お伺いさせていただきますの意味とは?
「お伺いさせていただきます」が正し敬語かどうか検証する前にその意味を確認しておきましょう。「お伺いさせていただきます」の「伺う」には、3つの意味があります。3つの意味とは、「聞く・尋ねる」と「行く・訪問する」と「伝え聞く」ということです。
そして、「伺う」はそれぞれの敬語に当たり、その中の謙譲語です。したがって、「伺う」ということは、「聞く・尋ねる」または「行く・訪問する」、「伝え聞く」という行為をへりくだる意味で使います。
この3つの意味のうち、「お伺いさせていただきます」という場合は、「聞く・尋ねる」「行く・訪問する」という行為に当てはまる敬語です。つまり「尋ねさせていただきます」「訪問させていただきます」という意味になります。
「伝え聞く」という意味の「伺う」は「お伺いさせていただきます」という表現に当てはまりません。これは考えればわかることでしょうが、「伝え聞かせていただきます」という表現は意味が通りません。
「伺う」の使い方ですが、「その点について伺いたいのですが」「後日ご自宅をお伺いします」などのようになります。ご自分でも使ったことがおありでしょう。
お伺いさせていただきますの特徴
「お伺いさせていただきます」の「伺う」の意味がわかったところで、その表現にはどのような特徴があるのか考えてみましょう。まず、「お伺いさせていただきます」という表現は敬語です。
その構成ですが、「伺う」が謙譲語、「お~させていただく」が「お~させてもらう」の謙譲語、「ます」が丁寧語となっています。つまり3種類の敬語が一つの表現に集まっているのですが、このうち謙譲語が2回使われているので、二重敬語ということになります。
お伺いさせていただきますは間違った敬語?
二重敬語とは、ひとつの言葉の中に同じ種類の敬語が使われていることを言います、たとえば、尊敬語+尊敬語とか、謙譲語+謙譲語とか、丁寧語+丁寧語という場合です。この二重敬語は日本語の表現としてよくない使い方だとされていて、誤りだとされています。
ということは、「お伺いさせていただきます」には、「伺う」と「お~させていただく」という2つの謙譲語が使われているので、間違った表現ということになります。間違っている以上、使うべきでないという人も多いです。
お伺いさせていただきますを使う人は多い
「お伺いさせていただきます」という表現は二重敬語であるから使うべきでないとする意見がある一方で、実際には多くの人が使用する表現となっています。ビジネスシーンでもメールでも日常の改まった場面でもよく使われます。
そのことから、「お伺いさせていただきます」はかなり定着しているので、使っても構わないという人もいます。どちらが正しいのか判断に迷うところですが、相手によっても失礼と感じる場合もあるし、丁寧と感じる場合もあるし、うまく使い分けなければいけません。
させていただくを不快と感じる人も
「お伺いさせていただきます」の「させていただく」という表現に不快さを感じる人もいます。慇懃無礼だ、丁寧すぎてかえって失礼だ、へりくだりすぎというのがその理由のようです。したがって、この辺の使い方にも注意が必要です。
最近の若者は何でも「させていただく」と言っておけば丁寧になると感じ、乱用しているようです。これも年配者が不快に感じる理由で、「お伺いさせていただきます」が許容される表現でも、使いすぎないようにしましょう。
間違った敬語なら何と言えばいい?
