「年度」の意味とは?
「年度」とは、目的に合わせて区切られた1年間の期間を意味しています。4月1日から翌年3月31日までを区切りとするのが「会計年度」、11月1日から翌年10月31日までを区切りとするのが「米穀年度」です。
その他にも、1月1日から翌年12月31日までを区切りとする「貿易年度」や7月1日から翌年6月30日までを区切りとする「麦年度」、10月1日から翌年9月30日までを区切りとする「砂糖年度」などがあります。
どの「年度」をみても、暦年が意味する1月1日から12月31日の一年とは区切りが違うことがわかります。いつからいつまでなのかは、各年度の目的と規定によって違うのが「年度」です。1月始まりのカレンダーが示す年とは区切りが違うので、注意しましょう。
「年度」の特徴
普段から慣れ親しんでいる「年」の意味は、時の経過に使う単位です。期間は1月1日から12月31日までの1年間を指します。太陽暦と太陰暦があり、365日5時間48分46秒を意味するのが太陽暦で、太陽の周りを地球が一周する時間に相当します。太陰暦の意味は、地球の周りを月が12週する時間です。
「年」の使い方は、「一年」や「暦年」、「年の始め」や「年の暮」、「年齢」など、一年を単位として表現したい時に用います。「年」を使う時は、区切りが必ず「1月1日から12月31日までの1年間」となりますが、「年度」は違います。「年度」は決まった区切りがないのが特徴です。
「4月1日から翌年の3月31日まで」の区切りが「会計年度」となっていることから、企業や諸団体で多く採用されていますが、他にも複数の「年度」が存在します。「年度」と「年」の違いを確認したところで、使い方も見てみましょう。
官公庁や学校では「年度」を使う
国や地方自治体などの官公庁では、予算を編成して管理・執行しています。用いられる期間は4月1日から翌年3月31日までの「会計年度」です。今年度、新年度、のように「年度」で区切ります。「年」は使いません。
「昨年度の予算は案〇〇」「来年度の予算案は〇〇」などのように使われます。「会計年度」と同じ区切りの「年度」にしている企業なども同じです。「年度始め式」「年度始めのあいさつ」「年度末の総会」「年度末の挨拶」などのように使います。では、学校はどうでしょうか?
学校も同様に4月始まりです。学校の一年は「学校年度」と呼ばれ、4月1日から始まり3月31日までが1年の区切りとなっています。入試を「〇〇年度入試」、卒業式を「〇〇年度卒業式」と表現されるのはこのためです。
履歴書では「年度」を使わず「年」を使う
官公庁や学校使われている「年度」ですが、面接の際に提出をする「履歴書」では「年」を使います。学校年度では、〇〇年度卒業生、〇〇年度入学生という使い方で区切られますが、人生の履歴においては「年度」ではなくて「年」を使うので注意しましょう。
〇〇年3月 □□□高等学校 卒業、〇〇年4月 □□□大学□□学科 入学、〇〇年3月 □□□大学□□学科 卒業、のようになります。職歴の欄も同様です。
企業でも「〇〇年度新入社員」「〇〇年度入社式」のように「年度」を使いますが、履歴書の職歴は「年」で記入します。〇〇年4月 株式会社□□ 入社、〇〇年3月 一身上の都合により退職、などのようになります。
「年度」の区切り
「年度」の意味は、各目的に合わせて区切られた一年間の期間のことでした。例えば、官公庁であれば「会計年度」、企業であれば「決算」に合わせて区切られた「事業年度」などです。「年度」はいつからいつまでという決まり事がないため、それぞの団体によって変わります。
対して「年」はカレンダー通りの一年間、1月1日から12月31日を意味します。「年」は西暦、和暦とありますが、1月1日から12月31日を一年間と決められていることが「年度」と違う点です。
もう一点、違う点があります。「年」の途中で「元号」が変わった場合の期間の扱いです。一年の途中で「元号」が変わった場合、「年」はいつからいつまでなのか、「年度」はいつからいつまでなのかを確認しましょう。
平成31年度はいつからいつまでか
「平成」が2019年4月30日で終わりとなりました。平成最後の「年」と「年度」はいつからいつまででしょうか?「年」は暦通りの一年を意味しますので、カレンダー通りです。2019年1月1日から2019年4月30日までが平成31年となります。
では、「平成31年度」はいつからいつまででしょうか?「年度」は4月1日から翌年の3月31日までを意味しますので、「平成30年度」は平成30年(2018年)4月1日から平成31年(2019年)3月31日までです。平成31年(2019年)4月1日から「平成31年度」が始まったことになります。
通常であれは、年度の区切りは平成31年(2019年)4月1日から令和2年(2020年)3月31日までが「平成31年度」です。ただし、2019年4月30日で平成が終わりましたので、2019年5月1日以降は「令和元年度」となります。
例えば、「会計年度」では、平成30年度に発表した平成31年度予算案は、「平成31年度」である平成31年(2019年)4月1日から平成31年(2019年)4月30日までの呼び方です。令和元年5月1日以降は、令和元年度予算案と呼ばれます。
令和元年度はいつからいつまでか
「令和」が2019年5月1日から始まりましたので、「年」の意味では暦通り2019年5月1日から2019年12月31日までが令和元年となります。では、「令和元年度」はいつからいつまででしょうか?
