タウナギってどんな魚なの?
皆さんは「タウナギ」という魚をご存知でしょうか?ウナギという名前が付いているからウナギの仲間なのかな?と感じる方も少なくないでしょう。今回はあまり目にした事がない「タウナギ」という農作物被害に繋がる困った習性をもつ、タウナギの美味しい食べ方や釣りの方法をご覧ください!
タウナギとは
タウナギは一体どう言った生き物なのかをまずはご紹介いたしましょう。川釣りが好きだという方は、タウナギをご存知の方も多いかもしれません。
ウナギに似ているけれど、ウナギとはちょっと違うタウナギという生物の習性を知ると、興味が湧いてくる方もいるのではないでしょうか。
ある地域では頻繁に目にする事ができるのに、日本にはあまり馴染みのない魚「タウナギ」についてご紹介していきましょう!
田んぼにいる魚
今回ご紹介する「タウナギ」は、名前の通り「田んぼにいるウナギのような魚」です。本来は日本には生息していなかったタウナギですが、何者かによって日本へ持ち込まれてしまったようです。
食用が目的で日本に入ってきたものの、日本では食用としては定着しなかったと言われています。定着しなかった理由はそのタウナギの個性的な肉質にあるのかもしれません。
そんなタウナギは田んぼで農作物を育てている方達に迷惑をかけてしまう事があります。住み着いてしまうと、タウナギが直接荒らすわけではありませんが、農作物被害に見舞われてしまう結果となるのです。
詳しい内容は下記でご紹介いたしますが、長い時間をかけて育てた作物が荒らされてしまう農作物被害というのは、非常に辛い出来事です。
「川のエイリアン」とも呼ばれる
そんなタウナギは、川や湖、池などで淡水魚釣りを楽しむ方達に違う名前で呼ばれています。それは「川のエイリアン」です。
川のエイリアンと呼ばれるタウナギは、ウナギのような、ウツボのような苦手な方が見るとちょっとグロテスクな容姿をしているのです。
ウナギにはエラもヒレもきちんと残っていますが、川のエイリアンと呼ばれるタウナギのエラやヒレは退化してなくなってしまっています。そのためか、ウナギよりもグロテスク、と呼ばれてしまう事が多いのかもしれません。
一見すると蛇にも見えるこのタウナギが、田んぼを歩いている時に突如現れたら、ウナギは平気、という方でも驚いてしまうかもしれません。
ましてや川のエイリアンとも言われる容姿の生き物ですから、自分からタウナギを釣りに出かけていない限り、急に目の前に現れたらドキッとしてしまう方の方が多いでしょう。
ウナギの様な見た目と言われていますが、じっくり見てみると表面が粘液で包まれている様な、ぬるっとした印象を受けます。見ればみるほどウナギとは違う、どちらかというと印象的にはやはり蛇に近いかもしれません。
タウナギの詳細
では、続いてタウナギの気になる生態の詳細をご紹介いたします。タウナギの名前には、「ウナギ」と付いていますが、ウナギの仲間ではありません。
ウナギは海で生まれ、川で育ち、産卵の際にまた海へ戻るという不思議な生態をもつ魚ですが、タウナギはその一生を田んぼや川、池といった場所、完全な淡水で過ごします。
タウナギも不思議な生態をもつ生き物であり、ウナギと容姿は似ていますが、実際はウナギとは全く似つかない遠く離れた違う種類の生き物なのです。
では、日本には元々生息していなかった、ウナギのようなウナギではない「タウナギ」という不思議な魚の生態は、一体どのようなものなのでしょうか?また、日本のどの地域で見つけられるのでしょうか?