「お伺いさせていただきます」が間違った敬語の使い方だとすると、なんて言えばいいのでしょうか。いくつかの表現の候補がありますが、一つ一つ検証してみましょう。候補とは、「お伺いいたします」「お伺いします」「伺います」「伺いたく存じます」などです。
お伺いいたします
「お伺いいたします」という敬語表現も非常に丁寧であり、よく耳にします、しかし、これも「お伺いさせていただきます」同様、謙譲語が何回も使われてています。「伺う」と「お」と「いたす」です。ということは、二重敬語になっていて、使うべきでないという意見が多いです。
お伺いします
「お伺いします」という表現もよく聞きます。「今度貴社にお伺いします」などのような使い方されますが、厳密にいうと、これも二重敬語となっています。「お」が謙譲語で、「伺う」も謙譲語だからです。しかし、かなり使用頻度が高い表現です。
そのため、使ってもいいという意見も多いです。ただ、厳密には二重敬語なので、文章や特にフォーマルな場面などでは使わない方が無難です。話し言葉やメールで差しさわりがなさそうだという時に使うといいでしょう。
伺います
「伺います」という表現は、「伺う」という謙譲語に「ます」という丁寧着で構成されています。2つの敬語が使われていますが、種類が違うので、この場合は二重敬語ではありません。したがって、この言い方が最も正しということになります。
「伺います」だけだと、なんだか物足りない敬語のようにも思えますが、これで十分丁寧な表現であり、「お伺いさせていただきます」の代わりになります。したがって、どのような場面(メールや会話)でも、このように言っておけば大丈夫です。
伺いたく存じます
「伺いたく存じます」という表現には、「伺う」という謙譲語と「存じます」という謙譲語が使われています。意味は「訪問したい」ということですが、一見すると、二重敬語のように思えます。しかし、「伺いたい」と「存じます」は別々の言葉になっています。
そのため、二重敬語ととらえる必要はありません。ということは、これも正しい表現ということになります。「伺いたく存じます」はかなりかしこまった言い方で、ビジネスメールで使ったり、日常会話では目上の人に対して用いたりします。
お伺いさせていただきますの使い方
「お伺いさせていただきます」という表現は二重敬語なので使わない方がいいという人も多いですが、かなりよく使用されている言葉でもあります。そのため、使用OKとする意見もあるので、ここでは使っていいものとして使い方の例文を示します。
例文①
まずは、「聞く・尋ねる」という意味の「お伺いさせていただきます」の使い方の例文から見てみましょう。いくつもの例文が考えられますが、こんな例文があります。「この書類についてわからない点があるので、部長にお伺いさせていただきます」。
かなり丁寧な表現であり、部長に対してとてもへりくだっている様子がわかります。「部長に伺います」でも十分通用する敬語ではありますが、この例文を使った人はより失礼のないようにしようと思ったのでしょう。
例文②
メールで「お伺いさせていただきます」を使う使い方の例文も取り上げてみましょう。「先日決まった事項について少し不明点があるの、お伺いさせていただきます」とメールで尋ねることができます。
ビジネスメールなどではかなり丁寧な表現が求められますが、それを強く意識した場合は、このような例文になります。これも「不明点について伺います」でもいいのですが、あえて二重敬語表現を使い、相手を立てています。
例文③
理由がわからない場合にその理由を尋ねるのに「お伺いさせていただきます」を使えます。その場合の使い方の例文は、「なぜこのような事態になったのか合点がいきません。その理由をお伺いさせていただきます」。
メールでも使えそうな例文ですが、この例文の場合、丁寧な表現にはなっているものの、相手に詰め寄るような雰囲気もあります。そのため、相手も答えを強いられているような感じになるかもしれません。
例文④
親しくない人に尋ねる場合にも「お伺いさせていただきます」を使って、質問ができます。このような例文になるでしょう。「この辺の昔の情報を集めています。そこで、田中様のお父様にいろいろとお伺いさせていただきたいのですが」。
田中様のお父様のことをよく知らない人がいろいろなことを尋ねる場合の例文です。このように言えば、かなり丁寧になり、失礼にはならないでしょう。「お伺いさせていただきます」は二重敬語ではありますが、使い方によってはうまく相手を立てられます。
例文⑤
インタビューなどでキャスターが丁寧に質問をする場合に「お伺いさせていただきます」を使う場合があります。キャスターというものは日本語の勉強をよくしているので、この表現が二重敬語であることは知っているでしょうが、あえて使う人もいます。
その場合の例文は、「お気持ちをお伺いさせていただいてもよろしいでしょうか」となります。少し丁寧すぎる表現のような気もしますが、このように尋ねるキャスターが意外に多いものです。
