嘆願書とは
まず「嘆願書」の「嘆願」の意味について説明します。嘆願するとは、何らかの事柄に対し事情を説明して、その事柄の実現を切に願うこと、という意味です。そして「嘆願書」とはそれらの事柄を文面に記した書面のことを指します。但し、「嘆願書」には法的な裏付けはなく、万が一裁判などに発展した場合参考資料として扱われます。
嘆願書が使われるケースとして考えられるのは、交通事故などを置き指定待った場合の刑事罰の軽減、納税に関する税務署への歎願、保育園に入園する為の嘆願、などいろいろなケースが考えられます。
事情説明してある事柄の実現を願う書類
先述の通り「嘆願書」とは何らかの事柄に対し、その事柄が実現する為に作成する書類のことです。実際に「嘆願書」が用いられるケースは、会社に対して何か要求するケースがかなりの割合を占めるといっていいでしょう。会社に対して「嘆願書」を提出する場合の事案はいくつか考えられます。
会社に対して「嘆願書」を提出するケースとして考えられるのが、ハラスメント関係の改善要求・不当解雇・突然の異動や転勤などに対する事案です。これらは口頭で嘆願してもあまり効果がなく、証拠も残らない為、敢えて「嘆願書」を作成し会社に正式な書類として提出することが大切だと言えます。
嘆願書の書き方とは
次に「嘆願書」の正式な書き方について詳しく説明していきます。「嘆願書」は正式な書類として残り、事案が大きく発展した場合の証拠にもなる可能性があります。書き方が正しくない「嘆願書」は正式な書類として扱われないケースもありますので、書き方には細心の注意を払いましょう。
書き方①タイトルは簡潔に記す
「嘆願書」を作成する際に初めにタイトルを書きます。嘆願書のタイトルを書く上のでのポイントは、その嘆願書が何に対する請願なのか、タイトルを見ただけで分かるよう書き方を心掛けることです。人間の心理として、何か書類に目を通す際、タイトルが不必要に長く、要件が分かりにくいと、なかなか内容に目が向かないということがあります。
従って、嘆願書のタイトルはダラダラ長いのもではなく、一目で何を嘆願しているのか分かってもらえるように、出来るだけ簡潔に書きましょう。シンプルな例として「~の~に関する嘆願書」のようなものが適切であると言えるでしょう。
書き方②日付を忘れずに
「嘆願書」を作成する上で忘れてはならないことの一つとして必ず日付を書くことです。この日付は嘆願書を提出する日の日付のことを指します。また日付も必ず、西暦や元号からきちんと書くようにしましょう。先述の通り嘆願書は正式な書類として扱われ、証拠として残る書類です。
従って、嘆願した事案が裁判などに発展した場合、重要な参考資料として取り扱われます。そのようなケースになった場合、嘆願書の日付や年が不明確だと、書類不備と見做されてしまう可能性があるので、日付は必ず間違いの内容に確認した上で提出しましょう。
書き方③誰に書いたのかはっきりする
嘆願書には決まった書式はありませんが、誰に書いたかということを明白に記す必要があります。例えば、子供が学校で何らかのトラブルを起こして停学・退学の処分になりそうな場合、その本人、場合によっては両親が学校の責任者に対し嘆願書を書き、提出する必要があります。
また、地域のコミュニティーで何らかのトラブルが発生した場合は、その地域の代表、若しくは署名などを集めて嘆願書を作成し、その地域の自治体に対し提出するのが一般的だと考えられます。会社でのハラスメント改善・不当解雇などに関しては、主に会社の責任者にあたる社長や役員に対して嘆願書を書くのが適切だと言えます。
このように、嘆願書はその起きた事案を解決できる人に対して書かないと意味がありません。
書き方④歎願内容と理由
次に嘆願の内容と理由の書き方について説明します。これは嘆願書の「核」となる最も重要な部分になる為、分かりやすく書くことが非常に重要です。但し、長すぎるものも好ましいとは言えないので、ポイントを絞り「できるだけ分かりやすく、且つ長すぎない文章」を書くことを心掛けましょう。
嘆願書の理由の部分の書き方については、精神誠意・熱意を持って訴えるように書きましょう。嘆願書を提出するのは、その事案を解決、あるいは少しでお改善することが理由です。従って、その熱意が提出先に伝わらないと事案が解決する可能性は低くなってしまうと考えられます。その為にも、嘆願書の理由は精神誠意・熱意を持って訴えることが重要です。
また、誰が読んでも内容が分かるように分かり易く書くことも大切です。更に、何かその事案の嘆願について効果がありそうな補足の資料のようなものがあれば、その様なものも添付して一緒に提出するのも良いでしょう。
書き方⑤寛大な処分を望む希望も入れる
嘆願書の内容に寛大な処分を望む希望を入れる場合は、一方的に寛大な処分を求めるだけでは無理があるケースが多いので、嘆願書を提出する当人も「私は~のような最大限の努力を致しますので」または「既に~様には、誠意を持って謝罪させて頂きましたので」といった具体的な行動を記載した上で寛大な処分を望む希望を記載するようにしましょう。
