アマリリスの基本情報
赤、ピンク、白の華やかで美しいアマリリスの花。ユリやハイビスカスのようなダイナミックな華やかさを持つ特徴から切り花や花束、又はフラワーアレンジメントでも好んで使用される花です。3月末から6月に春咲きをする品種と9月末から10月に秋咲きする品種があり、1年の中で二度楽しむことができます。そんなアマリリスの特徴について紹介します。
アマリリスの科名・属名
アマリリスの科名はヒガンバナ科で、この他にヒガンバナやスイセン等が同じヒガンバナ科として存在しています。属名はヒッペアストルム属で学名は「Hippeastrum」とされています。この「ヒッペアストルム」はギリシア語で騎士という意味を持つ「hippeos(ヒッペオス)」と星という意味がある「astron(アストロン)」からきています。
アマリリスの和名・英名
花等の植物や動物は日本語で表記される名前、「和名」と英語で表記される「英名」とがあり、その為カタカナで表記されている花等の名前もそのまま海外で英語のように伝えても伝わらないことが稀にあります。アマリリスの和名は「アマリリス」で、英名は「Amaryllis」です。
アマリリスの原産地
アマリリスの原産地はブラジルやメキシコ等の温かい中南米地方です。中南米が原産の花はアマリリスの他に、アジサイのように小さな花が集まったような姿が特徴的な「ランタナ」等があります。アマリリスは地下に沈む球根部分が水や養分を蓄えられるように肥大化する特徴がある球根植物で、その背丈は40〜80cmぐらいです。
アマリリスの花名由来
アマリリスは昔は「アマリリス属」に属していました。そこからそのまま「アマリリス」の名前が残り、今でもその名前が使われています。アマリリスの由来はローマの詩人「Vergilius(ヴェルギリウス)」の牧歌の中に登場する「アマリリス」という少女から由来していると言われています。
アマリリスで「歌」を連想する人は多い
アマリリスという名前を聞いて、歌を思い浮かべる方は多いかもしれません。と言われて歌詞だけ見てもピンとこないかもしれませんが、オルゴールやチャイム等でよく使用されているメロディーの為、聴けば分かる曲です。この曲が広まった経緯は、元々フランス民謡だったこの曲に日本人が歌詞を付け、戦後長い間音楽の教科書にも掲載されていた為です。
アマリリスの種類【特徴】
アマリリスの基本情報が分かった所で、ここからはアマリリスの具体的な特徴について紹介します。アマリリスの色は主に赤、白、ピンクです。近年では品種改良の技術が進み、赤、白、ピンク以外にも黄色の物や様々な色が混じった複色の物も存在します。その他のアマリリスの特徴を次の項から早速紹介しましょう。
アマリリスは大まかには2種
アマリリスは先述したように元々は「アマリリス属」属する花でしたが、分化され「ヒッペアストルム属」となりました。今でも「アマリリス属」に属するアマリリスは残っており、それらのアマリリスは「ホンアマリリス」と呼ばれています。その為、実際にアマリリスは「ベラドンナリリー」と「アマリリス・パラディシコラ」の2種類のみです。
ベラドンナリリー
ベラドンナリリーは和名を「ホンアマリリス」と言い、こちらが先述した「アマリリス属」に属する種類です。こちらは秋咲きの種類で、1〜2本伸ばした花茎に芳香のある花を1房に10輪以上付けて咲きます。花が咲いた後は葉が出て、冬の間も展開しています。その為、秋から春にかけては水やりが必要です。
アマリリス・パラディシコラ
アマリリス・パラディシコラは希少種とされており、原産地である南アフリカのケープ地方に自生している以外にはほとんど流通をしていません。排水性が特に良い土を好む品種の為、川の砂に2割程腐葉土を混ぜた土で栽培することがおすすめです。しかし、あまり流通していない種類の花の為、詳しい生態についてはまだまだ不明と言えます。
二種から誕生したアマリリス
これら2種類から誕生したアマリリスの代表的な物は、「シロスジアマリリス」、「ヒッペアストルム・パピリオ」、「アップル・ブロッサム」、「アップル・ブロッサム・キャンディーケーン」、「ヒッペアスケリア」です。それではそれぞれの具体的な特徴についても見ていきましょう。
シロスジアマリリス
シロスジアマリリスは、他のアマリリスより開花時期が遅いのが特徴です。10月〜11月頃に花を咲かせます。花の色はピンク色で、白い筋が入るのが特徴です。又、葉の中央にも白い斑や筋が見られます。他のアマリリスよりも見た目がシンプルな為、春咲きの物より豪華さは劣りますが、花の開花が減る秋に美しいピンクの花を付ける貴重な種類です。
ヒッペアストルム・パピリオ
