名刺のサイズって気にしたことある?
紙のサイズを表す言葉の中に「名刺サイズ」というものがあります。例えば、ちょっとした贈り物をする時などに一言コメントを書いて入れておくようなカードのサイズが「名刺サイズ」と呼ばれていたりします。
他にも「はがきサイズ」などが似たような言葉として存在しています。名刺やはがきといった、一般的に大よそのサイズ感が統一見解になっているものの名称が付いているので、特別気にしなければ困ることはありません。
ところでこの名刺ですが、標準的な寸法に決まりはあるのでしょうか。また、その寸法は何㎜×何㎜なのでしょうか。今回は知っていると何かの時に役立つ雑学として、名刺の標準サイズや日本と欧米の名刺サイズの違いなどを紹介します。
名刺のサイズ
ビジネスパーソン、特に営業系の仕事をしている方、更にBtoBの仕事をしている方は、毎日様々な会社の人と打合せを行う機会があり、初めて人と会う時や部署移動をした時など、様々な機会に名刺を渡したり、名刺を受取ったりする機会があります。
名刺はビジネスパーソンにとって欠かせないツールですが、様々な会社の名刺を受取っていると、デザインやサイズにも様々なタイプがあることに気づくのではないでしょうか。
実際には、ほとんどの会社の名刺は同じサイズで作られていることが多く、一部の名刺が微妙に大きかったり小さかったりすることが多いようです。ほとんど同じ大きさなのは、そのサイズが名刺の標準サイズとされているからなのですが、名刺の標準サイズについて解説しましょう。
明確な決まりはない
まず最初に誤解を避けるためにお伝えしておきたいのが、名刺に標準サイズというものはありますが(このあと紹介します)、必ずしも標準サイズの寸法で名刺を作らなくてはいけないという決まりはありません。
例えばアーティストやデザイナーなど、個性を活かしたクリエイティブ系の仕事をしている方などは、その個性を名刺でも存分に発揮する目的(だと推察されます)で、自身や会社の名刺の形状やサイズを標準とは異なる物に定めていることがあります。
この名刺を受取った際、サイズや形状が異なっているために「マナー違反だ」といって怒る人もいないでしょう。このように名刺に関しては、様々なタイプやサイズが存在していますし、標準的な名刺サイズはあるものの、明確にこうであるべき、という決まりは無いのです。
標準の寸法は91×55㎜
とは言え「名刺サイズ」というサイズ表記があるくらいなので、一般的に使われている名刺のサイズには規定があります。まずは、一般的な「名刺サイズ」の寸法について紹介しましょう。
日本で広く使われている標準的な名刺のサイズは、サイズ規格で「名刺4号」と呼ばれています。寸法は「91㎜×55㎜」で、関東では「東京4号」、関西では「大阪9号」と呼ばれています。場所によって呼称が異なることは雑学として覚えておきましょう。
ところで、何故名刺のサイズは「91㎜×55㎜」という寸法になったのでしょうか。紙のサイズはどれも中途半端な寸法ですが、なぜ「100㎜×50㎜」などのキリの良い寸法に決めなかったのでしょうか。雑学ついでにその部分についても解説しておきましょう。
標準的な名刺の寸法が「91㎜×55㎜」になった背景には、以前に使われていた日本の「寸法を表す単位」と「黄金比」が関係していると言われています(諸説あり)。
まず、日本の名刺サイズに影響を与えたのがディスデリというフランスの写真家だと言われています。その人の写真付き名刺のサイズが「82㎜×57㎜」でした。この名刺の寸法が、後の名刺サイズに影響を与えたと言われているのです。
ご存知のように、昔の日本では「尺」と「寸」を長さの単位として用いていました。ディスデリの名刺サイズ「82㎜×57㎜」の82㎜に最も近い寸法が、当時の日本では3寸でした。
この3寸という寸法に対し、最も美しいとされる比率(黄金比:人間が最も美しいと感じる比率)から導き出された短辺の寸法が55㎜であり、その寸法を採用したと言われています。ちなみに黄金比とは「1:1.618」です。
ちなみに身の回りに黄金比で作られている物は多数存在していて、トランプやキャッシュカード、ギリシャのパルテノン神殿や、エジプトの大ピラミッドなども黄金比です。
名刺のサイズの比較
一般的な名刺サイズの寸法について紹介してきました。冒頭にも解説しましたが「名刺サイズ」の名刺については、あくまでも標準的なサイズの名刺ということであって、「91㎜×55㎜」でなければいけないというわけではありません。