書き方⑥住所氏名を入れ正式な文書
最後に嘆願書を正式な文書に仕上げる為に、嘆願書を作成した当人の氏名と住所を必ず記載することを忘れてはいけません。これも先述した通り、嘆願書とは法的な効力は無いものの、正式な文書として証拠として残る為、後に裁判になったり、同様の事案が発生した場合重要な参考書類となるということが理由です。
嘆願書を提出するメリットとは
嘆願書は、もし状況を見て提出するメリットがあると思われるケースでは、提出した方が得になるケースが多いと言えます。ただその状況判断は、決して自分一人の判断で決めるのではなく、周りの意見を聞いたり、場合によっては法律の専門家などの判断を仰ぐのも一つの手段として考えられます。
嘆願書を提出することにより、会社が無視しずらくなること、文書記録を証拠として残せること、また、論点の整理ができるという3つのメリットがあります。それぞれのメリットについて説明していきます。
無視しずらくなる
まず初めに、嘆願書を提出することによって、会社はその事案を無視しずらくなる、というメリットが挙げられます。実際に会社に嘆願書を提出する上でこのメリットが最も大きい言っても過言ではありません。その理由として現代の日本の社会の在り方が、一昔前のものと比べかなり変わってきているという現実が考えられます。
ここ数年の急速なグローバリゼーション、多様性を認めることによる価値観の変化、終身雇用制度の衰退、あるいはインターネットが普及したことによって膨大な数の情報の収集能力など、数えればきりがありませんが、これらの影響により日本の社会は2000年前後を境に価値観の定義がかなり変化しているのではないでしょうか。
このような所謂「情報社会」で、仮に小さな会社の些細な不祥事でも、その事案が何らかのきっかけで表に出てしまった場合、収束することが非常に困難になっています。特にハラスメントの問題などは重大で、社内で署名活動などをして賛同者を募り、嘆願書を提出されると会社はそれを無視することはできないような風潮になっています。
言い換えると、昔の様な「精神論で困難を乗り切る」のような価値を持つ人々が減ってきているとも言えます。
文書記録を残せる
嘆願書を作成し、提出することによって、その嘆願書が文書記録として残るというメリットもあります。嘆願書が会社に提出されるということは、社員が現状何らかの問題を抱えているということです。嘆願書を文書記録として残すことにより、より問題を明確化することができます。
また、今後同じような事案が発生した場合、会社にとって参考文書にもなり、今後、仮に同じ問題が起きた場合の対処がスムーズになる可能性もあります。従って嘆願書を文書記録で残すということは、社員と経営陣の双方にメリットがあるとも言えます。
論点の整理ができる
実際に社員が抱えている問題を嘆願書という形で、文書として書くことにより、その問題の論点の整理ができる、というのも大きなメリットの一つです。ほとんどのケースに於いて、嘆願書を会社に提出する目的は会社に嫌がらせをすることではなく、会社の環境をより良いものにしたいと願い、社員が訴えているものだと考えられます。
従って、論点を整理するということは、今現状会社が抱えている問題を整理する事にも繋がるとも言えます。
嘆願書の書き方・会社に使える効果的な例文とは
次に一般的な嘆願書の書き方や、会社に対して嘆願書を提出する際に効果的文章の例文を紹介していきます。嘆願書を書く上で最も重要なことは「いつ?、誰に?、何を?、なぜ?」ということを明確に記すことです。更に加えて、この事案を解決するにはどのようの方法が考えられるのかというアイデアをいくつか示すのも良いでしょう。
①パワハラに対する嘆願書
他の社員などからのパワハラに対しての嘆願書を書くにあたり重要なことは、どのような被害状況があったのかを具体的に記すこと、また実際にハラスメントが起きた日時を記載することです。ハラスメントが複数に渡り行われていた場合、その都度実際に起きた日付を記載しましょう。
また、もしその現場に居合わせた社員がいたり、同様の被害を受けている社員がいれば、嘆願書に署名してもらい、責任者に提出すると更に効果的になると言えるでしょう。
②不当解雇に対する嘆願書
次に不当解雇に対する嘆願書についてですが、基本的に会社側が社員を解雇するには、「労働基準法第20条により、雇い主は雇用者を解雇する場合30日前に事前に予告しなければならない」という法律がありますので、これに当てはまるものは全て不当解雇に当たるので、嘆願書を書く以前に訴訟を起こすことができます。
また、単純に会社側が「気に入らないから」、「妊娠したから」または「仕事に向いていないから」という理由で解雇することも法律で禁じられています。しかしながら、当然訴訟を起こすには費用と時間が掛かるので、一般的にはできれば嘆願書で穏便に済ませたいと考える人が多いと言えるでしょう。
不当解雇に対する嘆願書の内容はやはり、先述したように、労働基準法に反するので撤回してほしいといった内容のものが一般的だと考えられます。
③異動に対する嘆願書
