50代・平均貯蓄額とは
50代になると、どうしても定年退職後の生活を意識するようになります。充実したセカンドライフを迎えたいが、「年金だけでやっていけるの?」とか「どれくらい貯蓄額が必要なの?」など、お金にまつわる疑問も多いでしょう。50代の貯金の平均額はどれくらいなのか、50代からのお金の貯め方についてみていきましょう。
50代の約半数は貯金が無い
50代の貯蓄額は、もちろん夫婦なのか独身なのか、職業や子供の有無などにより人それぞれで異なりますが、平均的にはどれくらいなのでしょうか?でも貯金どころか「住宅や教育ローンの返済で手一杯で、貯金なんか無いぞ」という方も多いと思います。
そんな方もご安心ください。日本銀行が事務局を務める金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」では、約半数が貯金は無いと答えています(2017年調査)。
貯金のある人の平均は1100万円前後
先ほどの調査によると、50代の1世帯当たりの平均貯蓄額は1100万円前後になっています。この金額はいわゆる預貯金だけではなく保険など他の金融資産も含まれており、預貯金だけだと約半分になります。ただこれはあくまで単純な平均で、たくさん持っている人が平均額を引き上げていますので、大半の人はこれよりも少ないのが実態です。
この世論調査は毎年行われています。2018年の調査では、質問項目が若干変更されたこともあり、貯金に関する調査結果が少し変わっています。しかし、傾向は大きく変わっておらず、老後を間近に控えた50代は意外と貯金が出来ていない実態が浮かび上がっています。
必要な老後資金はいくら?
それでは、人生100年とも言われる長寿社会となった今日、老後の資金はどれくらい必要なのでしょうか?
もちろん、旅行や趣味などの余暇にどれだけお金を使うかで必要な金額は変わってきますので、一概にいくら必要とは言えません。でも、夫婦もしくは独身の場合、最低必要な日常生活費はどれくらいになるのかは押さえておきましょう。
ただ、平均寿命及び健康寿命は延びており、それに伴い夫婦でも独身でも老後に必要な資金は増えていきます。さらに、病気やケガへの備えもあります。また、子供の結婚費用や孫の教育費などを負担してあげたいと考える方は、その分は別に計算しておく必要があります。
①夫婦で生活をする場合
公正・中立な立場で生活設計と生命保険に関する情報を提供している公益財団法人「生命保険文化センター」の調査を参考にします。
この調査によると、夫婦二人で老後生活を送る上で必要と考えられている最低日常生活費は、平均で月額22万円となっています。また、経済的にゆとりある老後生活を送るために必要な上乗せ額は、同様に12.8万円となっています。
つまり夫婦二人で月額22~35万円程度必要ということです。老後を65歳から85歳の20年間とすると、月数は240ヵ月になりますので、老後に必要な総額は5280~8400万円です。
一方、もらえる年金の平均額(厚生年金の標準モデル)は夫婦二人で月額約22万円、ちょうど最低日常生活費が賄える程度です。ゆとりのある生活を求める分は貯金しておく必要があります。ゆとりのある生活の上乗せ額を月5万円とすると20年間で1200万円となります。
②独身で生活をする場合
生命保険文化センターの調査は、夫婦二人の老後生活を想定したアンケートです。それでは独身の場合はどうでしょうか?
独身の場合に必要な最低日常生活費は、夫婦二人の半分にまでは減らないでしょう。ここでは独身は3分の2として計算します。夫婦二人に必要な月額は22万円でしたので、独身の場合、その3分の2の水準である15万円程度が必要になると想定されます。
一方、受け取る年金(厚生年金)の一人の平均は、男性が月額16万円程度、女性が10万円程度です。ただ、女性は結婚後離職する人が多く含まれるので少なくなっています。
女性も定年まで働くとすると、男性とそれほど差はなくなるでしょう。独身の場合のゆとりのある生活の上乗せ額を3万円とすると、月額2万円程度足りませんので20年間では480万円の不足です。独身だと気楽かも知れませんが500万円くらいの貯金は必要です。
50代・貯金が出来ない人の特徴
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」では、50代の約3割の人が貯金を含む金融資産を持っていないと答えています。実はこの割合は60代、70代でもほとんど減っていません。つまり50代で貯金の無い人はその後、貯金することは難しいことを示しています。
また、貯金が無い人は収入が少ない人に多いのではなく、1000万円以上の高収入の人でも全く貯金が無い人がいます。それでは、貯金が出来る人とできない人の違いはどこにあるのでしょうか?まず、貯金できない人の典型的な例をみてみましょう。
