以降の意味とは?
〇日以降より予約受付開始といった文言を見かける時があります。また15時以降にご来社くださいという使い方をされる場合があります。以降とは曜日や時刻の起点から後の範囲を表現する場合に使われます。
また以降は「から」に置き換えることが出来ます。「4/1以降全席禁煙です」は「4/1から全席禁煙です」と言い換えが可能です。このようにビジネスや日常生活の場面で使われる「以降」とは、その日時から後の範囲を指す意味で使われているのです。
以降の対義語・類語
以降の対義語としてまず以前が挙げられます。以降とは起点の日時から後を指しますが、以前は起点の日時から前を指します。つまり反対の意味となるので対義語なのです。
類語の代表的語句は以後や以来です。他の類語として「今後」や「将来」「その後」「この方(かた)」「爾来(じらい)」といった言葉もあります。この方は「生まれてこの方」、爾来は「彼とは故郷が同じであることが分かり、爾来彼とは親友づきあいしている」という具合に使われます。
以降の使い方・例文
「以降」が会話や文書の中でどのような使い方をされているのか見ていきます。例文は4パターン用意しました。日時やバージョンなど数字の範囲を表す場合と出来事で使われる場合でよく見かける状況を例文で示します。それぞれのニュアンスの違いを感じ取ってください。
例文①
一つ目の例文は時間や日付の場合です。「4月10日以降当面外出は自粛してください」「次回の会議は来週の水曜日以降に設定する予定です」「チケットの予約開始は4月22日以降となります」「2019年3月1日以降この規則の適用は終了しました」という使い方をされます。
例文②
以降の二つ目の例文は数字の範囲を表す場合です。「このアプリのバージョン4以降は使い勝手が悪くなった」「次回以降の会議より課員も出席が必須となった」「来場客は3回目以降一気に増加した」という使い方がされます。
例文③
以降の三つ目の例文は出来事を起点として使われる場合です。「今回の条例施行以降、店内はすべて禁煙となった」「新社長の就任会見以降、社内の雰囲気が変わった」「先週のミーティング以降、作業工程が改善された」という使い方がされます。
例文④
以降の四つ目の例文は様々なケースでの使い方です。「悪魔の実が登場した以降の物語展開が面白い」「彼女とは地元を離れて以降、連絡が疎遠になった」「1週目以降、各馬の位置取りが先方に詰まってきた」「これ以降の質問はお断りいたします」
以降と以来の違い
以降と以来の違いについて簡潔に言えば以来は過去を起点にしか使えませんが、以降は過去・現在・未来のいずれからも使えるという点です。つまり入学以来とか入学以降という使い方はできますが、明日以降に対して明日以来という使い方は出来ないのです。
つまり以降は過去や現在、未来を起点に時間の経過を指す場合に使われることに対して、以来は過去の状況や出来事を振り返って現在までの状況を思い描く場合に使われることが多い点も二つの言葉の違いを表しています。類語といえど使い方はやや異なる点に注意してください。
以来はある時点からずっと同じ状態が継続中という意味
以来とは「大学卒業以来彼女とは音信不通です」というように過去から現在までその状況が続いていることを意味します。但し「昨年以来会っていなかった彼と昨日偶然出会った」と使う場合は状況が継続していないことを意味します。
以来の範囲はどこからどこまで?
以来の範囲について見ていきます。「私は去年の8月以来ずっと禁煙している」というように過去からある状態が継続している場合に以来は使われます。従って起点は過去に限定され、終点は特定されないことが多いです。
以後はその後という意味
以後の意味はその時からすぐ後ずっとという意味です。以降とほとんど同じ使い方をされています。但し以後は「以後気を付けます」のように単独で使われる点が以降と違います。同様に対義語の以前も「以前から悪かった」のように単独で使われることがあります。
以後の範囲はどこからどこまで?
