当てはまる対義語や類語はほぼないと言えます。
「適当」の意味は「ある状態や目的に程よく当てはまる」「分量や程度が程よい」「場に合わせて要領よくする」なので、これらの意味のどれか一つと反対の意味を持つ言葉が対義語、似た意味を持つ言葉が類語になります。
「適当」という言葉にはいったいどのような対義語と類語があるのか、「適当」の対義語と類語についてご紹介しましょう。
適当の対義語
「適当」の対義語と類語の一つ目は、「適当」の対義語です。「適当」の意味「ある状態や目的に程よく当てはまる」「分量や程度が程よい」「場に合わせて要領よくする」という意味と反対の意味を持つ言葉が「適当」の対義語です。
ですが「適当」は「雑に」「いい加減」といった意味で使われることが多いため、これらの意味とは反対の意味を持つ言葉も「適当」の対義語になります。
「適当」と反対の意味を持つ対義語にはいったいどのような言葉があるのか、「適当」の対義語についてご紹介しましょう。
不適当
「適当」の対義語の一つ目は、「不適当」です。「不適当」の意味は「適当ではない」という意味で、「適当」の対義語として完璧と言える対義語です。
国語辞書などにおいても「不適当」は「適当」の唯一の対義語として挙げられていますので、「適当」の正しい対義語は「不適当」しかないと言えます。
ですが昨今では「適当」は「雑に」「いい加減」という意味で使われることが多いので、「不適当」以外にも「適当」の対義語を挙げることができます。
厳格
「適当」の対義語の二つ目は、「厳格」です。「厳格」の意味は「怠惰やごまかしなど一切しない厳しいさま」という意味で、「適当」の意味を「いい加減」とした場合に反対の意味を持つ対義語だと言えます。
「適当」は悪い方の「いい加減」という意味で使われることがかなり多いので、「怠惰やごまかしなど一切しない厳しいさま」という意味を持つ「厳格」は正反対の意味を持つ対義語です。
「適当」を本来の正しい意味で使用するなら「不適当」以外に対義語はないですが、「いい加減」という意味で使う際にはこのような対義語も生まれてくるということです。
真面目
「適当」の対義語の三つ目は、「真面目」です。「真面目」の意味は「まごころをこめること」「誠実であること」「本気であること」などの意味で、「いい加減」という意味での「適当」の対義語です。
「適当」の本来の意味からすれば「真面目」は対義語どころかむしろ類語に近いニュアンスを持つ言葉ですが、「雑に」「いい加減」といった意味で「適当」を使うなら「真面目」は対義語になります。
「適当」は本来とても良い意味を持つ言葉なのですが、昨今では悪い意味で使われることが多く、そのため良い意味を持つ言葉が対義語になってしまうということです。
几帳面
「適当」の対義語の四つ目は、「几帳面」です。「几帳面」の意味は「物事を隅々まできちんとする」という意味で、こちらも悪い意味での「いい加減」という意味で使われる場合の「適当」の対義語です。
「適当」を「雑に」「いい加減」といった意味で使う場合には、「物事を隅々まできちんとする」というとても良い意味を持つ「几帳面」も対義語になります。
このように「適当」にはいくつかの対義語がありますが、その多くが「雑に」「いい加減」という悪い意味での「適当」の対義語です。
適当の類語
「適当」の対義語と類語の二つ目は、「適当」の類語です。「適当」の意味は「ある状態や目的に程よく当てはまる」「分量や程度が程よい」「場に合わせて要領よくする」という意味なので、似た意味を持つ言葉が類語になります。
「適当」と全く同じ意味を持つ完璧な類語はありませんが、「適当」の三つの意味のいずれかに似た意味を持つ言葉なら「適当」の類語だと言えます。
「適当」と似た意味を持つ類語にはいったいどのような言葉があるのか、「適当」の類語についてご紹介しましょう。
適合
「適当」の類語の一つ目は、「適合」です。「適合」の意味は「ある条件や事情に良く当てはまること」という意味で、「適当」の意味「ある状態や目的に程よく当てはまる」に近い意味を持つ類語になります。
「適合」には「良く当てはまる」という意味がありますので、この点で「適当」の意味に極めて近いと言えますが、使い方という点では若干違います。
「適当」と言うべきところで「適合」と言い換えることはできませんので、その点では「適合」は「適当」とは違うと言えます。
相応
「適当」の類語の二つ目は、「相応」です。「相応」の意味は「程度がちょうどつりあっていること」という意味ですので「適当」とは違う意味のようですが、「相応」も「適当」の類語の一つとして挙げられます。
「相応」は「適当」の意味「分量や程度が程よい」に近いニュアンスを持っているため、多少意味は違っても「適当」の類語になります。
ですが「相応」もやはり「適当」と言うべき時に言い換えに使うことはできませんので、そういった点では少し違います。
充分