「会計年度」においては、2019年5月1日を始まりとしていません。国の発表により「令和元年度」は平成31年(2019年)4月1日から令和2年(2020年)3月31日までとなったからです。
一般的にはどうかというと、「年度」について規則や法律があるわけではないので、「会計年度」に合わせるところが多いといえます。「令和元年度」は、平成31年(2019年)4月1日から令和2年(2020年)3月31日までとなります。
「年度」の使い方
「年度」は官公庁の報道やビジネスにおいてよく見聞きする言葉です。「新年度」「年度末」「昨年度」「今年度」と、「年度」が含まれる単語も多くあります。どのようなシーンで使われることが多いのか、使い方を見てみましょう。
例文①
「年度」の区切りは、一年を意味しますので始まりと終わりがあります。「年度」の始まりを意味するのが「新年度」、終わりを意味するのが「年度末」です。幼稚園、保育園、学校、官公庁の新年度は4月1日に始まります。企業の多くも同じ区切りにしていることが多いのが特徴です。
使い方を見てみましょう。【使い方1】アメリカの会計年度では10月に新年度となり、学校年度は9月に新年度となります。【使い方2】今年度の決算を黒字で乗り切り、無事に新年度を迎えたい。【使い方3】10月に、幼稚園の新年度入園説明会に行く予定です。
日本では、会計年度と学校年度が同じです。私立の幼稚園や保育園なども一企業なので、同じように決算期があり事業年度があります。企業の決算が関わる事業年度も、会計年度と同じ場合が多いことから、一貫して社会へ出る前の準備期間が設けられているともいえます。
会計年度や学校年度は国によって違うため注意が必要です。会計年度を例にあげると、1月から12月制の国、7月から6月制の国、日本のように4月から3月制の国などさまざまです。決算をむかえる月もそれぞれ異なります。海外で学びたい、働きたいという方は、事前に調べておくと良いでしょう。
例文②
「年度」の始まりを意味する「新年度」には、多くの企業が挨拶文を公開します。企業では決算月や年度替わりに合わせて、体制の変更などを行うからです。ビジネスシーンにおいてよく使われる「年度」の使い方を見てみましょう。
【使い方1】昨年度は多くのお力添えをいただき、誠にありがとうございます。今年度は新しい事業所がオープンいたします。【使い方2】職員の交代、新たな組織編成と共に新年度が始まりました。【使い方3】新年度における企業の進化に伴い、新体制でのスタートとなりました。
ビジネスでは時間の流れと共に人事変更や組織変更など、様々なことが起こります。時の流れを表現する場合には「昨年」「今年」などは使いません。年度の区切りを意味する「昨年度」や「新年度」、「今年度」や「本年度」などの、「年度」を使います。
例文③
次は、「年度」の終わりを意味する「年度末」です。会計年度であれば、最終月の3月または最終日の3月31日を指します。事業年度は、企業や団体によって違いますので、「年度末」が3月とは限りません。「年度末」にはどんなことが起こるのでしょうか?
