「光栄」の意味
仕事などにおいて人に対して「光栄です」「光栄に存じます」といった言い方をすることがあります。主にビジネスシーンなどで使われ、普段の日常生活の中ではあまり使われることがない「光栄」という言葉ですが、実はその意味を正しく理解していないという人も多いようです。
他のちょっと難しい日本語とは違って、読み方はわかるけれど正確な意味は知らないという人も多い「光栄」という言葉の意味からご紹介していきましょう。
意味①名誉に思うこと
「光栄」の意味の一つ目は、「名誉に思うこと」です。仕事や勉強など、自分が成したことに対して褒め言葉をもらったりした時などに、その褒め言葉を名誉に思うことという意味です。「光栄」には二つの漢字が使われていますが、「光」は「光ること」で「栄」は「栄えること」を意味しますので「光り栄えること」という意味になります。
「光ること」も「栄えること」もとても良いイメージですので、「光栄」という言葉は良いイメージが二つ重なった大変良いイメージの言葉だと言えます。「光り栄える」と感じるほど「名誉なこと」だということです。
意味②栄あること
「光栄」の意味の二つ目は、「栄(はえ)あること」です。「栄えある」の意味は「名誉や尊厳がそなわっているさま」で、「栄え(はえ)」の意味は「照り輝くこと」ですので、この両方の意味から「栄あること」は「光り輝くような名誉や尊厳がそなわっているさま」だと言えます。
「栄あること」という言い方はあまりしませんのでちょっと難しい言葉ですが、簡単に言えば「とても名誉なこと」という意味になりますので、先にご紹介した「名誉あること」と同じような意味になります。
「光栄」の類義語と意味
次に「光栄」という言葉の類義語についてもご紹介します。「光栄」の意味は先にご紹介したとおり「名誉に思うこと」「栄あること」ですので、これらに近い意味を持つ言葉が「光栄」の類義語になります。ですが「名誉に思うこと」「栄あること」のようにあまり使わない言葉ばかりが「光栄」の類義語というわけでもありません。
「光栄」の類義語には、意外に普段の生活の中でも普通に使われている言葉もあります。「光栄」はビジネスシーンなどで良く使われる言葉なので、同じようにビジネスシーンで良く使われる言葉にも「光栄」の類義語があります。
普段の生活の中でも使われる言葉やビジネスシーンで主に使われる言葉など、「光栄」の類義語をいくつかご紹介しましょう。
①嬉しい
「光栄」の類義語の一つ目は、「嬉しい」です。「嬉しい」という言葉は日常生活の中でもかなり頻繁に使われる、なじみのある言葉ですが、実はこの言葉も「光栄」の類義語になります。「光栄」の類義語と言えばその意味にも含まれる「名誉」などが挙げられそうですが、「嬉しい」が類義語になることには理由があります。
「お会いできて光栄です」という言葉を「お会いできて名誉です」と言い換えると不自然ですが、「お会いできて嬉しいです」と言い換えるととても自然になります。「嬉しい」という言葉は、「光栄」の使い方に合わせた類義語であると言えます。
②恐縮
「光栄」の類義語の二つ目は、「恐縮」です。「恐縮」の意味は「恐れ縮こまる」という文字から「体が縮まるほど恐れ入る」という意味になり、相手に対して申し訳なく思う気持ちや、申し訳なくも感謝する気持ちを表す場合に使われます。なので「光栄」の類義語としては少しニュアンスが違います。
ですが、「光栄」も「恐縮」も相手をとても高く見ている場合に使われる言葉です。そういった意味から、「恐縮」は「光栄」の類義語であると言うことができます。
③幸い
「光栄」の類義語の三つ目は、「幸(さいわ)い」です。「幸い」の意味は「幸せ」ですので、「光栄」に近い使い方ができる言葉です。先にご紹介した類義語「嬉しい」と同じように、「光栄」を使う文章に「幸い」を入れて同じように使うことができます。「お会いできて光栄です」は「お会いできて幸せです」と言い換えることができます。
「お会いできて光栄です」も「お会いできて幸せです」も、言われた相手にとっては同じような意味に受け取れますので、「幸い」は「光栄」の類義語であると言えます。
④幸甚に存じます
「光栄」の類義語の四つ目は、「幸甚(こうじん)に存じます」です。「幸甚に存じます」は「とても幸せです」という意味なので、「光栄」とほぼ同じ使い方ができる言葉だと言えます。こちらも先にご紹介したように「お会いできて光栄です」を「お会いできて幸甚に存じます」というように言い換えることができますので、「光栄」の類義語だと言えます。
「光栄」の対義語と意味