「適当」の類語の三つ目は、「充分」です。「充分」の意味は「物事が満ち足りて何の不足もないさま」という意味で、「適当」の意味「分量や程度が程よい」に近い意味を持つ類語です。
ですが「充分」の意味「満ち足りて何の不足もない」には完璧に揃っているというイメージがあるため、「適当」の意味「程よい」とは若干違います。
「充分」は「適当」の言い換えに使うと意味が違ってきてしまいますので、使い方という点でも「適当」とは少し違うと言えます。
似つかわしい
「適当」の類語の四つ目は、「似つかわしい」です。「似つかわしい」の意味は「ふさわしい」という意味で、一見すると「適当」の意味とは違うようですが、「似つかわしい」も「適当」の類語の一つとして挙げられます。
実は「適当」の意味「ある状態や目的に程よく当てはまる」には「ふさわしい」というニュアンスがありますので、「似つかわしい」も「適当」の類語になります。
ですが「似つかわしい」は「適当」の言い換えに使うことはできませんので、そういった点では少し違います。
手頃
「適当」の類語の五つ目は、「手頃」です。「手頃」の意味は「能力などが望まれる条件にふさわしいこと」という意味で、「適当」とは違う意味のように見えますが「手頃」も「適当」の類語です。
先にもご紹介したように「適当」の意味「ある状態や目的に程よく当てはまる」には「ふさわしい」というニュアンスがありますので、「ふさわしい」という意味を持つ「手頃」は「適当」の類語になります。
また「手頃」という言葉は場合によっては「適当」の言い換えに使うこともできますので、そういった点でも「手頃」は「適当」の類語だと言えます。
適宜
「適当」の類語の六つ目は、「適宜」です。「適宜」の意味は「その場に具合よく適するように行うさま」「適当」という意味で、意味の中に「適当」が入っているため「適当」に最も近い類語です。
先にも少し触れましたが、料理番組などで「適当」と言いたい時に「適宜」と言うことが多く、言い換えができるという点でも「適宜」は「適当」に極めて近い類語だと言えます。
「適当」という言葉は「雑に」「いい加減」などという悪い意味で使われることも多いですが、「適宜」は悪い意味で使われることはなく、そういった点では「適当」とは少し違います。
雑
「適当」の類語の七つ目は、「雑」です。「雑」の意味は「やり方が念入りではなく大雑把なこと」という意味で、「雑に」「いい加減」といった意味で使われる際の「適当」の類語になります。
「適当」は「雑に」「いい加減」という悪い意味で使われることが多いため、「雑」はストレートに「適当」と同じ意味を持つ類語だと言えます。
ですが本来の「適当」の意味は悪い意味ではなく良い意味なので、「雑」は本来の意味での「適当」の類語ではありません。
ぞんざい
「適当」の類語の八つ目は、「ぞんざい」です。「ぞんざい」の意味は「取扱いなどが丁寧でなく投げやりで乱暴なこと」という意味で、「雑に」「いい加減」という意味での「適当」の類語です。
「ぞんざい」という言葉にはかなり悪いニュアンスがありますが、悪い意味での「適当」にはそこまで悪いニュアンスがないという点では少し違います。
このように「適当」にはかなりたくさんの類語がありますが、「適当」の言い換えに使える類語はあまりないと言えます。
適当の使い方・例文
「適当」の対義語と類語についてご紹介しましたので、次は「適当」の使い方の例文についてご紹介します。「適当」には三つの意味がありますので、そのいずれかの意味を表したい時に「適当」を使うことができます。
「適当」という言葉の使い方とはいったいどのような使い方なのか、「適当」の使い方の例文についてご紹介しましょう。
例文①
「適当」の使い方の例文の一つ目は、「このレポートをまとめるために適当な文献を集めるのはかなり大変だ」という例文です。この例文は「ある状態や目的に程よく当てはまる」という意味での「適当」の使い方の例文です。
「適当」という言葉は「雑に」「いい加減」といった意味で使われることが多いですが、本来の使い方はこのような使い方なので覚えておきましょう。
例文②
「適当」の使い方の例文の二つ目は、「家に仕事を持ち帰って疲れているので食事は適当に済ませた」という例文です。この例文は「分量や程度が程よい」という意味での「適当」の使い方の例文です。
このような例文を目にした場合の「適当」は、「雑に」「いい加減」という意味でとらえられがちですが実はそういうわけではないということです。
例文③
「適当」の使い方の例文の三つ目は、「新しい仕事を適当に進めておけと上司に言われたが、どの程度適当なのかがわからない」という例文です。この例文は「ある状態や目的に程よく当てはまる」という意味での「適当」の使い方の例文です。
この例文では上司が「適当」という言葉を使っていますが、現実の世界では「適当」は「いい加減」という意味で使われることも多いため、この例文での「適当」の意味は「いい加減」だと言うこともできます。
例文④