以後の範囲については、起点がいつになるかという点が以降とは異なります。以降は過去・現在・未来いずれからも使えますが、以後はその時からすぐ後を限定して使われます。例えば「4時以後は正門が閉じられます」「以後注意いたします」という具合に使われます。
以降を使う際の注意点
ここでは以降の使い方の注意点について見ていきます。前述した以降の意味や使い方の例文、範囲などを見直せば注意点は自ずと浮かび上がります。まず以降とは「14時以降」とか「明日以降」の場合、14時も明日も含まれます。
日時など基準点を含めて、その後の期間を表す場合に以降が使われる点に注意してください。特に法令用語で使われる場合は厳密に基準点が含まれることに注意を払う必要があります。
「それから後」の意味以外では使えない
以降とは日時や時間、出来事などを起点として、それから後を表す意味でしか使えません。例えば類語の以後の場合は「以後気を付けます」のように単独で使えますが、「以降気を付けます」という使い方はしません。
以来の代わりに使えない場合もあります。「彼と顔を合わせるのは入社式以来だな」と過去を振り返って現状を説明する時には以降は使えません。以降はある時点からずっとという意味だからです。
以降の範囲はどこからどこまで?
以降の範囲とは当日や時間を含んだ後を指します。以降の範囲について注意点を述べていきます。例えば「レポート提出の受付は5/1以降です」といった場合、範囲の最後が不明でずっと続いてしまう印象を与えます。従って締切日や時間を示す必要があるのです。
「レポート提出は5/1以降5/15までです」というように期限がある場合は締切日を設定して以降の範囲を限定することができます。但し厳密に締め切りを設定する場合ならば、「5/15中」とか「5/15の午後5時まで」という具合に時間を設定すれば間違いありません。
以降の由来・歴史
以降という言葉の由来は何で、歴史はどのくらいあるのでしょうか。ここでは以降という言葉の成り立ちについて見ていきます。以降を漢字二つに分けて各々意味を調べれば以降の由来が見えてきます。以降の歴史については書物に現れた時代を見ていきます。
由来
以降をそれぞれ漢字1字に分けて由来を調べてみると、「以」は「範囲・方向・時間などの起点を示す語」とあります。よって「から・より」に言い換えることができるのです。
「降」の意味は「おりる・くだる・ふる」に加えて「時が移る・のち」の意味もあります。よって以の下に結び付けられて以降となり、「それから後」という意味で使われるようになったのです。
歴史
熟語としての以降はいつごろから使われ始めたのか定かではありませんが、書物で使われたものとしては芥川龍之介の『木曽義仲論』が知られています。木曽義仲(きそよしなか)とは平安時代末期の信濃源氏の武将であり、源義仲の別名です。
木曽義仲を論じた芥川の著書の中で「然れども、平治以降、彼は、平氏を扶けたるの多きを以て」と書かれている箇所があります。ここから以降は平安時代のころからすでに使われていたと推測できます。
以降の英語表記
以降の英語表現について考えていきます。英語にも以降に該当しそうな表現は複数あります。sinceやafter,fromが代表的な英語でしょう。sinceは過去を起点として使われるので意味は「以来」とほぼ同じです。よって類語の位置づけと言えます。
afterは「後」の意味なので「以後」の意味として使われます。よって以降の英語表現としてよりふさわしい言葉はfromではないでしょうか。こちらの意味は「から」として使われます。ちなみにfromの対義語はtoです。
英語の熟語表現として「or later」という言葉があります。但し使い方は「version1.3 or later」というように「version1.3以降」という意味で使われます。
fromの範囲はどこからどこまで?
fromの範囲を考える場合、起点を含めるのが一般的ですが、契約書に記載される場合は「from April 8th (inclusive)」というように厳密に4月8日当日を含めると明記する必要があります。またfromはtoとセットで使われ「from me to you」という具合にfromとtoで範囲や距離感を表します。
afterの範囲はどこからどこまで?
英語の以降の範囲について、続いてafterの場合はどこからどこまでなのでしょうか。「after 4pm」と言えば午後4時以降であり、4時も含まれます。
afterは起点を過去だけでなく現在・未来にも置けます。「any time after xx」はxx以降ならいつでもという意味です。また終点として対義語のuntilを使う場合があります。よって範囲が定まるのはuntilを使った場合のみです。
以降は起点を含めてここから後という意味
以降の範囲や意味、類語や対義語、英語表現について見てきました。一見当たり前のように見える熟語も調べてみると奥深い内容があることがお分かりいただけたでしょうか。
以降の意味が当日を含んだ「それより後」であることをあらためて理解し、以来や以後と上手に使い分けていくことが出来ればビジネスの場で役立つこと間違いなしです。