次にヒッペアストルム・パピリオは、アマリリスの原種となる種類の花です。春に咲く早咲きの花で、花の色はオフホワイトに薄いグリーン、そして赤い筋状の紋があるのが特徴と言えます。蝶のアマリリスという意味を持つ「Amaryllis papillon」やランのようなアマリリスという意味を持つ「Amaryllis orchidée」と呼ばれることもあります。
アップル・ブロッサム
アップル・ブロッサムは一重咲きの花で、柔らかい印象を持つ薄いピンク色の気品ある花弁が特徴です。
花弁の大きさが他のアマリリスと比べても25cm程と大きめの種類の為、薄いピンクの花弁でも見劣りのしません。又、背丈も大きく70cm程度が一般的です。
アップル・ブロッサム・キャンディーケーン
アップル・ブロッサム・キャンディーケーンは、アマリリスと言えばこの種類と言われるほど一般的な種類です。アップル・ブロッサムと同じく20〜25cmの大きな花弁が特徴的で、大きなオフホワイトの花弁に紅のような赤が入ったような模様をしています。大きく美しい見た目から銘花と呼ばれる古い品種でもあります。
ヒッペアスケリア
ヒッペアスケリアは夏に咲く真っ赤な星形の花弁が特徴的な種類です。ヒッペアストルムと、スプレケリアの交配種であり、名前もこの2種から取って付けられました。ヒッペアストラムのふっくらとした花弁とスプレケリアの鮮やかな赤が合わさった両者の良いとこ取りをしたような姿です。20〜30cmの花茎に10cm程度の赤い花を1、2輪咲かせます。
アマリリスの花言葉は日本と西洋で違う
花の名前に和名と英名が存在するように、又日本語と外国語の違いがあるように、アマリリスの花言葉は日本と西洋とで異なります。その為、プレゼントする際には日本人に渡すのか、西洋の方に渡すのかで注意をしなければいけません。では、日本と西洋でどんな花言葉があるのか見ていきましょう。
日本のアマリリスの花言葉
日本でのアマリリスの花言葉は「おしゃべり」が一番有名です。これはアマリリスが咲く姿から付けられました。
アマリリスの花は群生しているとお互いに横を向き合っている為、その姿が話をしているように見えるからです。開く花弁が口のように見え、そこから言葉が発せられているように見えます。
西洋ではアマリリスは女性を意味しており、女性はおしゃべりだからという意味で日本ではこの花言葉になったとされている説もありますが、アマリリスが示す女性とは内気な女性を意味している為、この説は後づけされた説ではないかとされています。従って、うるさいという意味のおしゃべりではないと言えるでしょう。
西洋のアマリリスの花言葉
アマリリスの西洋での花言葉は、「誇り(pride)」、「輝くばかりの美しさ(splendid beauty)」、「虚栄心」です。
西洋では「気位」というニュアンスのある「pride」ですが、日本では「誇り」という意味で訳します。こうした花言葉達は古代ローマ時代の後期に存在したラテン語文学者の「ヴェルギリウス」の処女作「詩選」の中のエピソードから来ています。
言葉ではなく、自らを傷付けることで愛する人に振り向いてもらおうとした少女のプライドと、傷付けたことから溢れ出た赤い血から咲いたアマリリスの花が輝くばかりの美しさだったこと、そしてその花の美しさで相手の気を惹こうとした行動は正に虚栄心の象徴だと言えることからこの花言葉になったと言われています。
アマリリスには多くの花言葉がある
バラやカーネーション等には色や種類によって花言葉が変化します。アマリリスもそれらの花と同様に、赤、白、ピンク等の色や種類によって異なる花言葉を持っています。しかしそれらはバラ等のようにはっきりと分けて付けられたものではなく、アマリリスが本来持っている花言葉を色のイメージによって当てはめた花言葉です。
ベラドンナリリー(ホンアマリリス)の花言葉
ですが、ホンアマリリスであるベラドンナリリーには明確な花言葉があります。ベラドンナリリーは他のアマリリスとは違い、花が終わった後に葉を出すという特徴がある為、花が咲く時は花と茎だけの状態です。そうした所から「ありのままの私を見て」、「私の裸を見て」といったストレートな押しの強い花言葉になりました。
ピンクのアマリリスの花言葉
ピンクのアマリリスには「おしゃべり」や「輝くばかりの美しさ」が合うとされています。「おしゃべり」とされる理由はアマリリスの花弁のピンクの中には発色が良く主張の強いピンクの物があるからです。「輝くばかりの美しさ」とされる理由は、先述したヴェルギリウスのエピソードから恋が実ったことで頬をピンクに染めている様子からと言われています。
紫のアマリリスの花言葉
紫のアマリリスには「内気」や「強い虚栄心」という花言葉が合うとされています。紫は赤と青という相反する色が混ざり合ってできた色です。高貴さやクリエイティブといった雰囲気もありますが、その一方で不安定や下品といったイメージも持ち合わせています。そういったことから紫のアマリリスにはこの花言葉が当てはまるとされています。