①見栄っ張りな性格
友人・知人、近所の人など周りの目を気にしてついつい見栄を張ってしまう人。ブランド品など必要以上に質の良いもの、値段の高いものを求めがちです。このような人は、裕福にみせたい気持ちが強いため、収入に見合わない高い買い物をする傾向があり、一向に貯金できません。
②将来設計を立てていない
結婚、子育て、マイホーム購入など、今後のライフイベントにどれくらいお金がかかるのか何も考えていない人。行き当たりばったりで、将来設計を立てることがでません。このような人は、将来に備えて計画的に貯金していこうという発想がないため、余計な支出が多くなりお金が貯まりません。
③お金を使うのが好き
後先考えずにとにかくお金を使うことが好きな人。仕事や人間関係のストレス発散のために買い物をやめられなくなる人もいます。バーゲンセールと聞いたら買わないと損と思い、つい要らないもので買ってしまいます。お金があれば全部買い物に使ってしまうため、貯金することができません。
④資産形成を学ぶ気が無い
お金の貯め方や資産運用に関心がない、または関心があっても難しくて分からないと決めつけ学ぼうとしない人。資産運用が分からないから、将来、うまい話しに引っ掛かって資産を失うことにもなります。逆に金利など気にせず無頓着に借金をしてしまうことにもつながります。
⑤どうにかなると思っている
若いうちは何とかなってきたために、何の根拠もなくこれからも何とかなると思い続けている人。お金のことも何とかなると思っているので、将来のために貯金などせずついついお金を使ってしまいます。退職が近づき何ともならないことに気が付いたときは、既に手遅れなのです。
50代・貯金が出来る人の特徴
次に、貯金が出来る人の特徴をみてみましょう。貯金が出来る人に共通するのは、計画性、意思の強さ、実践力・行動力といった点です。こうした人は早い時期から目標を持ち、計画を立て実行に移するため、お金の貯め方も途中で軌道修正するなど、時間を味方に付けることが可能です。
①お金がたまる仕組みを作ってある
お金が貯まる人は、給与天引きで毎月定期的に預貯金に回したり、個人年金、投資信託などの運用商品に積み立て投資をしています。お金の貯め方を良く知っており、税制面で有利な確定拠出年金や積立NISAなども積極的に活用し、自動的にお金が貯まっていく仕組みを作っているわけです。
②将来設計が明確
将来設計を明確にすると、自ずと計画的なお金の使い方になります。いつまでにどのようになりたいかという目標を明確にすることで、いつまでにどれくらい貯金をするかという発想につながります。一方、明確な将来設計が無い人は、貯金しても途中で使ってしまったりして、お金が貯まりません。
③逆算思考
明確な将来設計がある人は、ゴール地点を目標に逆算して現時点から計画的にやるべきことを実行することができます。例えば、50歳で貯蓄額1200万円を目標とするなら、40歳の時点だと毎月いくら積み立てればよいか逆算しそれを実行します。つまり、毎月10万円の積み立てを40歳から始めるわけです。
④うまい話はのらない
世の中には、楽してお金を儲ける方法やリスクをとらずに確実に儲けられる投資はありません。お金が貯まる人は、資産運用を学び、運用に関する知識を得ることでそのことを良く知っています。「うまい話」や「おいしい話」に手を出して失敗することがなく、着実に資産形成することが出来ます。
⑤学びを実践
お金が貯まる人は、お金に関する知識を身に着け、資産運用を学ぶだけでなく、それを実践しています。学んだことを実践し、実践のなかからまた学ぶことで、さらにお金を貯める力を付けていきます。老後や将来に向けた資産形成も、やはり不断の努力と行動力が必要なのです。
50代・今から始める1000万円の貯め方
夫婦か独身かに限らず、これまでの贅沢や想定以上の子供の教育費、病気・ケガでの追わぬ出費などで、気が付いたら「50代貯金ゼロ状態」という方は多いかと思います。
ゆとりある老後の生活は諦めるほかはないのでしょうか?安心してください。50代ならまだ間に合います。貯金ゼロの最大の要因になっている①贅沢、②子供の教育費、③資産運用の3つのキーワードを元に、50代からのお金の貯め方を考えられます。
10年後に1000万円の貯蓄額を目標にすると、利息や運用益がない想定で毎月8万円強積み立てる必要があります。毎日の生活を見直せば必ず達成できる金額です。諦めずに今日からすぐ実行してださい。
①贅沢していた分を貯金に回す
今貯蓄額がゼロということは、当たり前ですが、毎月の支出が収入と同程度かそれより多いという生活を続けてきたからです。自分では贅沢しているつもりはなくても、収入以上に支出していれば、必ずどこかで贅沢をしています。贅沢を洗い出しそれをやめることで支出を収入よりも少なくする。これ以外に貯金する方法はありません。
家計の現状を紙に書きだす
