「ディレクション」の意味とは?
ビジネスシーンでよく聞く言葉の1つに「ディレクション」という言葉があります。よく聞く使い方と言えば「ディレクションする」という使い方です。ご自身もよく使う言葉かもしれませんが、この言葉の本当の意味を正しく理解しているでしょうか。
「ディレクション」という言葉そのものにはあまり聞き馴染みが無い方もいらっしゃるかもしれませんが、テレビなどでもよく聞く「ディレクター」という言葉なら聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。
今回はビジネスシーンでよく使われる言葉である「ディレクション」の意味や使い方、意味をより正しく理解していただくために類語や派生語、英語での使い方を例文を交えて紹介します。「ディレクション」の意味や使い方、「ディレクション業務」について理解を深めましょう。
ではまず、日本語で使われているカタカナ語の「ディレクション」という言葉の意味を紹介しましょう。「ディレクション」には大きく3つの意味があります。
1つめの使い方は「指導、管理、監督、演出、指揮」というビジネスでよく使われているような意味です。2つめの使い方は「方向、方角」などの向きを表す意味で使われます。3つめの使い方は「傾向、目的」という意味で使われます。
通常「ディレクション」という言葉を使うときは1つめの使い方の意味で使われることが多く、ビジネスの場で主に使われています。ビジネスの現場でよく使われる例としては「○○さんのディレクションに従って」など「指揮」の意味で用いられることが多くあります。
ディレクションの由来
では、日本で使われているカタカナ語の「ディレクション」という言葉はどこから来ているのでしょうか。その由来を紹介しましょう。
ほとんどの方がご存知かもしれませんが、カタカナ語の「ディレクション」の由来は、英語の「direction」です。英語の「direction」の意味は「方向、向き、方角、道順」「目標、方向性、傾向」などと訳されます。
英語ではそこから派生した「管理、指示、説明、指図」などの意味が加わり、より狭義の「監督、指揮」などの意味でも使われるようになりました。英語だけの使い方として「ディレクション」をする人を表す「director」が「校長、(音楽の)指揮者」を表しています。
日本でカタカナ語として使われている「ディレクション」の意味は、主に「管理や指示」という意味で使うことが多く、英語本来の意味のうちのほんの一部だけであることを覚えておくと良いでしょう。
ディレクションの特徴
ここまで紹介してきたように、「ディレクション」という言葉は「方角」「方向」「指示」「指揮」というような意味で使われています。
カタカナ語として使用される場合の特徴として、ディレクションする人を示す「ディレクター(責任者、監督、支配者)」の意味が強く残り、「制作指導」「進行管理」などの意味を持つ言葉としての使い方が多くなっているようです。
ではここで、「ディレクション」という言葉がどのように使われているのかを紹介しましょう。意味も複数ある言葉ですので類語や派生語、例文も併せて紹介しておきましょう。
「ディレクション業務」の意味
「ディレクション」の類語に「ディレクション業務」という言葉がありますが、ご存知でしょうか。先ほど紹介した「ディレクション」の意味から考えると「指示・指揮業務」と言い換えることができます。
ディレクション業務は「業務内容をしっかり把握し、各所への伝達を通し業務を正しい方向へ導き、業務完遂まで総指揮をとること」を意味しています。
「ディレクター」の意味
先ほど紹介した「ディレクション業務」を行う人のことを「ディレクター」と呼びます。「指示・指揮業務をする人」なので、日本語では「統率者、管理者」という意味になります。
テレビ業界でよく使われている言葉なので、この言葉を聞いたことのある方は多いでしょう。テレビ業界では「ディレクター」の他に「AD(アシスタント・ディレクター)」という言葉もよく使われています。
テレビ業界の場合、番組制作の方向性やキャスト、制作スタッフの総指揮を執る仕事をしているのが「ディレクター」です。担当している番組の制作全般に関する「総指揮官」の役割を持った人ということになります。
「ディレクター/ディレクションする人」に求められる能力
映画のスタッフロールでも「ディレクター」という名称が出てきます。もちろん映画の場合もテレビの場合と同じく、ディレクターの業務は「映画全体のディレクション業務をする人=総指揮官」の意味と考えて間違いありません。
ディレクション業務においては、スケジュール管理能力が最も重要な能力であると言われています。ディレクター自身が計画を立案し、進行管理などを行う必要があります。同時に、全体の流れや進捗を把握する必要があるため、コミュニケーション能力も求められます。
「プロデューサー」の意味とディレクターとの違い