例文⑥
今度は、「行く・訪問する」という意味の「お伺いさせていただきます」の使い方を見てみましょう。やはりいろいろな例文がありますが、まずはこうなります。「後ほどご自宅にお伺いさせていただいたうえで、詳しい説明をします」です。
相手の自宅を訪問するのをとても丁寧に表現すると、このような例文になります。営業マンなどがよく使うセリフで、聞いたことがある人も多いでしょう。メールで使うこともできる例文です。
例文⑦
訪問する日時を指定する場合に、「お伺いさせていただきます」と言うことができます。メールでも会話でも使える例文です。「5月8日の2時にそちらにお伺いさせていただきます」。これで約束の訪問時間の指定はしっかりできます。
どこを訪問するにしても、日時をはっきり相手に提示しておかないと相手も困るでしょうから、そのような場合はこの例文を使うといいでしょう。日時の部分と訪問先を入れ替えれば、メールでも会話でもどのようにでも応用できます。
例文⑧
就職活動や転職活動をしている人にとって、面接は非常に重要な場です。その面接の訪問について「お伺いさせていただきます」と言う場合があります。ただ、二重敬語になるので、就職や転職活動の場面で使うべきかどうかは微妙なところです。
ここでは、使えると考えて、例文を示してみましょう。「それでは、明後日、印鑑と筆記用具を持参して、貴社にお伺いさせていただきます。その節はよろしくお願いいたします」となります。
お伺いさせていただきますの注意点
すでに指摘したように「お伺いさせていただきます」は二重敬語になっています。そのため、使用にはかなり注意が必要で、時と場合によってはふさわしくない表現となるケースもあります。そこで、「お伺いさせていただきます」の注意点をまとめてみましょう。
相手によっては使わない方がいい場合も
「お伺いさせていただきます」という表現はかなり丁寧ではありますが、人によっては慇懃無礼だと感じることもあるようです。相手がどう思うかを推測するのは難しいですが、もし使ってみて相手がいい顔をしないようなら、それ以上は控えておくのが賢明です。
フォーマルな場面では使わない方がいい?
ビジネスシーンやメール、日常で時々使われる「お伺いさせていただきます」という表現ですが、どうしても二重敬語という側面が付いて回ります。そのため、相手に失礼になる恐れがあります。したがって、かなりフォーマルな場面では使わない方が無難でしょう。
お伺いさせていただきますの英語表現
「お伺いさせていただきます」の英語表現を考えてみましょう。ただ、英語には日本語のような敬語はないので、「お伺いさせていただきます」と言っても、「伺う」という意味の英語訳になります。どのような英語訳になるのかいくつか候補を並べてみましょう。
聞く・尋ねるの意味の英語
英語には、「聞く・尋ねる」という言葉がいろいろあります。その言葉を取り上げながら例文も示すので、実際に「お伺いさせていただきます」の代わりの表現として使ってみてください。まず、英語では「伺う」を「ask」「question」「inquire」「query」などと言います。
例文は、「I'd like to ask you about the contents of next plan.」です。意味は「次のプランの内容についてお伺いさせていただきます」ということです。英語には日本語の敬語に当たる表現はありませんが、それでも「I’d like to ~」という言い方は丁寧表現です。
次の例文は、「I’d like to inquire about the food situation of Africa.」です。この英語は、「アフリカの食糧事情についてお伺いさせていただきたい」ということです。記者などが関係者に質問するような時に言うセリフでしょう。
行く・訪問するの意味の英語
英語で「行く」と言えば、「go」ですが、これだと「訪問する」というニュアンスが出ません。そこで、「お伺いさせていただきます」を英語にする場合は、「visit」や「call on」、「come over」を使うといいでしょう。
例文は、「I’d like to call on plant manager.」です。この英語表現の日本語訳は、「工場長のもとにお伺いさせていただきます」ということです。「visit」を使った例文は、「I wiil visit you on Friday.」です。この英語は日本語に訳す必要ないでしょう。
お伺いさせていただきますは尋ねる・訪問するという意味
ここまで、「お伺いさせていただきます」という表現の意味、特徴、使い方、注意点、英語表現などについてまとめてみました。「お伺いさせていただきます」は「伺う」の敬語表現ですが、二重敬語という指摘もあり、使い方に注意が必要なので、慎重に使うようにしましょう。