自分がいかに贅沢で無駄な支出をしているか。このことを知るためには、まず家計の現状、特に支出の詳細を紙に書き出してください。収入が多い人ほど、何となく使っているお金、減らせる無駄な出費がいかに多いかが分かり、唖然とするはずです。
そして次に、毎月の貯金の目標額を決めて、最低でもその金額が残るように支出を減らしてください。貯金ゼロならこれから10年間で1000万円、すなわち毎月8万円が必ず残るような家計の状態に変えるのです。貯蓄額1000万円という明確な目標を持てば、目標達成のために何が余計かが見えてくるでしょう。
②子供の教育費の優先度を考える
子供のいる世帯で最もお金がかかるのは何といっても教育です。中学から大学までの10年間、すべて私立ともなれば学費だけで一人当たり1000万円程度はかかります。家から遠い場合は電車・バスの定期代も嵩みます。さらに修学旅行が海外のホームステイだったりすると、出費はどんどん増えていきます。
さらに、これに道具代や遠征費などお金のかかる部活に入ったり、習い事が加わったりすると、ますます出費が嵩みます。
30歳前後で子供が生まれた場合、50代はまさに子供の大学進学・卒業のタイミングであり、貯金どころではなく貯蓄額ゼロも当たり前かも知れません。
かかるお金・かけるお金の区別化
ピアノにバレエ、英語にそろばん、スイミングにダンスと、習い事を含めると子供の教育にはキリがなく、それこそお金がいくらあっても足りません。そこで、学校の授業料や交通費、教材費などどうしても「かかるお金」と、塾代や習い事など余裕があれば「かけるお金」とを整理しましょう。
そして「かけるお金」のものは、子供ともよく話し合って優先順位を付け、収入に応じて優先順位の低いものをやめ貯金に回していきます。それでも収入が足りなければ、妻が働きに出る、子供がアルバイトをするなど、世帯収入を増やす必要があります。
③資産運用の活用
10年後に貯蓄額1000万円を目指すには、支出を減らすだけでは限界があるかも知れません。資産運用によりお金の貯め方を工夫することを考えてみましょう。資産運用は、お金に働いてもらうことで毎月の積立額の合計よりも貯蓄額を増やす方法です。
運用先は預貯金も含まれますが、利息がほぼゼロの時代、多少リスクをとっても株式や社債、投資信託など預貯金以外にも投資先を広げることで、貯蓄額が増える可能性を求めることが重要です。これらの投資先はリスクを取る分、長期的なリターンは預貯金よりも高く、貯蓄額を増やす有効な貯め方の一つです。
複利の活用でお金を増やす
資産運用の大きな武器となるのが「複利」です。簡単に言えば、利息に利息が付くことを複利と言います。これに対し元本のみにつく利息を単利と言います。
現状、銀行等の預貯金の利息はほぼゼロで、毎月10万円の積み立てをしても10年後の貯蓄額は1200万円です。これに対し、毎月10万円の積み立てを運用に回し、仮に年率2%のリターンを得られるとして、得られたリターンもまた運用に回すと、10年後の貯蓄額は約1329万円になります。10年間で実に129万円の差が出ました。
資産運用は元本が保証されておらず2%のリターンが得られるとは限りませんが、多少リスクをとることで10年間で100万円以上、場合によってはもっと大きな差が出る可能性があります。複利活用による資産運用は有効なお金の貯め方と言えるでしょう。
資産運用のキーワードは長期・分散
資産運用が資産形成に有効といっても、資産運用はリスクが大きく、売り買いの判断は難しいと思われる方は多いでしょう。実際に金融市場の動向をみて投資判断をするのはプロでもうまくいくとは限りません。
そこでお勧めしたいのが、長期・分散による資産運用です。5年ないし10年を見据えた長期運用で、投資対象と投資タイミングの両方を分散すれば、投資リスクを大幅に引き下げることが可能です。
投資対象の分散、投資タイミングの分散を図るには、複数の資産に分散投資する投資信託を定時・定額で積み立て投資する方法が有効です。長期運用をすることで、さらに分散効果が高まります。
税制メリットも味方に
投資信託の積み立て投資には、積立NISAやiDeCo(個人型の確定拠出年金)をお勧めします。投資対象、投資タイミングの分散が図れるうえ、運用益が非課税になったり拠出額が税控除されるなどの税制メリットも享受できます。50代・貯金なしの方のお金の貯め方にピッタリと言えるでしょう。
50代で貯金が無い人は今すぐ出来る貯め方を実践しよう
50代・貯金なしの人でも、老後の資産形成はまだ間に合います。今すぐ出来るお金の貯め方を今すぐ実践することです。まずは家計の現状を知り余計な支出を減らす。10年後の貯蓄額の目標を定め、目標達成に必要な毎月の積立額を逆算し貯金と資産運用に回す。そうすれば、50代・貯金なしから60代・貯金1000万円、さらにそれ以上も夢ではありません。