こちらもテレビ業界でよく聞く名称で、ディレクターの類語で「プロデューサー」という名称があります。ディレクターとの違いを知っているようで、実はよく知らない方も多い言葉なのではないでしょうか。
プロデューサーとディレクターの違いについて、簡単に説明すると「決めるのがプロデューサー」「プロデューサーが決めたことを実行するのがディレクター」です。
プロデューサーがディレクターを選びます。つまりプロデューサーが最高責任者で、ディレクターは指揮における責任者ということになりますので、プロデューサーの元でディレクターが働くという関係性を意味しています。
広告業界での「ディレクション」の意味
業種によってディレクションする内容も違ってきますが、広告業界やWeb業界では「指揮する」ということから発展した解釈で、ディレクションという言葉の使い方をしています。
広告代理店やWeb業界では指揮官にあたる人物(例えば営業の責任者)が、協力部門のスタッフを集めて打合せを行い、「ディレクション(指揮)」を行うという様な事があります。
このディレクションする「打合せ」の「打合せ」部分が切り取られ、ディレクションという言葉を「打合せ」という意味で使うことがあります。「クライアントを導く」意味で使われていたのが、徐々に打合せそのものにも使われるようになったようです。
ミスディレクションの意味
ディレクションの類語の1つに「ミスディレクション」という言葉があります。マジシャンが使う基本技の1つでもあり、某有名バスケットボール漫画の主人公が使っていた必殺技の名前にも使われていました。
英語のdirectionは「指示」という意味がありますので、そこにmisが付いたmisdirectionは「誤った指図/指示」「宛先違い」などの意味があります。日本では「誤った方向へ導く」という意味で、指導、指揮の方向性が間違っている意味になります。
マジシャンの場合は「観客の注意を、意図していない別のところに向かせるテクニック」のことを意味しています。マジシャンの巧みな誘導(ミスディレクション)により、物体の瞬間移動が実現されているということになります。
マネジメントの意味とディレクションとの違い
「ディレクション」には「管理、運営」という意味が含まれているますので、「マネジメント」と同じ意味としても使われるのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、この2つは類語とは言えるものの意味合いは異なります。特にビジネスにおいての「マネジメント」は「経営管理」を指すことが多く、企業を「経営する」視点で「管理、運営」することを意味することが多くあります。
一方「ディレクション」は、経営よりも現場に近い業務における管理を行うことを意味することが多いという違いがあります。管理をするという意味では類語と言えるものの規模感に違いがあるといったところでしょうか。
ディレクションの仕事に必要な能力
ビジネスにおける「ディレクション」の仕事は、業務を円滑に進めるための初期設計(スケジュールや人材確保など)と仕事の割り振り、時間配分、スケジュール管理、予算管理など、多方面にわたるプロジェクト管理遂行能力が求められます。
そして適切な「ディレクション」を行うためには、スタッフ全員とコミュニケーションを図り、スケジュール通り、指示通りに業務が進行しているかを見極め、必要に応じて軌道修正や訂正を図ることが求められます。
最終的なゴールは、当該業務を適切なクオリティで納期を守って完遂することになります。では、この様な業務を行う「ディレクション」業務に求められる能力はどのような能力なのかを紹介していきましょう。
スケジュール管理能力
「総指揮者」の意味を持つ「ディレクション」業務においては、業務を俯瞰することで全体を細部まで把握し、滞りなく業務が推進されるように調整する「スケジュール管理能力」が求められます。
ビジネスにおいて進行の遅れは時に取り返しのつかないことになります。また、一部スタッフの進行の遅れが他のスタッフの業務進行を妨げてしまうというようなことがあると、場合によってはビジネスチャンスを逃してしまうということに発展してしまう可能性があります。
業務を遅滞なく進行させる為に状況に応じた柔軟な修正を行い、常に先を見据えて行動すること、クライアントやスタッフへの気配りができることが求められます。
コミュニケーション能力
ビジネスでディレクションの仕事をするうえで、チームメンバーと密にコミュニケーションをとることは欠かせないことです。
ここでいうコミュニケーションとは単に「報告・連絡」ということだけではなく、スタッフやクライアントのニーズや状況を的確に把握し、スタッフに的確なフィードバックを行う能力を含んでいます。
的確なフィードバックを行うことで業務が円滑に進行しますし、コミュニケーションをとる中でスタッフの気持ちの変化などにも敏感に反応し、時にフォローするなどの対応までもが求められます。
問題解決力
