「ご教授」と「ご教示」の意味とは?
ビジネスシーンの敬語表現として使用されている「ご教授」と「ご教示」ですが、その意味や違いを正確に理解せずに使用している人もいるかもしれません。両者には大きな違いこそないものの、教えてもらう対象となる物事が異なります。下記で詳しく見ていきましょう。
「ご教授」の意味
まずは「ご教授」の意味からご説明します。「ご教授」は「ごきょうじゅ」と読み、「何か教えを授けてもらう」という意味を持っています。特に、専門性の高い学問や芸術に関する知識、技術を教えてもうらうことを指します。
このような知識や技術は1度の教えで身に付けられるものではないため、「ご教授」には長い間定期的に指導を授けてもらうという意味も含んでいます。
「ご教示」の意味
一方「ご教示」は「ごきょうじ」と読み、「教え示す」と書きます。「示す」という言葉には「物を見せる」という意味があるため、「ご教示」は「物事を見せていただきながら教えてもらう」といったような意味になります。
学術的な物事を教えてもらう「ご教授」とは違い、「ご教示」は比較的簡単ですぐ解決できるような物事のやり方や手順の教えを乞うことを指します。ビジネスの場面で「教えてください」と言うときは、そのほとんどが「ご教示」に当てはまると言えます。
「ご教授」と「ご教示」の特徴
「ご教授」と「ご教示」の意味がわかったところで、ここからは「ご教授」と「ご教示」それぞれの特徴をご説明します。
主にどのような場面や状況でその言葉を使用するのが一般的なのか、もしくは好まれているのかということをご紹介しているため、自分がどういった時にこの言葉を使うことができるのかよりはっきり理解できるようになるはずです。
「ご教授」はビジネスシーンにあまりそぐわない
上述したように「ご教授」は専門性の高い教えを乞うことを意味している敬語であるため、書類の書き方などビジネスの場で頻繁に起こりうる事柄に使用するには少々大げさな表現かもしれません。
そのためビジネスシーンでは「ご教示」のほうがより頻繁に使用するであろう表現だと言えます。しかし専門的なスキルや知識を身に付けた人や、長い間自分の側で教えを授けてくれる会社の上司や先輩社員には「ご教示」よりも「ご教授」のほうがより適しています。
また大学院などで教授や研究者相手に使う際や、師弟関係のある技術や芸を極める場面にも「ご教授」がぴったりです。
「ご教示」は主に書き言葉として使用されている
「ご教示」は、書類の書き方や業務の詳しい内容や状況、取引先や相手方のスケジュールを確認する際などビジネスのありとあらゆる場面で用いることができる敬語ですが、口頭で使用するにはいささか堅苦しいイメージがあります。
もちろん「ご教示」を口頭で使用することはマナー違反ではありません。しかし、メールや手紙を執筆する際の書き言葉として使用するほうが口頭で使用するよりも一般的です。そのため、口頭では「お教えください」や「教えていただきたい」などの表現のほうが「ご教示」よりも自然であると言えます。
「ご教授」と「ご教示」の言い換え
「ご教授」と「ご教示」には意味の似ている類語が存在します。ビジネスシーンといってもとても畏(かしこ)まらなくてはいけない時や、ややカジュアルな雰囲気の時など様々です。
「ご教授」と「ご教示」はどちらかと言うと堅苦しい表現であるため、類語とあわせて使用することでシーンによって言葉を使い分けることができるようになります。
「ご指導」と「ご指南」
「ご教授」と「ご教示」の言い換えに、「ご指導」と「ご指南」という言葉があります。前者の「ご指導」は、ある目標や目的に向かって教え導いてもらうことを意味するため、「ご教授」と「ご教示」両者の言い換えとして使用することができそうです。
「指導」という言葉は多くの人にとって馴染みあるものであるため、「ご教授」や「ご教示」のような堅苦しさはないものの、同じように丁寧な表現であると言えます。
一方「ご指南」は「ごしなん」と読み、「ご指導」と同じように教え導いてもらうこと、という意味です。しかしその対象は武術や芸術における技術を教えてもらうということに限定されています。
そのためビジネスシーンであまり使う機会がなさそうですが、上司や取引先の会社と仕事以外の交流がある場合、例えばゴルフをプレーしに行った際などに使うことができそうです。
「ご教授」と「ご教示」の使い方
「ご教授」と「ご教示」の意味を理解しても、その使い方がわからないと実際にその言葉を自らの口から使用するのは非常に困難です。ここでは覚えた言葉を自分のものにできるよう「ご教授」と「ご教示」の使い方をビジネスシーンに絞った例文と共にご説明します。