タウナギの分類
川のエイリアンとも呼ばれている「タウナギ」はウナギと名前に付いていますが、日本人に人気の「鰻」からは程遠い種類の魚だそうです。
タウナギ系タウナギ目タウナギ科タウナギ属に分類されており、魚なのですが魚の特徴とも言えるヒレがその体には見当たりません。一方ウナギはウナギ目ウナギ科ウナギ属に属する魚です。
そしてタウナギは魚であるにも関わらず、エラが退化しているタウナギは、口腔の粘液部を使って酸素を体内に取り入れ、陸上動物と同じように空気呼吸を行うのです。
一般的にタウナギと呼ばれていますが、学名では「Monopterus albus」といいます。タウナギは呼吸の仕方もユニークですが、その他の生態もユニークで、雌から雄へ性転換する事があるのだそうです。
ウナギのようで全く異なる生態をもつタウナギは、見た目と同様にその生態と習性にも興味が湧きます。ちなみに、タウナギの外国名は「Asian swamp eel」です。
タウナギの生息地域や分布地域
日本では田んぼや川、湖や池などの沼地に住み着ことが多いタウナギですが、それはタウナギの習性に寄るところが大きいようです。
タウナギは日本各地で見る事ができ、北は東京から始まり、静岡、愛知、三重、京都、奈良、大阪、和歌山と続き、徳島、香川、愛媛県などに分布しているそうです。
特に奈良県では、タウナギという名前を知らなくても、その特徴を伝えると多くの人が「知っている」というほど地名度のある魚です。
タウナギの名前の由来
タウナギの名前の由来ですが、その名前が示す通り、「田んぼや沼を好んで生息するウナギのような魚」という事から来ています。
外国名の「Asian swanp eel」も「アジアの沼のウナギ」ですのでその習性から取ってつけられた名前という事がわかります。
タウナギの特徴・農作物被害
田んぼや沼を好む習性があるタウナギですが、その習性から農家さんを苦しめる農作物被害をもたらす事が往々にしてあるのです。
では、続いては田んぼ農家さんを困らせるタウナギがどのような特徴をもつ魚なのか、気になる習性、そしてどう言った農作物被害に見舞われてしまうのかをご紹介いたします。
体長は80㎝前後
タウナギには興味深い生態があります。タウナギは大きいもので80cmほどに成長しますが、その中の多くの個体は性転換をするのです。
生まれてから34cm以下までは雌、そして46cm(4歳魚)以上になる個体は全て雄になるのだそうです。
その中でもほんの一握りの個体は初めから雄で生まれ、12cmで成熟するという実に興味深い、生態を持った生き物なのです。
田んぼの底に穴を掘って住みつく習性
続いては、面白い生態をもつタウナギの習性をご紹介いたします。タウナギの名前の由来でもある「田んぼや沼を好む」という習性は、住み着く場所にも大きく関わっています。
柔らかく居心地の良い田んぼの底はタウナギにとって最高の寝床です。その居心地の良い田んぼの底を、さらに安全を求めて深く穴を掘り下げて寝床を作り住み着く習性があるのです。
そのため、そのタウナギの身はそのまま食べると泥臭い場合があります。もしも食べてみようという方は、捕まえたらしっかりと泥を吐かせて泥ぬきをしてから食べるのがおすすめです。
また、淡水魚ですので、寄生虫などのリスクも少なくありません。食べる際にはしっかりと火を通して食べる様にしてください。
田んぼの水を干上がらせてしまう危険も
タウナギは水の中に生き、小魚や昆虫を食べる肉食の生物ですので、直接田んぼの農作物に被害を与えることはありません。
しかし、先ほどご紹介した「田んぼの底に穴を掘り住み着く」という習性に大きなポイントがあるのです。田んぼの農作物に直接危害は与えませんが、体長40cm以上にもなる大きな生物がこぞって田んぼに穴を開けるとどうなるでしょうか。
稲作をしている田んぼには、たっぷりと水が張られています。しかしタウナギが田んぼの底に穴を大きく深く掘り下げてしまう事で、せっかく張った田んぼの水が全て流れ出してしまうのです。
そのため、田んぼが干上がり、農作物被害へと繋がってしまいます。タウナギ自体が直接農作物被害を与えている訳ではありませんが、タウナギの習性が結果的に、大きな農作物被害へ繋がってしまうのです。
こう言った農作物被害を防ぐために、日本よりもタウナギが多く生息している東南アジアでは、次のような対策が取られています。
田んぼに水が張られた状態ではタウナギを捕獲することは非常に困難を極めます。そのため、田んぼのオフシーズンに水を抜いた状態で田んぼの土を掘り返してタウナギを捕獲するのだそうです。
実はタウナギは空気呼吸ができる生き物ですから、ほんの少し土が湿っていれば生きていく事ができる為、次の田んぼシーズンに水を張ったらまた土から泳いで出てきてしまうのです。
そうなる前に、田んぼを掘り起こしてタウナギを駆除するという作業を繰り返して農作物被害を事前にできる限り食い止め、自分たちの大切な田んぼを守っているのです。