「光栄」という言葉の類義語をいくつかご紹介したしたので、次は対義語もご紹介します。「光栄」の類義語はたくさんありますが、実は対義語に当たる言葉はとても少ないです。というのは「光栄」の意味が「名誉に思うこと」「栄あること」と、対義語に当たる言葉を探すのが難しい意味だからです。
「暗い」「明るい」のように、正反対を示す言葉が「光栄」には少ないため「光栄」の対義語は少ないです。そんな「栄光」の対義語に当たる言葉をご紹介しましょう。
①不名誉
「光栄」の対義語の一つ目は、「不名誉」です。「光栄」には「名誉に思うこと」という意味がありますので、その正反対の意味を持つ「不名誉」は「光栄」の対義語であると言えます。「不名誉」の意味は「名誉を傷つけられること」「面目が立たず恥ずかしいこと」ですので、「光栄」の意味「名誉に思うこと」の対義語になります。
「不名誉」と「名誉に思うこと」とではニュアンスが微妙に違うため、対義語とは言い切れない面もありますが、「名誉に思うこと」を「面目が立って誇らしい」と言い換えると、「不名誉」は「光栄」の対義語と言っても差支えなくなります。
「面目が立って誇らしい」と言うと、「不名誉」の意味「面目が立たず恥ずかしい」の正反対になりますので、「不名誉」は「光栄」の対義語になります。
②屈辱
「光栄」の対義語の二つ目は、「屈辱」です。「屈辱」という言葉は、誰かに恥ずかしい思いをさせられた時や恥をかかされた時に使う言葉で、「屈服させられて恥ずかしい思いをする」という意味になります。「光栄」の意味は「名誉に思うこと」「栄あること」で、とても良い意味ですので、「屈辱」とは正反対です。
「名誉」は人前で誇らしく思う時に使われ、「屈辱」は人前で恥をかかされた時に使われる言葉です。「屈辱」はイメージ的にとても悪く、「光栄」とは正反対ですので「光栄」の対義語であると言うことができます。
「光栄」の使い方
ここまで「光栄」という言葉の意味や類義語や対義語をご紹介してきましたが、実際にどのような場面で「光栄」という言葉を使えば良いのかという「光栄」の使い方もとても大切です。意味や類義語や対義語がわかっても、使い方がわかっていなければ片手落ちというものです。
自分が相手に対してどのような心理の時に「光栄」という言葉を使えば良いのか、「光栄」という言葉の使い方についてご紹介しましょう。
相手に丁寧に伝える時に使用
それでは「光栄」の使い方についてご紹介します。「光栄」という言葉の類義語のところで「嬉しい」という言葉をご紹介しましたが、本当の所「嬉しい」は「光栄」とは少し違います。「光栄」という言葉を使う時には、自分で自分が誇らしいという気持ちが必要です。そういう気持ちになった時に、「光栄」という言葉を使うのが正しい「光栄」の使い方です。
相手に対して「嬉しいです」や「幸いです」と言いたい時に、「光栄」という言葉を代わりに使うという使い方は正しいとは言えません。ただ単に「嬉しい」では足りない「誇らしい気持ち」を表す時に「光栄」という言葉を使うのが、「光栄」の正しい使い方と言えます。
何に対しても「光栄」という言葉を使うのは正しい使い方とは言えませんので、「光栄」の使い時を見計らって正しい使い方で「光栄」を使いましょう。
「光栄」を使った例文
それでは次に、「光栄」を使った例文をご紹介します。「光栄」の意味や類義語や対義語、使い方などをご紹介してきた中でも少しだけ「お会いできて光栄です」という例文をご紹介しましたが、それはもっとも基本的と言える例文です。「光栄」の言葉をもっとも一般的に使う例文が「お会いできて光栄です」だからです。
「光栄」は他にも色々な使い方ができるため、色々な例文が挙げられます。「光栄」を使った例文をいくつかご紹介しましょう。
①とても光栄です
「光栄」を使った例文の一つ目は、「とても光栄です」です。こちらは先に類義語の所でご紹介した「お会いできて光栄です」と同じ使い方の例文です。「光栄」には「とても」という副詞をつけることができますので、「お会いできて光栄です」という例文も「お会いできてとても光栄です」と変えることができます。
「とても」という副詞をつけることによって、「お会いできて光栄です」という例文はさらに「光栄」であることを強調できます。
「とても光栄です」を使った例文として「このような大きなプロジェクトの責任者に命名して頂き、とても光栄です」といった言い方もできますので、このような場面にはこういった例文を使いましょう。
②至極光栄