「ご教授」の使い方は例文①と➁で、「ご教示」の使い方は例文③と④で詳しく解説しています。「ご教授」はビジネスの場において「ご教示」よりも使いどころがなさそうな印象ですが、全くそんなことはありません。また「ご教示」は実に様々なビジネスシーンで使う機会のある表現であると言えます。
「ご教授」も「ご教示」も、どのような言葉と組み合わせて使えば良いのかを1度覚えてしまえば自由に応用することができるようになるはずです。
例文①
まずは「ご教授」の例文からご紹介します。「ご教授」の例文1つ目は、取引先とのやり取りの際に用いることができる使い方です。例えば、その取引先が何かの先駆者的存在で長年培ってきた技術や経験を有しているとします。
そんな取引先にお願いをしたい場合「ご教授」を用いて、「貴社が長年に渡り培ってこられましたご経験をご教授いただきたく存じます」と言うことができます。
このようなノウハウは莫大な量をほこり、1度や2度で全てを教えてもらえるようなものではないため、「ご教示」ではなく「ご教授」がぴったりです。
例文②
「ご教授」の例文2つ目は、自分が勤めている会社の先輩社員とやり取りをする際に用いることができる使い方です。
例えば、その先輩社員は自分が新人の頃から長年に渡って指導をしてくれている人で、そんな先輩社員の丁寧な指導のおかげで、社内で素晴らしい業績を残すことができたとします。
先輩社員に感謝を述べる際には「ご教示」ではなく「ご教授」を使い、「新人の頃からご教授いただいたおかげで、このような結果を出すことができました」と伝えることができます。
また今後の指導もお願いしますという旨を伝えたい際にも、「これからもご教授賜りますようお願い申し上げます」と「ご教授」を使うことができます。
例文③
続いては「ご教示」を使った例文をご紹介していきます。「ご教示」の例文1つ目は上司や先輩社員など目上の人にわからないことやどうすれば良いかを教えてほしい、とお願いをする際の使い方です。
例えば、自分の提案した企画案に対する周りの反応があまり良くなく、それを改善すべく他の人に意見を求めたい状況だとします。そんな時は、「ご教示のほどよろしくお願い致します」や「ご教示いただけますと幸いです」などの表現を使用しお願いをすることができます。
「ご教示」の前に付けるお願いしたい内容を変えることによって様々なビジネスシーンで使うことのできる敬語表現です。
例文④
「ご教示」の例文2つ目は、上司のスケジュールや商談のために取引先の都合の良い日時を教えてほしいと伝える際の使い方です。
例えば、先方との会議を行うため日程の調整をする必要があるとします。そんなとき先方に予定を教えてほしいと伝えたい時には、「ご教示願います」や「ご教示いただけますでしょうか」などと表現することで丁寧にこちらのお願いを伝えることができます。
「ご教示」の注意点
最後に多くの人が勘違いしやすい「ご教示」という言葉を使用する際の注意点を1つお伝えします。せっかく丁寧な敬語を使っていても、それがそもそも間違っていたらただ恥ずかしいだけになってしまいます。そんな思いをビジネスの場でしないようしっかりチェックをしておきましょう。
「ご教示賜る」は間違い
その注意点というのは、「ご教示賜る」という表現は実は間違いであるということです。「ご教示賜る」を使用した表現を何度も耳にしたことがある人や、何の疑いもなく使っていた人は少なくないと思います。
確かに「ご教授」の例文➁で示したように、「ご教授賜る」という表現は適切です。そのため「ご教授」を「ご教示」と誤って「ご教示賜る」と言ってしまったり、「ご教授賜る」と言えるなら「ご教示賜る」とも言えるだろう、などの勘違いからこのような不適切な表現が広まってしまったと言えます。
ビジネスシーンでうっかりは禁物です。「ご教示賜る」は誤った使い方であることをしっかりと肝に銘じておきましょう。
「ご教授」は長期に教えを乞う・「ご教示」は簡単な教えを乞うという意味
「ご教授」と「ご教示」について詳しくご説明してきましたが、知っているようで知らなかったことがたくさんあったかと思います。
ビジネスシーンにおいて知っているつもり程度で敬語を使用することは、相手を不快にさせてしまったり無礼と受け取られてしてしまうこともあります。知ったかぶりを避け、正しい表現を使うよう常日頃から心掛けていくことが大切です。