「適当」の使い方の例文の四つ目は、「適当にやっておけばよいのに、彼はとても生真面目だ」という例文です。この例文は「雑に」「いい加減」という意味での「適当」の使い方の例文です。
「適当」には良い意味がありますが、「雑に」「いい加減」という悪い意味で使われることが多く、この例文でも悪い意味で「適当」が使われています。
適当と適切の違い
「適当」の使い方の例文についてご紹介しましたので、次は「適当」と「適切」の違いについてご紹介します。「適当」と混同されがちな言葉の一つに「適切」という言葉がありますが、「適当」と「適切」は違います。
「適当」と「適切」にはいったいどのような違いがあるのか、「適当」と「適切」の違いについてもご紹介しましょう。
適切は過不足なくしっかりと当てはまるという意味
「適当」と「適切」の違いは、「適切」は「過不足なくしっかり当てはまる」という意味だということです。「適当」は「ある状態や目的に程よく当てはまる」「分量や程度が程よい」などの意味で、「過不足ない」という意味はありません。
「適切」は「過不足なくしっかり当てはまる」という意味なので、完璧であるというニュアンスがありますが、「適切」には完璧なニュアンスはありません。
「適切」と言うべき時に「適当」と言ってはいけませんし、「適当」と言うべき時に「適切」と言ってはいけません。そのぐらい「適当」と「適切」には違いがありますので、「適当」と「適切」を間違って使わないよう注意しましょう。
適当を使う際の注意点
「適当」と「適切」の違いについてご紹介しましたので、次は「適当」を使う際の注意点についてご紹介します。「適当」という言葉を使う場合には注意しなければならない点もあります。
「適当」は日常生活の中でごく普通に使われていますが、「適当」を本来の良い意味で使いたい場合には注意が必要です。
「適当」という言葉を使う際にはいったいどのような点に注意しなければならないのか、「適当」を使う際の注意点についてご紹介しましょう。
完ぺきを求める場面では使えない
「適当」を使う際の注意点は、完ぺきを求める場面では使えないということです。「適当」の意味は「ある状態や目的に程よく当てはまる」「分量や程度が程よい」「場に合わせて要領よくする」という意味で、完ぺきなニュアンスはありません。
「適当」には完ぺきさではなく程よさがありますので、仕事などに対して完ぺきを求めるといった場面では「適当」という言葉は使えません。
完ぺきを求める場合には「適当」ではなく「適切」の方が向いていますので、「適当」という言葉を使う際には注意しましょう。
適当の由来
「適当」を使う際の注意点についてご紹介しましたので、次は「適当」の由来についてご紹介します。「適当」は比較的新しい言葉ですが、それでもちゃんと由来はあります。
「適当」という言葉にはいったいどのような由来があるのか、「適当」という言葉の由来についてもご紹介しましょう。
適当は軍隊用語が由来
「適当」の由来は、意外なことに軍隊用語にあります。戦時中の日本では兵士は色々な物を持って移動していましたが、移動する際には上官が持ち物をちゃんと持ったかどうか確認するために「装備品は適当であるか」と尋ねていました。
なので上官が兵士に対して「適当」という言葉を使う際には「ちゃんと全部持っているか」という意味で使っていましたが、装備品が足りないのにごまかして「適当であります」と答えた兵士がいました。
このことから「適当」は「雑に」「いい加減」といった意味でも使われるようになり、昨今ではこちらの意味で使われることの方が多くなったということです。
適当の英語表記
「適当」の由来についてご紹介しましたので、次は「適当」の英語表記についてご紹介します。日本語には英語に翻訳することが難しい言葉も結構ありますが、「適当」はほぼ直訳で英語にすることができる日本語です。
「適当」を英語に翻訳する場合にはどのような英語を使えば良いのか、「適当」の英語表記についてご紹介しましょう。
ふさわしいという意味の「suitable」
「適当」の英語表記の一つ目は、「ふさわしい」という意味を持つ「suitable」という英語です。この「suitable」という英語には「適当」という意味もありますので、「suitable」という英語は「適当」を英語に直訳することができる言葉だと言えます。
なまけるという意味の「lazy」
「適当」の英語表記の二つ目は、「なまける」という意味の「lazy」という英語です。「適当」は「雑に」「いい加減」という意味で使われることが多いため、「なまける」という意味の英語「lazy」を「適当」の英語訳に当てることも多いです。
適当はある状態や目的に程よく当てはまるという意味
「適当」という言葉について色々とご紹介してきましたが、如何だったでしょうか。悪い意味で使われがちな「適当」ですが、本来は「ある状態や目的に程よく当てはまる」という意味なので、正しい意味を理解して正しく使いましょう。