そこでここからは「名刺4号」以外の名刺サイズについて紹介します。ちなみに欧米では欧米基準での標準的な名刺のサイズがあります。これも日本の標準とは異なるサイズで、日本でも「欧米タイプ」として一般的に用いられている名刺サイズです。
昔と違い、今は日本国内にも欧米やアジアに本社を置く企業(外資系企業)が多数上陸しています。それらの企業で使われている名刺については、本社基準に則った名刺タイプをそのまま使用しているケースもありますので、今やサイズも様々なのも当然かもしれません。
欧米タイプ
ではまず欧米タイプについて紹介しましょう。日本で「欧米タイプ」という場合、寸法は51㎜×89㎜になります。欧米タイプの名刺は横書きの場合がほとんどですので、寸法の表記も異なっています。
日本の標準名刺サイズが91㎜×55㎜ですので、欧米タイプの方がやや小ぶりで横長になります。欧米タイプは、スーツの胸ポケットにしっかり収まるサイズで「2×3.5インチ」というサイズになっています。
一言で欧米タイプといっても、実はアメリカとヨーロッパとではサイズも異なります。先ほど紹介した51㎜×89㎜という名刺サイズはアメリカを中心に使用されている寸法です。
もう一つの「欧米タイプ」としてはヨーロッパで主に使用されているサイズがありますので、併せて紹介しておきましょう。ヨーロッパで主に用いられている名刺のサイズは「55㎜×85㎜」になります。
ただこれも、北欧では「55㎜×90㎜」、東欧では「50㎜×90㎜」となっているなど、国や地域によって標準タイプとされる名刺サイズは異なっています。
3号サイズ
それでは次に国内に話を戻して、「名刺4号」以外の名刺のサイズについて紹介しましょう。「名刺4号」があるくらいですので、他にも「名刺3号」や「名刺5号」があってもおかしくありませんし、実際にそれらのサイズも存在しています。
その中で、まずは名刺3号サイズに触れておきましょう。4号から3号に数字が小さくなっていますが、名刺のサイズも小さくなります。名刺3号のサイズは「49㎜×85㎜」となり、名刺4号よりも一回り小さいサイズになります。
小ぶりで女性に人気があるサイズですが、あまりビジネスの場で見かけることは無いかもしれません。手元の名刺を並べてみて、他の名刺よりも小ぶりな物があれば、それが名刺3号かもしれません。飲食店や美容院などの名刺として多く使われるサイズです。
5号サイズ
名刺3号が少し小ぶりだったのに対し、5号になると当然4号よりも大きなサイズになるということになります。ちなみに名刺5号のサイズは「61㎜×100㎜」となります。
名刺のサイズが大きくなると、名刺に記載できる情報量も増やすことが出来るという利点があります。また、渡した人の名刺の中でも、整理した時に飛び出るサイズになるために目に触れやすくなるという利点もあります。
一方で、一般的な名刺ホルダーは名刺4号サイズを基準に作られているため、場合によっては名刺5号サイズの名刺が収納できない可能性があるというデメリットがあります。これらを加味しつつ、名刺を作るようにすると良いでしょう。
その他のサイズ
名刺サイズには6号や7号といった、更に大きいサイズの名刺も標準サイズとして設定があります。実際にほとんど目にする機会は少ないかもしれませんが。
ちなみに名刺6号のサイズは「70㎜×116㎜」、名刺7号のサイズは「76㎜×121㎜」となっており、徐々にサイズが大きくなっていっているものの、標準とされる名刺4号が「55㎜×91㎜(先ほどと天地左右を逆に記載しています)」と比較した場合、その違いが明確です。
名刺のサイズで迷った場合
一般的には会社によって名刺のデザインというものは統一されていることが多いようです。しかし、複数の商材を扱うメーカーなどでは、自分の担当する商品の写真などを入れて作成することが許可されていたり、いくつかのテンプレートの中から選ぶことができる場合もあるようです。
さて、企業に所属していて企業で名刺のテンプレートが定められている場合は勝手に名刺を作ることは憚られるかもしれませんが、個人事業を営む方や自分で会社を興している方、もしくは企業の総務部等に所属して名刺のデザインを作る必要がある方もいらっしゃるでしょう。
その様な方々に向け、ご自身の会社(もしくは自分自身)の名刺を作成するときにサイズで迷うような事があった際のアドバイスになるような情報を紹介しておきますので、もし丁度、名刺のサイズで迷っている方は参考にしてみてください。
標準サイズで作成するのがおすすめ
名刺のサイズで悩んだ際、もっとも無難な選択は「名刺4号」という一般的なサイズで作成することです。一般的だから悪いということは無く、受け取った側の名刺入れのサイズも名刺4号サイズに合わせて作られていますので、受け取った人も管理しやすいというメリットはあります。