「光栄」を使った例文の二つ目は、「至極(しごく)光栄」です。この「至極光栄」は「とても光栄です」よりさらに「光栄」という言葉が強調されますので、何かの賞を取った時などに「このような身に余る賞をいただきまして至極光栄でございます」といった使い方ができます。
ビジネスシーンなら、「わたくしごときにこのような大役をお任せくださいまして、至極光栄でございます」といった例文が挙げられます。
「至極光栄」とは言葉の順番が逆になる「光栄至極」という言い回しもありますが、こちらも「至極光栄」と同じ意味になりますので、どちらを使っても構いません。一般的には「至極光栄」が多く使われます。
③光栄に存じます
「光栄」を使った例文の三つ目は、「光栄に存じます」です。「光栄です」や「光栄でございます」よりも丁寧な言い回しですので、ビジネスシーンなどで使うことができます。「光栄に存じます」の使い方の例文として、「そのように仰って頂けて、誠に光栄に存じます」という例文が挙げられます。
「そのように言って頂けて、誠に光栄です」という言い方に比べるとはるかに丁寧な言い回しで、いかに「光栄」に思っているのかを相手に伝えることができます。
先にご紹介した「至極光栄」で「至極光栄でございます」という言い回しを使った例文を挙げましたが、こちらも「存じます」という言葉をつけて「至極光栄に存じます」という言い方をするとさらに丁寧な言い方になります。
「光栄」の英語表現
次に、「光栄」という言葉の英語表現についてもご紹介します。英会話をかじったことがある人なら、「お会いできて光栄です」という英語表現を習ったこともあるでしょう。ビジネスシーンなどの挨拶の言葉の中には、「光栄」を表す英語表現がいくつもあります。英語において「光栄」という言葉を使う機会は意外に多くあります。
欧米ではビジネスシーンやその他で、「光栄です」と相手に対して「会えて嬉しい」という気持ちを伝えることはごく一般的だからです。そんな「光栄」の英語表現についてご紹介しましょう。
光栄・名誉の意味の英語を使用
「光栄」の英語表現には、「光栄」や「名誉」を意味する英語を使います。英語での挨拶などで良く使われるのが「honor」と「flatter」です。「honor」と「flatter」はそれぞれ「光栄」や「名誉」を表しますので、英語で「光栄」だという気持ちを伝える時に使われます。
「It’s an honor to meet you」という英語表現は「お会いできて光栄です」という意味で、「I am flattered to meet you」という英語表現も同じ意味です。
英語の挨拶では「I am glad to see you」などもありますが、こちらは「光栄」というより単に「嬉しい」という表現になりますので少し意味が違います。「I'm happy to meet you」という英語も「光栄」とは少し違うので注意しましょう。
「光栄」を使う相手
「光栄」という言葉の意味や使い方などをご紹介してきましたが、実際にビジネスシーンや日常生活の中で「光栄」という言葉を使うことはあまりありません。ビジネスシーンや日常生活の中で、「光栄」という言葉を使って良いのかどうかの判断に苦しむ人も多いからです。
「光栄」という言葉の使い方はわかっても、どのような相手に対して使えば良いのかがわからないため使えないという人もいます。「光栄」という言葉をどのような相手に使えば良いのかについてもご紹介しておきましょう。
①目上の相手
「光栄」という言葉を使う相手の一つ目は、目上の人です。目上の人からほめられたり、大切なことを任されたりした場合には「光栄」という言葉を使ってお礼を述べたりすることができます。ですが、目上の人というのはどのぐらい年上の人なのかがわからないという人もいるでしょう。
自分より一歳でも年上なら目上の人だと言えますので、一歳上の先輩なども目上の人だと言うことができます。ですが、その先輩に対して尊敬の念を抱いていない場合は、無理をして使う必要はありません。
まず「相手に褒められて誇らしい」と思う気持ちが大切ですので、目上の人であってもそういう気持ちに慣れない場合は「光栄」という言葉を使う必要はありません。
②立場が上の相手
「光栄」という言葉を使う相手の二つ目は、自分より立場が上の相手です。同い年でも相手が上司である場合は、「自分より立場が上」ということになりますので、こういった相手から褒められてお礼を言う場合には「光栄」という言葉を使うことができます。ですがこの場合もやはり、誇らしいと思えるか思えないかが問題になってきます。
例え自分より立場が上の相手であっても、必ずしも尊敬できる相手だとは限りません。そういう相手に褒められてもあまり嬉しくないし誇らしい気持ちに等ならないという場合もあるでしょう。