赤いアマリリスの花言葉
赤いアマリリスは「誇り」が合うとされています。愛情や情熱をイメージさせるのが赤色です。愛情や情熱を持つことで、誇りや名誉に辿り着くことから「誇り」という花言葉が合っているのではないかとされています。又、赤いアマリリスには「レッドライオン」や「ダブルドラゴン」という種類があり、その名前にある強さからもこの花言葉がぴったりです。
白色のアマリリスの花言葉
白いアマリリスには「内気」と「誇り」が合うとされています。純潔や真実を象徴する白色はおとなしいという意味を持つ「内気」や他人の意図が混ざらないまっすぐな意思を示す「誇り」が似合います。又、白いアマリリスには「天使みたい」や「アイスクイーン」と呼ばれる種類もある為、その白の美しさから「輝くばかりの美しさ」の花言葉も合います。
黄色のアマリリスの花言葉
黄色のアマリリスは「輝くばかりの美しさ」が合うとされています。黄色のアマリリスはあまり存在していない貴重な種類です。色は緑に近いレモンライムのような物や白に似たヘリオスのような種類がほとんどである為、綺麗に黄色に発色した際の姿は正に「輝くばかりの美しさ」と言えるでしょう。又、黄色の持つ活発な印象から「おしゃべり」も合います。
アマリリスは誕生日プレゼントにおすすめ
1年に一度、誰でも訪れるのが誕生日です。その誕生日のプレゼントとしてアマリリスはぴったりのプレゼントになります。ではどうしてアマリリスは誕生日プレゼントにぴったりと言えるのでしょうか。それは閏年を含む366日、1日1日にちなんで当てはめられた誕生花が大きく影響しています。
アマリリスは何月の誕生花か
アマリリスが誕生花とされている月日は、1月26日、2月12日、2月24日、5月28日、5月30日、7月16日の6日です。1年の前半にとてもたくさん設定されていることから、どこかの日が誕生日だという方も必然的に多くなります。そうしたことから誕生日に送るプレゼントとして有効であるとされています。
アマリリスはこんな人への贈り物へおすすめ
誕生日が誕生花としてアマリリスが当てはまっている人はもちろん、その他にヴェルギリウスの作品からアマリリスの恋の模様になぞらえて、好きな人に告白をする時に贈るものおすすめです。又、「輝くばかりの美しさ」という花言葉がある為、お付き合いをしている女性や奥さんに赤やピンク、白の美しいアマリリスをプレゼントすると喜ばれます。
アマリリスを送る時のおススメの贈り方
アマリリスを贈る時、鉢植えになっている物の場合は店頭にて綺麗なラッピングを施してもらうようにしましょう。又、その際にアマリリスの育て方についての説明を入れておくと親切です。切り花のアマリリスの場合は7日程度しか花が持たない為、渡す日を考えて購入するタイミングに気を付けましょう。
アマリリスとセットにモノを贈るなら
アマリリスに限らず花を贈る際には何かもう一つ別にプレゼントを添えるのも構いません。基本的には気持ちが込もっていればどんなものでも相手に喜んでもらえるでしょう。アマリリスの花が咲く季節が主に春から夏にかけてですので、季節やアマリリスの花に合った香水やハンカチ等をプレゼントするのもおすすめです。
アマリリスのおすすめの飾り方
もしアマリリスをプレゼント等でもらった際、家でどのように飾れば美しく見えるのでしょうか。生け花やフラワーアレンジメントの知識がなくても家で綺麗に飾ることができるのか心配です。ですが、そんな心配はいりません。花を切るはさみと生けておけるような入れ物があれば誰でも簡単にアマリリスを綺麗に飾ることができます。
アマリリスはバランスが難しい
アマリリスは大きな花である為、一緒に飾る花はアマリリスよりも小ぶりな花を選ぶのがポイントです。アマリリスは背丈が40cm程度ある種類もある為、そのまま生けてしまうと下の方が寂しくなります。ですから、少し長い茎の部分を切るかもしくは空いた下のスペースを埋めるように背丈の低い花等を合わせるとバランスがよく見えます。
アマリリスの注意点
美しいアマリリスの花ですが、一点厳重に注意をしなければいけない点があります。もしこの注意を知らないままでいると、大事な子どもやペット達が危険にさらされてしまうことになるかもしれません。アマリリスを家に持ち込む際には、次に紹介する注意事項について必ず覚えておきましょう。
アマリリスには毒がある
「美しい花には毒がある」ということわざの通り、ヒガンバナ科である赤やピンクや白の美しいアマリリスにもヒガンバナと同じく猛毒があります。