また、名刺を作成する場合のほとんどは自社以外の名刺を印刷してくれる会社に発注していることでしょう。「名刺4号」は日本の名刺の主流ですので、名刺作成会社も、このサイズの各種テンプレートを豊富に準備しているという点でもメリットはあります。
テンプレートが豊富であれば、その中から好みや用途に合わせた名刺の記載内容を選ぶことが出来ます。しかも、既に用意されているテンプレートを使用することで、新たにレイアウト開発費等のエクストラコストの発生を抑えることが出来る点もメリットとして挙げられます。
流行りや人気で選ぶ人も
他にも、サイズは「名刺4号」ではあるものの、縦方向や横方向に広げるタイプの名刺を採用するという方法を検討するのも良いかもしれません。
いわゆる二つ折りや三つ折りなどのタイプの名刺で、収納時は折りたたんだ状態なので標準的な「名刺4号」サイズになっており、広げると通常の名刺サイズの2倍~3倍のサイズになるため、様々な情報を名前と共に記載することが出来るというメリットがあります。
取り扱っているサービスや商品が多岐にわたる場合、色々なことに対応できるというアピールにもなりますし、飲食店等が採用する場合は、スタンプカードとしても使うことができるタイプと言えるでしょう。展示会などの場限定で採用する企業もあるサイズの名刺です。
名刺をデザインするときのポイント
昔は、年賀状を作ろうと思った場合にも手書きで全てを作るか、家庭用の簡易的な印刷機を購入して作ることがほとんどでした。その後、家庭で撮影した写真を使った年賀状印刷が写真屋さんで提供されるようになり、今でもこの手段が年賀状印刷の主流です。
しかし近年、PCやスマートフォンの進化、家庭用プリンタの画質や印刷スピード、インクコストの低減、更には印刷部数の減少などの影響も相まって、自宅で自分のPCに年賀状作成ソフトをインストールし、家庭で印刷するという方も増えているようです。
そして年賀状同様、名刺についても自宅で簡単にデザインし、必要な部数を印刷することができます。名刺の必要部数が少ない方は印刷まで自宅で行うことも可能ですし、印刷部数が多い方は、印刷だけは業者に発注するでも良いでしょう。
伝わりやすさを重視する
そこで最後に、自分で名刺を作るときに気をつけておくべきポイントを簡単に整理しておきましょう。当たり前のことではあるものの、自分でデザインを行う場合に漏らしてしまう内容もあるかもしれませんので、念のために確認しておくようにしましょう。
まず、名刺を作成するうえで重要なのは「必要な情報がしっかりと伝わること」です。会社名や部署名、郵便番号と住所、固定電話や携帯電話、メールアドレスは必須情報です。英語や中国語表記が必要か否かは、ご自身の会社の業務内容によって変えましょう。
必要事項は漏らさず書く
名刺のサイズにもよりますが、ある程度名刺にお金をかけられるのであれば、表面に連絡先等の必要事項を網羅し、裏面に取り扱い商品やサービス等の業務内容を記載するのも良いでしょう。
全国に広がるネットワークを売りにしている企業であれば、裏面に北海道から沖縄まで広がるネットワーク網を全て記載することで、商談の際に安心感等を与える材料にするというのも一つの武器になるかもしれません。
印象に残るデザインにする
最後に、せっかく時間と手間をかけて名刺を自作するのであれば、渡した相手の印象に残る個性的なデザインにすることを意識しても良いかもしれません。
印象的な名刺というのは、最悪、個人の名前が記憶されていなかったとしても、どんな会社か、どんなことをやっている会社なのか、という朧気な印象は残せるものです。そして、デザインや色が印象的な場合は、名刺入れの中から探すのも簡単になります。
写真入りの名刺というのもありますが、今では多くの企業で採用されていることもあり、特別な印象を残すことは難しいかもしれませんが、色使いと印象的なキャッチコピーをある程度目立たせるというのは有効かもしれません。
名刺のサイズを意識してデザインしてみよう!
いかがでしたか。名刺にも様々なサイズがありますし、会社によってデザインもマチマチです。一回渡すだけで印象に残りやすい名刺を作るのも一つの手段ですし、名刺はあくまで名刺でしかないと割り切って、一般的なサイズとレイアウトを選ぶのも一つの手段です。
ご自身の会社の考え方、自分がアピールしたいポイントを名刺でも表現すべきと考えるのであれば、サイズやデザインで遊んでみるのも悪くないかもしれません。