そういう場合には「光栄」という言葉を使わなくても構いませんが、上司と部下という立場なら「光栄」と言った方が人間関係が円滑になりますので「光栄」と言うようにしましょう。
③社会的地位の高い相手
「光栄」という言葉を使う相手の三つ目は、社会的地位の高い相手です。有名な政治家などに偶然会った場合などには「お会いできて光栄です」といった挨拶をするという人も多いです。政治家でなくても、高名な大学教授や科学者などと会ったなど場合に「お会いできて光栄です」と挨拶をする場合もあります。
相手がいくら社会的地位の高い相手であっても、その相手のことを特に尊敬などしていなくて興味がないという場合には無理をして「光栄」という言葉を使う必要もありません。
好きでもない相手に無理やり「光栄です」などと言っても、本心は違うというのは顔でわかってしまいます。本当に「会えて光栄だ」と思える相手に対してのみ「光栄」という言葉を使えば、顔の表情などからも相手に必ず心は伝わります。
④有名人
「光栄」という言葉を使う相手の四つ目は、有名人です。芸能人やアスリートなど有名人と言われる人はたくさんいますし、偶然に会う機会などもあるでしょう。そういった時にも「会えて光栄です」というように「光栄」という言葉を使うことができます。こういう相手には、社会的地位の高い相手に対してよりすんなりと「光栄」と言えるでしょう。
有名人と言われる人々は一般的な人と違って知名度が高いため、「自分より立場が上の相手」だと言うことができます。そのため「光栄」という言葉が使える相手だということになります。
「光栄」を使う上での注意点
「光栄」という言葉を使う相手についていくつかご紹介しましたが、「光栄」という言葉を使うには注意点があります。使う相手を選ぶことももちろん大切な注意点ですが、「光栄」という言葉を使わない方がいいという場合もありますので、「光栄」という言葉を使う上でそちらも大切な注意点になります。
「光栄」という言葉を使う場合にはいったいどのようなことに注意すれば良いのか、「光栄」を使う上での注意点をいくつかご紹介しましょう。
初対面の人への挨拶
「光栄」を使う上での注意点の一つ目は、初対面の人への挨拶には使わないということです。誰かからの紹介という訳でもなく、偶然知り合った全く知らない人に対して「お会いできて光栄です」という言い方はしません。会ったばかりの相手がどのような人物なのかもわからないのに、「光栄」という言葉を使ってはいけません。
会ったばかりなのにいきなり「光栄」と言われると相手も困惑してしまいますので、初対面の相手に「光栄」という言葉は使わないようにしましょう。
ただ、取引先の相手などで今までメールや電話でやりとりしたことがあって、会うのは初めてだという場合には「お会いできて光栄です」という挨拶をしても一向に構いませんので、その点も押さえておきましょう。
立場が対等な相手には使わない
「光栄」を使う上での注意点の二つ目は、立場が対等な相手には使わないということです。会社の同期や多少先輩であっても同じ仕事をしているといった場合には、自分と立場が対等であると言えます。そういった相手に対しては「光栄です」といった言い方はしない方が良いでしょう。
いきなり「お褒め頂きまして光栄に存じます」などと言うと、何かあったのかと相手は戸惑ってしまいます。「光栄」という言葉は使う相手や使う場面を選ぶ言葉ですので、相手と自分との関係性を把握する必要があります。
仲の良い相手には使わない
「光栄」を使う上での注意点の三つ目は、仲の良い相手には使わないということです。仲の良い相手に対して「光栄です」などと言うと、「なんだか他人行儀な言い方」と思われてしまいます。「光栄」という言葉を使いたいからといって、誰彼かまわず使うのはやめましょう。
自分が尊敬していれば相手が年下でも使って良い
「光栄」を使う上での注意点の四つ目は、自分が尊敬していれば相手が年下でも使って良いということです。尊敬する数学者などが自分より年下で、その相手に自分の研究を褒められたなどという時には「光栄」という言葉を使っても構いません。「光栄」は自分の相手に対する感情も大切なポイントなので、覚えておきましょう。
「光栄」の意味は名誉に思うこと
「光栄」という言葉の意味や類義語や対義語、使い方の例文などをご紹介してきましたが如何だったでしょうか。意外に簡単に使える「光栄」という言葉ですが、使い方には注意が必要です。「栄光」の意味は「名誉に思うこと」だということをしっかり覚えて、使える場面で上手に使いましょう。