公共事業であれば、予算を使い切るため一般企業に発注し、工事などを進めます。企業であれば決算月となりますので、業種によっては棚卸をしたり売り上げアップの施作をしたりします。決算セールが行われるのがこの時期です。
使い方をみてみましょう。【使い方1】経済に関わるニュースでは、年度末になると決算という言葉をよく耳にする。【使い方2】年度末の3月は道路工事が多い。【使い方3】年度末は会社を退職する人も多いため、人事部門の人も忙しくなる。
年度末でイメージされるのが、やはり「忙しい」という言葉でしょう。決算で見える企業の数字は成績です。年度末に向けて顧客満足度を上げ、売り上げアップをはかっていても、希望の数字に届かないこともあります。目標達成のために年度末が非常に忙しくなるというのは、よく見られる光景です。
例文④
「年度」の中でもよく使われる「会計年度」の意味は、官公庁の収支に関わる期間です。4月1日から翌年の3月31日と決められています。企業の「会計年度」は、自由に決めることができます。企業の決算月により区切りが異なりますが、大半が4月1日から3月31日です。使い方を見てみましょう。
【使い方1】B社の会計年度は個人事業をしていた決算期からの流れで、1月31日から12月31日だそうです。【使い方2】会計年度末に合わせて、決算棚卸をする。【使い方3】初年度は決算を迎えるまでの日数が短く、事業年度が1年以内となることがある。
「年度末」や「来年度」と同様、「会計年度」の締めを意味する「会計年度末」、来期の会計年度を意味する「来会計年度」もあります。企業の「会計年度」の終わりに必ず必要になるのが、収支の区切りである決算です。収支や活動をまとめた決算報告を行い、一年の区切りとします。
決算で使う「年度」の注意点
法人企業も個人事業者も年に一度の決算があり、一年を区切りとするのは同じです。違いは、法人の事業年度は自由に決めることができるのに対して、個人事業者は会計期間の区切りを自由に決められないことです。
法人企業の事業年度はいつからいつまでで、決算はいつになるのかは企業や団体によって異なります。では、個人事業者はいつからいつまでを区切りとし、決算はいつになるのでしょうか?法人企業と個人事業者の期間の区切りについて、それぞれの注意点を見てみましょう。
法人企業の事業年度を決める際の注意点
事業年度は、法人企業が会社を始める時に決まります。事業年度を決めることは決算月を決めることになりますので、慎重な判断が必要です。会社にとって一番良い状況で決算をむかえられるように考えて区切るのがポイントとなります。
多くの企業が4月1日から翌年3月31日までを事業年度としていますが、業種によっては違う区切りにしたほうが良いこともあります。繁忙期となる時期が異なれば、納税額や資金繰りに大きな影響を及ぼすことが考えられるからです。
繁忙期は、実際に売上がどれくらいの利益を生むのか、予想するのが難しい時期です。多くの利益が出れば納税額も高額になり、資金繰りに影響が出る可能性があります。逆に、予想していた売上にならず、赤字で決算をむかえてしまうと業績が悪い会社としての印象を外部に与えます。
棚卸しや決算対策、節税対策もできないまま、決算月をむかえることは避けなければなりません。繁忙期は避け、落ち着いて決算月をむかえるほうが好ましいでしょう。また、決算申告が完了した後は納税の資金の準備も考慮する必要があります。
資金が必要となるのは法人税、地方法人税、消費税及び地方消費税などです。これらの支払いは、決算日から2ヶ月以内に納付するものと決められています。多額の支出がある時期となりますので、他の納税や保険料、大きな仕入れやボーナスなど高額な支払いと重ならないように注意することも必要です。
個人事業者の一年の区切りには決まりがある
法人企業と違い、個人事業者の一年の区切りには決まりがあります。1月1日から12月31日までです。個人が納める所得税の計算期間が、暦年の一年に対して課税されるのと同様ということになります。
暦年の一年で個人事業主の事業税は計算されるため、事業年度という言い方はしません。法人のように「平成31年度」や「令和2年度」ではなく、「平成○年分所得税青色申告決算書」「自1月1日 至12月31日」のようになります。
年の途中で開業した場合も所得税は暦年で計算されますので、「自1月1日 至12月31日」となります。会社勤めを辞めて、7月1日に個人事業を開業した場合に申告する内容を見てみましょう。
1月1日から退職するまでは会社から給与が支払われていますので、まずは源泉徴収票が必要です。個人事業としては、開業した7月1日から12月31日までの売上や仕入・経費の領収書、帳簿を根拠とした収益を申告します。もし副業があればその収益も同様です。
上記の他、医療費や退職後に自分で納めた国民年金や国民保険、生命保険料なども申告が必要になります。このように、年の途中であっても1月1日から12月31日までの一年分、個人の所得税にかかわる書類の準備と申告が必要となりますので注意してください。
「年度」は「目的に合わせて区切られた1年間の期間」という意味
「年度」の意味は、目的に合わせて区切られた1年間の期間です。会計年度や学校年度、企業における事業年度など、それぞれの「年度」があります。いつものように使っている「年度」でも、年の途中で元号が変わった際には注意が必要です。
日付や期間を西暦で記載している場合は、変更する必要はありませんが、和暦を使っている場合は、年の途中で元号が変わった際は記載する「年度」も変わります。ビジネス文書など、記載内容に間違いがあるとスムーズなやり取りができないばかりか、混乱を招くことにもなりかねません。
平成から令和のように、いつから年度が変わるのがか事前に分かっている場合は、事前準備ができます。会社で保管する書類、企業間でやり取りをするメールや文書、役所などに提出する書類など、記載する「年度」もいつから変えるのか確認し、対応を間違えないようにしましょう。