ミドルネームの名付け方と意味
海外では名前のことをファーストネーム、姓のことをラストネームと表し、その間にある名前をミドルネームといいます。基本的にミドルネームは姓名の真ん中に来る名前ですが、国や地域、宗教などによって位置が違う場合もあるため注意しましょう。
また、ミドルネームの中にもミドルイニシャルというものがあり、ミドルネームの頭文字をとったものか、イニシャル自体がミドルネームの場合があります。
ミドルネームにはきちんとした意味や名付け方があり、海外ではファーストネームと同じく大切な文化として大事にされています。
キリスト教の洗礼名
ミドルネームはもともとキリスト教のカトリックにおける洗礼に深い関係があります。宗派によってもミドルネームの名付け方にはさまざまなルールがありますが、カトリックでは生まれたばかりの赤ちゃんに洗礼を施すことが多いです。
この場合はミドルネームではなくクリスチャンネームと呼ばれ、誕生日と関連がある偉大な聖人や信仰があつい親戚の名前を付けることが一般的です。
先祖の名前
イギリスではミドルネームに先祖のファーストネームをつける場合があります。その理由は、自分の親や先祖の名前をミドルネームにすることで、家族の伝統を引き継ぎ一族のつながりを大切にするためです。
また、このように先祖の名前をミドルネームにつけるのは長男のみです。次男以降が先祖の名前を受け継ぐことは少なく、別なミドルネームをつけられます。長男が家族の伝統や名前を引き継ぐ場合が多いのは、日本の文化と似ています。
自分の旧姓
結婚によって相手の姓を名乗ることが多い国では、旧姓をミドルネームとして子供につける人も少なくありません。旧姓をミドルネームとして残すことで、一族とのつながりを大切にしています。
また、ミドルネームの付け方が伝統で決められている国や地域もあり、生まれてくる子供の性別が分かった時点でミドルネームがすでに決まっている場合があります。
母方の姓
女性が結婚の際に夫となる男性の姓を名乗る場合、子供のミドルネームに母方の旧姓をつける方もいます。姉妹しかおらずラストネームが残らないがミドルネームとして子供に旧姓を残したいという場合や、国際結婚など理由はさまざまです。
尊敬する人物の名前
両親がこんな人物になってほしいという願いを込めて、尊敬する人物の名前を子供のミドルネームにつけることがあります。
歴史的な偉人の名前を参考にした名付け方は日本人も同じです。また、海外では日本に比べて改名しやすい国が多く、大人になってから自分の尊敬する人の名前をミドルネームとして付ける人もいます。
大人になってから改名する例では、好きな土地の名前や自分の出身地など、思い入れのある土地名をミドルネームにする方も少なくありません。
欧米人がミドルネームをつける理由
宗教や地域などの決まりがなければ、欧米の人がミドルネームをつける上で、名付け方や明確なルールというものはありません。また、ミドルネームには長さの規定もなく、複数のミドルネームをつけることも可能です。
例えば、画家として有名なパブロ・ピカソの本名は「パブロ・ディエゴ・ホセ・フランシスコ・デ・パウラ・ファン・ネポムセノ・マリア・デ・ロス・レメディオス・クリスピン・クリスピアノ・デ・ラ・サンテシマ・トリニダード・ルイス・イ・ピカソ」です。
ピカソ本人も長すぎて覚えられなかったというミドルネームは、出生地のルールに基づいた名前なのですが、現代では多くの欧米の方が以下のような理由でミドルネームをつけています。
愛しい人を偲び敬うため
欧米の方がミドルネームをつける理由の一つは、愛する人を偲び敬うためです。亡くなった家族や親戚、親しかった友人を偲んで忘れることがないよう、またはお世話になった人に敬意を表すという理由でその人の名前をミドルネームにつけることがあります。
氏名が一緒の人と区別
日本人は苗字の種類が多く、約20万ほどの種類があります。これに対して欧米では苗字にあたるラストネームの種類が1万前後と少ないため、同姓同名になりやすいのです。
もちろん日本でも同姓同名の方がいますが、同じ名前でも漢字の表記などである程度個人の確認ができます。