異動に関する嘆願書についてですが、これに関しては会社の人事の「適材適所」という判断のもとで異動、または転勤が決められるので、簡単に嘆願書で解決できる問題ではないと考えられます。
勿論、明らかな嫌がらせなどで異動させられたりするケースも稀にあると考えられますが、そうでない場合との区別をつけるのが非常に困難だと言えるでしょう。
但し、先述した通り、嘆願書を出すべきか、そうでないか迷っている場合は、提出した方が得になるケースが多いと考えられるので、明らかに理不尽な理由やで受け入れることができないような異動や転勤を言い渡された場合嘆願書を提出するのも一つの手段として考えられます。
嘆願書の書き方・交通事故に使える効果的な例文とは
次に嘆願書の書き方と、交通事故に使える効果的な例文について説明します。交通事故は自分に非がある場合、刑事と民事の両方の事件として扱われます。その為、この様なケースでは、少しでも情状酌量してもらえるように、法律の専門家と話し合ってきちんとした形で嘆願書を作成した方が良いと言えるでしょう。
交通事故などによる刑事事件の量刑の情状酌量を求める文書のことを、嘆願書の他に上申書とも呼びます。上申書とは警察などの公的機関に提出する嘆願書のことです。事故の度合いによっては裁判所や法務省に提出するケースもあります。
①示談内容・進行状況
まず交通事故を自分のミスで犯してしまった場合、相手との示談が成立すれば、刑事罰は大幅に軽減される可能性があります。基本的に示談は当事者同士でするものですが、保険会社に間に入ってもらった方が無難と言えるでしょう。場合によっては、保険で示談金を賄えるケースもあります。
但し、仮に保険会社が被害者との示談交渉をまとめて、示談が成立したとしても、自分が起こした交通事故や違反の事実を受け入れるて、反省の意味を込めて嘆願書、または反省文を相手に書くことは常識とされています。
②加害者の誠意ある行動や人格
反省文を書く際には、自分が交通事故を起こしてしまい相手に甚大な迷惑を掛けてしまったことを認識して、反省している姿勢を示すような内容が必要です。大切なのは、今回の交通事故に関して被害者の為に尽力を尽くすこと、また今後二度とこのような過ちを犯さないことを強調することです。
③刑事罰の免除・軽減を求める文言
刑事罰の免除・軽減を求める文言も基本手には被害者へ対する内容と同じ様なもので良いのですが、こちらに関しては、公的機関に提出する書類となる為、必ず法律の専門家のアドバイスの上作成しましょう。また、起こした交通違反や事故により、免許停止や免許取り消しなどになってしまうケースも当然考えられます。
そのようなケースでは、反省やもう二度と同じ過ちを犯さないことを記した上で、仕事をする上で、免許がないと仕事ができないといった理由を記すと、多少は効果的な嘆願書になる可能性はありますが、昨今の交通違反へ対する処分は非常に厳しいものになっているので、過度の期待はしない方が無難と言えます。
嘆願書・反省文の例文
ここで嘆願書や反省文の例文をいくつか紹介します。交通事故の際の嘆願書や反省文には決まった形式はありませんが、できるだけ自分の誠実さと、反省の意が伝わる様に書くよう心がけましょう。書類の作成方法として、まず、日付と自分の氏名と住所を記した上で捺印をして、基本的にA4の用紙に内容を記入して書類を作成します。
書類の書き方として、できればパソコンを使わずに手書きで書いた方が、より反省の意を示すことができて、効果的と言えるでしょう。
交通事故の被害者への文書の例文として「この度は私の起こした交通事故の件で~様に甚大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。今後はこうした事故を再び起こすことのないよう、普段から安全運転を心掛け、二度とこのような過ちを犯さないよう誓約致します。」といった例文が考えられます。
次に、警察や裁判所に刑事処分を軽減してもらう為の嘆願書の例文です。これらは決して自分の判断で行わず、必ず弁護士など法律の専門家のアドバイスに従い作成しましょう。また、この書類は自分で書くのではなく、特に示談が成立している場合は必ず被害者に書いてもらわなければ意味がないので注意しましょう。
行政機関への例文としては「令和〇年〇月〇日、私と加害者~様との間で、令和〇年〇月〇日に私がおこした交通事故の件について示談が成立し、示談金〇円を受領しました。 加害者は誠実に対応し反省もしている為、何卒、寛大な処分をお願い申し上げます。」のような例文が考えられます。
嘆願書とは実現を願う書類として使われる
ここまで嘆願書についていろいろ説明しましたが、如何でしたでしょうか?勿論、嘆願書を作成するような状況にならないのがベストですが、場合によってはどうしても嘆願書を作成する必要があるケースもあります。嘆願書を書く上で最も重要なのはやはり「誠意」と「熱意」ではないでしょうか。
何か問題が起きた時、その問題を解決する為に、少しでも読み手の心に響くような、誠意と熱意のこもった文章を作成することが、願いを現実化させる第一歩になるでしょう。