ビジネスにはトラブルがつきものです。どんなに優秀な人材やチームにおいても、必ずトラブルの1つや2つは発生してしまう物です。
起きてしまったトラブルに対し、先陣を切って指揮をとるのがディレクションの仕事です。問題の本質を見極め、適切な対処法を指示する問題解決力が必要です。優秀なディレクターは物事の先を見通す力に優れており、クライアントが指摘することまで先読みするものです。
ディレクションの使い方
「ディレクション」または「ディレクション業務」という言葉の意味について、だいぶ理解が深まってきたのではないでしょうか。特にメディアビジネスにおいては日常的に使われる言葉になっています。更に理解を深めていただくために類語や例文を紹介しましょう。
例文①(webディレクション)
「webディレクション」はディレクションの類語で、クライアントと社内の担当部門をつなぐ役割をする業務のことを指します。業務範囲は広く、マーケターの様な業務を行う必要もあります。
例えばクライアントの要望が「売上増進のためのサイト作り」だとすれば、マーケット分析、ターゲット分析に基づいたコンセプト、デザイン、サイト構築案や企画を提案する必要があります。その際、クライアント要望を把握し社内にディレクションする必要があります。
提案がクライアントのニーズを満たして受注に至れば、具体的なプロジェクトとしてスケジュール設計と管理、スタッフィング、納品物の品質管理などを実行します。
会社の規模や業界によって違いはありますが、これらの「ディレクション業務」に留まらず、自身がコンテンツ企画や取材、撮影などを実行することもあります。
例文②(ディレクションを受ける)
「ディレクションする」の類語で「ディレクションをうける」という使い方もあります。例文としては「全体の流れについてディレクションを受ける」という様な使い方になります。全体の方向性等について指導を受ける/教えてもらうといった意味になります。
例文③(ディレクションスキル)
ディレクションの類語として「ディレクションスキル」という言葉があります。例文としては「ディレクションスキルが高い人」の様に使われます。
ここまで読んでいただいた方にはお分かりの事かもしれませんが、「ディレクションスキル」とは「管理力・進行力」を意味しています。ビジネスシーンでよく使われる言葉です。例文の様な使い方をした場合は、基本的には誉め言葉として使用されます。
ディレクション業務は「総指揮」を執る業務で、多方面に目を配りながらも自ら手を動かしながら全体を管理します。英語の「direction」に含まれる「方向・方角」の意味から、方向を決めて進む力を「ディレクションスキル」と呼んでいます。
ディレクションの注意点
カタカナ語「ディレクション」は英語の「direction」に由来する言葉であることを紹介しました。英語の「direction」には「方向・方角・指示・命令」という意味がありますが、英語の発音ではどのように読むのかご存知ですか?
「ディレクション」についての意味を、類語や例文を交えて紹介してきましたが、最後に英語での発音や類語を含めたおさらいをしておきます。
英語での発音
英語にはアメリカ英語とイギリス英語があることはご存知のことでしょう。違いは発音やニュアンスの違いなどありますが、directionという英語にもアメリカ英語とイギリス英語で違いがあります。
「direction」について、日本のビジネスシーンでよく使っている「ディレクション」はアメリカ英語の発音からきています。
イギリス英語との違いはここにあり、イギリス英語では「ダイレクション」と発音することが違う点です。なお、意味はどちらも同じ意味なのでご安心ください。
有名な、イギリスとアイルランド出身のメンバーで構成された男性バンドの名称もdirectionという表記で「ダイレクション」と読みますが、これはイギリス英語の読み方ということになります。
ディレクションはディレクターから派生
日本で使われている「ディレクション」というカタカナ語は、映画の「ディレクター」という単語の影響を受けています。テレビや映画の世界での「ディレクター」という仕事内容こそが、日本で使われている「ディレクション」の意味として使われているのです。
ディレクションは「指揮・指導・進行管理」という意味
いかがでしたか。「ディレクション」という言葉についてはご理解いただけたでしょうか。ビジネスシーンで頻出する言葉となった「ディレクション」について、類語や例文、英語での意味を含めて紹介してきました。
「ディレクション」は製作の指導・管理・進行管理といった意味で使われています。テレビや映画の「ディレクター」も、企画から制作、編集全体の指揮を執っています。
「ディレクター」には様々な優れた能力が求められます。しかし、ディレクター業務は業務全体を指揮するという非常に責任がある一方で、達成感と「自分の仕事」感を感じられる楽しい業務でもあります。日頃の鍛錬で優れたディレクターを目指してみてはいかがでしょうか。