タウナギは釣りで楽しめる
農作物被害をもたらす、農家さんには迷惑な生き物「タウナギ」は、釣り好きな方には人気のある生き物でもあります。
田んぼの隣の用水路を覗くとすぐに見つけられる場合も多く、海や川などにわざわざ足を運ばなくても、田舎に住んでいれば近所で手軽に釣りが楽しめるのです。
釣りの難易度は低め
普段溝や穴に隠れて暮らしているタウナギは、意外にも釣り上げる難易度は低い魚と言えます。初心者でも簡単に釣る事ができる種類です。
穴から顔だけを出しているタウナギには釣り竿や餌を使用して釣り上げる必要がありますが、体全体が穴から出ていてその辺を泳いでいる状態であれば、網ですくうだけで捕まえる事ができるのです。
その理由は、タウナギの泳ぎの下手さにあるようです。姿形はウナギやへびに似ていますが、その泳ぎの力量は全くの別物です。非常に泳ぐのが遅く、一度取り逃がしてもすぐに追いつく事が出来るほどです。
しかしそれは穴から体が全て出ている時の話で、穴に潜り込ませたらウナギやへびは非ではない程の力を発揮します。網で手軽に捕まえたい方は、泳いでいるタウナギを見つけるのがおすすめです。
用意する竿・エサ
田んぼに穴を掘り、住み着いて結果的に農作物被害をもたらすタウナギは、穴に入っている時に本領を発揮します。
泳いでいる時はいとも簡単に捕まえる事が可能ですが、穴に入った状態で顔を出しているタウナギを釣り上げるためには、相当な力を要する場合があるのです。
そのため、タウナギを釣り上げる際に必要なのは、簡単な事では折れない丈夫な釣り竿か、もしくは折れてもいいような買い替え予定の古い釣り竿などがおすすめです。また、短めの釣り竿も使い勝手が良いでしょう。
タウナギを釣る際の餌ですが、タウナギは肉食なので、魚を小さくちぎったものやミミズ、小エビなどを用意しておくといいでしょう。
釣れる場所・時間
タウナギは基本的に夜行性です。日中でも姿を見かける事は珍しくありませんが、多くのタウナギは穴に隠れていたり、岩場に身を潜めたりしているようです。
簡単に見つけたい方は、暗くなってからライト持参で釣りに出かけるのがおすすめです。用水路をのんびり泳いでいる姿を簡単に見つける事ができます。
しかし、ライトを持っていたとしても暗くなってからタウナギを探すよりも、日中の明るい時間帯にある程度タウナギの寝床を確認しておくのがおすすめです。
日没とともに泥の中からひょっこりと顔を表す姿もみる事ができますし、何より危ない場所などを明るいうちに確認しておく事ができます。
釣り方のポイント
では、続いてタウナギを釣り上げる時のポイントをご紹介いたします。タウナギは視覚、嗅覚共にあまり良くないようで、餌や針が目の前で動く水の振動で感じて食いつきます。
そのため、目の前でチラチラと動かして食いつくように仕向ける事が重要です。そして食いついた後も急いで引き上げる、というよりはじっくりと穴から引き摺り出す、という感覚に近いでしょう。
穴に入っているタウナギの力を侮ってはいけません。思いがけないパワーに竿を落としてしまったり、竿を折ることになってしまいます。
また、釣ったタウナギを家に持ち帰る際には、体が濡れる程度の少量の水を入れて持ち帰るようにしてください。大量の水を入れると呼吸が出来ずに溺死してしまうためです。
タウナギを釣りに行く際には、衣装ケースなどの大きな入れ物を用意して行くとその独特なタウナギの姿をじっくりと観察する事ができておすすめです。
衣装ケースに少量の水を入れて、釣れたらその中に針を外して入れます。ウナギよりも黄色味を帯びた、ヌメッとした体や、退化したエラやひれの様子などを確認する事ができますので、生き物が好きな小さなお子さんに見せて楽しみながら学ぶ事ができるでしょう。
タウナギは食べれる?
本来なら日本にはいなかったタウナギは、その習性から農作物被害を引き起こして農家さんを困らせてしまう事が多々あります。
そんなタウナギを釣って、美味しく調理する事が出来るとすれば、それは農家さんにも、釣り人にも嬉しい事ではないでしょうか?
実はタウナギは、元々食用として日本に持ち込まれた事が始まりと言われている魚です。日本ではあまり馴染みがありませんが、他の国ではタウナギがどのような食べ方をされているのかをご紹介いたします!
東南アジアや中国では食用の魚
日本では馴染みのないタウナギですが、海外、特に中国や東南アジア、台湾などでは様々な食べ方で楽しまれているれっきとした食用の魚なのです。
中国、東南アジア、台湾のレストランではウナギよりも目にする機会が多いほどです。その調理法は非常にシンプルで、栄養価も高くとても重宝されているのです。
薬膳料理としても使用されているほど中国では人気のある食材と言われています。栄養価が高く美味しいのであれば、ぜひ食べて見たいという方も多いでしょう。
その見た目から、タウナギの身の味も、ウナギやアナゴのような味を想像してしまいがちですが、実際は一体どのような味がするのでしょうか?