アマリリスに含まれている毒は「リコリン」と呼ばれるものです。リコリスの球根や花、葉の部分とアマリリスのほとんどの部分に含まれています。もし食べてしまった場合、嘔吐や下痢、血圧低下、肝障害等を引き起こしてしまいます。
大人が誤って口にしてしまうことはないかもしれませんが、小さな子どもやペットは知らずに食べてしまうこともないとは限りません。実際に庭に植えていたアマリリスの球根を飼っていた犬が食べてしまい、中毒症状を起こしてしまったという事例もあります。小さな子どもやペットがいる家庭ではアマリリスを置く際により一層の注意をして下さい。
アマリリスにまつわる神話
アマリリスの名前の由来や花言葉の紹介をした際にも説明した通り、アマリリスにはある神話が存在します。
ここまでにかいつまんで紹介してきましたが、もう少し詳しくその神話について紹介しましょう。
アマリリスにはロマンチックな物語がある
ヴェルギリウスが記した神話の中に登場するアマリリスという少女が羊飼いの少年、アルテオに恋をしたことから物語は始まりました。
しかしアルテオは花にしか興味がなく、アマリリスには関心を持ちませんでした。その上、いつも花を届けてくれる別の少女に関心を抱いていました。それを知ったアマリリスは、アルテオに振り向いてほしい思いを神に祈りました。
その祈りを受けて神はアマリリスに1本の矢を与え、それで自分を傷付けるようにと告げました。神のそのお告げに従い、アマリリスはアルテオの目の前で自らに矢を突き立て自分自身を傷付けます。傷から流れ出たアマリリスの赤い血が地面に落ちると、そこに美しい花が咲きました。
その花の美しさに魅せられたアルテオはアマリリスを好きになり、アマリリスの元にひざまずき愛を告げます。そうしてそこに咲いた花に「アマリリス」の名が付けられました。
これがアマリリスにまつわるロマンチックな神話です。アマリリスという花の美しさは時に人の心をも変えてしまう程の力を持つ正に「輝くばかりの美しさ」を持った花と言えます。
花言葉ができた歴史
アマリリスだけではなく、バラにもコスモスにも花にはそれぞれ様々な花言葉が付けられています。では、どうして花言葉という花に言葉を付けるようなことが始まったのでしょうか。花言葉の起源は様々ありますが、その中の代表的な起源のひとつを紹介しましょう。加えて、それぞれの花に付けられた花言葉の由来も併せて紹介します。
花言葉が始まった起源
花言葉が始まった起源の一つはトルコであった、花に思いを託して恋人に贈る風習です。この風習がやがてヨーロッパに広まり、国によって花に独自の花言葉を付けました。
このようにヨーロッパに広まった大きな要因に、イギリスにいたイスタンブール大使の夫人「メアリー・W・モンタギュー夫人」がこの花言葉の風習を文化と捉え、1冊の本をイギリスで出版したことが上げられます。その本は後にアジアやアフリカまで届きました。
又、フランス人の女性も花言葉を広めた大きな立役者と言われています。フランスの上流階級の間では当時、好意を寄せる人に対しての思いや悪口、批判といった言葉を花や植物に置き換えて詩にするということが流行っていました。そしてこれらの詩が記されていたノートは回覧をされていました。
これがその後、シャルロット・ド・ラトゥール著の「Le Langage des Fleurs」、日本語に直訳すると「花の言葉」とされる本として出版をされたことで、フランスで大ブームを巻き起こしました。これをきっかけに人々は花言葉を使用するようになり、やがてヨーロッパ中、そして日本にも伝わってきました。
花言葉ができる由来
ヨーロッパからこのように日本に花言葉が渡ってきたのは明治初期の頃でした。花言葉が渡ってきた当初は元々使われていた花言葉をそのまま使用していました。
しかし、国が変わればその国の歴史も風習も宗教も変わります。それらだけではなく花言葉は、アマリリスのように神話や伝説を元に生まれたものもたくさんあります。そういったことから日本でも日本人の歴史や風習等に合わせて独自の花言葉を付けるようになりました。
そうした国によっての歴史や風習が異なることから、国によって同じ花でも全く異なる花言葉もできるということです。又、日本では野菜や果物も花を付けることから花言葉が付けられています。例えば、トマトには「感謝」、さつまいもには「乙女の純情」、いちごには「幸福な家庭」や「尊重と愛情」、梨には「博愛」や「愛情」という花言葉があります。
アマリリスに花言葉を添えて大事な人へプレゼントしよう
アマリリスは注意しなければいけない点もありますが、ロマンチックな神話が元になっている美しい花です。赤、白、ピンク等の美しくダイナミクスな花が特徴的なアマリリスはプレゼントにぴったりの花と言えます。アマリリスを大事な人へ贈る時は、アマリリスに込められた花言葉の中から相手に当てはまる言葉を選んで添えて贈りましょう。