ですが、欧米の方は英字で表記するため、氏名だけで個人を区別するのはむずかしいという理由もありミドルネームをつけます。ファーストネームとラストネームの間にミドルネームをつけることで個人を区別しやすくするのです。
人気なミドルネーム例5選
日本でも世代によって定番の名前や人気の名前があるように、欧米にも人気のミドルネームが存在します。
また、名付け方のルールにとらわれず、最近では言葉の意味よりも、発音の響きを重視したニックネームのようなミドルネームも人気です。ここではその一例を紹介します。
ローズ
ローズ(Rose)はバラの意味をもつミドルネームです。ローズという名前には女性らしい美しさの象徴ともいえるバラの花のように、エレガントな女性になってほしいという願いが込められています。
また、ユリの花の意味を持つリリー(Lilly)も人気の高いミドルネームです。花の名前は日本でも人気が高く、名前の響きに美しさを感じるのは世界共通のようです。
アン
人気のミドルネームの1つ、アン(Ann/Anne)は聖母マリアの母親の名前です。欧米では幅広い年代で名付けられる人気のミドルネームとなっています。
また、アンという名前には「美しい」「優美な」という意味もあり、女性らしさを象徴する名前であることがわかります。
日本では「赤毛のアン」の主人公を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。アンという名前はどこか異国的な響きで可愛らしく、日本でも人気の名前です。
エリザベス
エリザベス(Elizabeth)は旧約聖書の登場人物の名前で、イギリス王室の名付けでも使われることの多い名前です。ヘブライ語で「我が神は我が誓い」「我が神は我が支え」という意味があります。
そのまま発音すると長いので、エリー(Elly)、リズ(Liz)、ベス(Beth)などニックネームで呼ばれることが多いです。
スカーレット
スカーレット(Scarlet)は色の名前で、やや黄味がかった鮮やかな赤色のことです。日本では緋色や深紅色ともいいます。
ペルシャ語が語源で、本来は茜染めの高級織物の意味です。また、伝統的に炎の意味も表しており、映画「風と共に去りぬ」のヒロイン、スカーレットのように情熱的な女性像を感じさせます。
色の名前のミドルネームは上品で響きが美しく、すみれ色を表すヴァイオレット(violet)や、琥珀色を表すアンバー(Amber)など個性的で新しい名前も人気が高まっています。
グレース
グレース(Grace)は美しい、優しさなどの意味があり、ミドルネームとしてはもちろんファーストネームとしても人気の名前です。
また、グレースはギリシャ神話に登場する主神ゼウスを父にもつ、美の女神の名前でもあります。ラテン語では優美を意味し、優雅な女性像を感じさせる名前です。
日本と同様に海外でも、人気女優や活躍した有名人の名前は関心が高く、毎年名付けランキングが発表されています。
日本でミドルネームは付けられる?
海外では当たり前のように使われるミドルネームですが、ミドルネームは日本にはない文化です。かつては日本でも苗字と名前の他に官職名を入れたり、諱(いみな)などが決まっていた時代がありましたが、時の流れとともに廃止され、現代のようになりました。
戸籍には氏名のみしか登録できない
ミドルネームは日本で生まれた日本人は付けることができない名前です。そのため、戸籍には氏名しか登録することができません。
しかし、外国で生まれてミドルネームを持っている日本人は、戸籍の個人名の欄にミドルネームを入れることができます。この場合は名前とミドルネームの間にスペースを入れることができないため、書類上は1つの名前のようにうつりますので注意しましょう。
ミドルネームをつける意味は他人と区別するため!
日本人が子どもに名前を付ける時に、言葉の意味や響きを大切にするように、海外の人もミドルネームの言葉の意味や響きを大切にしています。
ミドルネームはもともと宗教との関りが深く、地域や宗派によって名付け方やさまざまなルールがありましたが、時代の流れとともに現代ではその決まりは薄れてきています。
しかし、今も昔も変わらず、ミドルネームは家族の絆や言葉の美しい響きを大切にする海外の方の素敵な文化です。