タウナギの味は?
タウナギは見た目こそウナギやアナゴの様ですが、捌いてみると似ても似つかない赤黒い身をした魚である事がわかります。
捌き方はウナギやアナゴと同じ手法で難なく捌く事が出来ますが、身を見ただけでは味を想像するのは難しいかもしれません。
しかし、その個性的な身からは想像できない淡白な味わいで味自体には癖がなく食べ方によっては非常に美味しく食べられます。
ウナギやアナゴを想像して食べてしまうと、食感が個性的に感じてしまうかもしれません。脂身が少なく、身がしっかりとしていて歯ごたえがある上に、皮にも弾力を感じます。
タウナギの食べ方
では、一体どの様な食べ方なら美味しくタウナギを食べる事が出来るのか、東南アジアや中国の方達はどの様な食べ方でタウナギを楽しんでいるのかが気になるでしょう。
ウナギの様な見た目とは違う味わいに、どの様な食べ方をしたらいいのか悩んでしまう方に、おすすめの美味しい食べ方をご紹介いたします!
炒め物
まずは、中国や東南アジアで人気の食べ方である「炒め物」が手軽でおすすめです。一口サイズに切って野菜と炒めるだけで、美味しいタウナギの炒め物が完成です。
タウナギの炒め物には黄ニラ、玉ネギ、ピーマン、ナスなどの食材が相性が良い様です。もしもタウナギを釣って、食べ方に悩んでしまったら、炒め物が手っ取り早くておすすめです。
タウナギを良く食べる中国ではウナギよりもポピュラーな魚でもある様です。炒めて食べる食べ方は無限にあり、あんかけにして食べても美味しいという事です。
辛いのが好きな方はたっぷりのネギと唐辛子を一緒に炒める食べ方もおすすめです。中国から入ってきたと言われる魚だけあって、中華料理レシピとの相性の良さはいうまでもありません。
焼きそば
続いては、こちらもおすすめの食べ方「焼きそば」です。タウナギは中国で「鱔魚」と呼ばれています。もしも本場の食べ方を検索したい方は、こちらの名前を入力して検索するのがおすすめです。
「鱔魚」と検索するとたくさんのレシピを見つける事ができますので、自分で気にいるレシピが見つけられるでしょう。
そういった中で人気のあるタウナギの食べ方の一つの焼きそばは、あんかけ焼きそばが多い様です。油でこんがり焼かれたタウナギはサクサクとした食感を楽しめて、あんかけとの相性抜群です。
ウナギとは全く違った味をもつタウナギは、滋養強壮にも役立つ食材ですので、美味しく健康を手に入れることもできておすすめです。
蒲焼き
ウナギの様な容姿を持ったタウナギですから、調理法で真っ先に思い浮かぶのが「蒲焼き」という方も少なくないでしょう。ウナギと全く味の違うタウナギの蒲焼きは、食べ方として人気なのでしょうか?
答えは、残念ながら「NO」です。ウナギの蒲焼きといえば、香ばしく焼かれた表面と、中の身のふわふわの柔らかさが魅力ですが、タウナギの身は非常にしっかりとしており、ウナギの身とは似ても似つきません。
そして普段泥の中で生活している生き物であるため、きちんと処理をしないと泥臭さを感じてしまい、ましてや蒲焼きという素材勝負の食べ方にはあまり向かないのです。
ウナギの蒲焼き同様、アナゴの様にも見えるタウナギを、「煮アナゴ」に似せて調理したらどうか、と頭を過ぎるかもしれません。しかし、タウナギは煮てもそのしっかりとした食感が残り、煮アナゴの様には美味しくできない様です。
ウナギやアナゴの様な調理法で楽しんでみよう、というよりは、タウナギは全く別物、と念頭に置いて調理した方が美味しく食べられるでしょう。
もしもタウナギを美味しく楽しみたいという方は、中華料理の様に味をしっかりとつけて火を通して食べるのが美味しくておすすめです。
タウナギは農家にとって迷惑な魚
農作物被害をもたらすタウナギは、農家さんにとってはまさに天敵と言える存在です。もしも釣りが好きな方は、農作物被害の減少にも貢献出来ますので、タウナギを釣って食べてみてはいかがでしょうか?農家さんにも喜ばれますし、美味しいメニューも味わえて一石二鳥です!